101,話し合い、騙し合い、バカし合い 4言目
「ナト、高橋。
お前達には信じたくない、辛い話だと思う。
けど、この際だからハッキリ言うよ。
そもそも、お前達はこの世界の殆どの人達にとっては『正義の味方』なんかじゃないんだ。
この世界を滅茶無茶にしようとする、唯の『怪物』。
この世界の『敵』だ!!」
「キ、ビ?」
「確かに何前百、何千年も昔は、この世界にも『勇者』が必要だったよ?
でも、今は必要ないんだ。
話し合いで、人間と魔族の国は平和的に平等な同盟を組もうとしてたんだ。
それを滅茶苦茶にしてアンジュ大陸国に。
ユマさん達、魔族の国に戦争を仕掛けようとしてるのは、ローズ姫達。
この国の王族達なんだよ!
その戦争の為の『兵器』として呼ばれたのが、ナト達なんだッ!!」
魔女に向いていたナトの目が見開かれて俺に向く。
クエイさん達が言ってたけど、ウンディーネや特殊なウンディーネとのハーフが使う『魅了』の魔法やスキルは、強いショックを与えると解けるらしい。
だから、あえてそう酷い言い方をした。
本当はナト達の事、ルグ達みたいに『怪物』や『兵器』なんって言いたくない。
でも、そうでも言わなきゃ、今まで伝えた事実でも解けないナト達の洗脳を解く事は出来無いんだ。
ルグ達にワサビを突っ込んだ時とは違う。
ここは本当に、一切の慈悲無く心を鬼にしないといけない場面なんだ。
2人を連れ戻す為に、ナトと高橋の心と、俺の良心に深い傷を作ったとしても、雀の涙程の容赦もなく残酷な事実を突きつける!!
「いいか、良く聞け!
そもそもオイラ達、このローズ国の多くの住民達も。
王族や貴族共以外のローズ国民全員、その戦争に反対していたんだ!!
昔は知らないけど、今を生きるオイラ達は、魔族と戦うつもりはない!!!
一緒に生きていくつもりだったんだッ!!!」
「サマースノー村でも言っただろう?
最初から必要ないって!!
そんなモン、何処にも無かったって!!!
最初から平和的に解決する話を蒸し返して、滅茶苦茶にしたのはオーサマ達だろう!?
仕方ない事何って、最初から何にもなかったんだッ!!!
オーサマ達が戦いなら、お前達だけで勝手にやれ!!!
俺様達を巻き込むな!!
反対にする国民を犠牲にするなッ!!!」
俺の言葉を補足する様に、ルグとザラさんが叫ぶ。
その叫びは激しく、そして心を深くえぐる位鋭かった。
ザラさん何って、感情が高ぶり過ぎて、笑顔の仮面と一緒にボロボロと泣き出してしまった位だ。
誰も詳しく教えてくれなかったから、未だに良く分からない。
けど、サマースノー村での戦いは、今のザラさんの姿を見るに、激しい感情をぶつけ合う様な戦いだったんだろう。
「・・・知らない。そんな話、俺達は知らない!!」
「そもそも、俺達が会った国の奴等は、皆魔王や魔族に苦しめられてたんだ!!
平和的に話し合い!?
そんなの嘘に決まってる!!!」
「だから、ナト達は騙されてるって言っただろう?」
知らないと叫ぶナトと、嘘だと決めつける高橋。
やっぱり、そう簡単には信じられないよな。
ずっと正義の味方だと思っていた自分達の方が悪だと言われたんだ。
簡単に納得してくれない。
その事を分かっていても、2人の言葉にルグ達の視線が厳しくなるのを背中で感じた。
かなり怒って殺気立ってる事は分かるけど、攻撃を仕掛けようとしないだけまだましだと思う事にしよう。
「それに、『抵抗する人の意思を、無理矢理暴力で従わせて』、とも言っただろう?
ルディさんとキャラさん、だっけ?
俺を攻撃した人含め、ナト達が会った殆どのローズ国民は、ローズ姫達に操られてるんだよ。
ゾンビって言う、自我を奪う毒薬を使われて、魔法で操られて。
ローズ姫達に都合が良い、人形にされて、言いたくない事言わされて、やらされてる」
「何、言ってるの、サトウさん?
私達は操られてないし、人形じゃ無いよ?
私はちゃんと自分の意思でここに居る」
「知ってる?ナト、高橋。
ルディさんって元々、綺麗な赤い目をしてたんだよ?
今、こんな濁った紫色してるのは、ゾンビにされた証拠。
ゾンビにされると、皆目が紫色になっちゃうんだ。
そもそもこの世界って、誰かに操られてたり、酷い病気の後遺症が残ってるとかの状態異常があると、目の色が変わるんだよ。
これが、その証拠」
俺が出来るだけ落ち着いた声でそう言えば、ルディさんが心底不思議そうに言葉を返す。
ルディさんを操ってそう言わせる魔女達は無視して、ルディさんを撮影しながらナトと高橋に近づいて。
ゾンビのページが出たスマホの画面を2人に見せて、そう言った。
「『レジスタンス』の人達も、ユマさん達他の国の王様達も。
皆、ゾンビにされたローズ国の人達を助けようとしてるんだ。
色んな街を水晶で覆って眠った時間で止めたのも、操られて不本意に汚れ仕事何かをやらされない為。
俺達が今此処に居るのも、その為だ」
「う、そだ・・・そんな・・・
こんなの、嘘に決まって・・・・・・」
「嘘じゃない!!
本当に嘘だと思うなら。
俺の言葉も、この画面の中の情報も信じられないって言うなら、自分達のスマホでルディさん達や此処に生えてる海月茸を撮影して調べればいい」
そう言うけど、ナトも高橋も動こうとしない。
魔女に操られてそういう行動がとれないのか、それとも事実を受け入れるのが怖いのか。
ただ不安そうに視線をさ迷わせるか、何かに耐える様に唇を噛むだけ。
ただただ時間が過ぎてくれるのを待つ様なその表情と様子的に多分、怖いんだろうな。
このままナト達の覚悟が決まるまで待っていたいけど、それは魔女達にチャンスを与えるだけ。
せめる手は休めちゃいけない。
心を鬼にするって決めたんだ。
最低最悪で残酷な発破も掛けないと。
 




