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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
426/498

195,『真の宝はその先に』 9粒目


  * 注意 *


今回はかなり気分の悪くなる描写が有ります。


普段よりハッキリした性的描写、

人に似た生き物によるカニバリズム、

人から退化した生き物の家畜化。


これ等を読んで嫌な予感がした方、苦手な方はご注意下さい。


「・・・・・・それで?

言い訳があるなら聞くわよ?」

「えーと。言い訳って言うか・・・・・・

アドノーさん達が正気を失っただろう最初から説明させてください!」


水やお茶を飲んで一息ついて、顔色も普段通りに戻って。

結構な時間休んだからだろう。

落ち着きを取り戻したアドノーさんは湯呑のお茶を飲み干して、そう今にも殴りそうな顔でギロリとそう言った。

多分、と言うか間違いなくジェットコースター並みのスピードで飛んだ事を怒ってるんだろうなぁ。

本当、非常事態だったので許してください!!


「あ、その前にピコンさんとアドノーさんは此処に来る前までの事、何処まで覚えてますか?」

「何処までって・・・・・・ッ!!」

「あー・・・幻覚の内容は覚えてるって事ですね」


さっきまでの事を思い出す様に視線をさ迷わせていたアドノーさんが、急にまた顔を茹で上がらせ俯く。

ルグはサッと俺達から視線を反らすし、ピコンさんは盛大に咽て飲みかけたお茶を吹き出すし。

うん。

3人共肉塊生物に見せられていた幻覚の内容を覚えていると。


「幻覚?

肉塊の姿でも釘付けになる様に『魅了』の魔法を掛けたんじゃなくて」

「うん、そう。

でもウンディーネやコイン虫が使ってくる『魅了』の魔法とは、多分種類が違う」

「えーと、種類が違って幻覚を見るって事は、自分の魅力を高める。

自分自身を魅力的に見せるタイプの『魅了』じゃ無くて、夢魔の『基礎魔法』の『ブレーリン』。

自分の姿を相手の好きな人の姿に誤認させる魔法って事かな?」

「多分、そう、だと思う・・・

その夢魔って言うのが何なのか良く分からないからハッキリそうだって頷けないけど・・・・・・

聞いた感じ、多分そう?」


肉塊生物に釘付けになって真っ赤になったあの時のルグ達の症状は、ウンディーネとかの『魅了』の魔法に掛かった時の症状に似ていた。

そう言うマシロに頷きつつ『教えて!キビ君』を起動させる。

『教えて!キビ君』とマシロの説明から推測するに、夢魔は蚊っぽい虫から進化した魔族らしい。

悪魔や鬼と同じくかなり人間に近い姿をしていて、相手の脳を利用する。

幻覚系と魅了系が混ざった様な『基礎魔法』を使って魔法に掛かった人の血とかを奪う種族らしい。

確かに魔法は同系統だけど祖先が大分違うから、あの肉塊生物と夢魔は無関係だな。


「無関係なんだ。

似た魔法使えるし、スッゴク微妙にだけど夢魔の赤ちゃんに似てなくも無いから祖先が同じ生き物だと思ってたんだ。

・・・スッゴク微妙だけど」

「2回も微妙って言うなら、それは似てないって言うんじゃ・・・・・・

いや、そこ等辺は置いといて。

その夢魔と違って、あの肉塊生物。

正式名称はマンイーターって言うらしいんだけど。

そのマンイーターの祖先は・・・・・・人間。

十中八九チボリ国人なんだ」

「はぁああ!!?

肉塊なんって言われる様な生き物の祖先がアタシ達!?

どう言う事よ!?説明・・・いいえ。

その書いてある奴見せなさい!!」

「えーと・・・・・・」


どうしよう・・・

これ、素直に見せて良い奴なのか?

Dr.ネイビーの日記に書かれてた聖女キビのアレコレを読んだ時の、あのルグとピコンさんの顔色を思い出すとコレも見せない方が良いと思うんだけど・・・


俺とマシロの会話を聞いて、アドノーさんが怒った顔でスマホを出せと言う。

でも、そう思った俺は素直にそれに従う事が出来なかった。

マンイーターの生態を記録した人達が勘違いしてた可能性があるとは言え、このマンイーターの内容を直接見せるのは・・・・・・

顔色の事だけじゃなく、色んな意味で問題になるんじゃないかな?


「何よ?

素直に見せれないって、やっぱり嘘だったの?」

「いいえ!そう言う訳じゃ無いんですけど・・・

その・・・・・・

かなり、その、ショッキングと言うか・・・

確実に気分の悪くなる様な内容って言うか・・・

本当に見る気ならそれなりの覚悟をしておいてください」

「そこまで言う?」

「はい。念の為に、一応。

後、情操教育に悪そうなので、ナァヤ君は絶対駄目だとして。

エドとマシロとコロナさんも出来れば見ない方が良いかと・・・・・・」


大げさだって言われるかもしれないけど、本当に俺は見せるべきじゃ無いって思ったんだよ!

個人的には問題しかないって思う様な内容しか書かれてなかった訳だし・・・・・・

だからそう言ってチラッと見たら、ルグとマシロに、


「自分達も当然見ますが?」


って顔をされた。

画面に映ってないけど多分コロナさんもそんな表情してるんだろうなぁ。

そこまで子供扱いするな!!

って騒ぐコロナさんの声が鳥型ゴーレムのお腹の画面から良く聞こえるし。

本人達はこうだけど、本当に大丈夫かな?


「本当の本当に覚悟しておいてくださいね!?」


そう最後にもう1度言って、マンイーターのページを映し出したスマホを全員見える様に差し出す。



マンイーター・・・


動く鎧に連れ去られた人間から進化した魔物であり、知性を失い人から魔物に退化した生き物。

先祖代々人飼いスライムにコイン虫のエサに適した食肉用の家畜として飼育されてる内に肥え太りやすい体になり、全身の毛が無くなり、脳や筋肉、一部の内臓など家畜として余計な部分は退化してった。

家畜に適した体に進化した結果雌しかおらず、退化した機能の代わりに得たオーガンを使い、悪魔や鬼の血を引く一部を抜かした人間や魔族を魅了するようになった。

その際魅了された相手にはマンイーターが扇情的な事を言いながら扇情的な姿で迫って来てる性的に好意を抱く人物に見える。

魅了して取り込んだ他種族の遺伝子は体内で何十年でも保管でき、頻繁な行為が無くても子供を産める。

必要な量の遺伝子を取り込むまでは魅了して近づいた相手を放さないが、取り込み終わった後は一切興味を示さない。

その為用の無くなった相手は基本、同じく人飼いスライムに飼育されてるコイン虫のエサにされる。

だが稀に、マンイーターが食べる事もあり、その食べた部分も子供を産むのに必要な遺伝子として保存できる。

魅了された相手は天国と地獄を同時に味わえる。



と、とんでもない事が書かれてる訳だ。

案の定ルグ達の表情は酷く悪い。

特にマンイーターの魔法に掛かった3人の顔色は特に酷く、何時また倒れても可笑しくない程だ。

俺も直接見た訳だからマンイーターの写真も当然載ってる訳で、だから普通ならあり得ないはずのエロイ格好で現れたと思った好きな人の正体がコレだって知ってしまった訳で・・・・・・

うん。

ここまで顔色が悪くなる程ショックを受けるのも仕方ない事だろう。


「サ、サトウ・・・コレ、コレって・・・・・・」

「個人的には大分信憑性ある内容だと思うよ。

多分、人飼いスライム。

さっき戦ったあのスライムな。

あのスライムやその祖先の動く鎧って生き物が連れ去っていった人の中に・・・・・・

いや、アドノーさんのお父さんが雇った冒険者の中に、多分居たんだ。

『鑑定記録』のスキルを持つ人が」


そうとでも考えないと説明つかないだろう?


鬼や悪魔の事が書かれていて、『天国と地獄を同時に味わえる』なんって実際に体験しないと分からない感覚の情報が載っている事が。


だからここに書かれてる他の内容も、殆どその人が『実際に体験した事』って思って良いだろう。

いや、もしかしたらその人『達』だったかもしれないけど。

『鑑定記録』のスキルを持っていた人が実際何人いたか分からないけど、マンイーターに魅了され、あの見た目がグロすぎるマンイーター相手に性欲を満たしながら食い殺される。

そんな最後を迎えた人が間違いなく2人以上確実に居たんだ。


『基本魅了された相手は、最後コイン虫のエサにされる』けど『稀に相手をしたマンイーターに食べられる』。


その内容もその人の体験から書かれた物だとすると、『コイン虫のエサ』にされた人と、『マンイーターに最後まで食べられた人』。

その2パターンの死をその人は『見た』か『体験した』って事だ。

だから確実に2人以上、マンイーターの被害者が居る。

いや、場合によっては4人かな?

悪魔と鬼の血を引く人はマンイーターの魔法に掛からない。

って情報が載っているって事は、鬼の冒険者さんの内最低誰か1人と、アドノーさんのお父さんに雇われた人の中に悪魔が居たって話は聞いて無いから・・・

多分悪魔の血を引く、恐らくデビノスさんやブルドックさんの同郷の人。

その2人もマンイーターに襲われたって事だよな。

幻覚だとしても好きな人と、って事すら起きず、あの本来のマンイーターの姿を認識したまま・・・・・・


あ、無理。

想像したら吐きそう。


考え続けてたらある意味マンイーターの魔法に掛かって幻覚を見たまま死ぬ方が幸せ、って思える様な最後を想像してしまった。

絶対最後、鬼の人達正気じゃ無かったよ・・・

うぅ・・・

こんな最後、絶対に迎えたくないし、ルグ達にも迎えて欲しくないッ!!!


「・・・・・・・はぁ・・・えーと。

それにコイン虫や人飼いスライムが世間に知られて無い事を考えると、人飼いスライムがコイン虫やマンイーターを飼育してるって話も間違ってないと思うんだ・・・・・・

ウップ!」

「キビ君、慌てなくて良いからね?

続き話すのはちゃんと落ち着いてからにして?」

「ご、ごめん・・・・・・」


マンイーターはコイン虫のエサとして人飼いスライムに飼育されている家畜である。


この情報は今の状況的にかなり信憑性が高いと思うんだ。

だって、そう考えないともっと人飼いスライムやコイン虫の被害者が出ているはずだろう?

マンイーターを飼育せずコイン虫だけを飼育していた場合。

毎日のコイン虫のエサとして人が頻繁に誘拐されていたはず。

そしてそこからコイン虫や人飼いスライムの存在も、かなり早い段階で世間に知れ渡っていたはずだ。


でもそうなっていない。


なら何故かって言ったら、『人かい鎧』の昔話が作られた時代。

その時代に居た狩りをメインにする祖先達と違い、今を生きる俺達と同じく人飼いスライムも畜産業を。

安定してつくり育てるって事を学んだからじゃないかな?

そして俺達にとっての牛や豚、米や野菜が人飼いスライムにとってはコイン虫やマンイーターだったってだけ。

これも『人』の進化として当然の流れだったんだ。

何も可笑しな事じゃない・・・・・・

と、ここまで考えてしまった俺の精神の限界が来た。


まーた自分で自分の首絞めてるよ、俺は。

本っ当、我ながら学習しないなぁ。


と四郎さんとは別の俺本来の頭の中の冷静な部分が呆れている。

そんな頭の中の他人事の様な自分の声を聞きつつ、限界の来ていた俺は毎度同じく、先程のピコンさんの様に道の端に胃の中の物を出していた。

楽になるまで出し切って、自分が出した物の処理をして。

説明に戻った自分の言葉で最悪な想像がぶり返して、また吐きそうになる。

そんな俺の背中を擦って無理するなと言ってくれるマシロ。

そのマシロのお言葉に甘えて少し休ませて貰おう。

ちょっと。

いや、かなり無理。


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