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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
325/498

95,収穫と・・・


「と言う事だから、エド。杖貸してくれる?」

「手袋と透明な袋ならコンがもう作ったぞ?」

「念の為にスコップも出しておきたいんだ。

生えたキノコの部分だけ取るのが難し様だったら、根元から掘ればいいかなって。

後、上の月光藻も取っておきたい」


『教えて!キビ君』の検索結果を読み上げ、ルグにそう言って杖を借りる。

軍手や手袋、丈夫そうなビニール袋何かの最低限必要な物は、紺之助兄さんが張り付き月光藻の情報を読み上げてる間に『クリエイト』で用意してくれたから良いとして。

海月茸は『かなり柔らかい』って情報だし、念の為に根元から採る用のスコップを用意しておきたい。

後、張り付き月光藻用の諸々。

海月茸を最高の状態で保存する為にも一応月光藻も採っておいて、何時でも『ミドリの手』で出せる様にしておいた方が良いだろう。

取った海月茸は時空結晶を使ったルグ達のカバンに入れるから、多分大丈夫だと思うけど。

でも、未だに『蘇生薬』の詳しいレシピは分かってないんだ。

メインの素材は分かっていても、料理で言う所の炒める用の油とか、茹でる用の水とか。

後、調味料の様な細かい素材は全く分かっていないんだ。

調合中、何処で何が必要になるか分からない以上、メイン素材と関係ありそうな物は出来るだけ取っておかないと。

後で必要だって分かってもう1度此処まで取りにい来るのは面倒くさいし。


「だから、鎌とか、岩ごと持っていくならハンマーとたがねとか?

そう言うのも作っておきたいんだ」

「あぁ、そう言う事。

なら、はい。後、木の板。

月光藻取りに行くのはオイラも一緒に行くから」

「分かった。ありがとう、エド」


納得した様にそう頷いたルグが、杖と霊薬製造場で使った木の板をカバンから出して渡してくれる。

それをお礼を言いつつ受け取り、サクサクと『クリエイト』で道具を作った。


「そう言う事だから、サトウと一緒に月光藻取ってくるな」

「了解、了解。あんまり離れ過ぎるなよー」

「分かってます。

じゃあ、行こうか、エド。『フライ』!」


側にルグが居ると言え、目の届く範囲に居る様に。

そう暗に言うザラさん。

そんなザラさんに返事をして、木の板に『フライ』を掛ける。


「これが、月光藻?かなり大きいな」

「いや。

これ、幾つもビッシリ生えていて大きく見えるだけで、1つ1つはかなり小さいみたいだよ。

ほら、短くくて分かりずらいけど、茎は別々だろう?」

「あ、本当だ」


岩肌が見える位グイッとずらして茎や根を見せるまで、ルグが勘違いしてたのも仕方ない事だろう。

巨大な1つの植物に見える位天井の岩にビッシリ生えた、拳より二回りほど大きい青白い半円状のマリモ。


根っこは岩の中に完全に入り込んでいるのかな?

岩肌には一切の根は見えなくて、茎が見えてる状態だと岩からニョッキっと直接生えたブロッコリーかカリフラワーに見える。


そんなマリモかブロッコリーから直接生えてる様な感じで、所々小さな花が咲いていた。

外に向かって白から薄黄色のグラデーションを描くシラサギカヤツリの様な花弁。

普通こんなに長ければ、重力に従ってダランと垂れそうなのに、堂々と胸を張ってピンと手足を広げる様にマリモ部分に張り付いている。


その花から花粉の様に、下の道で浴びた月の光が零れていた。

これが、月光藻。

『教えて!キビ君』に月光藻の写真も載っていたからどんな見た目の植物か分かっていたけど、1つ1つの株は想像よりもかなり小さい。

両手で抱える位あると思っていた。


「えーと。どこ等辺がいいかな?」

「うーん・・・・・・もう少し道の奥の方だな。

此処等辺だと、コン達に当たる」

「分かった」


月光藻だけ取るか、根が入り込んだ岩ごと取るか。

まだ決まってないけど、此処じゃ取った時の欠片が紺之助兄さん達に当たる。

と、もう少し奥の方のを取った方が良いと言うルグ。

その言葉に従って、海月茸を収穫してる紺之助兄さん達が見える範囲でもう少し離れた。


「此処等辺?」

「此処・・・だと海月茸の生えてる真上だから、やめた方が良いかもな。もう少し左」

「じゃあ、此処は?」

「んー・・・・・・いいじゃないか?」


ルグにどこ等辺を取るべきか聞きつつ、木の板を微調整する。

少し離れ過ぎたかもしれないけど、紺之助兄さん達の安全の為だ。

海月茸にも影響が出ないだろう範囲の月光藻を4個位取る。

どういう状態のがベストなのか分からないから、色んな条件の月光藻を岩付とそうじゃないの。

両方ルグと一緒に取った。

岩付の方は俺より力のあるルグに任せて、俺は月光藻を茎の根元から鎌で刈る。

農業用の手袋をして、ジットリと湿った月光藻を潰れない様に掴んで。

キュウリやトマトの太い蔓位硬い茎を刈って、念の為に紺之助兄さんが作ってくれた霧吹きで海月茸が生えてる所の水を掛けてから袋の中へ。

霧吹きの水のお陰か、それとも最初からそういう性質だったのか。

刈り取っても月光藻の花は光を放っていた。


「・・・よし。

エド、これもおねが・・・い・・・・・・

何だ、今の?光った?」

「光った?何がだ、サトウ。

何か動物か魔物でも居るのか?」

「多分、違う?

こう・・・鏡に反射する感じって言えば良いのかな?

奥の方で何か光った様な気がしたんだけど・・・

多分、気のせい」

「じゃ無いみたいだな」


道の奥側で作業してるルグに、1つ1つ袋に入れた月光藻を渡す。

その瞬間、ルグの体の奥で何かがキラリと光った気がした。

生き物の目が光るって感じや、岩の隙間から光が差し込むって感じじゃない。

晴れた昼間に遠くから、鳥よけに吊るされたCDを見た感じって言えば良いのかな?

風に揺れてキラリ、キラリ、と反射する感じ。

だから生き物じゃないと思う。

そもそも一瞬の出来事だから、俺の見間違いの可能性が高いけど。

そう思って口にしたら、もう1度さっきと同じ辺りで何かが光った。

今度はルグも見てるから、俺の見間違いや眩暈を起こして起きた現象とかでは絶対ない。


「風に揺れて、何かが反射してる。

アレは・・・鎖と・・・・・・剣?」

「ケン?・・・剣?刃物の?」

「そう。

鞘に入ってない、デカい剣が天井とか壁から伸びた鎖にグルグル巻きにされて、空中に浮いてる。

こう、刃の部分を下にして、真っすぐ」

「何でそんな物が吊るされてるんだよ?

まさか、奥まで来た人を殺すトラップ!?」

「さぁ?此処からだとそこまで分からないな」


ルグによると、光ったのは強弱付けて微かに流れる風に揺らされた鎖と、その鎖に繋がれた剣らしい。

それも剥き身の。

なんでそんな物が空中に?

何か合って、真下に人が居る時にストンと落ちたら死人が出るじゃないか!

いや、それが目的のトラップって可能性もあるのか。

剣身の部分が下に向いてるらしいし。

そう思ってルグに聞いたら、此処からじゃ遠すぎて分からないと言われた。


「取り敢えず、クエイさん達に報告しようか。

トラップかどうか分からなくても、奥に行くのは危険だと思うし」

「そうだな。

おーい!お前等ー!!それ以上奥に行くなー!!」


俺が木の板を操作して下に向かってる間にルグが、海月茸取りつつドンドン奥に向かってる紺之助兄さん達に向かってそう叫ぶ。

その叫びに足を止め見上げてきた4人。

此処からじゃまだ距離が有って表情が分からない。


「エド?何があった?」

「奥の方のかなり上の暗がりに、鞘に入っていない剣が吊るされていて危ないんだ。

トラップかもしれないから、迂闊に近づくな」

「それは、使える奴なのか?」

「遠くから見ただけだから、分からない。

詳しく調べるべきか?

それとも、海月茸集めには関係なさそうだし、色々落ち着いてからジェイク達に調べて貰う?」

「そうだな・・・・・・」


下りてきた俺達の顔を怪訝そうに視線だけで見回して、そう眉間のシワを濃くしてからルグに聞くクエイさん。

調べるかどうか聞くルグの言葉にクエイさんは暫くの間真剣な表情で悩んで、辺りを見回した。

そしてその視線が奥の剣がある方からザラさんに移って一言。


「念の為に軽く調べるか」


調べる、と言った。

その言葉にザラさんが不思議そうに数回、瞬きをして何時ものふざけた感じで聞き返す。


「お?意外だな。

クエイの事だから、無視しろって言うと思ってたぜ、俺様は」

「バーカ。

アルゴの親父の仕掛けの事を忘れたのか?

此処に入った奴を閉じ込める罠の可能性もあるだろうが」

「あぁ。

詳しい事はジェイクさん達に任せて、罠かどうかだけは調べた方が良い、って事ですか」

「そう言う事だ。

罠の事は・・・エドが適任か。

ザラ、武器の事はこの中だとお前が1番詳しいだろう?

そいつ等と一緒に軽く調べてこい」

「リョーカイ。て事で、行くぞ、エド、サトー君」


俺とルグをパッパッと指さして、そうザラさんに指示を出すクエイさん。

クエイさんが自分の実力を認め、普段より素直に頼ってくれた事が嬉しかったのか。

直ぐ見開いた目を上機嫌に元に戻し、ニヤリと口元に不敵な笑みを浮かべると、ザラさんは俺達が乗っている木の板に乗り込んだ。


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