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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
296/498

66,珊瑚の図書館 6冊目


 中々レシピを見る為のアップデートが終わらない。

いつ終わるか分からない現状に、色々話し合って時間を潰すのにも限界がきて、無駄になるかもしれないと分かっていても先に仕掛けを解いて中を調べる事になった。

アルさんとジェイクさん含めたクエイさんの班の人達で。

俺はスマホから離れ過ぎると死ぬから此処から離れられないし、そんな俺の監視役も必要だし。

無駄になるかもしれない事に人数を割くのも・・・

って事でこうなった。


「確認の為にもう1度聞くけど、仕掛けの答えは本当にウォルノワ・レコードの各本の題名でいいんだよな?」

「多分ね」

「・・・あの因みに聞きますが、俺のスマホの文字って何語の何弁で書かれていましたか?」

「何で今それを?・・・まぁ、いいけど。

アンジュ大陸の共通語だよ」

「え?

兄ちゃんのスマホに書かれてる文字は全部ローズ国語だろう?

標準の」

「・・・おい、ザラ。

お前にもベール弁に見えたよな?」

「見えたなぁ。

間違いなく標準語じゃなくて、ベール弁で」

「あー・・・・・・

見聞きした人にとって1番慣れ親しんだ言葉に見えていたみたいだね。

聞こえてくる翻訳と同じ様に」


俺が気絶してる間に紺之助兄さんと調べたのか。

どうも、方言含めて俺達の言葉や文字は全部相手にとって1番慣れしたしんだ言葉に見えたり聞こえる様だ。

もう少し詳しく聞いたら、俺達が書いた文字は俺がこの世界の本や看板を見る時の様な字幕タイプに見えて、スマホの文字は完全に見た人にとって1番慣れ親しんだ文字のみの文章が書かれている様に見えるらしい。


「それがどうしたの、キビ君?何が気になるの?」

「いや、唯の俺の杞憂だと思うけど・・・

仕掛けの答えは、アンジュ大陸語の標準語で本当に大丈夫なのかな?って思ってさ。

スマホの文字まで何処かの方言が使われてる様なら、仕掛けの文字も方言が使われてる可能性、大分高くなると思うんだよね」

「え?そこも気にするの?」

「まぁ、念の為に?

噂の方の『珊瑚の図書館』は方言が使われていたし、此処と関係ある『8つのウォルノワ』も方言で歌詞が書かれてるし・・・

仕掛けを追加した人がセキュリティ強化も兼ねて答えは方言で。

ってやってるかもしれないなぁ、って」


ここに来てこの世界の方言の話が出てくるから、少し疑いたくなったんだ。

それに確か、俺達の世界の戦時中。

鹿児島や宮崎の方の方言の早口のが暗号として使われた。

って聞いた事があるし。

解析に何か月も掛ったって言う話だし、どこかの国の人が別の国の方言を理解するって想像してる以上に難しい事なんだと思う。

いや、外国語は基本標準語でも難しいし、同国の人間でも聞きなれない方言は全く理解出来ないけど。


それに何度も言ってるけど、壁の仕掛けを追加した人はアンジュ大陸人だけに此処(ウォルノワ・レコード)の情報が渡る様にしたかったんだ。

ウォルノワ・レコードの噂がここまで広がってるって事は、仕掛けの答えも割と簡単に分かってしまうって訳で。

つまり、情報を見られたくない他国の人にも比較的簡単に解かれてしまうって事だ。

実際此処がウォルノワ・レコードだって分かったら、直前まであんなに悩んでたのが嘘の様に直ぐに仕掛けの答えが出た。

そう言う事を考えたら、難易度を上げる為に此処の答えも方言が使われてても可笑しくないよなぁ。

って思ったんだ。

ルグ並みの天才的マルチリンガル何ってそうそう居ないだろうし。


「それは・・・・・・ない。

いや、ありえるかも・・・・・・」

「え!ありえるの、マシロちゃん?」

「うん。ありえるよ、コンさん。

キビ君が考えてる様な方言や、他の国の人に簡単に仕掛けを解かれない様にするとか。

そういう話以前に、同じアンジュ大陸語って言われてるけど、5つの国毎に少しずつ違うから・・・」


5つの国が集まって出来たアンジュ大陸国。

アンジュ大陸の公用語はアンジュ大陸語だけど、方言の様に国毎に違うらしい。

いや、まぁ、様にって言うか・・・

5つの国毎に違うアンジュ大陸語の事も、『グリーンス国語』や『ジャックター国語』って翻訳されず、『方言』って翻訳されてるんだけどな。

でも、マシロの説明的に俺が思ってる方言と、アンジュ大陸語の方言は少し違うモノの様に思える。

各国毎に違う方言が合ってその上更に、細かく枝分かれする様にその土地特有の方言も存在する様だ。

まぁ、大きな大陸丸々1つの国なんだから、そうなるのは自然な事だよな。

ちなみに、ジェイクさんとマシロが1番慣れ親しんでる言葉は、俺達の世界で言えば東京の山の手言葉みたいな、アンジュ大陸語の共通語であるジャックター国語と言えるジャックター国の大きな方言らしい。

もっと細かく言うと、ジェイクさんは結構方言よりで、マシロは標準語より。


「勿論、アンジュ大陸語にも標準語があるから、標準語で答える可能性もあるよ?

でも、仕掛けを作った人の出身によってはもしかしたら、グリーンス国の方のアンジュ大陸語や、ホットカルーア国の方のアンジュ大陸語で答える必要があるかもしれなし・・・

そうなると、答えの文字数的に・・・

えーと・・・・・・」

「標準語で大丈夫だよ、マシロ。

ケットシ・シーの像なら『アサシンの植物図鑑』の『植物図鑑』で6文字。

カラドリウスの像なら『名医の医術辞典』の『医術辞典』で12文字。

ちゃんと文字数が合ってるから、標準語で合ってるよ」

「それなら、大丈夫そうですね」


本当、俺の杞憂で終わって良かったよ。

流石に今回は俺の考え過ぎだった。

まぁ、お陰で安心してアルさん達を送り出せるんだけど。


「とりあえず、1番レシピがありそうなカラドリウスの所から調べるか。

エド、何か合ったら直ぐに呼べよ?」

「分かってるって。

何もないと思うけど、アル達も気をつけろよ?

特に仕掛けには」

「あぁ、勿論」


そう言って小鳥の像の所に行くアルさん達。

1分もしない内に仕掛けを解いて、軽い振動と音共に開いた壁の先に進んでいった。

でも、チラッと見ただけのほんの数十秒でアルさんは戻って来たんだけどな。


「どうしたんですか?また仕掛けでもありましたか?

それとも行き来に問題でも?」

「いや、そう言う訳じゃ無くてな?

思っていた以上に調べる所ありそうだったんだわ。

かなり広くて、机とか棚とか沢山あって。

魔法道具も置いてあってさ。

後、仕掛けが勝手に閉じて閉じ込められるって事も無さそうだ、ってジェイクが言ったぞ」


どうも仕掛けの先の部屋は、俺達が想像していた狭い小部屋に分厚い本がポツンと置いてある感じじゃなくて。

あの人数でも調べきれない位、沢山の物がある凄く広い部屋だったらしい。

チラッと見ただけでそうアルさんが判断したって事は、相当広くてゴチャゴチャしてるんだろうな。

机と棚が沢山ある魔法道具が置かれた広い部屋って言うと、倉庫や資料室。

後は『珊瑚の図書館』って名前の通り、図書館そのものとか?


「えっと、つまり。

倉庫や図書館や資料室みたいな感じ、って事でしょうか?」

「あぁ!まさにそんな感じだ。

本の代わりに石の板っぽいのが詰まってて、街の図書館よりも広そうだったけどな。

雰囲気は図書館ぽかった」

「石の板?それにレシピが書かれてるんですか?」

「多分な。

部屋の広さだけでお前ら呼んで来ようと思ったから、石の板はまだちゃんと見てないんだ」


まぁ、十中八九その石板にレシピが書かれてるんだろうな。

多分、紺之助兄さんが考えた通り、カードタイプ。


「それで兄ちゃん、スマホの方は・・・

まだ1つ増えただけか」

「そうですね。漸く80%です」

「それなら・・・そうだなぁ・・・・・・

ペールと兄ちゃんは終わったらカラドリウスの像の部屋に来てくれ。

エドとマシロはジェイクと一緒に他の部屋を開けた後、魔法道具の調査。

他は俺と一緒にカラドリウスの像の部屋の石の板の調査な」


スマホの状況を聞いて少し悩んだ後、アルさんはそう指示を出した。

そのアルさんの指示の後直ぐ、ペタンと座ったまま俺を拘束する様に抱いて動かなくなったペール。

多分、俺の監視は任せろって事なんだろう。

それが分かってるからこそ、不安そうな紺之助兄さんを抱えたピックを引き連れてアルさん達は小鳥の像の方に戻っていったし、ルグとマシロもジェイクさんを追って猫の像の方に行ってしまった。


「あー、とりあえず。

ペール、兄さんが出してくれたリンゴ飴居る?」

「ガウッ!」

「はい、どーぞ。あ、ヤカン、ありがとうね」

「グルルル」


ペールと2人だけで出来る事も思いつかないし、もう直ぐ3時だし。

おやつ休憩しつつアップデートが終わるのを待つ。


「おーい、サトウ。大丈夫かー?起きれるかー?」

「ん?エド?お帰り。何か分かった?」


皆が別の部屋に行ってからどの位経っただろう。

お腹がいっぱいになったからか、ほんの数時間で色々あり過ぎて疲れたのか。

俺を抱えたまま眠ってしまったペール。

それにつられて俺もウトウトしてると、いつの間にか戻って来たルグに声を掛けられた。

目を開けて顔を上げると、アルさんとジェイクさん、マシロも一緒みたいだ。


「ただいまー。

サトウもペールも具合が悪い訳じゃなさそうだな」

「あぁ、うん。

やる事なさ過ぎて寝てただけ。特に問題ないよ。

スマホは・・・・・・まだ86%か」

「なら、まだ時間があるな。

兄ちゃん、俺達一旦上に戻るから」

「上に?何かあったんですか?」

「うん。この魔法道具を改造しようと思ってね。

これ、奥の部屋の石の板の中身を印刷できる魔法道具なんだ」


そう言ってジェイクさんは、抱えていた金属製の箱の様な物を軽く動かした。

一見上の面と横の一面に切れ込みが入っただけの唯の箱の様に見える。

けど、ジェイクさん達の話では1000年前の物にしてはかなり性能が良い、『教えて!キビ君』と連動出来るプリンターだと言う事だ。


「奥の部屋の中には石の板を管理するゴーレムが居てな?

そいつ等に邪魔されて、どう頑張っても石の板を部屋から持ち出せなかったんだ」

「それに、多分だけど、スマホに保存出来る石の板の中身には限りが有るんだと思う。

1部屋だけでもかなりの石の板が合ったし、『図鑑』や『教えて!キビ君』と連動して、ドンドン石の板が増えてるみたいなんだよね。

だから、コラル・リーフの想定よりも容量のあるサトウ君のスマホでも、此処にある石の板全部の情報を詰め込むのは無理なんじゃないかな?」

「だから中身を印刷して持ち出せる様に、そのプリンターの様な魔法道具があるんですね」

「うん。そういう事」


少し前に懸念していた事は、コラル・リーフが最初から潰していたみたいだ。

その管理ゴーレムって言うのが正常に動いてる間は、レシピが書かれている石板を持ち出す事も壊す事も出来ない。

そして、全知全能の知識が手に入ると言われる位膨大なその石板全部の情報をスマホにダウンロードする事も。

ネットや『教えて!キビ君』、『図鑑』何かで調べる感じなら兎も角。

アルさん達の話的に電子書籍を買うみたいに各石板の情報をダウンロードする感じらしいから、全ての情報をダウンロードするにはどう考えてもスマホの容量が足りない。

絶対に必要な情報だけ絞ったとしても、かなり容量の少ないらしいこの世界の人達でも使える壊されたスマホ達じゃ、ダウンロード出来る情報は雀の涙にも満たないだろう。

だから仕掛けを追加した人は、プリンターの様な魔法道具を各部屋に置いて行った。


「この魔法道具の性能じゃ1枚印刷するのにもかなり時間が掛かるし、そもそも石の板の中身をサトウ君だけで調べるのは無理がある。

だから一層の事、石の板の中身を本の形で印刷出来る様に改造しようと思ってるんだ」

「えーと、つまり。

製本印刷モードを追加するって事ですよね?

アジトにある物だけで出来るんですか?」

「いや、この魔法道具に追加する訳じゃ無いよ。

性能は控えめだけど元々製本用の印刷魔法道具はアル君のお店でも売ってるからね。

自作できない『教えて!キビ君』と連動させる部分を取り出して、そっちの魔法道具に組み込もうと思ってるんだ。

その方が今ある道具だけでも出来るし、簡単だし、早く済むし、この魔法道具より高性能だからね」


俺の心配を吹き飛ばす様なカラッとした笑顔を浮かべジェイクさんがそう言う。

『キビ君』像の改造や修復が道具不足で出来ないって言ってたから心配してたけど、コラル・リーフが作った物じゃないからか、印刷用魔法道具の改造の方は問題ないみたいだ。


「4、50分で戻って来る」


と言って出て行ったアルさん達。

その言葉通りなら、往復する時間や印刷用魔法道具を取りに行く時間を差し引いて、ほんの10分か15分。

鍛冶師の爺さんも居るとは言え、たったそれだけの時間で改造が終わると考えれば、ジェイクさんの言う通りかなり簡単な事なんだろう。


「後12%か・・・・」


相変わらず進みの遅いスマホの数字。

この調子ならアルさん達が帰ってくる方が先かもしれない。

後1時間位暇になるなら、もう少し寝てるか。


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