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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
385/498

154,4分の1 中編


「それより、その暴れてるって言う黒髪の異世界人は今どこに?

いや、それ以前にその人は本当に俺達と同じ世界の人なんですか?」

「私達の話が信じられないと?

いや、それとも自分の世界の人間はそんな非道な事はしないと言いたいのか?」

「いいえ。

ほぼ毎日の様にその手のニュースが報道される位には、俺の世界にも凶悪犯やその予備軍が数え切れない程居ますからね。

そんな理由で疑ったりはしませんよ。

それが見た事も無い赤の他人が候補って言うなら尚更そんな事絶対に言いません。

でも違和感があるんです」

「違和感?」

「それって、その4人の候補に黒髪の奴が居ないからか?」

「ううん、そこじゃない。

あの候補の人の中には髪を染めてる人も居たからね。

問題はそこじゃ無いんだ」


その『異世界人』が本当に行方不明の4人の内の1人なのか。

そう聞けば、あからさまにパンチョさんが不機嫌になった。

俺が本当にその男が俺達の世界の人間か疑ったのは、自分の世界にはそんな非道な事をする人は居ないって信じてる訳でも、ルグが聞いてきた様に事前に見せて貰った写真に写った行方不明者4人の候補に黒髪の人が居ないからでもない。

もっと別の・・・

多分、根本的な部分に違和感を感じたんだ。


「じゃあ、何に違和感を感じたんだよ。

その4人かもしれないって言われてる奴等、サトウ達と違ってサトウの世界に居る時から悪い事してたんだろう?

今度こそ本当に、この世界来て羽目外して、元の世界以上に暴れてるんじゃないの?」

「そのエドの言う『悪い事』って唯の噂だろう?

いや、確実にしてるって言う家出も家族を心配させるし補導されるから、良い事とは言えないんだけど・・・

でもそれ以外は唯の噂で、本当に不良かどうか知らないし・・・・・・」


色々調べてくれた木場さんの話だと、今も絞り込めてないその4人の候補者として挙がった矢野高校生は、皆褒められた人間じゃ無かったらしい。

殆どが家出常習者で、クラスメイトだけじゃなく、家族との中も悪い人が多いそうだ。

だから4人の候補者である今矢野高校で連絡が取れない人達が、本当にこの世界に来てるのか。

ただ家族や教師、友達との仲が悪過ぎて連絡を無視してるのかもしれないし、俺達の世界の事件に巻き込まれてるかもしれない。

それ以前にその4人が本当に矢野高校生かも分からないんだ。

だから未だにその4人がどこの誰なのか、全然絞り込めていない。


そして、そう言う悪い意味で目立っているからだろう。

いじめの主犯格だったり、野生動物や近所のペットを夜な夜な殺していたり、危険なドラッグやヤクザと関わっていたり。

そう言う悪い噂が絶えない人達だと、木場さんが話を聞いた矢野高校生達は言っていたそうだ。


正直言って、その噂が本当かどうか怪しい所なんだよなぁ。

それを言った矢野高校生達がその候補者達を嫌っていたり嫉妬してたり。

場合によっては自分達がただ『楽しいから』って。

ただ『その方が面白くなるから』って理由で、そう言う悪意ある『噂』を話した可能性も十分ある。


本人達とは連絡が取れなくて、俺達はその候補者達と会った事すらない。

だから確認のしようも、本人達が弁解するチャンスもない訳で、だから言いたい放題言える訳だ。

元々噂なんて、誰かにとっての都合が良いだけの面白おかしい無駄話な訳なんだしさ。


・・・・・・・・・あー、うん。

多分、俺、この世界に来て『噂』や『伝承』ってモノが素直に信じられなくなっているんだろうな。

『噂』って聞いたら取り合えずまず否定から入りたくなってる。


「って、違う違う!

今言わないといけないのはそこじゃ無くて!

えーと、つまり・・・

俺が感じた違和感って言うのは・・・・・・

他にもあるけど、1番はその男がこの世界の地理に詳し過ぎる、って事なんだ」

「地理?」


ついついまたもや何時もの悪癖が出て脱線してしまった頭の中を切り替えて、ルグにそう言って頷き返しながら『教えて!キビ君』を起動させる。

確認の為に調べても、やっぱり俺の思った通り。

『教えて!キビ君』には詳しい町や村の情報が載っていない。

それはナトや紺之助兄さん、高橋達が持つ『図鑑』のアプリでも同じだろう。


「他と同じく『教えて!キビ君』や『図鑑』に載ってる町や村の情報は100%信用出来る物じゃないし、そこまで細かく町や村の事が載ってる訳じゃない。

だからスマホで調べても、その村の『人目につかない犯行に最適な場所』を見つけるのはほぼ不可能だと思うんだ」

「確かにそうだけど・・・・・・

その人も赤の勇者達の様にそこまで詳しく分かる、地図関連の魔法やスキルを持っていたり、作ったんじゃないの?」

「確かにその可能性も十分ある。

そうじゃ無くても、パンチョさん達も知らないだけでその人に協力してるこの世界の人が居るかもしれない。

でも、長年計画を立てていて、この黒幕達が起こした混乱しきった状況を利用して犯行に及んだヒヅル国人、って可能性を否定出来る訳じゃ無い」

「うッ・・・確かにそれもそうだけど・・・・・・」


パンチョさん達の話を聞く限り、その男は事前にその村や集落の地理はシッカリ調べてるけど、ターゲットに関しては現地に行って決めてる様に思える。

もしターゲットの女性の事も事前に調べていたなら、地理と同じくシッカリ調べてターゲットの女性が確実に1人なる時を狙い、犯行に及ぶはずだ。

だから、パンチョさん達の様な目撃者は現れないはず。

自分の犯行を目撃した正義漢やターゲットと親しい男性に暴力を振るうのも趣味。

って言う性癖捻じれ過ぎてると言わざるを得ない悪趣味すぎる趣味があるって言うなら別だけど。

それを趣味にした思考回路は一切理解出来ないけど、男性も襲われてる理由としてはまだ納得出来る方だと思う。


そして違和感を覚えたのは、その『地理をシッカリ調べてる』って事だ。

パンチョさんから聞いた時期から推測するに、その男が本当に行方不明の4人の内の1人なら、この世界に連れて来られて直ぐ。


それこそ3日も経たずにその犯行を始めた事になる。


犯行に有利な魔法やスキルを持っていて、情報が広がりにくい場所を選んでるとしても、ここまで犯行を隠せる程その村や集落の事を調べるのはそんな短時間では無理なんじゃ無いかな?


それもたった1ヶ月で10回以上って言う頻度で、ワープ系の魔法を使って世界中で犯行を行ってるなら尚更。


ただこの事件の裏にも魔女や黒幕達が居るなら別だ。

高橋達と入れ替わった4人組が初めて踏み入れたこの世界の場所は、十中八九ジャックター国城だろう。

つまり、『魔女達の敵の城』。

ユマさんに操られてそんな犯行に及んだって言う、洗脳が解けかけたナト達がユマさんを憎む様に仕向けるシナリオの為に利用してる可能性があるんだ。

そうじゃなくても『利用価値のある異世界人』認定されたら、『利用価値のある人』を生み出す素材としてそう言う風に利用されてる可能性も十分ある。

黒目なら魔女の『魅了』に掛かって惚れた魔女にそそのかされてそう言う犯行に及んだ可能性もあるし、元々そう言う願望がある人やその手の犯罪の常習犯でそれを利用された可能性も十分にあり得る。

そこは分からないけど、ナト達と混ぜる『利用価値のある女性』を探す一環で得たその手の情報をその男に渡してる可能性は十分あり得るんだ。


・・・・・・・・・もっと最悪なのは、魔女や黒幕達は関係なく。

悪運強く協力者の居ない1番最初の犯行が成功して、その時誘拐されてしまった女性がストックホルム症候群に陥ってしまって協力してる。

って可能性なんだけどな。


そう言う可能性がある反面、ヒヅル国の人が犯人の可能性も現状否定できない状態なんだ。

常識が通用しない異世界人に対する手際の良さの事もあるし。

そう言う事をオブラートに包みつつも更に出来るだけ丁寧に伝えたら。

魔法やスキルの事を言ったマシロも、俺達の世界の人間が犯人だと信じ込んでいたパンチョさん達もタジタジになった。


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