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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
441/498

210,『真の宝はその先に』 24粒目


「それにホマレ、大怪我してるんでしょう?

タキみたいに好きに植物生やせる魔法を持っていて、多少なりと医療の知識も持っている。

そんな人と一緒ならならまだしも、そうじゃないなら、もう・・・・・・」

「そうだよなぁ。

種族柄かなり丈夫な鬼でも流石に腕を失って薬や魔法使って血を増やせない、って状況なら今も生きてられる可能性は低いと思うぞ。

2本や3本の大角持ちならギリギリ持ち直せると思うけど・・・・・・」

「え?

角の数や大きさで生きてるかどうか決まるのか?」

「ん?」


シラタキさんも俺達の『ミドリの手』の様な魔法を持ってるんだなぁ。

じゃあ、外の畑もシラタキさんの魔法で育ててるのかな?

と声に出さず考えてると、シラタキさんが気になる事を言った。

その事が気になって口を開く前に、俺と同じ疑問を持ったんだろう。

俺が聞きたかった事をピコンさんが聞いてくれた。

そんなピコンさんの疑問に何故か首を傾げるシラタキさん。


「サトウのおっちゃんから聞いて無いのか?

サトウのおっちゃん、鬼だろう?」

「え!!?彼が鬼!?

あり得ない!彼、角生えてないわよ!?」

「こっちじゃあんま知られてないだろうけど、鬼の角は鬼の体調で長さや太さが変わるんだよ。

だから何日も生死を彷徨う様な大怪我や大病を患った鬼は、後遺症で角が生えなくなる事があるんだ。

後は、鬼子って呼ばれる生まれつきオーガンの無い奇形の奴も角が生えないな」

「あー、えっと。一応、多分、鬼子、ですね。

そう言われた事無いですし、少し前まで自分の事『人間』だと思ってたので、自信ないですけど・・・

でも、間違いなくオーガンは持ってないです」


どうしてシラタキさんが首を傾げるのか。

そう疑問に思う暇なくシラタキさんの続いた言葉に驚かされる。

それはアドノーさんもだった様で俺を指さして角が無いと叫んだ。

それに対してシラタキさんは冷静にそう説明してくれる。

クエイさんが教えてくれた俺達の体の構造からしたら、その鬼子。

『先祖返りで俺達の世界の人間の姿で生まれてきた鬼』って言う方が正しいんだろうな。


「あぁ、鬼子の中には居るよな、そう言う奴。

奇形で生まれても問題なく元気に長生き出来るから、どんなに鬼らしい見た目してても親や祖先に人間が居ると自分でも気づかないって話だ。

サトウのおっちゃんも大病患って医者に見て貰って初めて知ったって口だろう?」

「え、えぇ、まぁ・・・

その、えっと。そんなに俺、鬼に似てます?

そう言う風に言われるのも初めてで・・・・・・」

「どっからどう見ても鬼だろう。

少なくともおれよりは鬼よりの顔立ちしてる」

「シラタキさんも鬼の血が流れてるんですね。

てっきり悪魔の血が流れてるって思ってました」

「いや、悪魔の血は流れてないぞ。

入ってるのはエルフの方だな」


アンジュ大陸国人っぽさがあるのはそのせいだ。

と、自分の髪を指さしたシラタキさんがそう言って、人間と鬼とエルフの血が入っていると笑って教えてくれた。

両親がそれぞれ鬼とエルフのハーフの人間で、シラタキさんも種族上は人間なのだそうだ。

まぁ、グリーンス国人並みに多種族の血が混ざってるから固有スキルや基礎魔法は人より多いらしいけど。


と言う事は、マンイーターの説明に有った『悪魔の血が流れてる人』は別に居るって事か。

キタノさんが無事だった『鬼の血筋』の人で、シラタキさんがロマンさんと出会った時にでもマンイーターの情報を書いた人が見かけて載った『悪魔の血筋』の人だと思ったけど、大分予想が外れたな。

なら、その『悪魔の血筋』の人もこの地下の何処かで無事に生きてるんだろうか?

それともシラタキさん達やキタノさん達の様な実力と運が無くてもう亡くなってる?

いや、もしかしたらキタノさんが助けた2人の内どっちかがそうなのかもしれない。

取り敢えずこの事もリカーノさん伝えておこう。


「それで、鬼の角ってなんなの?

その変わる性質でホマレ・キタノ達が今も生きてるかどうか変わるんでしょ?

普通の角の様な武器やシンボル、マナの吸収器官とは違う事は分かるけど、どんな役割があるのよ?」

「簡単に言うと結晶だよ。マナの結晶」

「マナの、結晶・・・?それって・・・・・・」

「鬼は他の魔族と違ってオーガンにマナを溜めれないんだ。

だから角って形でマナを溜めるんだよ」


さっきの会話で俺が鬼の体の構造にかなり疎いって分かったんだろう。

俺に聞いても何も分からないと察してシラタキさんにそう聞くアドノーさん。

そのシラタキさんの返答に俺はかなり嫌な事に気づいてしまった。


木場さん達もこの事を知ってたんだろうか?

自分の同級生達が人工的に各属性の『実』を。

『夜空の実』を作る為に改造されたって。


体内で変換した魔元素だと言え、魔元素が結晶化した物が生えるんだ。

他の人体実験も同時に施された可能性も十分あり得るけど、つまり、どう考えてもそう言う事だろう。

そして、その最悪な考察を何も知らないシラタキさんのその後の言葉が後押しした。


「鬼の大角を手に入れた者はどんな願いでも叶う。

おれの故郷、ミワタリって言うんだけどな?

そこ含め、ヒヅルの中心の山辺りの村では昔からそう言う伝説が語り継がれてるんだよ。

その位大きな鬼の角にはスッゴイ力があるんだ」

「だからその大きくて沢山ある角のエネルギー全部使えば、回復系の魔法の力で瞬時に切られた傷口辺りの細胞を無理矢理活性化させ助かってるかもしれない。

だから腕を失ってもどうにか生き残れ・・・・・・

ん?」

「そうそう。

特に冒険者なんって危険な職業についてる奴なんって、力自慢の大角持ちが殆どだろ?

だから実際にそうやって危険な魔物との戦いに生き残った鬼が何人も・・・・・・

ってどうしたんだ?」

「あの、シラタキさん?

今、シラタキさんの故郷が何処って仰いました?」

「俺の故郷?さっき言った通り、ミワタリだけど?

ミズオ池とヤツルギ山の間の、彼岸菊と彼岸菊の花酒が有名な方」

「えぇえええええ!!!!!」


聞き間違いかと思って聞いたその返答に、思わず驚愕の声が漏れ出る。

まさかこんな所でミワタリ村の人に出会うなんって・・・

凄い偶然。

いや、ローズ国を救いたい誰かの導きかな?


「シラタキ君!!

その彼岸菊のお酒について詳しくッ!!!」

「・・・・・・彼、どうしたの?あんなに迫って?

そんなにそのお酒好きなの?」

「いいえ。

俺達が探してる薬の素材と言われてる物の1つがシラタキさんの故郷で造ってるお酒なんです。

だから・・・」

「薬の素材?」


『え?』としか言えないシラタキさんの事を気にする事なく、何時かのアドノーさんの様にそう言ってグイグイ迫るピコンさん。

フェニックスの苔程じゃ無いけど彼岸菊のお酒についても情報が少ないから、特別な彼岸菊のお酒を手に入れる為の準備の為にもここで情報を逃したくないって事なんだろうな。

気持ちは分かるけど、ピコンさん。

もう少し落ち着かないとシラタキさんも話すに話せないと思いますよ?

そう言おうとしたら自分の事を棚に上げた様に少し引き気味にピコンさんを指さしたアドノーさんがどうしたのか聞いてきた。


「・・・・・・そう言えば、此処にも薬の素材があるかもしれないって言ってたわよね?

あそこまで必死になる程作らないといけない薬なの?」

「はい。

ピコンさん達の故郷を。

ローズ国を救ってあの大事件を解決するには、どうしてもその薬が必要なんです」

「そう・・・・・・」


ヤバい・・・

ギルドに居る時に誤魔化す為に適当に言った事、アドノーさんしっかり覚えてた。

寧ろアドノーさんにそう確認する様に聞かれるまで俺の方がそう自分達で言った事忘れてた位だ。

何が素材だった事にすれば違和感がない?

そう思って必死に頭を捻っていたら、思わぬ所から助け船が来た。


「この地下にしか無くて薬の素材にもなるって言うなら、あの木の事じゃないかしら?

ほら、アレ。

あの黄緑色の木の実のが生ってる木よ」

「えーと、あのスイカみたいなぁ・・・

縞々模様の木の実が生ってる木の事ですか?」

「えぇ、そうよ」


体を大きくずらしてマロンさんが指さした畑の方。 その指が示す方に有るのは確か・・・・・・

あの切られた跡がある木だ。

熟してあるのはロマンさん達が今朝にでも全て取ってしまったのか。

確かにその木にはロマンさんの言う通り、濃淡の違う黄緑の縞模様のイチジクみたいな形の実が生っていた。


「あの木が違うなら、池に生えてる水草の方かしら?」

「えーと・・・すみません。

俺達も詳しい事は分かって無くて・・・・・・」

「取り敢えず薬の素材になりそうな物は全部集めてクエイ。

あー、オイラ達のパーティーの総隊長の医者に見せる事になってるんだ」

「ですから、あの木の1部も少し貰っていって良いでしょうか?

少しでも触れば俺の魔法で出せるので、葉っぱ1枚でも頂けると助かるんですが・・・・・・」

「えぇ、勿論。

少しと言わず好きなだけ持って行って」


そう快く頷いてくれたロマンさんにもう1度お礼を言って、チラッとピコンさん達の方を見る。

マシロがどうにか声を掛けてるけどピコンさんは相変わらず落ち着きを取り戻せずにいるし、そんなピコンさんの態度にシラタキさんは目を白黒させるだけだし。

2人が落ち着くのは当分先だろうな。

なら、この間に件の木と水草を少し貰ってくるか。


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