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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
442/498

211,『真の宝はその先に』 25粒目


 一体何があったんだろう?

ルグと一緒に部屋の外の畑と池から薬の素材になると言う植物を少し貰って、『ミドリの手』でちゃんと出せるかチェックして戻ってきたら、あからさまにピコンさんが落ち込んでいた。

ピコンさん程じゃ無いけどマシロも肩を落としてるし・・・

本当に何があったんだろう?


「どうしたんですか?何か問題でも?」

「あー・・・問題って言えば問題だな。

アンタ等の必要な明けの甘露。

特別な彼岸菊の酒がもう無いかもしれないんだ」

「え!?今は作って無いんですか!?」

「作って無いんじゃ無くて、作れないんだ」

「作れ、ない?

・・・って事は、作るのに必要な魔法を覚えてる人が居ないって事ですか?」

「あぁ」


その明けの甘露を作れる巫女さんが寿命で亡くなってしまって、魔法を覚えた後継者も生まれていない。

シラタキさんが故郷を離れた数年前の時点で既にその亡くなった巫女さんが生前作っておいた明けの甘露を少しずつ消費してる様な状況で、その状況が今でも続いてるならどんなに遅いペースで消費していても既に全部終わっている。

と言う事らしい。


ミワタリ村の人口を考えたらここ数年でその後継者が新しく生まれてる可能性はかなり低くて、もし生まれていても間違いなく小学校に上がる年齢にも達してない本当に小さな子供。

今からミワタリ村を訪れても明けの甘露を手に入れる事は不可能に近いだろう。


その話を先に聞いてピコンさんは此処まで落ち込んでしまったんだ。

でもこういう状況になってるかもしれないって考えなかった俺達にも問題があるよな。

受け継ぐ魔法頼りに作ってるんだ。

ルディさん達と同じ状況なんだからそう言う事もあり得るって、よくよく考えたら分かる事だったよな。


「朝露の彼岸菊と魔法を使わない普通の花酒なら村に来てくれれば普通に買えるんだ。

だから、そっちじゃダメなのか?」

「俺達が見つけたレシピには明けの甘露が必要って書いてあったんです。

ですから何とも・・・・・・

クエイさんに普通の彼岸菊のお酒を使う改良レシピを考えて貰うか、俺の努力次第ですね」

「サトウのおっちゃんの努力次第?」

「あっ、はい。

俺、条件が揃えば魔法でお酒を作り出せるんです。

ですからその条件次第では俺が頑張ればどうにかなるかなー、って」


そう説明してシラタキさんに黒茶葉や幾つかのヒヅル国にしかない植物と一緒に彼岸菊を出して貰う。

魔法で出した物でも彼岸菊は彼岸菊だ。

『触った』の条件をクリアしたはず。

そう思って『教えて!キビ君』を開いたら、案の定。

ちゃんと出して貰った植物全部、『ミドリの手』ボタンが押せる様になっていた。

で、肝心の明けの甘露の条件は・・・・・・


「えーと・・・えーと・・・・・・」

「何が分からないの、キビ君?

知らない学問の知識が必要って書いてあった?」

「特に・・・

新しくスキルを覚える必要は無い・・・・・・

のかな?

でも、何処かに行って、彼岸菊以外の何かに触らないといけないらしい。

その『何処』と『何か』の情報が載って無くて・・・」

「どれどれ?」


夜明けの甘露を『プチヴァイラス』で作り出せる様になる条件は5つ。



1、“ミワタリの森に咲く朝露に濡れた彼岸菊”に接触してる


2、“鏡ガラスの清水”を摂取、もしくは接触している


3、“ワタリクラ”に訪れている


4、“明けの甘露”もしくは“彼岸菊の花酒”を摂取、もしくは接触してる


5、上記の素材と『ヴァイラス』を使い“明けの甘露”を作った事がある

もしくは上記の素材か、上記の素材に近い素材と『プチヴァイラス』を使い“彼岸菊の花酒”の製作に30回成功している



と言うもの。

1番と4番、5番はまだ分かる。

けど、問題は2番と3番。

この2つの情報が『教えて!キビ君』に載って無いんだ。

そう言って俺はスマホの画面が見える様に差し出した。


「・・・・・・あー・・・

魔法で作り出すには1度うちの村に来て貰わないとダメだな」

「えっと、つまり。

その『鏡ガラスの清水』と『ワタリクラ』もミワタリ村に有るんですね」

「あぁ。

鏡ガラスの清水は彼岸菊と同じ明けの甘露の素材で、ワタリクラは明けの甘露専用の醸造場の事だ。

と言うかサトウのおっちゃんが『ヴァイラス』使えるとは思わなかったな」

「あ、俺が使えるの、『プチヴァイラス』の方です」

「それは惜しい!

劣化魔法の方じゃ無ければ、サカモリの巫女になれてたんだけどなぁ」

「・・・・・・一応言っておきますが、俺、男ですよ?」

「『ヴァイラス』使えるなら性別関係なく巫女になれるんだよ。

まぁ、若くて可愛い女の方が見栄えは良いけどな。

やっぱり舞うなら可愛い子の方が良いだろう?」


そう冗談半分に言うシラタキさんの今までの話を頭の中でまとめる。

『サカモリ』って言うらしい明けの甘露を作れる巫女に必要な魔法は、『プチヴァイラス』の上位互換の『ヴァイラス』。

そして条件に書かれてるのは明けの甘露の素材と醸造場。


つまり明けの甘露は、森に咲く朝露に濡れた彼岸菊とワタリクラに住む酵母を活性化させて作るお酒。


って事なんだろう。

素材を集めて、ワタリクラに入って、魔法道具の衣装を身に纏って。

踊ったり歌う事でその魔法道具の衣装の力を引き出すか発動させて雑菌を追い出し、『ヴァイラス』で必要な菌だけ活性化させる。


その朝露の甘露を真似て作られたのが、俺でも作れそうな彼岸菊の花酒。


シラタキさんに教えて貰った作り方的に彼岸菊の花酒は、梅酒や薔薇のお酒の様なリキュールやヘビイチゴの焼酎漬けの様なお酒。

つまり、その土地の特殊な魔元素の影響で無味無臭の完成したお酒として湧き出る鏡ガラスの清水に、軽く洗った彼岸菊の花を漬け込む事で出来上がる混成酒らしい。

だから素材さえそろえば一般家庭でも彼岸菊の花酒は作れるから今の状態でも『プチヴァイラス』ボタンを押せるし、『プチヴァイラス』を使ってホワイトリカーを出して『ミドリの手』で出した彼岸菊を漬け込み『プチヴァイラス』を使って熟成を速めれば俺でも簡単に彼岸菊の花酒が作れるって事だ。

けどやっぱり世の中甘くない!


『上記に近い素材』の条件を満たしてないからか、この2つの方法で作った彼岸菊の花酒は成功判定にならない様だ。


後々色々実験した結果、


『ミドリの手』を使って時短してもいいけど『種から植えて育てた彼岸菊』を、


『この世界で作られた、この世界独自の無味無臭よりのお酒』に漬け込み、


『プチヴァイラス』を使って酢や腐敗させない様に熟成させる。


って言う物凄く大変で時間が掛かる方法で作ったお酒を最低3人の人に飲んでもらって、その全員に、


「お金を払ってでも飲みたい位美味しい!!」


って言って貰わないと成功判定が下されないんだ。

解放条件の項目に書いて無いけど、売り物になる彼岸菊の花酒を作るにはこの世界のお酒とかの知識が必須だし・・・・・・


絶対この条件付けしたの壁の仕掛け追加した1000年前の人だろう!!

お願いだからもう少し条件緩くしてッ!!!

そうこれから先何度も叫ぶ事になるとは露程にも知らないこの時の俺は、


「何はともあれ絶対ミワタリ村に行かないといけないな。

その間に今からでも出来そうな5番目の条件はサッサとクリアしておこう」


と、能天気に考えていた。


「そう言う事だから、ピコン!

何時までも落ち込んでるなよ?」

「言われなくても、もう立ち直ってるって。

・・・・・・サトウ君、明けの甘露の事は任せたから」

「えぇ。任せて下さい」


不本意だけど、他に『プチヴァイラス』や『ヴァイラス』。

その2つの魔法に似た魔法を持ってる人が見つかるか、色々改造してコラル・リーフ製のスマホとかで『ヴァイラス』が使える様になるまでは。

そう副音声が聞こえそうな表情で任せたと言うピコンさんに、俺は任せろと少しだけ力強く頷いた。

暫定なんかじゃなく最初から最後まで俺に任せて欲しいけど、ピコンさん達からしたら完全にありがた迷惑だよな。

ピコンさん達は俺達異世界人の力は極力借りたくないって今でも思ってるだろうし。

きっと今もナト達捕まえたら。

いや、今直ぐにでも速攻元の世界に帰って大人しくしていて欲しいって思ってる。

それが分かってるからこそ、めい一杯力強く頷けなかったんだ。


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