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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
342/498

112,『ゲート』を開いて 後編


「父さんッ!!!」

「大助!!」

「ッ!!!紺之助、貴弥!!?」

「逃げ

「動くなッ!!!」


3家族全員固まってコカトリスに追い詰められた絶体絶命の父さん達と、怪我をしながらもバラバラの配置でダーネアやスライムと戦う警察官達。

その光景を目にして思わず祠の中に駆け出していた俺と紺之助兄さんの横を何かが駆け抜ける。

動くなって鋭い大声で言ったその声はルグの物で、ハッと気づいた時にはルグが父さん達を襲っていたコカトリスを蹴り飛ばしていた。


「うわぁあああああああ!!!!」

「ッ!!『スモールシールド』!!」


父さん達の前で後ろ蹴りを放ったポーズをとっているルグと、ゴキュリと鈍い音を立て短い悲鳴を上げながら横に倒れるコカトリス。

その光景に何が起きたのか理解出来無いでいる俺の耳に警察官の1人の悲鳴が届く。

その悲鳴に使えるかどうか何て考える暇もなく、俺は『スモールシールド』の呪文を唱えていた。


「ぅッ!」

「な、なんだ!?このガラスみたいなのは!!?」

「危険です!!下手に動かないでッ!!!

『アタッチマジック』、『ファイヤーボール』!!」


スライムに襲い掛かられ尻餅を着いている警察官達の前に『スモールシールド』を張り、何十にも張った『スモールシールド』を壊してまだ警察官達を襲おうとしてるスライムに足元に落ちていた石を投げる。

『ファイヤーボール』を纏わせた事が功をなしたのか。

スライムは警察官達から俺に標的を変えた様だ。


「ッ!!」

「避けて、キビ君!!!」

「わッ!!!」


飛び跳ねたスライムの鋭い口が目の前まで迫ってきて、マシロに避けろっと言われ、転がる様に横に避ける。

分かったって言うつもりだったけど、避けた時の勢いが良すぎて上手く声が出なかった。

ゴロゴロと暫く転がって、急いで体を起こす。

さっきまで俺が居た場所では懐中電灯の様な物でスライムを焼き殺すマシロが居た。

その懐中電灯は唯の懐中電灯じゃ無くて、刃の部分がクリーム色の雷で出来た剣の様だ。

いや、明け透けに言えばどっからどう見ても柄の懐中電灯度が増したライ〇セー〇ーです。


「サトウ!」

「キビ君、大丈夫!?」

「だ、大丈夫・・・ありがとう、エド、マシロ。

助かった・・・」

「どういたしまして。

他は・・・・・・

ジェイク達が倒してくれたみたいだね」


側に来て助け起こしてくれたルグとマシロにお礼を言って辺りを見回す。

残りのスライムやダーネアはジェイクさんとキユさんが倒してくれた様で、マシロがそう言った少し後に俺の周りに各種『ドロップ』アイテムが散らばった。


「父さん達、無事


「確保ぉおおおおお!!!!!」


え?」


このコカトリス達の体や『ドロップ』した素材は、後でルグ達に有効活用して貰おう。

そう思いつつ、無事コカトリスが倒された事にホッとしつつ、父さんに無事かどうか聞こうとした。

だけどその言葉は、聞き覚えの無いダンディーな『確保』の声に遮られる。


「きゃ!!」

「このッ!!何するんだ!!放せ!!!」

「エド!マシロ!!

な、何してるんですか!!?

エド達を放してください!!!」


何が何だか理解できない内に、警察官達に取り押さえられそうになっているエド達。

何で警察官達はそんな怖い顔でエド達を捕まえようとしてるんだよ!?

意味が分かんない!!


「貴弥!!!お前はこっちに来るんだ!!!」

「待って、兄さん!!

エド達が!!!お願いだから、待ってッ!!!」

「良いからッ!!!!」


駆け寄って来た大助兄さんが、俺をエド達から引き剥がす様に腕を痛い位強く掴んで引っ張っていく。

待って、て言う俺の言葉も全力の抵抗も無視して俺を容赦なく引きずる大助兄さん。

後ろからチラリと見えた横顔は、焦りが混じった恐ろしい形相だった。


「兄さん!!

お願いだから、俺の話・・・・・・ッ!?

ィ、ア・・・」

「・・・・・・貴弥?」

「あ”ぁあ”あああああ”ああああああああああああ―――・・・・・・・・・」

「貴弥!!!?」


大助兄さんに引きずられ、祠からドンドン離れていく。

そしてある程度離れた途端、急に体中に激痛が走った。

立っている事も出来ない激痛。

思わず地面に倒れこんで、痛みを和らげ様と藻掻く。

目がチカチカ歪んで、風景がグルグル回って。

痛い、苦しい、以外何も分からなくなる。


「何で!!?

スマホはちゃんと持ってるのに!!

何で貴弥、花吐いてるんだよッ!!!?」

「キビ君!!キビ君ッ!!!

返事して!!!ちゃんと息してよ!!!」

「サトウ!!

死ぬなッ!!!しっかりしろ!!

サトウッ!!!」

「ゲホッ!!ゲホッ!!!!」

「貴弥!!」


何時間も続いた様に感じる、海月茸農園での苦痛以上の地獄の様な痛みが治まって、激しく咳き込んで。

戻って来た音を頼りに、涙で歪んだ視界で辺りを見回す。

いつの間にか、ルグとマシロと紺之助兄さんも側に来てくれた様だ。


「・・・、・・・。・・・・・・」

「サトウ?」

「・・・?

・・・・・・、・・・、・・・・・・?」

「どう、したの、キビ君?

口、パクパクさせて。

何が言いたいの?」


自分が今どうなってるか全く分からないけど、とりあえず痛みも苦しさもお完全に収まったんだ。


「もう、大丈夫。心配しないで」


と言ったはずが、声になっていない。

聞こえるのはクチャクチャとした口が動く音だけで、大丈夫の『だ』の音すら出る事はなかった。

その後言ったはずの、


「あれ?

もしかして、声、出てない?」


の言葉も外には出なかった。

もう1度『召喚』される前と同じ様に、声が一切出ない様だ。

それに起こして見回した体にはあの緑色の手形の様な痣が一切、綺麗サッパリ無くなっていた。

これは・・・

完全に元の姿に戻ってるって事で良いのかな?


『声でない

カミと目、黒?』


「あ、あぁ。花なり病になる前の姿に戻って・・・」


少し汚くなってしまったけど、どうにかホワイドボードにそう書いて周りの皆に見せる。

予想通り元の姿に戻ってる様で、その事をルグが教えてくれた。

1回目にこの世界に戻って来た時も、もう1度あの世界に行った時も、ずっと俺は気絶してたからなぁ。

姿が変わるのにこんな激痛が伴うとは知らなかった。

いや、1回目に戻った時とか、気絶してなかったら、間違いなくショック死してただろうなぁ。

逆に気絶してて良かったかも。


「ってそうじゃない!!

サトウ、直ぐクエイの所行くぞ!!」

『大丈夫』

「何言ってるの、キビ君!!!

大丈夫な訳ないでしょ!!!

そんな何時死んでも可笑しくない様な骨と皮しかない体でッ!!」

『大丈夫』

「嘘!!正直答えて!

具合は!?痛い所無い!!?

ちゃんと、心臓動いてる!!?

呼吸出来てる!!!?」


何で?

と思って俺を担ごうとするルグに『大丈夫』と書き直したホワイドボードを見せたら、マシロに怒られた。

いや、本当に今は大丈夫だから。

何時死んでも可笑しくないは流石に大げさだから、落ち着いて?

そう言う思いでもう1度ホワイドボード見せたら、泣きながら怒られてしまった。


「ちょっと待って!!

お前等、貴弥を何処連れて行く気だ!!

貴弥を放せ!!!」

「医者の所に決まってるだろう!!

サトウ、助けたいならお前の方が放せ!!!」

「信じられるか!!」

「何だとぉ!!

大体、お前こそ誰だよ!!!

ナトウとコンの何なんだよ!?」

「兄ちゃんだ!!」


ここまで酷いとか聞いてない!

と怒って俺を肩に担ぐルグ。

それを喧嘩腰に俺の腕を掴んで大助兄さんが止める。

そのまま何故か、俺を掴んだまま口喧嘩を始める2人。

そんな2人の声を聴きつつ、辺りをもう1度良く見回せば、警察と『レジスタンス』の人達が乱闘を起こしていた。

非現実的な生き物に襲われて、警察も混乱していたんだろう。

後で聞いた話によると、この時ルグ達を魔女の仲間だと思い込んだ警察が祠から『レジスタンス』のアジトに乗り込んで来たらしい。

それでこの乱闘騒ぎ。


あー、うん。

皆大分混乱してるな。

と言う事なら、



ピィイイイイイイイイイッ!!!



俺は何時かの様に思いっ切り笛を吹いた。


「うるさ!!何するんだよ、サトウ!!?」

『とりあえず、落ち着こう?』

「お・・・・・・」

「・・・?」

「落ち着けるかぁあああああああ!!!!!!」


あー、逆効果だったか・・・・・・

俺の思いに反して、大助兄さんの怒号が林に木霊した。


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