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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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80,霊薬を消し去る為に 後編


「えーと、後は・・・・・・うーん・・・・・・」

「やっぱりその敵の絵を書いて貰った方が速くないか?」

「それも、そうだけど・・・・・・

ヤエさん、絵は描けますか?

・・・あぁ、良かった。

じゃあ、このメモ帳に書いて貰えますか?

あ、ボールペンの使い方分かります?」


やっぱりヤエさんにその敵の絵を書いて貰った方が良いと言うルグ。

ルグの言う通り、ヤエさんに絵を書いて貰った方が手っ取り早いのは分かってる。


でも、筆記用具すら見た事なくて、絵すら描けない。


なんて事もあり得るかも、と思って質問だけでどうにか敵の正体を掴もうとしてたけど、どうやら俺の杞憂だった。

ただ、ボールペンを知らないのか、それともヤエさんの世界自体にボールペンが存在してなかったのか。

絵なら描けると頷いたヤエさんは、困った様で不思議そうな顔でボールペンと俺を交互に見ていた。


「・・・えーと。この魔族、何って言う種族なの?」

「いや、オイラも知らない」

「僕も・・・本当に、この世界に存在する魔族?

サトウ君達みたいに異世界から来たとかじゃなくて?」


ボールペンを使える様にして、使い方を軽く説明して待つ事数分。

ヤエさんが見せてきた絵は、やけにリアリティがある分、これまたホラーの様な物だった。


そこに描かれていたのは、ピコンさんどころか、ルグすら知らない魔族。


ボロボロの布を纏った、高身長で細い人間の男っぽい姿。

少しゴリラっぽさのある少々曲がった腰と、直立したまま四足歩行できる程異常に長い腕は、人間の倍以上は関節がありそうだ。

その長い腕に負けない程長くて太い、伸びた蝶の口の様な舌を出した口と、立派な福耳と5つ目が特徴的な顔は、確かに色々隠せばイケメン分類の人間に似ていなくもない。

目は額にギョロっと1つ、人間と同じ場所に1対有って、その目の下に隈の様に一対ある様だ。

背中からは広げた天使の羽の様に出っかい骨みたいのが上斜め横に出ていて、骨から下に向かってシャッシャッと線が入っている。

多分、翼を表してるんだと思うんだけど、こんな変な羽で本当に飛べるのか?

もしかしてそう言うアクセサリー?


総合的に分かる事は、オレンジ歩キノコ以上の人型クリーチャー。

え、こんな姿の幽霊が本当に居るの?

逃げられないのは分かってるけど、今直ぐ逃げていいですか?


「なぁ、ヤエ。こいつ、本当に魔族なのか?

・・・えーと、分からない?そうか」

「じゃあ、異世界人かどうかも分からない?

なら人間か、その幽霊が霊薬の魔法道具の影響でこんな姿になったかどうかは分かる?」

「分からないみたいですね」


本当に魔族かどうかも、人間か人間の怨霊からクリーチャーに進化した存在かどうかも、ましてや異世界人かどうかも分からない。

とルグとピコンさんの質問に首を横回転させるヤエさん。

議論が一段落した所で紺之助兄さん達にも見て貰ったけど、結局このクリーチャーの正体は分からなかった。


ただ、紺之助兄さんの通訳で分かった事が1つ。

このクリーチャーがミモザさんが持っていた巨大斧の様な、先が槍になった死神の様な大きな鎌を振り回して襲ってくる事だけは分かった。

とっくの昔に理性も正気も消え去っているのが原因か、それとも元々使えないのか。

魔法は使わなくて、ただ単純に霊薬や魔法道具に近づいた人間を襲うか、『鳥』を霊薬の魔法道具の中に入れようとしてくるだけらしい。


「それなら、魔族や変化した幽霊じゃなくて、ゴーレムなんじゃないのか?

スッゴク性能の悪い、単純な命令しか聞けないタイプの」

「『でも、私達の様に影が無かったし、生きてる時には姿が見えなかった』って言ってます」

「あー、それだと確かに幽霊っぽいよな?」

「ですが、高性能な幻術や透明になれる魔法を使ってるなら、影も隠せますよね?」


人か鳥の違いしか認識できず、ただ襲い掛かって来るだけ。

そんな単純な動きしか出来ないなら、エスメラルダ研究所のトラップゴーレムみたいな、そこまで性能が良くないゴーレムなんじゃないのか?

と言うザラさんに、自分達と同じ様に影が無いから違うと言うクエイさんのお父さんかヤエさん。

でも、ジャックと合体したコートや、兵士やローズ国兵達が使っていた様な、相当高性能な幻術や透明化の魔法が掛かっていたなら、影まで隠す事が出来ると思うんだ。

実際コートや髪飾り状態のジャックを身に着けていた時のユマさんの影には角も翼も無かったし。

完全に、極々自然な『人間』の影に変わっていた。

それに、エスメラルダ研究所や元の世界に帰ろうとしていた時襲ってきた、兵士やローズ国兵の影。

そっちは綺麗サッパリ消えていた。

そのせいで、かなりの実力者だったミモザさん達ですら気づかなかったらしいし。


「あぁ!そう言う可能性もあるよな。

そこ等辺、ヤエ達は分かるか?」

「『幻術や透明化の魔法を使ってるかは分からない。

ただ、アレは彼の魔法に掛かる前の私達の様に壁や床をすり抜ける事は出来なかった。

人に近い見た目で、影が無く、何十、何百年と一切飲み食いしていないのに死ぬ様子が全く無い。

その事から壁をすり抜けられなくても幽霊だと思っていたが、そう言われるとゴーレムの可能性が高いな』」


どちらかの言葉を通訳した紺之助兄さんの言う通り、壁をすり抜けられないなら『エマージ』を使う前から実体がある可能性が高い。

そして何も食べたり飲んだりしなくても問題ないなら、生きた魔族の可能性はないと言って良いだろう。

と言う事は、ザラさんの予想通り。

クリーチャーの正体は、ゴーレムでほぼ間違いなだろう。

ただ、コロナさんの話に出てきたゾンビ村のウンディーネ、エウティシアの幽霊。

そのエウティシアの幽霊の様な、かなり特殊な幽霊の可能性もある。

だから、絶対ゴーレムに間違いない、と思い込むのは危険だ。


「えーと、確か・・・

ゴーレムって必ず核があるんですよね?」

「あぁ、そうだ。

だから、本当にこの敵がゴーレムなら、核を壊せば止まるな」

「なら、その核ってどこでしょう?」

「パッと見はそれっぽいのないよなぁ。

服の下か、体の中に隠してあるのか?」


そうは言っても今1番可能性が高いのはゴーレムで間違いない訳で、取り敢えずこのクリーチャーの正体がゴーレムだと仮定してヤエさんが書いてくれた絵を見せながら俺はそう聞いた。

ルグの言う通り、俺が知ってるゴーレムの様に分かりやすい核は絵の中には見当たらない。

この何重にも体に巻いたスッゴク長いバスタオルの様なボロ布か、皮膚の様な物の下に隠されているんだろうか?


「まぁ、最悪核が見つからなくても、クエイの薬で溶かしちゃえば良いよな!!」

「そいつの分まで薬が残ってたらな」

「えー」

「ただでさえ貴重な素材を使うんだ。

そんなに大量に作れるかよ」

「コーン君達の魔法で大量に出しても?」

「バーカ。植物やキノコ以外も必要なんだぞ?

草ばっか大量生産しても意味が無いんだよ」


確かに、話し合いの間クエイさんが調合してた分解薬を使えば、ゴーレムも分解出来るだろう。

でも、調合していた素材の中には、動物の爪の様な物もあった。

植物やキノコは『ミドリの手』や『プチヴァイラス』で量産できるけど、爪の方は無理だ。

『クリエイト』を使っても見た目が似てるだけで、その爪の細かい成分まで同じ物は絶対作れない。

クエイさんの言う通り、分解薬を量産するのは難しいだろう。

爪の大きさに比べて削って使った分はかなり少ないから、爪1個丸々使えば相当な量が出来そうだけど。


でも、霊薬の魔法道具の大きさが分からない。

クエイさんのお父さんやヤエさん達の体が何人分もスッポリ入るなら、相当大きいのは間違いないと思うけど・・・・・・

何畳分もある広い部屋丸々一室全部魔法道具とか言われたら、多分足りなくなる。

クリーチャーの分は無いと思った方が良いかもしれない。


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