39,コカトリス 4羽目
俺は決まった作戦通りに、目玉模様の布を張った場所から『フライ』を掛けた筒に乗って飛び去った。
きっとコカトリスはエサが自ら食べられに来たと思っているだろう。
だからコカトリスは、最大速度で飛ぶ俺を何の疑いもなく追いかけてきた。
これが俺達の作戦だと思わずに。
暫く追いつかれない様に、だけど俺以外に意識が向かない様に飛び続て、事前に決めていた合図が見えた。
「よし!此処だな!!」
コカトリスとの方角や距離を考え俺は空中で筒を停止させた。
そのまま筒を『フライ』でコントロールし、俺は筒の先に括り付けた紐を持って飛び降りる。
空中に停止している筒のお陰で地面に激突せず、俺は無傷で降りれた。
俺が飛び降りた事で引っ張られ、開いた筒に書かれていたのは、
「どうだ、コカトリス!!
お前の嫌いな目玉模様だぜ!!」
コカトリスが俺達を襲いたくても襲えなかった原因の目玉模様。
嬉々と俺を追いかけていたら目の前に大嫌いな物が飛び込んできたんだ。
コカトリスは一声鳴くと慌てた様に急停止した。
一瞬でも止まればこっちの勝ち!!
今コカトリスが居る真下には、俺が飛んで時間稼ぎしている間にユマさんが書いた、合図でもある大きな魔方陣。
ユマさんが魔方陣を木の棒でコツンと叩くと魔法陣が発動し、魔方陣内の影。
そう、俺が広げた目玉模様の影がコカトリスに絡みついた。
ユマさんの影を操る魔法、『オンブラ』に掴まってコカトリスは飛んで逃げる事が出来なくなった。
後は、
「ルグ!!頼んだぞっ!!」
「任せろ!!」
俺達に注意が向いていた事と、コカトリスの死角になる場所にルグが必ず居た事。
そしてルグの魔法によってコカトリスはルグを今の今まで認識出来ていなかったんだろう。
コカトリスの死角になる場所からコカトリスの首まで瞬間移動したルグが、持っていた2本のナイフでコカトリスの首を刎ねる。
普通はあんな小さなナイフでコカトリスの首を切り落とす事は出来ないはず。
だけど、魔法によってそれが出来るルグが止めを刺したんだ。
一瞬、コカトリスの体がビックと跳ね、力なく崩れ落ちる。
メールの受信音とコカトリスから出た光が俺の方に来るのを見るに、無事俺達はコカトリスを倒せたんだ!!
「「「や、やったーーーーー!!!」」」
「て、俺は万歳してる場合じゃない!!
デビノスさん、ブルドックさん!
直ぐ病院に運ぶから!!」
ドロップしたアイテムを適当に鞄に詰め込んでコカトリスの解体をルグとユマさんに任せる。
ギルドで待ち合わせする事を決め、俺は木の間に張ってあった目玉模様の布に『フライ』を掛けて2人を街まで運んだ。
指示された病院で無事に治療して貰い、特に後遺症もなくすんだデビノスさんとブルドックさん。
2人と共にギルドに行き、コカトリスの解体が終わったルグとユマさんと5人で冒険者用のカウターに向かった。
今までこの事は誰も知らなかったみたいだからなぁ。
依頼書を確認したボス達が、俺達が見つけたコカトリスの毒の解毒方法とか、コカトリスの体の構造とか。
そう言う事を知って大慌てしたのは仕方がない事だろう。
「大発見だーー!!」
と騒ぐボスとは別の職員さんが何処かに報告に行ったせいでボスの仕事が2倍になってしまった。
そのせいでボスが不機嫌になり、ユマさんと共に足がマナーモードになった事も仕方ない事だ!!
「初めての依頼でとんでもない事になったな」
「ハハ。
もっと簡単に終わると思ってたので、自分の甘い考えを改める良い薬になりました」
本当、簡単な依頼だと思って舐めてると碌な事にならないな。
どんな依頼でも油断しない様にしないと。
また今日みたいに依頼内容とは関係ない所で襲われそうで怖いよ。
薔薇草の依頼も無事終わり、予想外の報酬も手に入った。
コカトリスのドロップアイテムとして、卵が10個とコカトリスのモモ肉と胸肉がそれぞれスーパーのパックで売られている大きさで5枚ずつ。
それとコカトリスのオーガンを特殊加工した、軟化毒の対に成る硬化毒が小瓶で沢山。
後は、デビノスさんとブルドックさんを手伝ったからか、俺達3人にも報酬を貰う権利を得た。
まぁ、3人で話し合ってコカトリスの素材の1部。
主に肉を俺達が貰い、報酬のお金はデビノスさん達が貰う事で話は纏まった。
主に止めを刺したルグの希望で。
「サトウ、今晩・・・・・・」
「コカトリスの肉と卵はユマさんのお迎えが来た時使うからダメ。
その変わり、今日は風見鳥を使って何か作るから。
何時もより豪華で多めにな」
「よっしゃぁあ!!楽しみにしてるからな~」
初めての依頼でこんなに疲れるとは。
あんな乱入者はもうこりごりだよ。
でも、今日は新しく屋敷に入った住人のお祝いと、コカトリスに止めを刺した功績者を労う為にも料理の腕を振るわないとな。
まだまだ、今日は忙しそうだ。




