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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
402/498

171,『始まりの地に足を向けよ』 11歩目


「うん。こっちも上手く繋がったよ」

「無事読める文章にもなって・・・なって・・・・・」

「リッカ!!?」

「だ、大丈夫ですか!!?」


コラル・リーフからの手紙の方は赤色だった駒を使わないといけない。

って気づくまで時間が掛かってしまったのもあるけど、漸く元々マシロ達が解読していた方と、俺達がチェスボードにセットした方。

その2枚の暗号の手紙が解読出来た様だ。

ふぅ、と疲れた様に息を吐くマシロにお礼を言いつつ、魔法を駆使して作って置いたお茶を渡す。


その間にリカーノさんが、そのマシロが繋いでくれた俺達がセットした方。

コーガ・クー・アリーアからの方の手紙の暗号が書かれた紙を手に取った。

そして、読み始めて少し。

ほんの数行分目が動いたと思ったら、無事読めると言ったリカーノさんの顔が爆発した様に急に真っ赤になって固まってしまった。

湯気が出そうな程真っ赤になって固まるリカーノさんは、肩を激しく揺さぶるアドノーさんにも、声を掛ける俺達にも反応しない。

そんな状態がどの位続いただろう?

最終的にリカーノさんはタラリと鼻血を出して倒れてしまった。


「リッカ!!しっかりしろ、リッカ!!!」

「『ヒール』!!

リカーノさん、起きて!本当に、しっかり!!!」

「う、う~ん・・・・・・」

「エド!クエイさんに連絡!!

どうすればいいか聞いてッ!!」

「分かった!」


真っ赤な顔で鼻血を出したまま気絶してしまったリカーノさんを抱き起し、そのまま声を掛け続ける俺とアドノーさん。

でもリカーノさんは呻くだけで目を覚ましてくれない。

まさかコラル・リーフ達以外が暗号を解読して理解すると、熱で倒れる魔法や呪いが!?

解読した文章がとんでもなく恥ずかしいポエムとかで倒れた可能性もあるけど、念の為にお医者さんの判断が必要だ!

そう直ぐに思って念の為にルグに通信鏡でクエイさんを呼んで貰う。


「・・・・・・あー、これは・・・

また・・・・・・

いや、流石に初心に育て過ぎたか?」

「初心に?どう言う事ですか、館長さん?」

「緑髪の兄さんの予想は当たっていた様だな。

この暗号の手紙は、かなり・・・その・・・そう!

子供には聞かせられない位かなり熱烈なラブレターだ。

コーガ・クー・アリーア王からコラル・リーフへのな」


ルグが繋いでくれた通信鏡越しにクエイさんが、リカーノさんは呪われたり魔法を掛けれてないと言ったからだろう。

館長さんがリカーノさんの落とした紙を拾い上げ、読み始めた。

そして気まずそうに漏らしたのが、リカーノさんを初心に育て過ぎたと言う一言。

どうしてそんな事言ったのかと、クエイさんに聞いた俺達でも出来るリカーノさんの応急処置をしながら聞くと、館長さんは目や顔をかなり反らしながらそう答えた。

子供に聞かせられない熱烈なラブレターって一体・・・

聞きたい様な聞きたくない様な・・・・・・

やっぱり、詳しく聞きたくないな。

多分、俺もリカーノさんの様に倒れる。


「ラブレター!?態々暗号で!?」

「多分、態々暗号で書いたのは、この手紙を書いた時には『人間を裏切った』とかのコラル・リーフの悪い噂が広まっていて、迂闊に会う事が出来なかったとかじゃないかな?」

「あ、なるほど。

でも、そこまでして好きだって伝えるものなのか?

そこまでする位なら諦めるだろう、普通」

「だよな?」

「2人共子供だなぁ。

本当に愛する者が現れたなら、そんな些細な事気にならないものだよ?

何時でもこの溢れる愛と好きって気持ちを伝えたくなるのさ。

だから、ネ

「煩い。黙れ。引っ付くな」


暗号でラブレターを書いた事に驚くルグに、そうまでしないと自分の気持ちを伝えられない状況だったんじゃないのか?

と俺は言った。

その意見にルグも納得してくれたけど、そもそもそこまでしてコラル・リーフを好きで居続けた理由が理解出来ない。

そう言うルグに、『年相応に憧れはある』程度で、恋愛経験が一切ない俺も頷いた。


確かにそこまで拗れたなら、諦めて新しい恋を始めた方が良いと思うんだけどな。

一国の王なら子孫を残す義務もあっただろうし。

壁だらけで世間体も悪い叶わない恋なら、早々に諦めるべきじゃ無いのか?


とルグと一緒に思ってたら、現在進行形で熱々な片思いをしてるジンさんがそう言って、抱き寄せたコロナさんに愛を囁こうとした。

まぁ、その前にコロナさんに物理的に黙らされ、距離を置かれてしまったんだけど。


あぁ・・・

『ヒール』じゃどうにもならない怪我人がもう1人増えちゃったよ・・・・・・


「いや、ラブレターと言うのは正確じゃ無かったな。

愛の告白が大半だが、周りに隠れて2人で何か作業をしていた様だ。

愛の告白が大半だが」


あ、はい。

念を押す様に2回言う程、余計な事が書かれてたんですね。

本来なら、恐らくウォルノワ・レコードに関するアレコレでヒッソリ連絡を取っていた。

その為のこの暗号の手紙だ。

でも、溢れ出る『好き』の思いをコーガ・クー・アリーアが書き連ねてしまったせいで、初心なリカーノさんが倒れてしまったと。

本当に余計な事してるな、コーガ・クー・アリーア。


「すみません、館長さん。

そのラブレター要素全部抜くと、どんな内容が書いてあるんですか?」

「簡単に言うと・・・・・・『始まりの地』。

恐らく『初心者洞窟』の事だと思うんだが、そこの奥に籠って何か作業をしてるコラル・リーフを心配してる事が書かれてるな。

『そろそろ1度出て来ないか?出れないなら自分の方から会いに行く』と書いてある」


館長さんが読んでくれた内容からするに、ただ会いたいと伝えるだけの些細な連絡ですら暗号の手紙を使ってしていた。

って事だよな?

そこまでして周りに隠して行ってた作業・・・

それってやっぱり・・・・・・


「その作業の事は詳しく書いてありますか?」

「いや。この手紙には書いてないない。

ただ・・・・・・」

「ただ?」

「・・・・・・信じられない事に、あのコラル・リーフがこの世界を救う為にその作業をしてると書いてあるんだ」


世界を救う為の・・・・・・

『風の実』を隠す為の作業か、ウォルノワ・レコードの製作か。

やっぱりそのどっちかを行っていた、って事で間違いないだろう。

この手紙にはどっちをやっていたか書いて無いから今の所正解は分からないけど。


「他にその手紙で気になる事は?」

「無いな」

「それなら、コラル・リーフからの方には?」

「こっちには・・・・・・

『お前は馬鹿か?来るな。無駄の事するな。

そもそも私は忙しいんだ。

無駄な時間を使わせるなと何度言わせる気だ?

兎に角、寝言は寝て言え』、としか書いてないな」


うわぁ・・・・・・

何かデジャブを感じるぞ。

と言うか、ついさっき似た様なやり取りが直ぐ近くで起きなかったか?


そう思って見たコロナさんとジンさんに、気絶したリカーノさん以外の視線が集まる。


あ、やっぱり。

皆もコラル・リーフ達が2人に似てるって思ったんだな。


「言いたい事は分かるが、その視線はやめろ」

「えっと、すみません・・・」

「大体、お前達はコラル・リーフと私が似てると思っている様だが、全然似てないぞ?

私はこんな方法でジンから手紙が来ても返事をしないからな?

忙しい時にどうにか時間を作って解読した内容が、そんな馬鹿げた物だったら尚更だ」

「・・・・・・因みにジンさん。

もしコロナさんに手紙を送っても返事が無かったらどうします?」

「勿論、返事が来るまで何度でも出し続けるよ!

伝わらなかった愛情増しましでね!!」


はい、それが答えですね。

コラル・リーフも返事を出さないと逆に面倒くさい事になるって分かっていたから、律儀に返事の暗号の手紙を出したんだ。

やっぱり、コロナさんとコラル・リーフは性格とかが似てるんだろうなぁ。

そしてジンさんは、生き写しレベルで見た目や能力、中身までコーガ・クー・アリーアに似てる、と。

本当、遺伝子の神秘って凄いなぁ。


「って、ネイ!?

何でマシロちゃん掴んでそんなにオレから離れるの!!?」

「・・・・・・・・・」

「無言で更に距離開けないでッ!!」


ジンさんの嘆きなんて一切気にせず、マシロを守る様にジンさんから距離を取るコロナさん。

気持ちは分からないでも無いけど、流石にそれは婚約者に対して失礼過ぎないか?

そのストレートに重い思いに引きたくなる気持ちは分からなくも無いけど。


「と、取り合えず!

他に有益な情報はその2枚の手紙には書いて無いんですね?」

「あぁ」

「それなら・・・・・・」

「他の手紙も解読して見るね!」

「ありがとう、マシロ。

でも、休み休み無茶しない範囲でね?」

「うん!」


この変になって来た雰囲気を壊す様にそう大きな声で館長さんに確認すれば、お茶を飲み干したマシロがまた暗号の解読の作業に戻ってくれた。

たった2枚。

いや、1枚解読するだけでもスッゴク頭を使って疲れる様だし、無理に頑張って解読する必要はない。

マシロが疲れ過ぎない範囲でやって貰えればいいんだけど・・・


「あ・・・

そう言えばこの暗号の手紙って此処にあるので全部なんですか?」

「まだあるわ。

保存状態が良い物だけ展示してあるから、大半の悪い物は研究棟の方にあるの」

「なら、必要な物を持って研究棟に行きません?

リカーノさんも倒れてしまいましたし・・・・・・」

「そうね」


元々展示品をジックリゆっくり見る為だけの部屋だからなぁ。

この展示室はゆっくり作業するにも体を休めるのも全然向いてない。

それに応急処置してもリカーノさんは、慣れない強烈らしい愛の言葉を直に読んで受けた衝撃から目を覚ませられない様だ。

通信鏡越しのクエイさんの見立てでも、目を覚ますのはまだまだ先の事。

だからこのままリカーノさんを置いておく事は出来ないんだ。

だから、此処の職員さん達が暮らしてる場所でもある研究棟に行こうと言ったら、何だかんだで1番リカーノさんを心配してるアドノーさんが真っ先に頷いた。


「リカーノさんは俺が『フライ』を使って運びますね」

「任せたわ。

柱の資料取ってくるから、館長、案内は頼んだ」

「あぁ、分かった。

鍵はちゃんと元の場所に返しておくんだぞ?」

「分かってる」


元々の目的だった地図の資料を取りに、館長さんから鍵を借りたアドノーさんが出ていく。

その間に俺はルグとピコンさんに協力して貰い、鼻血が無事に止まって喉にも鼻血が行かなくなっただろうリカーノさんを回復体位にして、レジャーシートの上に乗せた。

そして慎重にレジャーシートに『フライ』を掛け、リカーノさんに負担を掛けない様にゆっくり浮かせる。


「申し訳ありません、王子。

案内の途中でこんな事になってしまって・・・

少し席を外させて貰います」

「あ、それならオレ達も一緒に行って良いかな?

ここまで来たら結果が気になるからね。

最後まで一緒に居るよ」

「・・・・・・王子達がよろしいのならば、是非」

「うん。じゃあ、行こうか」


流石に王族を研究室に入れるのは躊躇われるのか。

そう断る館長さんに、ジンさんはそう自然に本来の目的を隠して一緒に行くと言った。

多分ジンさんもコラル・リーフが籠って行った作業を、ウォルノワ・レコード造りだと思ったんだろう。

だからこそ自分達も行くって言ったんだ。

そのジンさんの言葉に館長さんは一瞬、


「本当に王族に施設の裏側を見せていいものか?」


と困った様にも戸惑った様にも見える顔をした。

けど、直ぐに恭しく頷く。

と言う事で無事、全員で研究棟に行く事になった。


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