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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
307/498

77,紅白幽霊と霊薬の秘密 前編

   * 注意 *


今回は前回よりもガッツリ目に、『カニバリズム』や『人体実験』等の人を選ぶ描写が入ります。

前回から引き続き、苦手な方や不愉快に感じる方は、注意して下さるようお願いします。


 取り敢えずクエイさんの両親と女幽霊、ヤエさんの遺体が利用されている現場に向かおう。

と言う話になって、クエイさんのお父さんとヤエさんの案内の元、俺と紺之助兄さん。

それと、ルグとピコンさん、クエイさん、ザラさんは幾つもの隠し扉を潜り、表の地下水道まで出てきた。

それ以外のメンバーは、これ以上の詳しい説明を聞かせるのは教育上良くないって言うのと、眠気の限界が来た事。

それと、ジェイクさんの研究日誌の解読の手伝いで別行動中。


俺も解読班の方に行きたかったんだけど、クエイさんのお父さんとヤエさんの指名と、監視対象を出来るだけ分けたくないって言うアルさんの指示で救出班に組み込まれてしまった。

幽霊の言葉が唯一分かる紺之助兄さんと、そんな事情で半場強制的にメンバー入りした俺。

そして、お父さんに猛反対されたけど、家族が関わってる事だからと強引にメンバー入りしたクエイさんはある意味当然として、残り3人。

クエイさんの精神的サポート要員兼あのメンバーの中で1番の戦闘経験があるって理由で選ばれたザラさんと、戦闘能力のある俺と紺之助兄さんの監視役が出来る人員としてルグとピコンさん。

と言う最低限のメンバーで向かっている。


「事の始まりは、2000年前。

ヤエさんがその時代のサンプルして、この国に『召喚』された事だ」


その言葉から改めて始まった、道すがら紺之助兄さんが伝えてくれた2人の話。

それは余りにも非人道的で痛々しく、何より異常な程グロテスクな話しだった。


「多分、僕達が住んでる世界とも、この世界とも似てない世界だったんだろうね。

ヤエさんの世界も基本魔法とか無い世界で、でも極々稀に魔法の様な特殊な力を持って生まれてくる。

『空目の子』って言う人が居る世界だった。

ヤエさんもその1人」

「ヤエさんも?」

「そう。

貴弥達に見えてるか分からないけど、ヤエさん、目が青いんだ。

それが『空目の子』の証なんだって」

「あぁ、確かに。

宝石の様な綺麗な青い目をしてるな」

「ヤエさんが、


『ありがとう。

元の世界では気味悪がられてたから、そう言って貰えて嬉しい』


だって」

「ど、どういたしまして」


ピコンさんに褒められたのが嬉しかったのか。

プカプカ浮いたヤエさんの頭がグルリと180度回転し、嬉しそうに淡く頬を染めた。

微笑ましそうにしてる紺之助兄さんとルグの様子からして多分、紺之助兄さん達にはヤエさんが軽く振り返って、恥ずかし気ながらも嬉しそうに微笑んだ様に見えたんだろうな。

何で俺達だけホラー体験してるんだろう・・・


いや、紺之助兄さんは眼鏡かけてるから、俺達と同じ物が見えてるはずなんだけどな?

何で平然としてるんだろう?

ヤエさんが振り替えた瞬間、一瞬だけ眼鏡外したのかな?

後、ピコンさん。


「ラムの方が綺麗だけど」


って恥ずかしそうに小声で言ったその言葉。

しっかりと聞きましたからねー。

いつか、本人にちゃんと面と向かって言ってくださいね?


「それで、ヤエさんの特殊能力は『治癒』と『再生』。

触った人のどんな傷も治せて、ヤエさんの体や体液を取り込んだ人はどんな病気も治る」

「それって・・・・・・」

「・・・・・・ヤエさん自身も心臓や脳が一定以上残ってれば、幾らでも再生出来た。

だから、生まれた時から地下牢に閉じ込められてて・・・

家族に、体を売られていたんだ。

その売ったお金で家族や親族は、ヤエさんの上で裕福な暮らしをしてたって」

「・・・・・・・・・」


生まれ落ちた時から地獄で生きてる様で、何と言えば良いのか分からない。

勿論、痛覚はあるんだからどれだけ再生しようと、痛いものは痛い。

それなのに、血の繋がった家族に切り刻まれて、太陽の光が届かない地下に押し込められる。

それがヤエさんの『当たり前』。

『常識』として刷り込まれて、


「平気だと言え。寧ろ、利用される事に感謝しろ」


と、強制させらていたって言うんだから、もう・・・もう・・・


本当にヤエさん大丈夫?

悪霊になってない?

いや寧ろ、怨霊になってでも復讐するべきだよ。

元の世界でも利用され続けて、異世界来ても利用されて。

前世でどんな大罪犯したらこんな目に合うんだ!!?


「この世界に『召喚』された時、ヤエさんは死にかけて、それで能力の事が当時のこの世界の人達にバレたんだ」


その後は、元の世界の地獄が軽く思える程の、更なる地獄の始まりだ。


『再生』するのを良い事に、あやゆる人体実験を受けさせられ・・・

『治癒』の力目当てに、死なないギリギリまで体を切り刻まれ・・・・・・


複数人に抑え込まれて無理矢理産まさせられた、相手の種族すら分からない子供達も・・・・・・

実験や霊薬の試作品の素材にされ続けた。


その結果出来た物を、当時の英勇教のどっかの宗派の信者達や、王族や貴族達。

そう言う人達が、ヤエさんが。

異世界人とは言え『人間』が素材だって分かっていながら、喜々として使っていたって言うんだから・・・


もう、無理。

この話だけで何回吐いたと思ってるんだ。

紺之助兄さんは何百重もオブラートに包んだ表現してくれてたけど、それでも無理。

察し過ぎて中身どころか、胃酸すら吐き尽くした。

次は胃その物を吐きそうだ。


「貴弥、大丈夫?少し休む?」

「ウ、エェ・・・無理ぃ・・・大丈ばない・・・

けど、いい・・・・・・

休まない・・・話も、続けて。

時間が、惜しい・・・・・・」

「・・・そう?本当に無理はしちゃダメだよ?」

「大丈夫・・・・・・」

「・・・エド君、貴弥の事よろしくね?」

「任せろ!ほら、サトウ。歩けるか?」

「・・・・・・ありがとう、エド・・・」


紺之助兄さんがオブラートに包みまくってくれたお陰か、それとも世界的に耐性があるのか。

そこまで精神的ダメージの入っていないルグが、元々背中を撫でてくれた流れで吐き過ぎてフラフラしだした俺を支えてくれた。

ルグの肩を借りながら力の入り切らない足を何とか動かして、どうにか皆について行く。


「それでー・・・どこまで話したっけ?

・・・あぁ、そうだった。

長年の人体実験の影響か、強すぎるストレスが原因か。

心も体も、色々限界だったんだろうね。

ある日、ヤエさんの能力が急激に衰えだしたんだ」

「それは・・・

『空目の子』の人達にとっては、普通の事じゃ無かったの?」

「普通じゃ無かったみたいだね。

能力を奪ったり弱体化させる能力を使われる以外、一度授かった能力は何があっても基本、死ぬまで衰えないのが普通だったらしいし」

「この世界の魔法やスキルを使われても?」

「うーん・・・・・・

もしかしたら、そう言う実験を受けさせられたかもしれないって。

詳しくは、ね?」

「あ、はい」


本当に発狂してしまったのか、受けさせられた人体実験の数が多過ぎて覚えてないのか。

これ以上この事について聞いたら、本当に内臓を吐いてしまう。

人食い大蛇が居るって分かってる藪は突っつくべきじゃない。


「問題は、ヤエさんに人体実験をさせていた人達にとっても能力の弱体化が予想外だった事だ。

更なる実験で能力を戻そうとしてたみたいだけど、完全なる逆効果。

本当にギリギリ、自分自身を治す事は出来てたみたいだけど、その頃にはヤエさんは誰の傷も治せなくなっていたんだ。

そして、最後の実験が始まった」

「その結果生まれたのが、霊薬?」

「そう。

ヤエさんの体と、残りの命を使って、半永久的に尽きる事のない癒しの薬を作る計画」


ヤエさんの能力が戻らないと。

これ以上利用出来ないと判断した信者達は、ヤエさんが産まさせられた子供達を使って進められていた、その計画の最終段階に取り掛かった。

瀕死のヤエさん自身と、その寿命を使った奇跡の薬の実現。

信者達はヤエさん達を使って、霊薬を生み出す永久機関を作り出そうとしたんだ。


「ヤエさんの場合、心臓さえ動いてたら能力を使う事が出来るからね。

毒薬や魔法で脳死状態にされて、魔法道具に繋がれて。

『治癒』と『再生』の能力を永遠に使い続けるだけの肉の塊にされた。

でも、弱体化して殺されたヤエさんだけじゃ、彼等が望む薬の効果は得られなくて・・・」

「俺達、カラドリウスが使われたのか」

「・・・・・・はい」

「クソがッ!!!!

協力しろって、こういう事だったのかよ!

殺されて、下種な人間共の腐った命を永らえさせる為だけの薬の材料になる事がッ!!?

ふざけんなッ!!

そんな事の為に、俺達の仲間は連れ去られたのかッ!!

そんなふざけた事の為だけにッ!!!

俺達はッ!!!」


食堂で俺に向けた以上の怒りを孕ませて吠えるクエイさん。

1番後ろに居る俺とルグにはその表情は分からない。

でも、人の姿すら怒りで解け、その怒号だけで空気を震わせる。

その後ろ姿だけで、クエイさんがどれだけ怒っているのか。

知りたくないと思っても、嫌でも分かってしまう。


2000年前、クエイさんの一族の人達がどんな甘い言葉で連れ去られたのか。

それは分からないけど、宿場町でのクエイさんの様子や、初めてカラドリウス達の村に行ったあの日の事を思い出すと、その後ろくでもない事ばかり起きたのは間違いないだろう。


直ぐ隣で暮らす人間達に警戒して、自分達の姿や職業を偽って。

自然なまま生きる事を奪われたカラドリウス達。


俺の想像が甘過ぎた。

あの時俺は、クエイさん達の地雷を見事に踏み抜いていたんだな。

その事が今更分かって少し後悔したけど、だからってやっぱり俺はマーヤちゃんを見捨てる事も出来なかった。

もっとカラドリウス達に配慮して上手く立ち回れたと反省はしても、後悔し続けたら、マーヤちゃんを助けようとした事を後悔して見捨てればよかったと思ったのと同じになってしまう。


だから、多分。

きっと、この結果になって良かったんだと思う。


俺が花なり病になってウィンさんの思い出の品が無くなってしまったけど、あの村の秘密は魔女達に渡らなかったし、マーヤちゃんも元気になったんだ。

俺だって生きてる。

それで、良かったんだ、きっと。


「・・・連れて来られた沢山のカラドリウス達を使う事は、最悪な事に成功してしまった。

彼等の望む、どんな病気も、どんな怪我も、どんな毒も。

全部、全部、綺麗に癒す、尽きる事のない奇跡の様な薬。

それが完成した」


その後はヤエさんだけじゃなく、連れて来られたカラドリウス達にとっても地獄の始まりだった。


魔法道具で無理矢理、病気を治す魔法やスキルを引き出され。

痛覚も意識も残ったまま、生きながら体が少しずつドロドロと溶けていって。

病気を治すだけの肉塊になって死んだら、更に液体にされて霊薬の核であるヤエさんの体に混じって霊薬になる。


霊薬として、死んでも人間に利用され、喰われ続けるんだ。


正気でいる方が、無理ってものだろう。


「強力な魔法道具の影響で、殆どの人が2000年経った今でも幽霊として霊薬製造場に縛られてるんだ。

生きてる頃から正気でいられない事をされ続けて、亡くなった後の2000年間もその苦痛と狂気に囚われている。

だから、人だった事も忘れ、本来の人の形も失って。

殆どの人達は。

いや、ルシアンさんとヤエさん以外の全員が混ざり合って、巨大で強力な怨霊になってしまった」

「ッ!!!じゃ、じゃあ!お袋も!?」

「はい。集合体怨霊の1部になっています。

まだギリギリ、意識は残っているものの、それも時間の問題。

だから、ルシアンさんとヤエさんが助けを求めてきたんです」


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