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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
294/498

64,珊瑚の図書館 4冊目


「そうか!

ウォルノワ・レコード!!

ウォルノワ・レコードだッ!!!」

「それだ!!」


ミルちゃんが歌ってる間も、アルさんが爆笑してる間も、ザラさんに素で口が悪いと言われた時ですら全く反応しなかったクエイさんが、唐突にそう叫んだ。

それに対してルグが同じ位の音量で『それだ』と答える。

ルグが思い出した都市伝説ってウォルノワ・レコードって言うんだ。

ウォルノワ関連の曲や歌が入ったレコードって事か?

・・・いや、この場合、『記録』って意味の方だろうな。

ルグの話だと本や図書館が関係あるみたいだし。


「え!?

ウォルノワ・レコードだって!!?

まさか、此処が、あの!!?」

「あぁ。間違いなくな」

「そんな・・・実在してた何って・・・・・・」


あんぐり口を開けそうな勢いで叫んだザラさんに、嬉しそうな笑みを口の端に浮かべ頷くクエイさん。

マシロもアルさんも、ステアちゃんやミルちゃんですら目を見開いたまま固まって動かなくなったし、ジェイクさんなんて驚愕と感動をごちゃ混ぜにした様な表情で涙を浮かべ震えている。

そのウォルノワ・レコードって言うのはそんなに凄い物なんだろうか?

『実在してた』ってジェイクさんが言ってたし、また伝説のお宝的な物、なのかもしれない。

ジェイクさんとクエイさんがここまで喜んでるんだから、歴史と医療関係の凄い記録が保管されてる的な。


「あの、それで、そのウォルノワ・レコードって何なんですか?

皆さんの様子からして、凄く良い物だっていう事は分かるんですが・・・・・・」

「・・・伝説の・・・

歴史の本にも何度も出てくる、伝説の8冊の本の事だよ。

大昔から伝わる、子供でも知ってるスッゴク有名な都市伝説」


少し唖然とした雰囲気を残したまま話し出したマシロの話をまとめると。


ウォルノワ・レコードって言うのは2千数百年位前から各地で噂されだした。

誰が作ったか全く分からない。

けど、8冊全部読むと間違いなく全知全能の知識が手に入る。


そんな伝説がある凄いアイテムの事らしい。

その8冊の本はとんでもなく分厚くて、幾ら時間が有っても読み切れないそうだ。

でも、数ページ読むだけでも凄い知識が手に入る、らしい。


「伝説・・・

『夜空の実』やカラドリウスみたいな?」

「それよりももっと有名だし、伝説は伝説でも実在してる可能性がスッゴク高い伝説だったんだよ!!」

「実在した可能性が高いって・・・

実際に居たクエイさん達(カラドリウス)よりも?」

「クエイ先生達よりも!!」


そんなに有名で実在した可能性が高いなら、最初から言っても問題はなかったと思うけど・・・・・・

そう思ってルグをチラッと見る。

『それだ!!』と叫んでから極力喋ろうとしないルグ。

もしかして『有名だからこそ』言えなかった事情があるのか?

そうマシロの説明を聞きながら頭の隅で考えてると、その答えは直ぐに分かった。


「でも、本当に此処にあるのがウォルノワ・レコードなの?

ウォルノワ・レコードってジャックター国の廃屋の塔の中で、『会議する英雄達』が守ってる『珊瑚の図書館』って場所にあるはずだよね?」

「何言ってるんだ、マシロ?

ウォルノワ・レコードがあるのはこの国のどっかの地下だろう?

『珊瑚の図書館』って名前じゃないけど、噂通り会議してるっぽい動物像があるローズ国の地下にあるんだから、ウォルノワ・レコードで間違いないって」

「え?

私、ウォルノワ・レコードも『珊瑚の図書館』もチボリ国の洞窟の奥にあるって聞きましたよ?

昔、村に立ち寄ったチボリ国の人がそう教えてくれたって・・・

村長さんが・・・・・・」

「あたしも!

ジン先生からチボリ国あるって聞いたよ!」


ジャックター国にあると言うマシロに、ローズ国にあるって言うザラさん、それにチボリ国にあると聞いたステアちゃんとミルちゃん。

その4人の言葉を聞いて、俺と紺之助兄さん以外の全員が困惑した様にザワザワしだした。

どうも、


『『会議する英雄達』が守ってる『珊瑚の図書館』って名前の場所に保管された、ウォルノワ・レコードって呼ばれる全知全能の知識が手に入る8冊の本』


って事は共通してるけど、それ以外の。

特にウォルノワ・レコードがある場所に関する部分は国毎にかなり違う様だ。

だからルグは黙ってたんだな。


ルグが知ってるウォルノワ・レコードの伝説は、純粋なローズ国民の『エド』が知っているはずのない、アンジュ大陸版。

それかもっと限定したグリーンス国版だけなんだろう。

有名過ぎるから、別バージョンのウォルノワ・レコードの話をしたら、少しの違いでも『エド』がローズ国民じゃないとバレてしまう。

だからルグは迂闊にウォルノワ・レコードの事を言えなかったんだ。


「え?え?何でこんなに場所が違うんだ?」

「・・・多分ですけど、ウォルノワ・レコードは世界中にあるんだと思います。

ほらジェイクさんが調べてくれた事の中に合ったじゃないですか。

他にも此処と同じ機能の『キビ君』の像があるって」

「あ、あぁ。そう言えば、そう言ってたな」

「必ずこの上に『サトウ キビ』と言う女性が『召喚』され、世界中を旅するとは限りませんしね。

『サトウ キビ』がどこに居ようとほぼ確実にウォルノワ・レコードが渡る様に、他の『教えて!キビ君』や『図鑑』を管理する用の『キビ君』像の置かれてる場所も、皆この部屋の様になっていてるんだと思います。

だから色んな場所でウォルノワ・レコードを見つけた、って話が流れた」


確率と『教えて!キビ君』や『図鑑』の管理の処理能力。

それとジェイクさんの話を考えれば、この世界にはかなりの数のウォルノワ・レコードが存在しているはずだ。

ただし、殆どの像が壊れてる訳だから、今も読める様な状態のウォルノワ・レコードはかなり少ないだろうけど。

『ある』って言われた場所を沢山の人達が探しても今までに見つからなかったなら、此処以外に1つでも無事ならいい方なんじゃないか?

仕掛けの壁を追加した人の事もあるし。


「じゃあ、ベルエール山にも・・・・・・」

「いいえ、無いと思います。

あるのは各国の召喚の間の真下に在るだろう、細かい装飾まで此処と全く同じ動物像がある場所だけだと。

その上、此処以外今も無事かどうか分かりませんしね。

現状、読めるウォルノワ・レコードは此処だけって思っていた方が良いと思います」


軽く動物像が2種類以上ある事や、読めるウォルノワ・レコードが此処以外ない可能性が高い事を説明する。

その説明の間に皆の混乱や感動し過ぎて高ぶった気持ちも、完全に落ち着いた様だ。

落ち着いたけど、もう1つの気になった事を言ったらまた混乱させてしまうかもしれない。

でも、言うべきだよな。


「後もう1つ。

ウォルノワ・レコードが置かれてる場所、『珊瑚の図書館』って翻訳されたんですが・・・

皆さんにはどう聞こえてるんですか?」

「え・・・え・・・?えぇ!!?

『珊瑚の図書館』って・・・

え?嘘?本当に?」

「あ、やっぱり。

『珊瑚の図書館』で合ってたんだね」


目を白黒させて本当かどうか疑うマシロとは正反対に、かなり落ち着いた声でやっぱりと言うジェイクさん。

考古学者達の間では有名だったのか、ジェイクさんだけは伝説の話に出てくる『珊瑚の図書館』が『珊瑚の図書館』って読むって知っていたみたいだ。


「やっぱりって、どういう事だよ、ジェイク?」

「ウォルノワ・レコードが置かれてる場所が『珊瑚の図書館』って読むって話は、ボク達歴史の研究家の間では有名だったんだよ。

ただ、アンジュ大陸語とチボリ国語が組み合わさった言葉だから、ずっと間違ってるって言われてたんだけどね」

「えっと、つまり。

『珊瑚』って単語がアンジュ大陸語で、『図書館』って単語がチボリ国の言葉。

みたいな感じって事でしょうか?」

「大体その通りだよ、サトウ君」


ジェイクさんによると、文法と後半の『の図書館』って部分がチボリ国の、リラ弁と言う方言。

正確にはその方言を使う土地に、1000年位前まで存在していた。

この世界のお金を作る技術の大本を作り出した、アリーラ国って国の言葉で、『珊瑚』って単語のみアンジュ大陸語らしい。


「えっと、『珊瑚』なんって言葉、アンジュ大陸語にあったけ?」

「あるよ。方言だけどね。

ディア弁、エルブロディア山周辺の村の方言だけど、マシロは覚えてないかな?」

「えーと・・・・・・・・・あ、思い出した!

あの辺りだと珊瑚の事『珊瑚』って言うんだったね。

青珊瑚とか」

「そうそう!

あのお菓子美味しいよね。

こっちに来る少し前にお土産に貰って一緒に食べたの、覚えてる?」

「それは・・・ごめん。覚えてない・・・・・・

青珊瑚ってお土産がホットカルーアにある事は覚えてるんだけど・・・」

「そっか・・・・・・

うん、大丈夫。気にしないで、マシロ」


知識としてはあるけど思い出はない。

そう言われ、改めて妹が記憶喪失なのを実感したんだろう。

目に見えてジェイクさんは落ち込んでいた。

そんなジェイクさんの姿に、マシロも罪悪感があるんだろうな。

マシロまでシュンと暗い顔をしてしまった。

だからって、無理矢理思い出させるのもマシロを傷つけるだけ。

それが分かってるからこそジェイクさんは、思い出して欲しい思いとの間に揺らいだモヤモヤした表情のまま、マシロを気遣う優しい声音で気にするなって言ったんだろう。


「えっと、えっと・・・・・・あっ!

そのエルブロディアって山やホットカルーアって何?

マシロちゃん達の故郷の有名な場所なの?」

「・・・・・・あぁ、うん。そうだね。

有名と言えば有名かな?

他の国は分からないけど、エルブロディア山はアンジュ大陸内じゃかなり有名だよ。うん」

「あー、えっと。

ホットカルーア国はコロナさんの故郷の国で、その国にあるアンジュ大陸で1番激しい活火山らしいよ。

エルブロディアから流れるマグマを使った武器や防具、ガラスが有名だってルグが言ってた」


この暗い空気を変え様と、話題を変える様にそう質問した紺之助兄さん。

その質問にまだ少し心が沈んで戻らない、本調子じゃないジェイクさんと一緒に答える。

ジェイクさんがこの調子のままじゃ本題に戻るに戻れない。

だからその後もジェイクさんとマシロの気持ちがもう少しだけ上がるのを待つ意味でも、幾つかホットカルーア国やエルブロディア関係の質問を繰り返して時間をつぶした。

そのお陰か、2人の調子も戻ったみたいだ。


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