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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
295/498

65,珊瑚の図書館 5冊目


「でも、やっぱり信じられないな。

珊瑚が海じゃなくてマグマの中に居る何って」

「『図鑑』でも調べただろう?

それでも信じられないのかよ、コン?」

「信じられないよ。

僕達の世界の常識的に、マグマの中で生きられる動植物が居る時点で可笑しいんだって」

「まぁ、マグマ自体いつも通り成分とかでき方とか。

名前が同じだけでそういう根本的なとこから違うんじゃない?

俺達の世界の様に地下の岩石が解けた物じゃなくて、温泉みたいな物とかさ」


そうなのんだよなぁ。

この世界のサンゴって呼ばれるものは、海に居るクラゲやイソギンチャクの仲間の動物じゃなくて。

主にホットカルーア国の火山のマグマの中に生える、薬や食料にもなるし加工次第ではスッゴク綺麗な宝石にもなる。

取るのは大変だけど捨てる所が一切ない有益過ぎる植物。

それがこの世界のサンゴだそうだ。


その有益さからエルブロディア周辺では縁起物としても人気で、験担ぎから『サンゴ』に1文字付け加えた『コラル』って名前を女の子に付ける風習もあるらしい。


「この世界のサンゴについては置いといて。

今重要なのはそのサンゴと関りがある名前が、『コラル』って事なんだよ」

「そうですね。

今までの話からして多分、『珊瑚の図書館』は『コラル・リーフの図書館』、もしくは『コラル・リーフの作った図書館』って意味なんでしょう。

『珊瑚』の部分だけがアンジュ大陸語だったのもそれが理由だと」


何処かで伝言ゲームの様に変わってしまったのか、それとも最初から意図的にそう変えていたのか。

それは分からないけど、今までの話やこの状況的に『珊瑚の図書館』の『珊瑚』がコラル・リーフの事を指しているのは間違いないだろう。


「でも、『コラル』って女の子の名前なんだよな?

コラル・リーフは男のはずし、確かに名前の音は同じだけど、この世界の名前とは関係ないんじゃないか?」

「それに、異世界なら『コラル』がサンゴって意味の名前かどうかも怪しいもんな」

「少なくとも僕達の世界では珊瑚の事だよ。

英語で珊瑚を表すCoralは『コラール』って読み方以外にも『コラル』って訳されることもあるからね。

因みにフルネームのCoral Reefはサンゴ礁の事だよ」

「まぁ、それに、女の名前だなんだって言うのも、異世界なら関係ないだろう。

実際、サトウがそうだし」

「そうだよね。

この世界では女の子の名前でも、異世界なら男女関係ない名前や愛称って可能性もあるよね」

「そもそも、コラル・リーフが本当に男かどうかも怪しいですよね?

情報が殆ど残ってないなら、コロナさんみたいに男のフリしていた可能性もありますし。

正確に言えばコロナさんはお父さんのフリですけど」


『珊瑚』の部分がコラル・リーフを表すって推理に納得できない様子のアルさんとザラさん。

そんな2人に紺之助兄さんとルグ、ジェイクさん、俺はそう反論した。

物の姿、形、性質は全く違うけど、紺之助兄さんの言う通りこの世界と俺達の世界。

少なくとも2つの世界では『コラル』は『珊瑚』を指し示す言葉なのは間違いない。

いや、俺達の世界のIfの世界の勇者ダイス兄弟の世界もそうだよな。

3つの世界でそうなら、他の世界もそうな可能性は十分ある。

それに、ルグとジェイクさんの言う通り、世界が違うなら付ける名前の男女の違いも怪しい所だ。


「なにより、コラル・リーフは元々チボリ国と深い関りがあって、此処がウォルノワ・レコードの可能性がかなり高いんですよね?

他にチボリ国と深い関係があって、『サンゴ』が関わる人って居るんですか?」

「それは・・・・・・思いつかないな」

「それなら、サトウ君達が言う様にコラル・リーフの事でいいんじゃないか?

詳しい事はさ、全部解決した後にでも気が済むまで専門家達に調べて貰えばいいだろう?

って言う事で、サトウ君。

こんだけ待ったんだ。

もうそのスマホ使える様になったよな?なッ!?」


俺の質問に思いつかないというザラさん。

その言葉を聞いて、ピコンさんが急かす様にそう聞いてくる。

でも残念。

1時間近く経ってるけど、まだアップデートは終わってないんだ。


「残念ですが、まだです。御覧の通り、まだ79%」

「ちょっと前もそう言ってなかった!?

何で進んでないんだよ!!?」

「俺に言われましても・・・・・・」


相変わらず画面の中で歩き続けている『キビ君』。

かなり話し合っていたはずなのに、その下の数字はまだ80にも達してない。

だからこそ、こうして色々話し合って時間を潰してた訳だ。

確かに、日数単位で進む『返還』や『ゲート』より大分ましだよ?

でも、遅い事に変わりはない。

しびれを切らしたピコンさんが、


「遅い!遅い!!」


って叫ぶのも仕方ない事だろう。

だからって俺に言われても困るんだよなぁ。

いや、他の人達も言われたら困るけど。


ジェイクさんの話だと、アップデートやダウンロードに電波とかは関係ないみたいだし、スマホの容量も十分過ぎる位ある。

そもそも俺達のスマホは、コラル・リーフが想定していたスマホの性能より良いらしいし。

だから、ここまで遅いのは仕様な訳で、『キビ君』像が繊細な魔法道具だから早くアップデート出来る様に改造して貰う事も、今魔法道具屋や『レジスタンス』のアジトにある改造用の道具じゃ出来ない訳で。

だから諦めて大人しく待っている事しか出来ない訳だ。

そうじゃなきゃもっと前にクエイさん辺りが騒いでる。


「はぁ・・・・・・

なぁ、先に仕掛けを解いて、チラッとでも中を調べるのはダメなのか?」

「さっきも言っただろう、ピコン。

アイツ等の様に閉じ込められるかもしれないし、レシピの形次第じゃあ今開ける方が無駄な時間使うって。

だからこうしてグダグダ話し合ってるんだろうが」

「そうだけど・・・・・・」


俺の言葉に気力が抜けた様に座り込んだピコンさんが、誰に問うでもなく上目遣いにそう聞いてくる。

それに対して少し疲れの見えるクエイさんが危険だし、逆に時間の無駄になると言って断った。


伝説の通りなら、仕掛けの壁の奥には物凄く分厚い本が1冊。

こう、他に何もない小さな部屋の真ん中辺りにドーンと置いてる感じなんだと思う。

で、その本は『教えて!キビ君』を使わないと読めない。

読めないどころか最悪認識出来なかったり、触る事すら出来ないかもしれないんだ。

伝説の話を信じるならそういう可能性も十分ある。


それに、ジェイクさんが調べても分からないとなると、時間経過で解いた仕掛けが元通りになる様なトラップがあるかもしれない。

実際、鍛冶師の爺さんのお父さんが作ったそう言う仕掛けが幾つか有って、解毒剤探し初期の頃、そのトラップに気付かず中に入った班の人達が危うく餓死する所だった。

って事件が起きたらしい。

一度閉じた扉を中から開ける為の仕掛けはあるにはあったそうだけど、入る時の仕掛けより難易度が高くて自力で出られなかったそうだ。

製作者は違えど、此処にもそう言うトラップがあるかもしれない。

いや、そう言う仕掛けやトラップが無くても、『教えて!キビ君』が無いと自由に出入り出来ないって可能性も十分にある。

そういう事を考えると、アップデートが終わる前に仕掛けを解いても無駄になってしまうかもしれない。


だから何かどこかで役立ちそうな話をして時間を潰していた訳なんだけど、それもそろそろ限界だ。

流石にネタが尽きてきた。


「まぁ、ずっと話して時間潰すのにも飽きてきたけどな」

「だよなぁ・・・はぁ・・・・・・」

「ハハ。確かにずっと喋ってると疲れるな。

喉も無駄に乾くし」

「あ、お茶のお替り要ります?」

「いや、もう充分」


クエイさんもこのグダグダしてきた話し合いに飽き飽きしてきていたんだろう。

暫く前から吸い出した何本目かのタバコの煙を吐き出しながら、飽きたと言い出した。

そんなクエイさんにもう1度出たため息と共に同意するピコンさん。

そんな2人の姿を見てザラさんが乾いた笑い声を出しながら冷めだしたお茶を渡す。


このお茶は少し前に、紺之助兄さんが『ミドリの手』で出した茶葉を、ミルちゃんが魔法を使って煮出した物だ。

叫んで喉が疲れたのか、受け取ったお茶を一気に仰いで空にするピコンさん。

それを見てまだ温かいお茶が入った大き目のヤカンを片手で持ち上げつつ、お替りが要るかどうか聞くと、要らないと言われた。


「どうする、アル君?」

「そうだなぁ。

そろそろ有益な話題のネタも切れてきたし、さっきから全然スマホの数字も動かないし・・・

先に中、調べるか。

伝説の方が間違っていて、沢山本が置いてあったりするかもしれないしな」


やけに時間が長く感じてるだけで実際は違うのかもしれないけど、10分以上79%のまま動いてない気がする。

最初の頃はもっとスムーズに数字が進んでた気がするんだけどぁ。

この調子で進んでいったら、後何時間かかる事だか。

あと少し、もう少し、と待つのも、もう限界だ。

ってのは此処に居る全員が思ってる事だろう。

それならアルさんの言う通り、誰でも自由に行き来できて、何か調べられる場所がある可能性に期待して先に仕掛けを開けるのもありだよな?


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