表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
329/498

99,話し合い、騙し合い、バカし合い 2言目


「何が起きてるって言うんだよ!!

ルチア達とは関係ないだろう!!?」

「関係あるよ。

高橋は、俺達の世界に帰って来た時の。

あの時の必死な家族の言葉、もう忘れちゃったの?」

「ッ!!」

「最初の事件は、ナト。

お前が1番分かってるはずだ。

お前と一緒に学校に忘れ物を取りに行った俺が、教室に行ったまま1時間近く待っても帰ってこなかった」


家族の事を出され、高橋の言葉が詰まる。

魔女達に洗脳されて色々この世界の事実が見えなくなっていても、あの必死に自分を引き留めようとした家族の姿は忘れられないんだろう。

目に見えて高橋が動揺しだした。

その隙に、未だに衝撃を飲み込めていないナトに声を掛ける。


「あの時俺は、そこに居るローズ姫達に『召喚』され、この世界に。

この世界のローズ国のお城の召喚の間に連れて来られていたんだ。

俺の前にナト達勇者を選ぶサンプルとして、俺の前に『召喚』され、環境の違いから亡くなってしまった。

何処かの世界の誰かかの遺体と入れ替わる感じで」

「いれ、替わる?」

「そう。

25年前の矢野高校の事件は、ナトも高橋も知ってるだろう?

あの事件と同じ様に、俺が最後に居た場所には、誰かも分からない酷い状態の遺体が打ち捨てられていた」


ナト達も25年前の事件がこの世界が原因で起きた事件だと言う事は知っている。

だから、掻い摘んで今もあの時と同じ事が俺達の世界で起きてるんだって事を伝えた。


「この世界に『召喚』された俺は、実験されるだけされて、勇者を呼ぶ準備するって言うローズ姫達に捨てられたんだ。

そんな俺を助けてくれたのが、ルグ達だ。

そして、用済みになって瀕死の重傷を負わせた俺と、俺のスマホと入れ替えて『召喚』されたのが、お前達だよ。ナト、高橋。

2人がこの世界来る前に居たのは、ナトが俺達の教室の目の前の廊下で、高橋が剣道場で合ってるよな?」

「ッ!あ、あぁ。そうだ!!

確かに俺は剣道場に居た!!

だから、それが何だって言うんだよ!!!?」

「・・・ナトは俺のスマホと入れ替わって、高橋は俺と入れ替わった」

「手足を縛られて、明らかにリンチされたと分かる、血だらけの状態の貴弥とね」

「ッ!」


どうにか冷静さを保とうとしてるのか?

普段からは考えられない氷の様に冷たい声音でそう補足する紺之助兄さんの言葉を聞いて、俯いたナトが息を飲むのが分かる。


「頭も後ろから強く殴られていて、1週間も貴弥、目を覚まさなかったし、その間何度も心臓が止まりかけた!

剣道部の子が見つけてくれるのがあと少し遅かったら間違いなく貴弥は死んでたし、救急車で運ばれた後も何度も死にかけたんだ!!!

喉だって執拗に蹴られて一生消えない傷が残って、スキルの無い元の世界じゃ声だって出ないッ!!

それに・・・それに・・・・・・

元の世界だと貴弥は・・・・・・」


その紺之助兄さんの氷は、大粒の涙と共に零れた言葉に簡単に解かされてしまった。

流れる涙のせいで口が回らなくなって、最後はただボロボロと泣く事が出来なくなってしまった紺之助兄さん。

改めて聞くと、本当俺、良く生きてたなぁ。

本当、『往復路の小さなお守り』と、それをくれた仕掛けの扉を追加してくれた人、様々だよ。

ウォルノワ・レコードの追加した壁の事や、『教えて!キビ君』のアップデートや『ミドリの手』何かの出せる物の制限の事。

そう言う面倒くさくて厄介な諸々の事全部、手放しで許せる位にはその事だけで感謝出来るんだ。

何度も同じ事されたらり、時と場合によってはキレるかもしれないけど。


「・・・・・・貴弥を・・・

貴弥をそんな風にしたのが、そこのお姫様達だ。

今は持ってないけど、元の世界に帰れば幾らでも証拠がある。

二ユースにだってなってるし、貴弥の体そのものや診察の結果だってそうだ。

それに、貴弥の体に残ってたのは暴行された傷だけじゃない。

犯人の皮膚の一部や、靴の後もしっかり残ってるんだ!!

君達ごと君の仲間を捕まえて照合するば、簡単に犯人が誰か分かるんだッ!!!」


ある程度涙と一緒に感情を流して、シッカリハンカチで涙を拭って。

目元と鼻の頭同様、真っ赤になった目でキッと魔女達を睨み、紺之助兄さんはそう言った。


いや、紺之助兄さん?

俺の体に犯人の痕跡が残ってたって、初耳なんですけど?

一体どこから仕入れたの、その情報。

刑事さん達が漏らすとは思えないし・・・

まさか、木場さんから?

確かに木場さんは刑事さん達と親しそうだったし、上手く聞き出せたのを俺が上条刑事と話してる間に聞いたとか?


と言うか、そもそも人に付いた靴跡から犯人って絞れるものなの?

地面に残った跡や微物から犯人を特定するってのは、ドラマでよくみるけどさぁ。

()に付いた跡からは無理じゃない?

そもそもあの時、俺は蹴られ続けてはいたけど、魔女達の皮膚が体に付く様な事は・・・・・・

あっ。水に顔押し付けられた時のか。

あの時、押し付けた人、手袋してなかったのかな?


「で、出鱈目です!!

信じてはいけません、勇者様!!

こんなの、魔王達に言わされてるだけです!!

そもそも、その男が勇者様方より前にこのローズ国に?

馬鹿しい!!

『召喚』の儀式魔法は簡単には出来ません。

魔王が魔法道具の力で呼び寄せたなら兎も角、私達が勇者様でもないその男を『召喚』?

そんな事、あり得る訳がありません!!」

「・・・・・・やっぱり。

やっぱり、キビの方が俺達より先にこの世界に『召喚』されてたんだな」

「青い勇者様!!?」


出鱈目だ、信じるなと叫ぶ魔女。

そんな言葉、全く聞こえないと言う様に今まで俯いていたナトが、泣きそうな顔を上げて、そう言ってくる。

何だ。

ナトも俺が自分達の前に『召喚』されていた事に気づいていたんだ。

コロナさんは、ナト達が前回、ルグ達と一緒に行動していた俺の事を『ヒヅル国の男』って呼んで、俺だって気づいていない様だった。

って言ってたけど、ナトは薄々でも気づいてたんだな。


「やっぱりて、どういう事だよ、田中!!?」

「この国に居た頃、魔王達と一緒に行動していた、ヒヅル国の男。

あの男がキビだったんだ。そうだろう?」

「そうだよ。

ユマさん達と一緒に冒険者活動していたヒヅル国人っぽい見た目の男なら、間違いなく俺の事だ」

「ちょっと待って!

ヒヅル国の男は、3、40代位のおっさんだろう!?

佐藤は俺達と同じ10代だ!!」

「あぁ、その事。

俺、1部の人達には小父さんに見えていたらしくてね?

ナト達が調べた依頼書の依頼を受けた冒険者さん達も、俺が小父さんに見えてたんじゃないかな?」

「嘘、だろう?

そんな・・・本当に、佐藤が・・・・・・」


確信めいたナトの言葉に、どういう事だと詰め寄る高橋。

だけど、答え合わせする様に聞いてくるナトと、頷き返し補足する俺の言葉に、高橋も俺の方が2人より先に『召喚』された事が事実だと確信した様だ。

口と目が少し開いた顔を、錆びた機械の様な動きで向けて、


「田中の考え過ぎじゃ無かったのか・・・・・・」


と唖然と呟く高橋。

ナトの『考え過ぎ』って一体なんだろう?

まぁ、この流れからして碌な事じゃないのは確かだと思うけど。

多分、その『考え過ぎ』もユマさんのせいにされてそうな気がする。


「魔王に『召喚』されて、そのせいで・・・・・・」

「いや、だから。

俺を『召喚』したのはユマさんじゃなくて、ローズ姫なんだって。

そもそも、ユマさん達に異世界人を『召喚』する術は全くないんだよ?」

「信じられるか!!

なぁ、キビ?

お前は、お前と紺之助さんは騙されてるんだ。

お前達と一緒に居る奴等は、本当に危険で悪い奴等なんだ!!

その怪我だって本当はそいつ等に・・・」

「だから、違うって!!」


洗脳されてるせいもあるけど、ユマさんじゃなく魔女に『召喚』された事は信じてくれないみたいだ。

俺がナト達より前に『召喚』された事は信じてくれても、肝心の召喚者(犯人)関連は信じられない。

あくまでも、魔女の言葉通り、ユマさんが犯人。

そうナト達は疑いもせず信じてる様だ。


まぁ、そう言われても仕方ないよな。

この事に関しては、受けた依頼書すら奪われて、俺達が出せる証拠が無いんだし。


でも、嘘じゃない。


それに、俺が魔女に『召喚』された証拠なら、1つ、ナトが持っている。

嬉しい誤算だ。

まさかナトが俺が作ったカバンを使っていてくれた何って。

メモ帳は処分されてると思うけど、あの2つなら残ってるかもしれない。

それを見せれば、少なくても俺と、未だに知らん顔してる魔女達の間に関りがある証拠になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ