表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
449/498

218,キャラバン村


『財宝の巣』から脱出した翌日昼過ぎ。

俺達4人も漸くナト達が泊ってるキャラバン村に来る事が出来た。

その後の色々をジンさん達に任せて脱出後直ぐや今朝直ぐキャラバン村に行かなかったのは、ひとえに皆疲れてたから。

俺達もクエイさん達も昨日1日で色々あり過ぎて、『レジスタンス』アジトの奥でウォルノワ・レコードを見つけたあの日並みに心身共に疲れ切ってたんだ。

それでロホホラ村の宿屋で全員が起き終わったのが数時間前のお昼頃。

1番早く起きたのがルグに担がれ飛行船を出た直後に気絶してそのままずっと爆睡してた俺って言う酷い有様だったんだ。

まぁ、だから、この時間にキャラバン村に来たとしても仕方ない、仕方ない。


「うーん・・・・・・

ナト達、まだこの近くに居るはずなんだけど・・・」


キャラバン村は大きく分けて5つのエリアに別れている。


まず、ナト達が泊ってる組み立て式の建物や空間結晶を使った馬車を利用した宿屋エリア。

キャラバン村の中では1番狭いけど、その分厄介な位セキュリティがしっかりしてるんだ。


その近くに有るのがクエイさん達が泊まっていたテントエリア。

此処に来た冒険者の殆どがそこに泊まってるからか、2番目に広いエリアだ。

アニメの中のサーカスを思い起こさせる宿泊施設としてのランクが1番低い大きなテントを中心にカラフルな小さなテントがたくさん集まっていて、遠くからだと砂漠の中に突然小さな花畑が現れた様に見える。


3つ目のエリアは、宿屋エリアとテントエリアの間辺りに有る救護エリア。

名前の通り怪我や毒を負った人達がお世話になっているエリアだ。

『箱庭遺跡』が出現してからまだ1日ちょっとしか経ってないはずなのに、入院が必要な大怪我を負った人達が沢山居るらしい。

チラッと覗いたそのエリアには治療済みの人からそうじゃない人までかなりの人数が留まっていた。

当然『箱庭遺跡』が危険な場所だからってだけじゃなく、それだけ沢山の人達が実力に見合わず無謀に『箱庭遺跡』に挑んだって事なんだろう。


最後は1番大きなエリアの繁華街エリアと歓楽街エリア。

ハッキリした境目は無いけど、宿屋エリアに近い所に集まってるのが昼間営業の繁華街エリアで、テントエリアに近い所に集まってるのが夜間営業の歓楽街エリアだ。


そしてナト達が今いるのがこの繁華街エリア。


何処かのお店で少し遅めのお昼を食べてるのか、買い物してるのか、それとも昨日『箱庭遺跡』で見つけたお宝を査定して貰ってるのか。

『レーダー』の画面じゃそこまで判断出来ない。


「少し前に此処等辺で見かけったって話だったけど・・・・・・

外にも・・・カフェテラスにも・・・居なさそう?

やっぱり、店の中に居るのかな?」

「どうだろう?

こんなに人が居るんだし、もしかしたら見逃してるだけかもしれないよ」

「それか店の裏側に隠れてたりしてな。

タナカも『レーダー』の様なスキルか魔法持ってるんだし、オイラ達に会わない様にヒソヒソ動いてるかもしれないだろう?」

「逆に俺達に奇襲しかける為に?」

「だったらやりやすんだけどなぁ。

逃げる為だったら厄介だぞ」


毎年の事ならこの時間帯の繁華街エリアは混んでいる。

そう事前にジンさんやアドノーさん達から聞いてたけど、この人の多さは予想外だ。

お昼頃のロホホラ村の大通りより、どころか町よりもエリアの範囲が狭い分アーサーベルの大通りや露店通りよりも込み合ってる様に見える。

ロホホラ村の大通りの人込み具合が東京のスクランブル交差点だとすると、こっちは満員電車。

ギュウギュウ過ぎる人口密度に息苦しささえ感じる程だ。


そんな人混みの中からナト達を探さないといけない。


だから表の通りを中心に繁華街エリアを一周してもナト達を見つけられなかったのは組み立て式の店内に居るからじゃなく、マシロの言う通りただ単純に見逃してたからかもしれない。

それかルグの言う通魔女達に言い包められたナト達に避けられてるか。

ほんの少し前にナト達を此処等辺で見たって言う目撃情報が幾つもあるから、『箱庭遺跡』からこの真下の『財宝の巣』に入ったって可能性が無いのは確かなんだけど・・・・・・


「取り敢えず、今度は店の裏側を中心に周ってみようぜ」

「分かった」


そうルグに頷き返し、俺は俺達が乗っているレジャーシートをゆっくり動かした。

ルグの言う通り店の裏側を通る様に大きく繁華街エリアの上空を飛ぶ。

そう、今回も俺達は分かれて行動してるんだ。

チボリ国語が分かって比較的人が好さそうな見た目をしてるピコンさんとジェイクさんは聞き込み担当で、少ない人数でナト達と戦う事になってもどうにかなりそうなクエイさんとザラさんはピコンさん達が得た情報を元に地上でナト達を探す担当。

そして残りの俺、ルグ、マシロは『フライ』を使って上空からキャラバン村全体を探す担当だ。


「キビ君!ちょっと止まって!!」

「ナト達居た?」

「うーん・・・・・・

ごめん、見間違いだった。

多分・・・此処等辺にも・・・居なさそう?」

「そう・・・」

「まだタカハシ達、このエリアから移動して・・・

無いみたいだな」

「してない。

ずっと繁華街エリアに居るってなってる」


大体繁華街エリアの半分位だろうか?

突然マシロが止まってくれと言ってきた。

俺はナト達が別のエリアに移動しないかチョクチョクスマホで確認しつつレジャーシートを操作してるから、集中して地上を探す事が出来ない。

だからシッカリ下を確認するのはルグとマシロ、四郎さんに頼んでるんだ。

そのせいでマシロが何を見つけたのか全く分からないけど、期待を込めてナト達か聞く。

残念な事にマシロが人だと思ったのは唯の積まれて布を被せた荷物だった様だ。

その事に少しガックリと肩を落としてると、余りの見つからなさに本当にまだナト達が繁華街エリアに居るか不安になったルグがそう言いながらスマホを覗き込んで来た。

うん、大丈夫。

『レーダー』の画面は相変わらずナトも高橋も繁華街エリアに居るって表示してる。


「やっぱりキビ君の言う通りお店の中に居るのかな?」

「でも、あそこ。

もう少し先のあの黄色いテントの裏辺り。

何人かの人が集まってるように見えないか?

アレも荷物なのか?」

「あ、確かに人が集まって・・・・・・」


確かにルグが指さした先には人だかりができていた。

まだ遠くてハッキリ見えないけど、自力で移動してるから風にはためいた荷物とかじゃ無いだろう。

まぁ、人じゃなくゴーレムの可能性も捨てきれないけど。

それでも人が居る可能性があるならとその方向にレジャーシートを動かそうとした瞬間、行くなと言う様に四郎さんからのメールが届いた。


「絶対に行くなって・・・

どうしてですか、四郎さん?」

『あの人だかりの中心に居るの、リンゴ売りのお婆さん』

「はい。迂回しまーす」


なんで居るんですか、リンゴ売りのお婆さん!!

と言うか、どうやってローズ国からチボリ国に来れた!!

俺達みたいに空飛べるの!?

それともナトや高橋みたいにワープ系の魔法が使えるとか!?

いや、まさか、『ゲート』の門を使って俺達の世界経由で来たとか!!?

何にしても大問題じゃないか!!

あぁ、呪いのアイテムを押し付けてくる最強お婆さんとは言え、流石にローズ国からは出れないだろうと思ってたのに・・・

こんな俺達の安全が1つ消し飛ぶ予想外、体験したくなかった・・・・・・


そう、俺達は誰もリンゴ売りのお婆さんがローズ国から出れるとは思って無かったんだ。

ローズ国とチボリ国の国境にはジンさん達が施し魔法で強化した結界が有って、ミルちゃんとか1部の人しか解除出来ないからって。

でも、確かにリンゴ売りお婆さんは此処に居る。

少し近づいたら薄っすらあのリンゴの唄の字幕が浮き出たから間違いない。

暫くはリンゴ売りのお婆さんに会う事も無いと思ってたのに・・・・・・

その残念な驚きを通り越して、リンゴ売りのお婆さんがこの国に居る事にジワジワ薄ら寒い恐怖が這い寄ってくる。

取り敢えず、次会って懐に余裕が有ったらリンゴを買うって言っちゃってるし、ナト達がリンゴ売りのお婆さんの所で買い物してるって可能性は無視してまた呪いのリンゴを押し付けられる前に逃げてしまおう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ