表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
443/498

212,『真の宝はその先に』 26粒目


「と言う事で、最低限此処での俺達のやるべき事は終わったはずです。

ですから、このまま脱出しても問題はないと思うのですが・・・・・・」


アドノーさんのお父さんの無実を証明する証拠もかなり集まったし、ロマンさんって言う思わぬ生き証人も見つかった。

ジンさんから依頼されたウォルノワ・レコードも見つかったし、ダメ元で試した『財宝の巣』から『箱庭遺跡』に入る方法は断念せざるおえなかったし・・・

うん。

後はロマンさんとシラタキさんを無事に外に連れ出せば、当初の依頼はほぼ完璧にこなしたって言って良いだろう。

後、此処でやるべき事は・・・


「キタノさんが生きてそこに居る可能性に掛けて、俺達でも行ける北の方の地底湖に行くかどうか。

角の数と大きさからしたら、キタノさんが生きてる可能性はあるんですよね?」

「えぇ。

ホマレは立派な2本の角が生えた鬼だったから、もしかしたら、ね。

わたしが知ってる鬼の中で1番立派だったってだけだから、本当に生き残れるだけの大きな角を持っていたかどうかは分からないわよ?

タキの見立て通り、可能性はかなり低い」


キタノさんはアドノーさんのお父さんが雇った鬼の冒険者の中で1番大きく長い角を2本も持っていた、と言うロマンさん。

それが鬼の中でも立派な方なのか、それとも平均よりも小さいのか。

純粋な鬼と深く関った事が無いロマンさんからの情報だけじゃそれは分からないけど、この中で1番長く『財宝の巣』で暮らしていたシラタキさんも、


「生き残ってる可能性は非常に低い」


って言うなら、間に合わなかったと思った方が良いだろう。


「それに、北の湖の中にはシロウネリが住んでるんだ。

俺達が何時も行ってる浅瀬なら兎も角、深間よりの岸の捜索はアイツに邪魔されて難しいと思うぞ?」

「シロウネリ?って確か・・・・・・

先生が分解薬のレシピ考えてる時・・・

素材の1つの時短がどうのこうのって言ってた奴だよな?」

「そのシロウネリだな。

でも、シロウネリってチボリ国には居ないはずだろう?」


シラタキさんのその言葉を聞いて思い出す様に視線をさ迷わせ、そうポツリポツリと言葉を漏らすピコンさん。

そのピコンさんの呟く様な確認の言葉に頷いたルグは、直ぐにチボリ国にシロウネリは居ないと言って首をひねった。


「え、居ないの?」

「居るなんって聞いた事ないな」

「アタシ達も無いわね。

今だけじゃなく、昔も無いわ」

「『箱庭遺跡』とかから逃げ出してきた仲間の生き物とかでも無いですか?」

「無い・・・な。うん、無い。

確かに『箱庭遺跡』にもヘビの魔物やヘビに似た魔物は何種類か居るぞ。

でも、シロウネリの様な白い大蛇の目撃情報は、無かったはず・・・・・・だよな?」


元々チボリ国の土地に居たって言う意味でも、何処かからペットとして連れて来られたって意味でも、巨大な白ヘビの魔物がチボリ国に存在したと言う記録は一切無い。

そう言うルグとアドノーさん。

『箱庭遺跡』にシロウネリの様な巨大な白ヘビは居ないともう1度確認するルグに、アドノーさんも画面の先のリカーノさん達も全員力強く頷いた。


「シロウネリもその仲間の蛇もグリーンス国かヒヅル国の辺りにしか居ないはずなんだよ。

そもそも水の中で暮らしてるって時点で可笑しいんだよ」

「えーと。シロウネリはウミヘビ・・・・・・

水中に住んでるヘビの仲間じゃ無いって事?

陸に住んでる普通の蛇の仲間って事、で良いんだよな?」

「そもそもヘビは陸にしか居ないんだよ?

海とかで釣れる長いヘビっぽい生き物は魚の仲間なの。

キビ君、見た目で勘違いしてるみたいだけど、あの魚達はヘビっぽくてもヘビの仲間じゃないんだよ」

「えっ!そうなんだ・・・・・・

似てるからヘビの仲間だとずっと思ってたよ。

何か恥ずかしいなぁ」


この世界には爬虫類のウミヘビは存在しなくて、ウツボやウナギの仲間の魚類のウミヘビしか居ないらしい。

爬虫類のウミヘビも魚類のウミヘビの仲間だと思われてる可能性もあるけど、今重要なのはこの世界では『ヘビは陸上にしか存在しない』って常識がある事なんだ。

事実はどうあれ水中に蛇の仲間が居るって下手に言うと、俺が異世界人だと許可なく言ってるのと同じになってしまう。

だから気を付けろとマシロは遠回しに教えてくれたんだ。

そんなマシロにお礼を言いつつ、俺はどうにか笑い話に持って行こうとした。

・・・・・・うん、大丈夫。

笑って茶化してくる所を見るに、上手く恥ずかしい失敗談だとアドノーさん達に思って貰えた様だ。


「そ、それより!!

その北の湖に居る巨大生物は、シロウネリっぽい見た目の生き物って事で良いんですよね?

そしてとても獰猛」

「えぇ、そうよ。

目が無いシロウネリの様な見た目で、かなり深い所まで行くと暗い底からユラユラ泳いで来てガバッと襲ってくるの」

「陸に居てもちょっと深間に近いだけで直ぐ地面ごと頭から丸のみにしてこようとするんだぞ?

そのせいであの湖を見つけた最初の頃、何度アイツに食い殺されかけたか・・・

せっかく釣った魚も駄目になるし・・・・・・

間違いなくアイツは『箱庭遺跡』に居る魔物位凶悪だ!!」


そう言って渋い顔をするロマンさんと、歯ぎしりしそう表情を浮かべるシラタキさん。

なるほど、なるほど。

そんだけ獰猛な生き物が居る湖の側で長い間生活していると仮定すると、キタノさん達も浅瀬寄りの岸に居るって事になるよな?

シラタキさん達が良く行く砂浜海岸の様な浅瀬から見て、左右の方の岸はゴツゴツと入り組んだ岩で出来ていて深くなっている。

そしてそのシラタキさんが良く行く浅瀬側にキタノさん達は居ない。

と言う事はシラタキさん達も調べきれてないその浅瀬の対岸側にキタノさん達は居る。

って可能性が高いって事だよな?


「見た目だけじゃなく身体能力とかもほぼシロウネリと同じだと仮定して。

『フライ』で飛んだら安全に対岸まで行けると思う?」

「うーん・・・・・・ギリ、ギリ・・・だな。

その生き物が水底等辺に居て、あの気持ち悪くなる位の速さで出来るだけ高い水上を真っ直ぐ飛び抜けられれば、行けなくもない?」

「ギリギリかぁ・・・・・・

無理してでも行くべきでは?」

「絶対ないな。

居るかどうかも、そもそも今も生きてるかどうか分からない奴等の為にそこまで無茶する必要は無い」

「あっ!えーと・・・

その事なんですが・・・・・・」


今までの情報をまとめた話を聞いた上で、1%の可能性に掛けて少し無理をしてでも救助を目指すか、自分達の実力と安全、シラタキさん達の救助を優先させて諦めて外に出るか。

そう聞く俺にルグがキッパリと行かない方が良いと言う。

正解率も生存率ものかなり低い危険な賭けをするって事だけじゃなく、何度も言う通りタイムリミットだってあるんだ。

あの入って来た仕掛け扉が閉まる前に、此処に居る全員で生きて出るのが今1番の目標である。

その事を考慮して良く考えないといけないってなるとやっぱりキタノさん達の事は諦めるしかないよな?

そう思ってたら本部側で何かあったのか。

話に関係ない所で大きな驚愕の声を上げ少しの間画面から消えていたリカーノさんが、戻って来てオズオズと驚くべき情報を教えてくれた。


「キタノさん達の事で何か分かったんですか、リカーノさん?」

「えぇ、はい。

依頼書を調べた所、ホマレ・キタノさんが今も生きてる事が分かりました」

「えッ!!本当ですか!!?」

「はい。

細かい所は調べきれていませんが、依頼書を強制的に開く寸前まで生きて動けていた事は間違いありません。

そして最後の記録が『湖で釣りをしてる』と言う事なので、恐らく手紙に書かれていた地底湖に今も居るはずです。

ただ・・・・・・」

「ただ?何かキタノさん達に問題でも?」

「・・・今ホマレ・キタノさんは4人の人物と一緒に行動してます。

その内の1人が重い病に罹り瀕死の状態です」

「ッ!!」


何時命を落としても可笑しくない。

そう表情通りの硬い真剣な声音でそう言うリカーノさん。

キタノさんの元には、1分、1秒の。

ほんの少しの時間差でもその命の灯が尽きるかどうかが決まってしまう重病人がいる。

準備を整えた救助隊を待っていたら確実にその人は助からない。

けど、今急いで俺達が向かえば助かるかもしれないんだ。


「ギリギリでも助けようと思えば助けられるんでしょ?

なら、彼等も助けて外に出るわよ!」

「はい!」


キタノさん達が絶対北の方の地底湖に居るとは限らない。

でも3分の1の可能性に掛けて、助けられるなら当然助ける。

と力強く言うアドノーさんに、俺達も当然だと頷いた。

俺達じゃないと間に合う可能性すら無いって言われたんだ。

そんな話聞いて見捨てられる訳ないだろう?


「リッカ!お医者さん呼んでおいて!!

『初心者洞窟』から出れるか分からないから、何処から出ても直ぐ駆け付けられる様に馬車も!!」

「分かったよ」

「あ。だったら、クエイさんに連絡しましょう!

エド」

「大丈夫!

言われなくても、もう呼び出してるから!

キタノ達見つけたら直ぐに指示を出して貰える様にキャラバン村で待機しててって事と、必要だったらロホホラ村に戻って来て貰うかもしれないって事。

そこ等辺言えば良いんだよな?」

「うん!

言いたい事先に察してくれて、ありがとう。

そっちは任せた!」

「おう!任せておけ!!」


助けに行くって決めたなら急いで今出来る救助の準備しよう。

そうスイッチの様に切り替えたアドノーさんとルグがサクサクと出来る事から進めていく。

なら、俺達はキタノさん達の手伝いかな?


「俺達も手伝いますので、シラタキさん達は此処を出る準備をお願いします。

キタノさん達を助けたら直ぐに脱出しますので。

後、北の地底湖までの案内もお願いします」

「あぁ、分かった」


そう言ってマシロとピコンさんと一緒に荷物をまとめるシラタキさんとロマンさんを手伝う。

どうにか今日中にキタノさん達を助けられると良いんだけど・・・・・・

頼むから間に合ってくれよ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ