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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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60,動物像の正しい答え 後編


「それと・・・」

「まだあるのかよ!」

「えぇ。まだ幾つか、周りの像の事で」


鋭くツッコむアルさんに頷いて、俺は話を進めた。

いや、本当、可笑しな所がこんなに沢山あるのに、何でナト達は気づかなかったんだ?

高橋は分からないけど、普段のナトなら間違いなく疑問に思うはずだろう?

それがないって、ただコロナさんが聞いてないだけなのか、それとも・・・・・・


魔女に操られてるせい?


魔女に操られたせいで、そういう思考能力まで衰えてるって事なのか!?

魔女の洗脳を解いたら戻るよな!!?

嫌だぞ!

このままドンドン悪化していって、最悪ナト達が救い様のない馬鹿通り越して廃人にでもなったら!!!?


「まず、他の像は本当に『キビ君』の像を見ていたかどうかですね。

『キビ君』の像だけ高さが違うなら、此処の像達の様に視線まで一致してるかどうか怪しいじゃないですか」


最悪過ぎる予想で一瞬変な方向に暴走しかけた。

このままじゃまた脱線してしまう。

と、シッカリ自力で頭の中を切り替えて、俺は直ぐ何事もなかった様にそう続けた。


そう、気になったのは動物像達の視線なんだ。

此処の動物像達は間違いなく顔も目も『キビ君』の像の方を見てるし、猫の像とはあっつあつな位見つめ合ってるんだぞ?

高さが違うって事は、顔や目の向き次第では『キビ君』の像を通り越して、その先の壁を見てるかもしれないじゃないか。

まぁ、実物を見てないから実際はどうだか分からないし、何度も行き来してるザラさん達もそこまで気にして見てなかったみたいだ。

だから、この場で決めつける事はできない。

けど話を聞いて浮かんだイメージ的には、どの像も微妙に『キビ君』の像から視線がずれてる気がするんだよなぁ。


「それともう1つ。

ヒントの文的に、単数で書かれてる『無謀な挑戦者』を、複数で書かれた『臆病な知恵ある者達』が見てるんですよね?」

「まぁ・・・

だから、赤の勇者達は最初から猫の像に見られてる他より低い『キビ君』の像を無謀な挑戦者だって思った訳だけど」

「でも、さっき言った通り、仕掛けの動き的に『キビ君』の像を見る事は出来ない」


左右の蝙蝠の像と最初から動かない猫の像なら兎も角。

真ん中を見る様に動かすと、お互いを見る事になる他の像が問題なんだよ。

4つの像がお互いを見てるって事は、


『臆病な知恵ある者達』がたった1人の『無謀な挑戦者』を見る様にする。


って言うヒントの文と矛盾しないか?

だって、動かせる左右の動物像が『臆病な知恵ある者達』だって言うなら、全部の像が真ん中を見ると『無謀な挑戦者』が5匹になっちゃう訳だし。


「まぁ、そういう細かい事まで含めた色んな事を考えると、像を動かすヒントとは思えないんですよね。

どうしても。

絶対、別の意味があるとしか思えない」

「別の意味?」

「はい。

多分、そのヒントの文の本当の意味は、動物像の元に辿り着いた人達に向けた・・・

そう、ですねぇ・・・・・・

来た人がどう動けば『水のオーブ』を手に入れられるか。

それを伝える為のメッセージだったんじゃないでしょうか?」


仕掛けを解かなくても『水のオーブ』を手に入れられるんだから、この仕掛け自体が罠なんだ。

ってメッセージだったんじゃないかな?

多分、どこかに沈んだら入口を見つけられる。

って文から考えて、動物像がある地底湖か、ベッセル湖。

その何方かに潜れば、『水のオーブ』がある場所の入口を見つけられるって事なんじゃないか?

蓋の地面が沈む事を考えると、動物像の地底湖の方が可能性は高いかな?


ただ、ダゴンの事もあるし水の魔元素の溜まった湖に潜るのはとっても危険なんだと思う。

それこそ、『無謀な挑戦者』って言われる位には。


で、コラル・リーフの用意した仕掛けを解ける位。

いや、俺と同じ様にヒントの文の可笑しな所に気づいた『知恵ある者達』は、『臆病な』為に水の魔元素の中に潜ろうとしない。

色々な理由をでっち上げ、可笑しいと、罠だと分かってる仕掛けを解いて先に進む。

その先にある、コラル・リーフが用意した偽物の『水のオーブ』を手にして、『馬鹿を見る』事になっても。


本物の『水のオーブ』を手に入れられるのは、知恵も勇気も持った、たった1人だけ。

その『たった1人』を、コラル・リーフは誰だと思っていたんだろう?

やっぱり、女性の『サトウ キビ』?


「まぁ、それでも、その可笑しなヒントを元に像の仕掛けを解いて、入口を見つけたというなら。

それは像を解く事自体が『水のオーブ』を狙う人達を嵌める為の罠なんじゃないかと思ったんです。

他の『オーブ』を仕掛けを解いて手に入れてたら、更に騙せますしね」

「え?

じゃあ、この壁の仕掛けを解く事も罠かもしれないの?」

「うーん・・・どう、だろう?

仕掛けを作った人が違うから、仕掛けを解く事自体が罠って可能性は低いと思うけど・・・

でも、仕掛けを解いても無駄になるかもしれない・・・」


この部屋の追加された仕掛けも罠かと心配するマシロに、俺は少し躊躇いがちにそう言った。

それにいの一番に反応したのは、不安そうに質問してきたマシロじゃなくて、今まで唖然としていたルグ。

ルグは噛みつく様に焦った声を上げ、俺の肩を揺さぶった。


「はぁ!?サトウ、どういう事だよ、それ!!

ここに来てそんな事、今更言うか!!?

なぁ!?なぁ!!?なぁああ!!!?」

「ちょ、ちょ、ちょッ!はげっ!!じゃべれ!!!」

「落ち着きなよ、エド君!

貴弥、それじゃ喋れないって!!」

「あ・・・ご、ごめん、サトウ!!大丈夫か!?」

「だ・・・大丈夫・・・・・・」


まだ少しクラクラするし、吐きそうだけど、大丈夫。

何とか耐えられる。

ただ、すぐにはまともに喋れないけど。

今、さっきみたいに話しだしたら、間違いなく舌を噛む。


「あー・・・えーと、な?

レシピがどんな形で保管されてるか分からないから、唯の可能性の話なんだけどな?」

「うん」

「設置型の魔法道具とかの中に、こう・・・

データっぽい感じで保管されてるなら大丈夫だと思うんだけど・・・・・・

このスマホや通信鏡みたいに持ち運べる形だったら、壁の仕掛けを作った人に持ち去られてるかもしれないなぁ。

って思ってさ・・・・・・」

「そっ!・・・れも、ありえるのか・・・・・・」

「だ、大丈夫です!!

壊れたスマホが此処に残されてるんですから、きっと持ち去られていませんよ!!

可能性は低い、低い!多分、きっと、大丈夫ッ!!」

「兄ちゃんさー・・・・・・

そんな曖昧な事言われて、不安は拭えるって本気で思ってる?」


目に見えて落ち込んだアルさんをどうにか元気づけようと何とかそう言ったら、ジトッとした目でそう言われてしまった。

いや、だって、仕掛けを解かない事には中がどうなってるか全く分からないし・・・

骨折り損からのやる気を削る作戦かもしれないし・・・

可能性が低いのは本当だけど、絶対大丈夫とはけして言えないんだよ・・・・・・


「『キビ君』の像からは、保管されてるレシピの形状は分からなかったからね。

確かに、持ち去られてる可能性もあるよ?

でも、もし持ち去られてても、多分、アンジュ大陸の何処かにあるんじゃないかな?」

「アンジュ大陸、広すぎるんだけど?」

「まぁ、壊されてなかったら、って条件が付くけどね」

「お前がトドメ刺すなよ、ジェイク・・・・・・

なんでそこまで言うんだよ・・・」

「悪い話は、最初に聞いてた方が覚悟できて、ダメージも少ないでしょ?」

「そう言う問題じゃないッ!!!」


アルさんの怒りを笑って流すジェイクさん。

まぁ、確かにジェイクさんの言う通り、仕掛けを解いてもレシピが無いかもしれないって最初から知っていたら、受けるショックは少ないな。

それに、壁の仕掛けを追加した人の事を考えたら、多分、持ち去られたレシピはアンジュ大陸の何処かにあるはずだ。

仕掛けや壊れたスマホの事を考えると、破棄された可能性は低いだろう。

自分達、アンジュ大陸国人だけが『教えて!キビ君』を使って情報を見れる様にしていた事を考えると、コラル・リーフが用意した形のままレシピは残ってるはずだ。

でも、アルさんが言った様にアンジュ大陸国は広い。

も少し持ち去られてた場合の保管場所を絞れないだろうか?


「・・・・・・図書館。

レシピを見る為の機能の名前は、『珊瑚の図書館』ですよね?

って事は、本の形で保管されてるんじゃないでしょうか?」

「それか、カードの形とか?

『教えて!キビ君』が必要なら、電子書籍みたいな感じになってるかもしれないでしょ?

だったら、プリペイドカードみたいにパスワードが書かれてたり、QRコードが書かれてたりするカードの形してるかもしれないよ」


本の形でレシピが保管されてると思った俺と、カードの形で保管されてると言った紺之助兄さん。

ジェイクさんに確認したら、どっちの可能性もあると言われた。

昔からある本の形は当然ながら、此処にあるコラル・リーフの技術的に小さなカードの形での保管も不可能じゃない。

まぁ、インターネットっぽい物自作した人なら、その位余裕で作れそうだよな。

と言うか、逆に何なら作れないの?


「本だったらグリーンス国、カードだったらジャックター国にある可能性が高いね。

保存状態を保つのに最適な国って意味でも、ヒッソリ隠すって意味でも」

「ルグとユマさんの故郷ですか・・・・・・」


ユマさんの方は兎も角、ルグは此処に居る。

それを知ってる俺が、違和感なくルグに調べて貰おうって言えるだろうか?

いや、もし俺がエドの正体に気づいてなかったら、間違いなくルグに頼るだろうし。

そう言わないのは言わないで違和感持たれるよな?

どう言えば、どう行動すればルグの正体を隠せる?

隠して違和感なく話を進められる?

そう思っていたら、ジェイクさんが何も知らないままホローしてくれた。


「と言う事で、アル君。

念の為にネイ君に連絡とって貰えるかな?

一応そっちで調べられる様なら調べてくれって」

「あぁ、分かった。

・・・・・・・・・・あぁ、ネイ。

何度も悪い。今大丈夫だよな?」

「どうした?レシピが見つかったのか?」

「いや、まだだ。

でもそのレシピの事で実は・・・・・・」


そう通信鏡でコロナさんと話しながら、少しづつ離れていくアルさん。

離れていく途中、微かに聞こえた声から無事、コロナさんが出てくれた事が分かった。

そんなギリギリ聞こえない距離で話す2人を少しの間見守る俺達。

今もそうだけど、アルさんだけじゃなく『レジスタンス』の誰もが、ルグやユマさんに直接連絡を取らなかった事になにも言わなかった。

その事に不満も違和感も持ってなさそうな様子を見るに多分、


『ユマさん達と連絡を取る時は、絶対コロナさんを間に挟まないといけない』


って最初から決めていたのかもしれないな。

『レジスタンス』の中に魔女達側のスパイが入り込んでるかもしれなくて100%安全だと言えないから、念の為に直接ユマさんと連絡を取らない。

とかそんな理由で。

それか、ナト達が襲撃して来た事や、偽勇者ダイスの事を忘れさせられてた諸々の関係で、中々ユマさんと連絡取れない状況とか・・・

できれば、前者の理由であってほしいな。


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