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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 マリブサーフ列島国編
474/498

242,一時休戦 前編


 現在港街の中心辺り上空。

ルグ達だけじゃなくナトも一緒に『レーダー』やナトの持つ『レーダー』の様な魔法を頼りに高橋達を探してる所だ。


あの後1度はナトと別れたんだけどなぁ。

スマホで確認してるはずのにグルグル同じ所でナトが迷ってるもんだから、俺が耐えられず結局高橋達の所に送る事にしたんだ。

いや、もう、なんか少し見ない内にナトの方向音痴悪化してないか?


「あ、居た。ピコン達も一緒みたいだ」

「なんか凄く嫌な予感がするんだけど・・・・・・

何処?」

「あの騒音の中心。

アイツ等こんな所で堂々と戦ってるみたいだぜ?」

「あぁあああ!!やっぱりぃいいい!!!

急いで止めなくちゃ!!」


お祭りの音だと思いたかった!!

少し前から聞こえていたあの物凄い音はお祭りで盛り上がってる音だと思いたかったのにッ!!!

ルグ曰くその音はピコンさん達と高橋達が戦ってる音らしい。

無関係の島民への被害が尋常じゃ無いんだからこんな街中でド派手に戦わないでよッ!!!

そう内心で叫びつつスピードを上げる。


「ストップ!ストップ!!

ストォオオオオオオプッ!!!」

「『アサイラム』!!!」

「ッ!」


俺の叫びとナトの呪文がルディさんのバイオリンの音や魔女の歌を消し去る様に戦場と化した街に響く。

その絶叫に大半の人の手が止まり、両陣営を割く様にナトが生み出した魔法の結界によって完全にピコンさん達の戦いが止まった。

その時聞こえた気がした息を飲む音は、結界に思いっ切りピッチフォークをぶつけたピコンさんか、ピコンさんと同じく魔法で作り出したらしい剣をぶつけて消し去った高橋か、それともピコンさん達の戦いを周りで不安そうに見守っていた住人や観光客達か。

もしかしたらこんな所で喧嘩の範囲を優に超えた戦いを繰り広げる高橋達を捕まえ様と走って来ていたマリブサーフ列島国兵さん達かもしれない。


「邪魔するな、死人モドキ!!退けッ!!!」

「落ち着け」

「グッ・・・・・・」

「正気になったらピコンとザラをどうにかしてくれよ。

2人の方が重症で殴っても戻らない」


また魔女に弾かされたルディさんのバイオリンの影響を受けてるんだろう。

興奮して好戦的になってる信号の様に真っ赤な目のクエイさんをルグが殴って正気に戻した。

1番ルディさんから離れていたからか、それもと単純にそう言う系の耐性が高いのか、それとも少しの痛みじゃ正気に戻らない程ピコンさんとザラさんの痛覚が鈍っているのか。

クエイさんは1回殴られた痛みで直ぐ正気に戻ったけど、ピコンさんとザラさんは中々戻らず更に高橋達に攻撃を仕掛けようとしていた。

そんな2人をマシロとジェイクさんが必死に止めてるけど、実力差から完全に押されてる。


「・・・・・・・・・チッ!

オラッ!お前等も一旦落ち着け!!」

「ゲホッ、ゲホッ!!」

「ケムッ!!!行き成り何すんだ、クエイ!!!」

「何すんだ、だ?

はッ!

敵の魔法に簡単に掛かって暴れてた奴が良く言うぜ」

「異議あり!!

それに関してはクエイも人の事言えないだろー!」


きっとあの煙草には鎮静剤の様な効果があるんだろう。

クエイさんが新しく取り出した煙草の煙を浴びたピコンさんとザラさんが正気に戻った。

うん。

何時ものやり取りしてるし、煙たさから涙目になった目の色も元に戻ってるし、問題ないな。


「田中ぁ!!何でお前も止めるんだよ!!

後少しで霊薬の大本取り返せそうだったのにッ!!」

「そうです、勇者様!

何故彼等を助ける様な事をッ!!!」

「それは・・・・・・」

「取引したんだよ、俺達と」


ルグ達がクエイさん達を正気に戻そうとしてる反対側では、そう高橋達がナトに迫っていた。

そんな高橋達の怒気に圧されてしまったんだろう。

口ごもるナトの姿を見て俺はルグ達の声をBGMに出来るだけ落ち着いた声を出しながらナト達の方に近づいた。


「俺達もチボリ国での怪我がまだ完全に治ってないんだ。

それなのに毎回毎回こんな風に高橋達に襲われたら堪ったもんじゃない。

だからこの国に居る間ルディさん達や『オーブ』に手を出さない代わりに俺達にも手を出すなってナトと取引したんだよ。

なぁ、ナト?」

「あ、あぁ・・・・・・」


もう少しの間話合わせてくれよ?


と笑顔でナトの名前を呼べば、


『ちゃっかり自分達の要求を追加したな』


と顔全体に書いたナトがジトとした視線を寄越しながら頷いた。

嫌だなぁ、ナト。

ルディさん達を連れ戻すなって事はその為に自分達と戦うなって事だろう?

ならそのナトから出した条件を穏便に守る為にそうお互い戦いを回避する言い方をしても嘘じゃ無いって事だ。

要求を追加なんってしてないさ!


「取引だぁ?何時の間にそんな事してたんだよ」

「ついさっき。迷子になってるナトを見つけて」

「迷子言うな」

「あ、ついでに言うと今此処に俺達が居るのも迷子(ナト)を送り届ける為だから。

連絡が遅れて逸れたクエイさん達と争う事になっちゃったけど、別に俺達は戦いに来た訳じゃ無いからな?」

「だから迷子言うな、キビ」

「何で?

多少は方向音痴の迷子癖の自覚あるんだろう?

何でそんなに必死に迷子を否定するんだ、ナト?」


そう何度も高橋達に説明してる間不機嫌そうに訂正するナトを俺は首を傾げて見る。

張り付いた作り笑いは変わらないだろうけど、


『何で?』


って思いが醸し出したキョトンと惚けた雰囲気で表せてると良いな。


「迷子なんって言われる年じゃもうない」

「いや、だから、何で?

未成年なんだからまだ『迷子』って言って良い範囲だろう?」

「そう言う問題じゃない。

大体、お前等も迷子だったんじゃないか。

人の事迷子迷子言うな」

「迷ってない、迷ってない。

逸れただけで真っすぐピコンさん達と再会できたから迷ってない」

「何で田中も佐藤もどうでも良い事で言い合ってんだよ・・・

お前等、今自分達が敵対してるって自覚あるか?」


警戒心バリバリに武器を構えていた高橋達が呆れた様に武器を下ろした。

よし、よし、計画通り。

人見知りの激しさ故に身内以外にはクールぶってるナトなら強調した可愛らしい『迷子』の言葉に反応すると思ってたんだ。

そんな可愛いイメージ、高橋達に植え付けようとするな、って。


敵対してる以上高橋達には攻撃されたって勘違いされるだろう鎮静効果のある薬煙草の煙を浴びせる事は出来ないし、そもそもナトと高橋はスキルの影響で薬自体が効かないだろうし。

だからそれ以外の方法で戦意と警戒心を削ごうと思ったんだ。

と言う事でナトを勝手に巻き込んで繰り広げたお惚け劇場作戦は即席の作戦にしては思いの外上手くいった。


「そう言えば、そうだったな。

アハハ!

久しぶりにこうなる前と同じ様にナトとゆっくり話したからからかな?

つい記憶の彼方に飛ばしちゃってたよ!」

「忘れる位なら何時までも魔族の味方なんかしないでこっち来ればいいだろう?

そんなボケボケした奴に悪事は似合わないぞ」

「断固お断り!

けど、本当に今回は戦う気が無いからな。

特にこんな人の多い所で戦うなんて迷惑でしかないだろう?」

「それをお前達が言うのかよ?」

「言うに決まってるだろう?

俺達は自分達の良心に従った『正しい』と思う事をしてるんだ。

無意味な破壊活動が目的じゃない」

「・・・・・・・・・チィッ!そうかよ」


一時休戦といこう。


と笑みを深め集まった周りの人達を手で示せば、完全に戦う気が失せた様で更に高橋の雰囲気が柔らかくなる。

まぁ、自分達が街中で戦ったせいで困ってる人が居たら『正義の味方の勇者』としては見過ごせないよなぁ。

それが誰かの手で作り上げた嘘偽りの塊の偶像だとしても高橋達の良心とプライドが許さないし、父親の事があってもこれ以上自分達から戦いを仕掛けたら自分達の方が悪役だって高橋に自ら晒す事になる訳だから、それを作り上げそれを元にナト達を操ってる手前魔女達も下手な事は出来ない。

どんなに高橋の見えない所で顔を醜く歪めて睨んできても出来ないものは出来ないだろう?


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