表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
369/498

138,Dr.ネイビー 中編


「そう言う事に加えて、この文字が紺之助兄さんが書いた文字だとは思えなっかったのが理由」

「文字?筆跡が違うって事?」

「いや、筆跡がどうこうってのは分からないんだけどね?

筆跡鑑定できる能力なんて俺も四郎さんも持ってないし」

「じゃあ、文字の何が可笑しいんだ?」

「綺麗な字で、カラフルな線が引かれてる所」


几帳面な大助兄さんと違い、紺之助兄さんは自分しか読み返さない様な物の文字は大分汚いんだ。

テストとか買い物メモとかは大助兄さん張りの分かりやすい綺麗な字で書いてくれるけど、授業用のノートとかは筆記体みたいに繋がった字で書くからかなり難解なんだよ。

そう言う違いがあるから、居間とかにメモ用紙や付箋なんかが置きっぱなしになっていても、大体誰の物か一目で分かるんだ。

買い物メモ置き場の下に落ちていない読みやすい字のメモなら母さん、読みにくい字なら紺之助兄さん。

って感じで。

そして1番の違和感であるカラフルな線。


「前に言ったけど、紺之助兄さんってスッゴク目が悪いんだ」

「あぁ、言ってたな。

それで、1部の色も見えないんだったけ?」

「正確に言えば、見えないんじゃなくて多くの人と色の見え方が違うんだ。

紺之助兄さんの場合、そのせいで赤と緑の違いが分かりずらいらしいよ」

「・・・・・・ん?あれ?

だとこんなに色んな色使って線引いたら逆に分かりずらいよな?」


俺にも紺之助兄さんが見えてる世界が見える訳じゃ無いし、生まれつき紺之助兄さんは俺と違う世界を見てるから紺之助兄さんの口から説明されても上手く理解できなかったし、今も理解できない。

見え方が違っても濃淡とかの繊細な違いで色の見わけもつくらしいから、


「これは何色?」


って言われたら、ある程度同じ色を答えられる。

だから俺にとっても紺之助兄さんにとっても『黒』は『黒』だし、『白』は『白』なんだ。

そう言う意味で紺之助兄さんの説明では理解出来なかったけど、紺之助兄さんの為にも調べに調べまくった。

きっと世界で1番紺之助兄さんの事を理解してる大助兄さんによると、紺之助兄さんの世界の色は黄色や茶色が多くて、同じ色に見える赤と緑を見分けるのが難しいらしい。

その位俺が見てる世界と違う色の世界を見てるからか、紺之助兄さんは基本黒以外の色を使おうとしない。

それなのに、同じく色弱なネイビー・ビート(異世界の紺之助兄さん)が正体だって言われてるDr.ネイビーが赤も緑も使っている。

それはかなり可笑しい事なんじゃないのか?

そう思った俺の言葉を聞いてその事に気づいたルグも首を傾げている。


「もしかして、シローさんの世界のコンさんは色が普通に見えるの?」

『いいや。

紺之助兄さんもタカヤ君の世界の紺之助兄さんと同じ、色弱だよ。

赤と緑の違いが分からないし、視力も良くない。

その分幽霊を認識する力、特に幽霊を見る力が生まれつきかなり強いんだ』

「あぁ!なるほど。

それが理由だったんですね、紺之助兄さんが『裏眼』のスキルを持っているのは。

異世界の同一人物のネイビー・ビートからスキルとか受け継いだから、霊感とか全くない俺の世界の紺之助兄さんも幽霊関係のスキルを多く持ってるんだ」


受け継いだって言うか、俺と四郎さんの様に『異世界の同一人物』故にこの世界のナニカに『ネイビー・ビート本人』と勘違いされて、全く同じスキルや魔法を与えられた。

って考えの方が正しいと思う。


『夕霧島』関係の事件でかなりオカルト寄りな世界になった四郎さん達の世界と違い、俺達の世界の幽霊とかは基本勘違いか空想上の存在だ。

その上紺之助兄さんもオカルト関係には疎い。

なのにこの世界に来て紺之助兄さんは幽霊や魂に関係しそうなスキルや魔法を多く持つ事になった。

ナトならなんの違和感も無いけど紺之助兄さんが使えると言われると、そこはかとなく違和感を感じる。

紺之助兄さん本人も気づかなかったそっち方面の才能があったって可能性もあるから、絶対に可笑しいとは言い切れなかったんだけど。

でも違和感は違和感だ。

少し心と頭の片隅に引っかかる感じでずっとそれが不思議だったけど、四郎さんの世界の紺之助兄さん(ネイビー・ビート)が関係していたからだったんだな。

漸くスッキリした。

そう1人納得すると同時に、もう1つ。

『紺之助兄さん』とDr.ネイビーの違いに気づいた。


「そう考えるとやっぱりDr.ネイビーの正体が『紺之助兄さん』ってのは更に違和感を感じる」

「え、何でだ?」

「だって、紺之助兄さんは『クリエイト』で魔法道具作り出せないじゃないか」

「あー、確かに」


俺の『クリエイト』の上位互換で俺よりも作り出せる物の種類は多いけど、紺之助兄さんも魔法道具。

いや、機械そのものを作り出す事はほぼ不可能だ。

鉛筆削りとか、手動のフードプロセッサーとか。

ある程度俺よりも複雑な物も紺之助兄さんは作り出せるらしいけど、スマホやテレビの様な物は流石に無理らしい。


じゃなきゃルグに写真の説明する時、態々手作りカメラの素材を出さず最初からカメラを出していた。


そしてその信憑性はかなりの物。

『レジスタンス』のアジト内でルグ達が徹底的に調べたから間違いない。

自分達で直接調べたからこそ、最初疑問を抱いていたルグも直ぐに『確かに』と納得したんだ。


「後、多分Dr.ネイビーの『クリエイト』の仕様と大分違う。

日記を読んだ感じ、Dr.ネイビーの『クリエイト』は、俺達の様なイメージの具現化じゃなく、書いた物の実体化。

つまり、ピコンさんの様な感じなんだと思う」

「僕と?それってつまり、設計図が必要って事?」

「はい。

この日記には沢山の魔法道具の設計図も書かれてるんです。

こことか、こことか」

「こっちの日記にも書いてあるな」

「これにもね」


それぞれ拾い上げたDr.ネイビーの日記を開いてそう頷き返す様に言うルグとマシロ。

魔導書の方は『騙す事』を前提にしてあるからなぁ。

サラリと隠してたけどDr.ネイビーも本当は魔法陣や設計図が必要だったのかもしれない。

じゃなきゃこの日記の状況は何だって言うんだ。

本当に頭の中に全て思い描けて、何も見ずに作り出せるって言うなら、日記にこんなにも設計図を書く必要はないだろう?

細部を変えつつ何度も書いてるなら、やっぱりDr.ネイビーの『クリエイト』にも設計図は必要で、だから完全に同じか分からないけど、俺や紺之助兄さん、ナト達よりピコンさんに似た仕様なのは間違いないと思う。


「目の前で検証したから分かってると思いますが、俺も紺之助兄さんも設計図を書いた所でそれを『クリエイト』で作り出す事が出来ません。

イメージしながら魔法陣を書くか、こう言う『クリエイト』の魔法陣が刻まれた袋から取り出すしかありません」

「だから『コンさん』がDr.ネイビーなのはあり得ない」

「うん。

『クリエイト』の仕様が俺達と同じで、設計図を態々書いたのは紺之助兄さんが1回成功させたアレと同じって可能性もあるけど・・・・・・」


準備期間中、大助兄さんの思い付きで行われた『クリエイト』の実験。

魔法玉やスキル玉、人のスキルや魔法を視れるスキルを持った『レジスタンス』の人が調べた時は俺達も気づかなかったけど、設計図を書けば俺達も魔法道具や機械を作り出せるんじゃないのか?

っと言うものだ。


その結果は『絶対無理』。


魔女達の前で『クリエイト』の説明を見た時に書かれていた通り、俺は設計図を書いた物の実体化は出来なかった。

出来るのはイメージの具現化のみ。

それは紺之助兄さんもほぼ同じで、何回試しても無理だった。


ただ紺之助兄さんは1回だけ設計図の実体化が出来たんだよな。

いや、正確には実体かじゃなく、何時も通りのイメージの具現化なんだけど。


設計図を見ながらイメージしたから、普段イメージできない細部までイメージ出来たのが理由らしい。

紺之助兄さんはその大助兄さんと一緒に書いた設計図のお陰で、普段なら『クリエイト』で出せない懐中電灯を作り出せたんだ。

多分、俺がレーヤの試練の刀を見て日本刀を作り出せた様なものなんだと思う。


設計図を見て、書いて、理解し、中身まで鮮明にイメージ出来たからこそ作り出せたんだ。


でも10回以上試して出来たのはその1回きりだから、Dr.ネイビーの様に何時でも成功する訳じゃ無いのは間違いない。

そう言う意味で俺も紺之助兄さんも『作り出せない』なんだ。

その事を思い出しつつ伝えれば、マシロが次に俺が言おうとした言葉をポツリと零した。

その言葉に頷きつつ、俺はもう1度、『分からない』と言う。


「分からないって・・・・・・

今までのサトウ達の話を聞く限りシローの世界のコンがDr.ネイビーだって思うのは無理だぞ?

『クリエイト』の事は分かんないけどさ、ダイの方がDr.ネイビーぽいのは確かだろう?

何が分からないんだよ?」

「・・・・・・今までの話にはさ、最低3つの絶対的前提条件があるんだよ」

「絶対的な前提条件?」

「四郎さんの記憶が絶対正しいと言う事と、ネイビー・ビートが正気である事。

それとDr.ネイビーが全部手書きで資料を残してる事」


今までの予想は参考の1つにした四郎さんの記憶が正しくて、

資料を全部手書きで残していて、

紺之助兄さん(ネイビー・ビート)が正気。

つまり普段通りの精神状態でいると言う条件があってこそ成立する話だ。


幼い心に深い傷を刻み込む位、衝撃的な別れ方をしたからだろう。

25年経った今でも四郎さんはお兄さん達の事を鮮明に覚えていた。

でも、その記憶が絶対正しいとは言い切れない。

悪霊になって自分を失っていた時期もあったし、別れてからの年月が年月だ。

実は四郎さんの世界の『兄さん達』は俺の世界の兄さん達と性格が正反対で、紺之助兄さんに名前を呼ばれて自分を取り戻した影響で、四郎さんが勘違いしてる。

って可能性も十分あり得る。

そうじゃなくても普通にも長い年月の間に思い出が美化されているって可能性も、そもそも四郎さんがお兄さん達の一面しか知らなかったって可能性も十分あり得るんだ。


いや、オリジナル日記の内容的に可能性は限りなく低いんだけど。

特に性格とかは俺の世界の兄さん達とかなり一致してると思う。

でも色弱の方がなぁ・・・・・・


オリジナル日記の方は黒一色で書かれてるから、勇者ダイスの方が色弱だった可能性もあり得るんだよ。

授業用ノートの方もネイビー・ビートの物だって考えれば可笑しくないし。

筆跡鑑定できないから確証は得られないけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ