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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
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134,実の兄弟だと言う証明  前編


『確かにその可能性もある。

でもこの人達は間違いなく俺の兄さん達だ』

「理由は?

そこまでハッキリそうだって言える理由は何だ、シロー?」

『まず、兄さん達がこの世界に『召喚』された時の年齢と時期を含め、魔導書だと思われていた大助兄さんの現代社会のノートやこの日記に書かれてる元の世界での出来事が、俺の世界の出来事と寸分たがわず一致してるんだ』


勇者ダイスが1000年前のこの世界に『召喚』されたのは、四郎さんが『召喚』される25年前。

勇者ダイスとネイビー・ビートが高校1年生、聖女キビが中学2年生、そして四郎さんが小学6年生の時だ。

それも丁度四郎さんが修学旅行に行ってると言うピンポイントな時期。


『日記の1日目にも書かれてるけど、俺は修学旅行の最中、当時猛威を振るい始めた流行り病に罹って旅行先から帰れなくなっていた』

「え?病気で帰れないって・・・

そんなに重い病気だったの?」

『いや、比較的軽かったよ。

熱は出たけど、他の子達と違って普通に動けたしね』

「なら何で帰れないんだよ」

「確か・・・飛行機に乗れなかったんですよね?」

『そうだよ』


四郎さんの小学校の時の修学旅行先は俺達の世界には存在しない、太平洋側に浮かぶ日本所属の大きな人工島。

『夕霧島』って言うその島には飛行機じゃないと行けないそうだ。

四郎さんは運が悪い事に、その島で他の同級生と一緒にこれまた俺達の世界には存在しない。

勇者ダイスのオリジナル日記にも名前が書かれてた、インフルエンザの様な普通の風邪とは違う重くなりやすい流行り病に罹った。


「えーと、確か・・・・・・

ヒコーキってサトウ君達の世界の空飛ぶ大きな乗り物の1つ、だっけ?

1度に何百人も乗れるって言う、飛行船の凄い奴」

「はい、そうです。

俺達の世界でもそうだけど、インフルエンザやおたふくかぜなんかの他の人に移りやすい上、重くなりやすい危険な病気に罹った場合。

他のお客さんの安全の為に飛行機への搭乗を拒否される場合があるんです」

「病気になったら乗り物に乗れないって、本当サトウ君達の世界は面倒くさい所があるな。

他のお客さん達が入らない小さな部屋に居て貰うんじゃダメなのか?」

「うーん・・・

飛行機とかの構造とか詳しくないので分かりませんが、法律で禁止されてるので個室に隔離しても多分駄目なんじゃないんでしょうか?

全員がマスクしてても、100%空気感染を防げるとは限りませんし。

罹る時は罹ります」

「そっか。じゃあ念の為に乗せない方が良いのか」


確か旅の準備期間中、大助兄さん達がルグ達に更に詳しく俺達の世界の事を教えていたはず。

その時飛行機の事も話したんだろう。

ピコンさんがその時の事を思い出す様に視線を泳がせてそう聞いて来た。

それに頷き、どうして当時の四郎さん達が飛行機に乗れなかったか説明する。

確か学校保健安全法って言う法律で定められた、罹ったら学校に出ちゃダメって決まってる感染症。


インフルエンザとか、


おたふくかぜとか、


麻疹とか。


そう言う沢山ある病気のどれかに罹ったら、出席停止期間の基準。

インフルエンザの場合は、発症してから5日経っていて熱が下がってから2日過ぎないといけない・・・

んだっけ?

ちょっと曖昧だけど、多分そうだったはず。


その期間を過ぎたら乗れるらしいけど、でも完全に治って人に移る心配がなくなってもお医者さんの診断書が無いと搭乗拒否されるんだったよな?

絶対そうだったかは思い出せないけど。


そしてそれが分かっていてそう言う病気に罹ったお客さんを乗せたら、きっと間違いなく記者会見ものの大事件になるだろう。

そう言う事を説明すれば、ピコンさんも漸く小学生の四郎さんが帰れなかった理由に納得してくれた。


「因みに言いますが、俺は小学校の修学旅行でインフルエンザ。

えーと、流行性の病気には罹ってませんからね?」

「そうなの?」

「はい。

そもそも小学校の修学旅行は四郎さんと色々違いますので」


中学校の修学旅行は行き場所が京都だった事だけじゃなく、巡る場所の順番まで殆ど同じだった。

なのに、小学校時代は大分違う。

俺は四郎さんと違い流行性の感染症のピークの時期と修学旅行の時期が被ってないし、俺が行ったのは東京の国会議事堂と神奈川の横浜だ。

1日目は東京でガッツリ勉強して、2日目は遊園地と水族館で遊ぶって言う殆どバス移動のスケジュール。

それに比べ四郎さんは、1ヵ所で勉強する場所と遊ぶ場所を巡れたそうだ。


「確かに俺も小学校の修学旅行で人工島に行きましたよ。

八景島って言うんですけど。

でもそこは車や徒歩でも行ける場所なので、四郎さんの様な悲劇は起きませんね」

「じゃあ、完全にシローの世界だけの出来事だったって事か?」

「多分?

四郎さんに前聞いた、その島が出来る切っ掛けになった小さな子供でも知ってる様な歴史的事件とかも俺の世界では起きてないし。

それにジェイクさんが言っていた8代目勇者の元の世界の話の中にも『夕霧島』もその事件も出て来なかったし、四郎達の世界にしかなさそうな国の名前とかも出てきてなかった・・・はず」


『人工島に行った』って点だけは四郎さんと一緒だけど、それ以外は全く違う。

それを聞いて浮かんだルグの疑問に俺はそう頷いた。

年齢と、四郎さんの兄さん達が行方不明になった(『召喚』された)事、些細な程細かい事を抜かせば、かなり似ている俺と四郎さんの世界。


その中で『小学生時代』だけ、ハッキリと分かる位の違いが浮き出ている。


『小学生時代』に何が起きたのか、何を体験したのか。

それによって俺と四郎さんの世界には一目で分かる位、未来への道を違えた。


その『違い』の根本にある物の1つが、巨大な人工島『夕霧島』と、その島に関わる四郎さんの世界に大いなる衝撃を与えた大事件。


『姉さん』が生まれるかどうかと言う個人的な違いじゃなく、『世界そのもの』に関わる大きな違い。

それの1つが『夕霧島』関連なんだ。

これによって『俺達の世界』系列の世界と『四郎さん達の世界』系列の世界の明確な分岐点が見えた。

そして暇を見てジェイクさんに詳しく教えて貰った情報から考えるに、8代目勇者の出身世界は『四郎さん達の世界』より『俺達の世界』の方が近い。

その事から考えて、『夕霧島』関連のアレコレは『四郎さん達の世界』限定の出来事と考えていいと思うんだ。


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