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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第2章 チボリ国編
354/498

123,デュラハンとスケルトン 


 ザラさんがスケルトンを切って、俺が運んで、クエイさんが溶かして。

そうやって黙々作業をこなしてどの位経っただろう?

ふと顔を上げたクエイさんが俺に声を掛けてきた。


「おい、死人モドキ。

そろそろジェイク達迎えに行くぞ」

「あ、はい。分かりました」


巨大スケルトン林を進撃するザラさんのお陰で俺達が今居る広場はかなり広くなった。

きっと大き目のコカトリスやミュドラでも余裕でのびのび寛げるだろう。

此処まで広ければ谷から吹く風に邪魔される事もないよな?

だからクエイさんも『フライ』を使ってルグ達を迎えに行けって言ったんだろう。


「・・・ん?えッ!?何だ、コレ!?

デッカイダンゴムシ!!?」

「おい。何グズグズしてる?」

「いいえ、あの・・・何か変なダンゴムシ?

みたいなのが沢山乗ってきて、浮かせられません・・・」

「変なダンゴムシ?

・・・・・・デュラハンじゃねぇか」

「え!?コレが!!?

思ってたより小さい・・・・・・」


ジェイクさんに助けを求めた誰かを探す意味でも、このままザラさんはスケルトンの伐採を続けるつもりらしい。

ウエストポーチに一旦入れていたレジャーシートを広げ、俺の監視役のルグ達の代わりに一緒に行くと言うクエイさんも乗って。

かなり遠くまで行ったザラさんと通信鏡で話し合い、そう言う事になった事をクエイさんが軽く教えてくれて、


「さぁ飛ぼう」


と『フライ』の呪文を唱えようとしていたら、何処からか大量の丸まったダンゴムシみたいなのがスッゴイ勢いで俺達の周りに集まってきた。


ダンゴムシモドキ改め噂のデュラハン達の大きさはバラバラで、大きいものでソフトボールサイズ。

小さいものは中位のビー玉サイズだろう。

唯総じて想像していたよりも小さい。

この巨大スケルトンのサイズから考えて、少なくとも俺と同じ位はあると思っていた。


それともこのデュラハン達は、この巨大スケルトンを生やしたデュラハンとはまた別のデュラハンなんだろうか?


まぁ、兎に角。

見た目の小ささに比べデュラハン達は意外と重いんだろう。

あっと言う間にレジャーシートを覆い隠したデュラハン達のせいで『フライ』を唱えてるのに全然レジャーシートが動いてくれない。


「何でこのデュラハン達は俺の邪魔してるんでしょう?」

「邪魔してる訳じゃ無くて、彼等も上に行きたいみたいだよ?

多分、サトウ君に自己アピールしてるんだと思うけど、通信鏡越しだし一斉に喋ってるから上手く聞き取れないんだ。

けど、『だから自分も連れて行け』って皆言ってるのは確かただよ」

「定員オーバーです。

乗るなら小さめの代表1匹だけにしてください」


ザラさんとの話が終わった後そのまま通信鏡を使いジェイクさんにデュラハン達の目的を聞くと、そう返された。

別に俺達がルグ達を迎えに行くのを邪魔してる訳じゃない、らしい。

でも皆が皆スケルトンの上に行きたいらしく、我先にレジャーシートに乗り込みこの状態。

俺には鳴き声らしき音すら一切聞こえないけど、デュラハン達は口々に何か言ってるようで、ジェイクさんでも何が目的か全く分からなかった。

だから、もしかしたら此処から避難したくてレジャーシートに乗り込んだかもしれない。


けど、俺の目的はルグ達の迎え!!


取り合えず誰か1匹代表で連れて行って直接ジェイクさんと話して貰おう。

いきなり沢山連れて行っても今みたいにワチャワチャしてジェイクさんが聞き取れないだろうし、デュラハン1匹の重さが分からないから大きなデュラハンと一緒に飛べるか分からない。


だから連れて行くのは小さくて軽い1匹だけ。


そう俺はデュラハン達に伝えた。

会話は出来なかったけどジャックは俺達の言葉が分かっていたし、同じスライムの仲間ならきっとこのデュラハン達も俺の言葉を分かってくれるはず。

そう思って声を掛けたんだけど、野生のスライム相手には無理だろうか?

何度も襲ってきたローズヴィオラスライムやエヴィンヴラウデンンススライムみたいな危険なスライム居もるし・・・

やっぱジェイクさんじゃ無いとダメ?


「えっと、君が代表・・・で良いのかな?」

「そうだって言ってるよ」

「そっか。あー、じゃあ、えーと。

・・・・・・君達の目的は良く分からないけど、まず上に残ってる俺達の仲間の所に行って良い?

そこにはこれに映ってる、君達の言葉が分かる人も居るから・・・・・・

それじゃあ、ダメ、かな?」

「・・・うん・・・・・・うん。

どうもその子もボクに用があるみたいだね。

助けを求めていたのはこのスケルトンを生やした子じゃなくて彼等みたいでね?

ボク達の力がどうしても必要で、直接相談したいみたい。

だからそのままこっちに来て貰って大丈夫だよ」

「そう言う事なら、分かりました。直ぐ行きますね。

あ。

飛行中は色々危ないから、デュラハン君はクエイさんの近く・・・

えーと、もう少し真ん中来てくれる?

そうそう。じゃあ、行くよ。『フライ』!!!」


きっと話し合いをしていたんだろう。

デュラハン達はその場で固まっていたけど、ジェイクさんの指示のもと暫く待っているとピンポン玉より少し小さい1匹を残して皆レジャーシートから降りてくれた。

目的地が違うと途中で暴れられたら危ないし、一応残ったデュラハンに声を掛けてからレジャーシートに改めて『フライ』を掛ける。


「おーい!!サトウー!!!クエイー!!!」

「こっち、こっち!!!」

「あ、居た。

すみません!!お待たせしましたー!!!」


通信鏡越しのナビゲートを頼りに飛ぶ事数分。

叫ぶルグとマシロの声が聞こえ、その声を頼りに進んで。

何回か道に迷ったけど漸く手を振る4人の姿が見えた。

どうにか無事ルグ達の元に辿り着けて良かったよ。

やっと一息つける。


「次は何処に行けばいいでしょうか?

ザラさんの所に戻ればいいですか?」

「もうちょっと待ってね・・・・・・・・・

うーん・・・・・・それなら・・・

そう、だね・・・・・・」


ピョンと両手の上に乗ったデュラハンに、いつも以上に目の色を変えながら、何度も、何度も、相槌を打つジェイクさん。

そんなジェイクさんに痺れを切らしてそう尋ねる。

スライムの声が聞こえない俺達にはジェイクさん達の話が何処まで進んでるか全く分からない。

だからただ相槌を打つジェイクさんを見つめてる時間が異様に長く感じるんだ。

実際は数秒の出来事だったかもしれないけど、『ちょっと待って』っと言われた後の時間も体感時間は数十分はあった。


「うん。次の行先はスケルトンの下で大丈夫だよ。

まずはザラ君と合流しよう」

「分かりました!!

皆さん、レジャーシートに・・・・・・

この人数なら箱の方が安全か」


ザラさんの所に行こうとジェイクさんが言って、俺とジェイクさん以外の皆も漸くかと息を吐く。

やっぱり皆も待ち時間が長く感じてたんだな。

だからこそ待ってましたとばかりに力強く頷いて、レジャーシートに『フライ』を掛けようとしてやめた。


よくよく考えたらこの場にはレジャーシートや木の板で安全に飛べる定員の倍居るんだよな。

1度に飛ぶなら此処に来た時の様な箱型の物じゃないと・・・


どう言う原理か未だに詳しく分かってないけど、上が開いた箱の方が板よりも1度に『フライ』で運べる人数が多いんだ。

まぁ、1番多く、かつかなりの重量の物でも1度に運べるのは、蓋の閉まった箱型なんだけど。

一応今の所1番しっくりくる理由は、歴代『フライ』所有者のイメージのせい。


どんな大きさでも基本箒を思わせる棒状の物は2人までで、


魔法の絨毯っぽい板状の物は5人位。


次に多く乗せられる上の開いた箱型は、観光用の大きな気球のイメージから10人位で、


1番多く乗せられる蓋の閉まった箱型は、飛行機の様に多分数百人位かな?


蓋の閉まった箱型。

例えばカシスさん達に襲われた時に飛ばした馬車みたいなのは、あの1回きりだから良く分からない。

でも10人丁度でギリギリ飛べた上の開いた箱型よりも、10人プラス重くて大きいヤドカリネズミを乗せて暫く飛べて、途中でマキリさんも乗り込んで。

つまり、最終合計11人と一匹と言う今までで1番多い人数を問題なく運べた蓋の閉まった箱型が1番多く運べるのは間違いない。


まぁ、俺の経験不足が理由か、


ウォルノワ・レコードの壁を追加した人による制限か、


それともパイロットじゃ無いのにこんな大人数と一緒に安全に空を飛ぶのは不可能だって言う思い込みか。


何にしても死ぬ気で頑張んなきゃいけない位、馬車みたいなのを操作するのは物凄ーく大変なんだよ。

だから俺個人で安全かつそこまで大変じゃ無い『フライ』の使い方って言うと、俺含め、


『3人位をレジャーシートや木の板で運ぶ』


か、


『9人位を気球っぽい物で運ぶ』


のが限界。


と言う事を思い出しつつ辺りを見回す。

えーと、乗ってきたあの木箱は何処に・・・・・・


「えーと、ピコンさんが作ってくれた箱は・・・」

「ちょっと待ってろ。今出すから」

「あ、大丈夫。もう少し大きなの作ったから」


ルグがカバンから木箱を出す前に倍以上大きく、角や稜が丈夫な金具で補強された木箱を作ってくれたピコンさん。

木箱の形は太めの長方形で、俺達全員が軽く足を延ばして座れる位余裕がある。

急いで作ってくれたから木箱にしか見えないけど、ベンチみたいなのもついてるし、多分これは大き目のボートなんだろうな。


「えっと。

態々ありがとうございます、ピコンさん。

エドもありがとう」

「ハハハ。良いよ良いよ。

もう全員の下敷きになるのが嫌なだけだから」


お礼の言葉に笑って返すピコンさんの目からは完全にハイライトが消え、遥か遠くを見つめていた。

そんなに俺達重かったんですね。

本当にごめんなさい!


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