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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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115,矢野高校集団失踪事件の真実  後編


「まぁ、そう言う訳で、俺達はジャックター国以外の色んな国に数人ずつバラバラに『召喚』された訳だ」

「え?ジャックター国以外?

ジャックター国ってジェイクさんやマシロちゃんの故郷ですよね?

何でそこだけ?」

「詳しい理由は知らないけど、ジャックター国だけは『夜空の実』が完成させちゃいけない『悪いモノ』だって伝わっていたみたいなんだよ。

だから『異世界人』を『召喚』しないどころか、他の国に『召喚』された俺達まで目の敵にしてたんだ」


そのせいで何度殺されかけた事か・・・・・・

そうため息を吐く木場さん。

その顔には当時の苦い思い出を表す様に濃いしわが浮かんでいた。

昔話とかでも伝わってないし、1番詳しそうなジェイクさんも分からないそうだから、今ここでは詳しい事は何も分からない。

けど、どうも5000年前のジャックター国はナト達にとっての『レジスタンス』の人達の様な存在だったらしい。


世界を滅茶苦茶にする危険人物と見なして自分達の命を狙ってくる敵対者。

それが木場さん達にとってのジャックター国だった様だ。


「君達みたいにこっちの話を聞いてくれる様な奴等だったら良かったんだけどなぁ。

いや、俺達にも原因は有ったんだろうけどさ。

お互い言葉は通じてるのに全然会話が成立しなくて、こんな風に落ち着いて話し合う何って最初から諦めてたんだ」

「あの頃、助けてくれるあの世界の住人何って殆ど居なくてね?

自分達以外頼れるものが全くなかったんだ。

私達も生き残るのに必死で、君達側に立った考え方何って出来なっかったんだよ」

「いや・・・そう、か・・・・・・あー、うん。

そうか」


泣きそうな困った表情を浮かべそう言う木場さんと高橋のお父さん。

故郷の事を悪く言われた様に感じ軽く眉を寄せたジェイクさん達も、口を開いたは良いものの良い言葉が出て来なかったアルさんも、その木場さん達の様子に困惑している様だ。

取り合えず、5000年前はお互いが心身共に余裕がない、かなり酷な時代だったのは分かった。

本当に俺達は『良い時代』に『召喚』された様だ。

その運の良さには本当に感謝する事しか出来ない。


「俺達はどうにか追い返せてこうして生き残れたけど、ベニタの話じゃ実際に問答無用で何人も殺されていたらしい。

そう考えると本当にいい時代になったと思うよ」

「風山 紅太郎がそう言ってたんですか?」

「そうそう。

俺達があの世界で会った同級生は皆生きてたからさ。

実際にそう言うのを見てきたのはベニタだけなんだ。

だから全部ベニタからの又聞き」


俺が木場さんの『本当に居良い時代になった』って言葉に頷いている間に、そう紺之助兄さんが聞く。

暗い顔から一転。

それに困った様な懐かしそうな笑みを小さく浮かべ頷く木場さん。

紺之助兄さん達が説明している時に判明した事だけど、やっぱり花なり病になった木場さんの同級生は空継先生だった。

そして『コウタロウ』はベニタこと風山 紅太郎の事。

まさか本当に空継先生夫婦だったとは・・・

世間って本当に狭いな?


「世界中回ってたのベニタと空ちゃんだけなんだよ。

ベニタ達が来るまで俺達含め殆どの奴は基本、『召喚』された国から動かなかったからなぁ」

「あれ?

亀岡と鶴野さんもそうじゃ無かったけ?

丸山と小林は最初から同じ島に居たのは聞いたけど、2人は最初別の島に『召喚』されたはずだぞ?」

「確かにカメと秋ちゃんは最初別の島に居たけどさぁ。

真っすぐヒヅル島に来たから、世界中巡るって程じゃ無いだろう?」

「そう、だったけ?」


25年も前の事だから高橋のお父さんも細かい所の記憶は曖昧なんだろう。

木場さん夫婦と高橋のお父さん、それと一緒に行動していた同級生の内2人は、今のヒヅル国本土がある場所に当時存在していた別々の国に『召喚』され、もう2人はヒヅル国近くの小島が領土だった国に『召喚』されていたらしい。

比較的狭い島に『召喚』された者同士だからその7人は集まれたけど、他の同級生はそうもいかなかったそうだ。

そんなバラバラな生き残りの同級生達を集めたのが、今のローズ国のどっかに存在した国に『召喚』された空継先生夫婦。

正確に言えば空継先生は花なり病の影響で昏睡状態で、風山 紅太郎が1人で頑張っていたみたいだけど。


「取り敢えず、あの世界のジャックター国以外の国、全部旅したのはベニタ達だけだった訳だ。

それで、旅してる間に見つけた俺達とオーブを集めて、実験に使われなかった最後の『オーブ』がある白悪魔達の国に乗り込んで」

「この世界に帰って来た?」

「そう。

『夜空の実』は完成しなかったけど、それでも本物の『オーブ』の力は凄くてさ。

集めた『オーブ』の力全部消費すればベニタ1人でも異世界に行く為の魔法を使えたんだよ」

「それで『黄バラの剣王が鳴らした鐘』教、君達と敵対していた異世界人も一緒にこの世界に来たと言う事か」

「あ・・・あー・・・・・・」


木場さんの説明を聞いて神妙な面持ちで頷く刑事さん。

その確認の様な質問に、木場さんの目が泳ぐ。

高橋のお父さんも困った様な顔をしてるし、25年前この世界に来たあの世界の人達は白悪魔達じゃないって事なんだろうか?

ルグ達もそうだけど、この世界に来ると魔族の人達は強制的に『人間』の姿になってしまう。


角とか翼とかフルオープンにしていたジェイクさんは扉の開いた祠からある程離れた瞬間、変化石を持っていないのに急に光に包まれて角とか消えたし、

最初から変化石の力で人間に化けていたルグとクエイさんはパッと見分からりずらいけど、元の姿に戻れないらしい。


多分、この世界の知的生命体が『人間』しか居ないから、この世界のルールに従ってそうなったんだろう。

たぶんそれは『ゲート』に似た儀式魔法を使った25年前も同じで、だから巻き込まれる様に木場さん達と一緒にこの世界に来た白悪魔達もあのクリーチャーの姿じゃなく普通の人間の姿をしていた。

そう思ってたけど、木場さん達の態度的に違うんだろうか?

25年前の事件の犯人だって言われたあの世界の人達は、この世界に来ても木場さん達を襲っていたって話だし、元々戦ってる状態でこの世界に来たならそうなっても仕方ないと思うんだけど・・・・・・


「あー、アイツ等は、だなぁ」

「白悪魔じゃなく、アーサーベルの英勇教信者。

つまり、元々アンタ等の仲間で、一緒にキール氷河に乗り込んだ俺達の世界の人間って事だろう?」


視線をさ迷わせたまま言葉を選ぶ木場さんに、そう予想もしていなかった事を言うアルさん。

そんなアルさんに木場さんは驚いた様に数秒固まって、苦笑いで頷いた。


「あぁ、その通りだ。

君の言う通り、彼等は元々ベニタの『仲間』だった奴等だ。

聞いた感じ、彼等の事は伝わってないんだろう?

良く分かったな」

「良く分かったも何も、ハッキリ言ってんだよ。

なぁ、キユ?」

「あぁ。

アンタ等にはどう聞こえてるか分からないし、かなり遠回しな言い方なのが気になるけど・・・

私達には『黄バラの剣王が鳴らした鐘教』ってのがウルメール辺りの方言で、『アーサーベルで信じられてる宗教』って言ってる様に聞こえるんだ」


アルさんに話を振られたキユさんの言葉が信じられず、周りに居るルグ達に本当かどうかホワイトボードを使って確認する。

その結果、全員がそうだと頷いた。

え、じゃあ、つまり?

木場さん達は一緒に戦っていた仲間を、


「こいつ等が自分達を誘拐して、同級生達を殺した犯人です!!

逮捕してください!!!」


って警察に突き出したの?

何で?

何でそんな裏切る様な事・・・・・・


「異世界に連れて来られた人間がどう思うか。

アンタ等が分からない訳ないよな?

どうして嘘吐いてまで仲間を売る様な事をした?」

「嘘は言ってないさ。

彼等は俺達を誘拐した、『召喚』した張本人達だ。

俺達を連れ去り、同級生達を何人も手にかけた。

誘拐殺人犯なのは間違いない」


俺以外もそう思った様で、代表する様にアルさんは険しい表情でその事を追求しだした。

それに返した木場さんの言葉はこれまた予想外の物で、さっき以上の動揺とざわめきが俺達の間を走り抜ける。


「いや、そもそもベニタはアイツ等の事も俺達の事も、『仲間』何って少しも思っていなかっただろうよ。

あの時のアイツに『仲間』は居ない。

居たのは『守るべき奴』と、『敵』だけだ」

「・・・最初から、復讐の為だったんだ。

風山が彼等を集めたのは」

「ふく、しゅう・・・?それって・・・・・・」

「・・・・・・ここまで有名な俳優になれる位、あの頃からアイツには演技の才能があったんだよ」


元々計画されていた事だったんだ。

自分達も騙された。

それだけを言うと、木場さんも高橋のお父さんもそれ以上の詳しい事は言おうとしなかった。


風山 紅太郎は、自分達を『召喚』した人達をこの世界に連れてきて、自分達と同じ目に合わせ様としたって事なのか・・・・・・

その為にその持ち前の演技の才能で底知れない復讐心をひた隠し、自分達を『召喚』したあの世界の人達だけじゃなく木場さん達も最後の最後まで騙して・・・ 


何と言うか・・・・・・

この瞬間で風山 紅太郎の印象がガラリと変わったな。

風山 紅太郎って愛嬌のある役や爽やか系の役が多いって感じで、素も結構親しみ易いってよく言われてたけど、実際はジェイクさんに似た感じ?

うん。

多分、恐ろしい物を腹の奥底で飼ってるタイプなんだろうなぁ。


「まぁ、あの事件の真実をザックリ言えばそんな感じだ。

正直言えば俺達もあの世界の事は詳しくないんだよ。

『オーブ』を集めていたのも、白悪魔やジャックター国の奴等と1番戦っていたのも。

全部ベニタだ」

「1番真実に近いのは風山 紅太郎って事ですか」

「あぁ。だけどアイツに聞くのは無理だと思うぞ?」

「何処に行っても引っ張りだこですもんね。

最近は映画撮影で海外ですっけ?」

「そうそう。

忙しい上に時差もあるからなぁ。

電話やラインにいつ出るか・・・・・・」


俺やナトがどうして『召喚』されたのか。

それは大体分かったけど、これ以上の事は木場さん達も知らないらしい。

この世界の住人であの世界の真実を知ってるのは、多分風山 紅太郎ただ1人。

でもその風山 紅太郎は大人気俳優故に忙し過ぎて掴まらない。

日本に居ないなら警察の力も何処まで通用するか・・・


色々分からない事が残ってるけど、これ以上はこの場で解き明かすのは無理だろうな。

いや、今までの話を整理したら何か分かるかもしれない。

一気に色々聞いて頭がこんがらがってきてるし、1度今までの情報を整理しよう。


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