表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
300/498

70,珊瑚の図書館 10冊目


「・・・・・・確かに・・・

『隷従の首輪』って言う毒がゾンビ毒の特徴とかなり似てる事を考えると、『蘇生薬』が俺達の探していた薬の可能性が高いな。

時代も合ってるし」

「でも、その『蘇生薬』を作ったのが魔族って、どういう事だ?

自分達の王様の魔王がゾンビ毒作って広めたんだろう?

何で邪魔する様な事、魔族がするんだよ。

俺達みたいに革命軍でも作ってたのか?」

「うーん、違うと思うけど・・・

ただ、ジャックター国は元々、1万年前の戦争から逃げ出した人達が作った国だから、自分達を守る為に初代勇者と協力した可能性はあるよ」

「あぁ。敵の敵は味方ってやつですか」

「うん。

やっと逃げ出せた当時のジャックター国の人達も、ゾンビ毒なんか使われて、無理矢理国に連れ戻されたら堪った物じゃないからね。

ずっと仲良くって言うより、利害が一致したから一時的にそこだけ協力した感じ?」


人間と戦いたく無いからって、ジャックター達は元々暮らしていた国を裏切って逃げ出して、ブランシス国王の領地の1つだったろうアンジュ大陸に勝手に自分達の国を新しく1から作ったんだ。

そりゃあ、戦う意思の硬かった他のブランシス王国民からしたら、ジャックター達のその行動は到底許せない事だっただろう。

だから、他の国の王様達と同じ様にゾンビ毒で操られるとジャックター達も恐れた。

で、レーヤ達と利害関係で契約を結んだんだろうな。


まぁ、絵本の内容や今の険悪な状態を考えると、レーヤが1万年前の魔王を倒した後、決別したのは間違いないだろうけど。

その後、ユマさん含めジャックター国の王様達が1万年前の魔王と同じ『魔王』って呼ばれて嫌われてる事を考えると、相当酷い別れ方したんだろうな。

何が理由か全く分からないけど。


「まぁ、とりあえず。

クエイも『蘇生薬』が正解って言うなら、ほぼ間違いないな。

って事でサトー君かコーン君。

チャチャッとその『蘇生薬』作っちゃって」

「分かってます。探してるので少々お待ちください」


前回から塩の木製の塩は使ってるし、今日食べた朝食と昼食にも使われていた。

屋敷に沢山塩が残っていたから今まで塩の木のページを見た事が無かったけど、今までの経験から考えて『ミドリの手』で『蘇生薬』を作れるはず。

その事は紺之助兄さんの魔法やスキルを調べる時に色々聞いて、『ミドリの手』についてもある程度知っているだろうザラさんも気づいてた様で、サラッと作る様言ってきた。

まぁ、そう言われた時には既に調べ始めてたんだけどな。


意外と塩の木を使った薬?

なのかな?

塩の木のページには『ミドリの手』で作れる、見た事も聞いた事も無い物がズラッと並んでいた。


「蘇生薬・・・蘇生薬っと」

「あっ!キビ君、有ったよ!!蘇生薬!!」

「え!?どこどこ?」

「さっき上の方に流れちゃって・・・・・・

もうちょっと前」

「えーと・・・・・・どこだ?」

「今度は行き過ぎだ、サトウ。戻って、戻って」

「・・・・・・あ!此処!!此処だよ、キビ君」


自分が思っている以上に眼疲労が酷いらしい。

ズラッと並んだ文字に目が滑って、ルグとマシロに言われるまで蘇生薬が何処に書かれてるか全く分からなかった。

マシロに指さされて漸く見つけた『蘇生薬』。

その文字をタップして、開いたページの下の方にある『ミドリの手』ボタンを押して。


「世の中そんなに甘くないって事かぁ・・・・・・」


けたたましいアラーム音と共に、エラーの文字が映し出される。


「うるさっ!!!

この音、魔法作るのに失敗した時の音だよな!?

兄ちゃん、何急に魔法作ろうとしてるの!!?」

「いえ。

このアラームは魔法とか関係なく、エラーになったら出ます。

要は、条件が揃ってなくて『蘇生薬』作れませんでした」

「マジか」


スマホの画面を見せながらそう言えば、目に見えてアルさんが落ち込んだ。

他の人達の顔を見回せば、多少の差はあれど落胆の色が伺える。

コラル・リーフか、壁の仕掛け追加した人か。

それは分からないけど、そうそう楽はさせてくれないらしい。


「兄さんの方は?・・・・・・ダメだったんだね」


俺のスマホと同じくエラー画面を映し出す自分のスマホを見せながら、紺之助兄さんが無言で首を横に振る。

色々違う『図鑑』の方ならワンチャンあるかと思ったけど、同じくダメだったみたいだ。


「ジェイクー。どうにか出来ねぇ?」

「んー・・・・・・

仕掛けの人が作れない様にしたみたいだからね。

失敗して壊れる可能性の方が高いけど、やろうと思えば

「そういう事なら、ご遠慮します!!」


今ここでスマホを壊されてたまるか!!

誰かがいいよ何って言う前に、俺は慌ててジェイクさんの言葉を遮る様にそう叫んで見せていたスマホを隠した。

勿論紺之助兄さんも、何でもない顔してサッと隠す。


「じゃあ、作れる様になる条件は?

簡単に満たせるものなのか?」

「えーと・・・」


『このアイテムを作るには、契約者が以下の条件を満たしている必要があります


1、“塩の木”のいずれかの部位を摂取、もしくは接触している


2、1度でも“蘇生薬”を作っている、もしくは摂取している、もしくは接触している


3、ランクS以上の『医学』スキルの習得


4、ランクS以上の『薬学』スキルの習得


5、ランクS以上の『調合』スキルの習得


6、ランクA以上の『植物学』スキルの習得』


ピコンさんに条件は何か聞かれ、改めて見たスマホに書かれていたその6つの条件。

他5つと違って1番の条件の所だけ色が変わっていて、2、3文字分開いた右隣には赤丸で囲われた『済』の文字が掛かれていた。

『契約者が』って事は、『このスマホ』じゃなく『俺自身』が、人並み以上のこの世界の『植物』と『薬』と『人体』についての知識を学んで、その技術で一生食っていける位の『薬や毒を作る技術』を身に着けないといけないって事か。

それで最低1回、自力で『蘇生薬』を作らないといけないと。

ほぼほぼ無理じゃね?


「えーと、クエイさん?

ダメもとで聞きますが、俺が今からこの4つのスキルを習得するのにどの位掛かりますか?」

「ん」

「1年・・・じゃないですよね?

10年、でしょうか?」

「バーカ。

ウィンと同じかそれ以上の医者になれって言われてるんだぞ?

1度この世界の医者の家の跡継ぎに生まれ直して、その年まで成長してこい。

話はそれからだ」

「あ、はい」


指を一本ピンと伸ばしたまま、一生どころか死んでも無理と遠回しに言うクエイさん。

分かってたけど、やっぱり無理じゃないか。

その上、条件として求められていたのはクエイさんよりも凄いって噂の、ユマさんの両親の主治医だったウィンさんレベルの実力。

一国の王様と王妃様の主治医になれる位の、最上級の実力と実績だ。

ワンチャンとか無理とか、もう何かそんな事言えない位、予想以上って言うか、次元から違う。


「って、ウィン?

確か、クエイの姉ちゃんだっけ?

世話焼きだって、クエイがエルちゃんの所で良く愚痴ってた。

クエイの婆さんと同じ位の天才名医の」

「天才的な医者だったのは合ってるけど、姉貴じゃねぇよ。

はとこの姉弟子だ」

「そうだっけ?

まぁ、そこ等辺は今どうでもよくてさ。

サトー君達が作れないならレシピ見つけて俺様達って言うか、クエイが作んないといけないって事じゃん。

クエイよりも凄い医者じゃないと『蘇生薬』作れないって、ヤバくね?

クエイ、ちゃんと作れんの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・ギリギリ」

「ギリギリかぁ・・・」


ザラさんから視線を反らして、タップリ間を置いてから絞り出す様にクエイさんはそう言った。

クエイさんでもギリギリって、『蘇生薬』の調合、難し過ぎじゃない?

何でそんなに難しいの?

タスクニフジ研究所さん、もっと簡単な調合レシピ、開発してない?


「大丈夫だってクエイ!

素材だけならサトウ達でも沢山出せるはずだろう?

だから何度も挑戦して、何回も作り続ければ何時か上手く出来る様になるって!!な?」

「あぁ、確かに。加工前ならワンチャン・・・・・

念の為に、葉っぱとか枝だけ出せるか試してみるか。

その前にお皿かな」


ルグの言う通り、葉っぱや枝の様な素材そのままの状態なら『ミドリの手』で出せるかもしれない。

いや、前回の経験から考えて素材の状態なら間違いなく出せるはず。

後は『蘇生薬』だけ作れない様に制限が掛かってるのか、それとも他の薬や加工品もダメなのか。

そこ等辺もチェックしたい。

と言う事で、『クリエイト』で大量の紙皿を出したら、『蘇生薬』のレシピ探しと並行して、改めて『ミドリの手』や『プチヴァイラス』について調べるか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ