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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
401/498

170,『始まりの地に足を向けよ』 10歩目


 サンゴ王妃が愛用していたチェスが置いてあった部屋の隣。

その部屋にはガラスケースがズラッと並んでいて、その中には沢山の紙や皮、石や木の板が並べられていた。

コレがアドノーさんや館長さんが言っていた手紙か。

当時は紙が貴重だたのか、木や皮の手紙が多い気がする。


「何か秘密があるなら・・・・・・やっぱりコレね!

コーガ・クー・アリーアとコラル・リーフがやり取りしていたって言われる暗号の手紙!」


アドノーさんに早速連れて来られたのは、数枚の似た様な紙が並べられた奥の方ガラスケースの前。

このガラスケースに展示されてる紙全部、コラル・リーフ達が書いたらしい暗号の手紙らしい。


その紙の共通点は4つ。


1つは紙の大きさが寸分違わず同じ事。


2つ目は上の方の真ん中辺りにこの世界のチェスの駒に使われていたのと、多分同じ生き物。

背中の模様が点じゃ無くて、痣の様な薔薇の花模様になったテントウムシみたいな生き物が書かれてる事。


そして3つ目。

機械で書いた様に規則的に文字らしい模様が並んでる事。


最後はその文字らしい模様に紛れて必ず1つずつ、2匹の生き物。

コラル・リーフの基礎魔法の魔法陣と同じ構図のこの世界のサルと、異常進化したクロッグに似た牛の様な角が生えたカエルが描かれてるって事。


文字らしい模様と2匹の生き物の場所は手紙毎に違ってるけど、その4つの要素はコピーした様に同じ。


「この手紙、文章で書かれて無いんですね。

バラバラの文字が規則的に並んでる」

「そうなの!

縦でも、横でも。何なら斜めでも全然ダメ。

どの方向から始めても文章にならないのよね」

「なら・・・・・・

この動物達の名前が何とかを抜くって名前になっていて、それをヒントに1文字抜かして読む」

「サルも宝虫も一文字抜くって意味になる名前なんって存在しないし、この角の生えた生き物はコーガ・クー・アリーアの基礎魔法にしか存在しない名前すら無い架空の存在よ」

「なら別の・・・・・・

動物はカモフラージュで、紙の大きさがヒント!

紙の全部の辺が昔の単位に直すと同じ数字になって、その数字の数の分、文字を前後どちらかににずらして読む!」

「それも・・・・・・ダメだね。

どんな長さの単位でも同じ数字にならないよ」

「なら・・・なら・・・・・・」


『レジスタンス』のアジトの仕掛けを解いてた時の事を覚えてたんだな。

俺が前言った事を思い出しつつそうよくある暗号の解き方を言っていくピコンさん。

でもそのピコンさんの意見は全部アドノーさんとリカーノさんに否定されてしまった。


「サトウ君、他に暗号解く方法無い?」

「それか、もうこの暗号が解けたとか言わないよな?」

「あ、はい。

答えは分かりませんが、解き方なら分かりました」

「はぁ!!?もう!!?早過ぎないか?」


案を出し尽くし他に何か暗号の解読方法が無いか聞くピコンさんに、茶化した様に解けたのか聞くコロナさん。

そんな2人に俺は顔を合わせないままそう答えた。

この暗号を解きやすくする為のアイテムを『クリエイト』で作るのに集中してるんだ。

思っている以上にサラッとした言い方になってしまったけど、それは仕方ない。

でもそれを聞いてアドノーさんが驚きと不信感を混ぜた様な大声を上げてしまった。

あまりに俺が軽く言ったから、信じられない様だ。


「えーと・・・もう少し待って下さい。

もう少しで、イメージが固まるので・・・・・・

よしッ!出来た。

それで、比較的簡単に解き方が分かったのは、1度マシロに似た様な問題を解いて貰ってるからです」

「え?私?」

「うん。エドとピコンさんも知ってる。

って言うかピコンさんはあの問題の当事者ですよ?」

「僕が?」


『クリエイト』で後ろが透けそうな位薄い紙を作り出し、俺はそう答えた。


そう、俺達は1度、この手の暗号に出会ってる。


『レジスタンス』のアジトの仕掛け。

その中にコレと似た様な物があったんだ。

それなのにルグもマシロも、その仕掛けの担当で答えを探してたピコンさんですら気づいて無い。

もしかして皆、実際には解いて無いから忘れてるのかな?


「ヒントはチェスを使ったミニゲーム。

えーと・・・」

『聖騎士の遠征!!』

「の、この虫の駒を使ったバージョン。

ほら、こうやって線を引いていくと・・・・・・

分かりずらいと思うけど、チェスのマスに綺麗に1文字づつ入る」


俺が言ったヒントでルグ達も思い出せたんだろう。

声をそろえてミニゲームの名前を叫んだ。

どうやら無事3人共、あのピコンさん達が解こうとしていたチェスの知識が必要な。

正確に言えば、1個の駒を使って遊ぶミニゲームの知識が必要な仕掛けを思い出せた様だ。

そのミニゲームの駒違いだと言いながら、俺は『クリエイト』で出した薄い紙をガラスケース越しに暗号の手紙に重ね、均等に線を引いていく。

そうすると、かなり綺麗に模様の様な文字が1つ1つハニカム模様の中にに入るんだ。


「ちょっと待って。直ぐに中から出すから。

館長、急いで鍵!」

「分かった」

「お願いします」


やっぱりガラスケース越しだと分かりずらかったか。

ガラスケースを開ける為に鍵を持ってくるよう言うアドノーさんに頷き返し、館長さんが部屋を出て行った。


「・・・・・・確かに綺麗にマスに入るわね」

「はい」


改めて鍵の束を取って来た館長さんが取り出した暗号の手紙と俺が出した紙を重ね、その重なった紙を見たアドノーさんが感嘆の声を漏らした。

うん、ガラスケース越しに線を書いたけど、思ったよりも綺麗に分けられた。


「後はこの上の方に書かれてる虫。

コレが文章を読むのに必要な駒を表しています」

「『商人』の駒だね!

えっと、何処からマスを進めればいい?

1番初めに駒を置く所から?」

「この文字に紛れた生き物のどっちかから。

そこからもう1匹の生き物の所に向かって貰える?」


さっきのアドノーさんの話が本当なら、このサルとカエルはコラル・リーフとコーガ・クー・アリーアの基礎魔法から来てるって事になる。

ならこの2匹の生き物が2人を表してるのは間違いないだろう。

だからサルからカエル、もしくはカエルからサルに駒を進める事で、文章が読めると同時に、『コラルからコーガへ』、『コーガからコラルへ』。

その2つのどちらかの意味になるんだと思うんだ。


「ごめん。後お願い出来る?」

「任せて!

あ、でも、『商人』の駒はこの前の『聖騎士』の駒よりも動きが複雑なんだ。

だから少し時間掛かるかも知れないし、私この文字読めない・・・・・・」

「そこはアタシ達に任せない!

答えさえ分かったら後はパッパと解読しちゃうから!!」

「大丈夫だ、マシロ。

私達も手伝うから時間は気にするな」


この先の解読は、この世界のチェスのルールが分からない俺は『クリエイト』で大量に紙や書く物を出す以外戦力外。

だから俺達残り組の中で、表向きチェスを知ってるマシロに後を任せる事にした。

前回借りた館でユマさんと良くやってたみたいだから本当はルグもルールを知ってるんだけど、基本王族貴族の遊びらしいボードゲームを一般人の『エド』が知ってるのは可笑しい。

と言う事で必要そうな物を作り終えた俺と、ルグとピコンさんはこれ以上手伝う事が出来ないんだ。

その分、マシロと同じくチェスのルールを知ってるらしいコロナさん、ジンさん、ナァヤ君と、繋がった文章の解読要員にアドノーさん達がマシロを手伝ってくれると名乗り出てくれた。


「あの、館長さん?

隣のサンゴ王妃が愛用してたチェスボードも出して欲しいんですが、大丈夫ですか?」

「構わんが、何でだ?」

「さっきのサンゴ王妃の同一人物説が本当だったら、あのチェスボードにも何か仕掛けがあるかもしれないからです。

そしてその仕掛けはこの暗号文を解読するのに必要かもしれない」

「なるほど。そう言う事なら持ってこよう」

「お願いします」


マシロさん達の解読の様子を見るに、マシロが言った通り解読にはかなり時間が掛かる様だ。

それ程複雑で難しいって事だよな?

なら、手紙の送り主達であるコラル・リーフ達も解読するのに苦労したはずだし、そもそもこの方法で手紙を書くのも大変だったはず。

だとしたら、その大変な作業を少しでも楽に出来る道具があったと思うんだ。

あのコラル・リーフならその位サラッと作りそうな気がするし。

そこで思い出したのが、あの気になってたチェスボード。

少しでもマシロ達の助けになるかもしれないと、そう館長さんに頼んだ。

・・・・・・けして趣味に走った訳じゃ無いからな?


「持ってきたぞ」

「ありがとうございます」


これも貴重な展示品の1つだからな。

何か合っても弁償できないし、念の為に『クリエイト』で出した使い捨ての手袋を着けて、俺は館長さんからチェスボードを慎重に受け取った。

指先に意識を集中させチェスボードを撫でまわせば、予想通り。

組木細工の様な模様が掛かった角の一部が、本棚からハードカバーを取り出す様に軽く斜めに引っ張り出せた。

その分かり辛い仕掛けの上の部分には、これまた小さなスイッチ。

そのスイッチのレバーが箱の方を向く様に入れ直し、角を戻すと、チェスボードが勝手に変形しだした。


「えーと・・・・・・薄くデカくなった、だけ?」

「いや。微かに盤が光ってる」


変形が終わったチェスボードは少し厚めの板状になって、盤が倍近く広くなっていた。

その盤の広さは丁度暗号の手紙が収まる位。

この部屋が明るいからパッと見ピコンさんの言う通りダダ大きくなっただけにしか見えない。

けど、腕で影を作ると、ルグの言う通り微かに盤が光ってるのが分かった。


「取り合えず、もう少し暗い場所で手紙をセットしてみるか」


光苔ランプ真下の此処は明る過ぎて盤の光の変化が分からない。

だから隅の方の比較的暗い場所に行って、『クリエイト』で物凄く簡単な机を出し、その机の上でマシロ達が解読してるのとは別の手紙を盤に置いた。

でも、変化が無い様に見える。

そこで試しに、元々色違いだったのだろう、殆ど色が落ちて違いが分からない。

赤、青、黄色、緑の4種類の『商人』の駒を、サルとカエルのマスに置く事にした。

まずはカエルに赤だったらしい駒。


「・・・・・・変化は・・・無いな。次!」

「じゃあ、今度は青で」

「えッ!光が消えた!?

まさか、このタイミングで壊れた!!?」


ルグの言う通り暫く待っても変化が無いからカエルのマスに赤は不正解。

次に『今度は』とピコンさんに渡された青の駒をカエルのマスに置いたら、変形はそのままに盤の光が消えてしまった。

その事に慌てる俺達。

でも、運悪く壊れた訳じゃ無く、最初からそう言う仕様だったらしい。

慌てる俺達を他所に、マスの1つが光り出した。


「え?え?ひか・・・・・・

速い速い!!速いし多いって!!」

「今の覚えられた?」

「全然」


多分、それが『商人』の駒の正しい動きなんだろう。

1つ光ったと思ったら、ある程度の規則性はあるものの、次々にバラバラにマスが1つづつ光り出した。

その光は1秒程しか光らなくて、少し長めに瞬きしようものならもう、無情にも何マスも進んでいる状況だ。

その上、サルまで行くのにかなりの手数が必要な様で、光るマスの順番の量がエグイ程多い。

こんなの瞬間記憶能力者でもないと覚えられないって!!

ピコンさんだけじゃなく、エドも全然覚えられないって言うし・・・・・・

コラル・リーフ達は本当にコレで解読出来たの!?

それが本当だったら凄過ぎないか!!?


「お前等、何騒いでるんだ?」

「えーと、マシロ達が少しでも楽になればと、チェスボードを調べてたんですけど・・・

こうなって・・・・・・」

「・・・うん・・・うん・・・・・・なるほどね。

ありがとう、キビ君。

早すぎて答えは分からなかったけど、良いヒントになったよ」

「えーと・・・お役に立てたなら何より、です?」


解読の手を止め不審そうに聞いてくるコロナさんに、そう言ってチェスボードを持って行き、おずおずと見せる。

それをコロナさんの隣で見ていたマシロが、良いヒントになると言ってくれた。

思った通りにはいかなかったけど、少しでも役に立ったから、まぁ、結果オーライかな?


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