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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
411/498

180,『強者と欲をかく者はただエサになるだけ』 4匹目


「よし、一掃完了」

「え?え!?えぇええええええ!!?

凄い!!凄いよ、その魔法道具!!

どんな構造してるの!!?見せて見せて!!」

「いいけど、高かったんだから壊さないでね?」

「うん!!!」


ハードボイルドに銃を構えたままそう言うアドノーさんに、マシロが興奮した様に駆け寄る。

そんなマシロに銃を預けたアドノーさんが俺の方に来るのを、俺は唯唖然と洞窟と交互に見る事しか出来なかった。


「で、これ何?」

「サトウのスキルで作られたお金と、コイン虫から取れる素材やその素材で作れる道具」

「ふーん・・・・・・」


吊り上げられ地面に打ち捨てられた魚の様にハクハクと口を動かす事しか出来ない俺の代わりに、そうルグが『ドロップ』の説明をしてくれる。

それを聞いて興味なさげな声を出したアドノーさんは、表面的な態度に反して『ドロップ』アイテムに興味津々な様だ。

サラリと落ちてる『ドロップ』アイテムのズッシリと重そうな革製らしい小袋の1つを持ち上げ、何の躊躇いもなく袋の口を縛る紐を解き中を覗き込んだ。


「きゃあ!!!」


そして放り投げる様に小袋を落とす。

落ちた衝撃でその小袋から溢れたのは・・・・・・


「ぎゃああああああ!!!」

「ヒィイイ!!

コココココイン虫ぃいいい!!!

な、なん、何でコイン虫が『ドロップ』!!!?」

「じゃなくて、普通の金貨だな」


コイン虫。

じゃなく、小袋いっぱいの穴の開いてないアリーア金貨だった。

袋からコイン虫がウジャウジャ出てきたかと思って本当に心臓が止まりかけたよ。

直ぐにルグがその金貨を拾い上げ、裏表両面確認して唯の金貨だと言ってくれたけど。

でも、俺の心臓は早鐘を打ったままだ。

多分それは、木霊しそうな悲鳴を上げたピコンさんも、袋を放り投げたまま目を瞑って動かないアドノーさんも同じだろう。

と言うかさっきの今で勘違いするなって方が無理だろう?

だから俺達の心臓が戻らないのも仕方がない事なんだ!!


「金貨!?今度こそ本物の金か!!!?」

「まぁ、一応は?

サトウのスキルで出た物だからギルドで両替しないといけないけど、許可が下りたら使える金だな」

「なら俺に寄越せ!

捨てたんだろ!?要らないんだろう!!?

なにより、お前達のせいで俺は損したんだ!

だったら寄越せよ!!」


欲望滴らせた顔で『ドロップ』したお金を渡せとルグに迫る男性。

いや、流石にこれはちょっと・・・・・・

男性は俺が話したコイン虫の情報をちゃんと聞いて無かったのかな?

どんな事情があるか分かりませんが、そんなんじゃまたコイン虫に狙われますよ?

金銭欲は程々に・・・・・・


「あれ?もしかして・・・・・・」

「何だ何だ?

今更金を放り投げた事、後悔してるのか?」

「い、いえ・・・そいう訳じゃ・・・・・・」

「んん?」

「あー、えーと・・・・・・何でも無いです・・・」


思わず零した俺の呟きを聞いてすかさずそ男性が威圧的にそう言ってくる。

その堂々とし過ぎた態度は、


「アレは俺の物だ!!

今更返せって言っても遅いからな!!

絶対にお前達には渡さないからなッ!!」


と言葉にしなくても全身と雰囲気で語っていた。

いや、俺が『もしかして』と思ったのはそこじゃ無い。

無駄に威嚇してくる男性には申し訳ないけど、本当に『ドロップ』で出たお金は関係ないんだ。


気になったのはコーガ・クー・アリーアが言ったと言われる名言達。


まず気になったのは、大道芸人さんも締めのあいさつで言っていた『強者と欲をかく者はただエサになるだけ』と言う言葉。

この言葉は今、『油断大敵』って意味で伝わってる。


でも、コーガ・クー・アリーアは本当にそう言う意味で言ったのだろうか?


いや、それ以前に、その名言達は本当にコーガ・クー・アリーアが言ったかどうかも怪しいんだよな。

俺の考えが合ってれば。


さっきの名言の中の『欲』と『エサ』。

それと『教えて!キビ君』の説明と、コイン虫の『魅了』に掛かった男性の様子。

それら全部を合わせて考えると、元々別の意味でコラル・リーフが言ったんじゃ無いかと思うんだ。


「コイン虫に気を付けろ」


って。

コイン虫は金銭欲が強い人から狙ってエサにする。


依頼の報酬だけで納めておけばいいのに、『欲をかいて』不自然に落ちている金貨にまで手を伸ばす。

そして言葉通りコイン虫の『エサ』になるんだ。


諺の様に捻って受け取るんじゃ無くて、そのままストレートに言葉のまま受け取るなら、そう言う意味だった可能性もあるだろう?

俺が聞いた他のコーガ・クー・アリーアの名言の事を考えれば、尚更そうとしか思えない。

なら何でそう言う意味で言った言葉が『油断大敵』って意味になったのか。


それは恐らく、名言の『強者』の部分。


自分は強いと驕ってる人を羽虫を潰す様に簡単に食い殺す事が出来る。

そんな人の力じゃ到底敵わない、コイン虫とは別の恐ろしい生き物が『財宝の巣』に居るから。

それが噂の古代生物(ドラゴン)なのか、他の『箱庭遺跡』から流れてきた生き物なのか。

それは『初心者洞窟』を直接見た今でも分からないけど、多分間違いなくコイン虫以外にもヤバい生き物が居る。


「だから油断するな、深追いするな、そもそも此処に来るな!」


って事を、博物館に残ってなかったけど、何時かの暗号の手紙でコラル・リーフがコーガ・クー・アリーアに伝えたんじゃないかなぁ。

って思ってるんだ。

それが伝言ゲームの様に人々の間を数千年って年月渡り歩いて、今の『コーガ・クー・アリーアが残した名言』になった。

博物館に暗号の手紙全部が残ってた訳じゃ無いし、他の名言の言葉もストレートに受け取って考えるなら、可能性としてはアリだろう?

いや、コラル・リーフが『態と』そう言う風に伝わる様にした可能性もあるか。

それで他の2つの名言。


『例え利益がなくとも常に始まり地に足を向けよ』



『金銀財宝、目先の宝ではなく真の宝はその先にある青きモノ。

目先の宝にくらんだ者は死が訪れる』


まず1つ目の『例え~』の方。

こっちはそのままコーガ・クー・アリーアが言った可能性があるな。

誰にも知られず『財宝の巣』に籠るコラル・リーフに会いに行く口実として。


そうじゃ無いとしたら、2つ目の『金銀財宝~』の名言とセットで考えて、『初心者洞窟』から『風の実』を取りに行けるって言ってる?


『死が訪れる目先の宝』は巣の中で固まって金貨に擬態したコイン虫達の事で、『その先にある青きモノ』は水の事じゃ無くて『風の実』の事。


暗号の手紙の内容を思い出すに、『風の実』は『財宝の巣』を作った。

恐らくコイン虫達の巣の奥にある様だし、あながち間違ってないはず・・・・・・

と言う事は名言3つセットで考えると、


「本物の『風の実』は『箱庭遺跡』じゃなく『初心者洞窟』から取りに行けるから。

でも、『風の実』の近くに巣を作ってるコイン虫は本当に危険なんだ。

だから行くなら最低限余計な金銭欲は捨てから入りなよ」


って事なんじゃないかな?

そしてこの言葉達を全部コラル・リーフが言って伝える様にしていたなら、多分ナト達が解いたベルエール山の地下の動物像の仕掛けの言葉と同じ。

何処かの世界の『佐藤 貴美』だけが『風の実』を手に入れられる様にする為の、ヒントで罠。

深くコラル・リーフ自身の事やコラル・リーフの言葉を考えないだろう黒幕達や黒幕のマリオネットの様な『勇者』達は危険過ぎる『箱庭遺跡』へ。

熟考出来るだろう『佐藤 貴美』とその仲間達は『初心者洞窟』から『財宝の巣』へ。

そう言うコラル・リーフがチボリ国に残した『言葉の仕掛け』なのかもしれない。


・・・と思ったけど、流石に考え過ぎか?

いや、でも、あのコラル・リーフだからなぁ。

その位朝飯前にチャチャッと出来そうって言うか、他の人が作った仕掛けがあるからって何もしない方が可笑しいって言うか・・・・・・


うーん・・・

やっぱ駄目だ。

ここまで考えたけど、これ以上どう考えても納得出来る答えが出ない。

そもそもこの名言に対する情報も殆ど持ってないんだし、ここで考え続けるだけ無駄なのかもしれないな。

取り合えず、1人で考えても納得出来る答えが出る訳無いし、ルグ達にこの考えを伝えてコロナさんの意見を聞こう。


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