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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
31/498

30,迷子の・・・・


「はい、大丈夫です。ちゃんとルグ君に会えました」

「そんなに騒ぐなよ~。

オレが付いてるんだから、ユマの事は心配するなよ!!

3人が来るまでユマの面倒はオレ達に任せておけって!!」


俺は無事、再会出来た事を喜び合うルグと女の子と共に屋敷に戻った。

屋敷に入って直ぐ、ルグと女の子は大きめのコンパクトの様な通信鏡で、女の子の保護者と此処に来るまで一緒に居た女の子の仲間に連絡を取っている。


何故か厨房に集まって。

俺が手作りしたお茶請けと濃い目に入れた紅茶までちゃっかり持って来てるし。


俺は俺とルグとスズメ、一緒に食べるだろう女の子の昼飯を作っているんだから厨房に居るのは当たり前だ。

なのにルグ達はルグの部屋や居間、客間に使えそうな空いてる部屋が沢山あるのに、態々普通お客さんを通さない厨房に集まっている。


そして、お茶請けの方なんだけど、俺は大量のマヨネーズを作った時に出た卵白でメレンゲクッキーとマカロンを作って倉庫に仕舞い込んでいたんだ。

メレンゲクッキーはプレーンとココア味の2種類。


マカロンはバタークリームをプレーン生地で挟んだもの。


苺ジャムを上にドライ苺を乗せたプレーン生地で挟んだもの。


ミルクチョコレートのガナッシュをココア生地で挟んだもの。


紅茶クリームを紅茶を混ぜた生地で挟んだもの。


ホワイトチョコレートのガナッシュを抹茶生地で挟んだもの。


餡子を桜の花の塩漬けを上に乗せ、桜の葉っぱを乾燥させ粉末状にした物を混ぜた生地で挟んだもの。

計6種類。


もう一手間掛ければもっと美味く出来たのは分かってるんだけど、チョコやココアをカカオから作る方法なんて俺は知らない。

それに、夕飯も作らないといけなかったのにその場の思い付きで作り初め、結局時間が無くて他の素材も殆ど加工済みの状態で出してした。

それに、初めて石釜を使ったから殆ど失敗してしまったし・・・

そんな中で数少ない完成度の高い物を来客用に他とは別にとって置いたんだ。


本当は買った物の方が良かったんだろうけど、この世界の菓子は目玉が飛び出るほど高い!

近くの露店の店員さんに聞いたところ、どの店の菓子も一口で終わる様な小さな物ですら、1個1000リラはするそうだ。

気軽に買えないって。

そもそも、菓子を売ってる店は俺の様な庶民の入店を拒否しているらしいし。


だから、口に合うかどうか分からない俺製作のメレンゲクッキーとマカロンを、女の子へのお茶請けにと各1個ずつ奇麗な皿に盛り付け、『ミドリの手』で作った紅茶と共に居間に持って行ったんだ。

それなのに、ルグ達はお茶請けと紅茶を持って厨房に集まると言う奇行に出た。

全く訳が分からないよ。


そんな訳で、俺に聞く気がなくても自然と耳に入るルグ達の話によると、女の子はこの歳でジャックター国の大きな魔法道具専門企業の社長かヤのつく自由業の組長らしい。


何でそう思ったかと言うと、魔法道具がどうのこうのとか、女の子がどっかの代表とか。

そう言う会話が聞こえてきたから。

最初に連絡した女の子と一緒にヒズル国にある関連会社に訪問した『ハルさん』、『ルトさん』、『コロナちゃん』とルグのお父さんの4人の仲間。

と言うか社員さん?

の話だと、女の子は魔法道具専門企業の社長みたいなんだけど、今ルグ達が話している人を見ると・・・

なぁ?


『お嬢ッ!!ご無事ですかぁ!!』


とドスの聞いた叫び声が通信鏡から聞こえ、驚きのあまりチラッと覗き込むと画面いっぱいに十数人の堅気ではなさそうなおじ様方。

どっからどう見てもドラマや映画に出てくるヤのつく自由業の方達です!

いや、ヨーロッパ風の世界だからマのつく自由業?

見た目だけならギルド職員のボスと上下関係がありそうだ。


何はともあれ、どうして俺より若い女の子がそんな重役についているのかは分からない。

けど、苦労してる事だけは何となく分かる。


「帰れるのが予定より大分遅くなってしまいます。

唯でさえ、私のせいで皆さんお忙しいのに申し訳ありません」

『何を言ってるんですか、お譲。

お譲が誰よりもランド様の代わりになろうと、俺達を助け様としてくれているのは近くに居る俺達が良く解ってる。

こんなに頑張ってるお譲に頭なんて下げられちゃあ、あの世に居るランド様と姉御に俺達が怒られちまうよ。

それに、お譲はこのジャックター国の現女王


バッチーンッ!!!!


ルグは壊れるんじゃないかと思う程強く、叩きつける様に通信鏡の蓋を閉じて、強制的に通信を切った。

ルグは騒音被害で訴えられそうな程の大声で喋る、額から1本の角の生えた鬼みたいな顔の通信相手が、此処で言ったらまずい事を言うのを止めたかったみたいだ。


・・・・・・・・・まぁ、無駄だったけど。


女の子は目を見開いてドンドン青くなってるし、ルグは通信鏡を閉じた恰好のまま動かない。

そして、黙々と昼飯用のおにぎりを握る俺。


俺はいったい今、どんな顔をしてるんだろうか?


俺の飯を握る小さな音だけが痛いほど響く厨房。

それを破る様に錆びた機械の様にギッギッギッと音が出そうな動きで、強張った笑顔を貼り付けたルグが俺を見る。


「・・・サトウ、今の聞こえた?」

「あー・・・・・・外に聞こえてないと良いけどな。

その子がジャックター国の女王様だって事」

「Noooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!」


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