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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
289/498

59,動物像の正しい答え 前編


 解毒剤のレシピを見る為のスマホのアップデートには、かなりの時間が掛かる。

その間何をするかと言うと、


「仕掛けの答えを考えましょう。

店長さん達の方では何か、ヒントになりそうな物、見つかりました?」

「サッパリ。

兄ちゃん達の方よりも分かった事が少ないからなぁ・・・」

「最大の成果って言えば、此処の像に似た像がベルエール山にもある事位じゃないか?」

「ベルエール山?

もしかして、ナト達が解いたって言う変な生き物の像の仕掛けの事ですか?」

「そうそう」


確か、ベルエール山の地下でナト達は変な生き物の像の仕掛けを解いて、『夜空の実』の元になる『水のオーブ』って言うアイテムを手に入れたんだよな?

その仕掛けの像がこの動物像?

確かに、ナト達が解いたベルエール山の仕掛けの像もコラル・リーフが作った物らしいけど、本当に同じ動物なのだろうか?

ザラさんも似ているって言ってるし、異世界人には違いが分からないだけで別の動物って可能性もあるよな。

小鳥じゃなくてヒヨコとか、猫じゃなくてチーターとか。


「ベルエール山の像はこんなにゴチャゴチャしてないんだよ。

メインの、サトー君達の世界の動物だけ、って感じ?」

「えっと。

使われてる動物は同じで、バイオリンや聴診器を持ってなかったり、周りの本が積まれてなかったりって事でしょうか?」

「そうそう。それで像の向きもバラバラなんだよ」

「確か全部の像を一定の方向に向けると正解なんですよね?」

「そっ。

全部真ん中の、『キビ君』の像だっけ?

この像の方を向ければ正解」

「全部?

それ、仕掛けの動き的に無理じゃないですか?」


全部の像が『キビ君』の像を向くって事は、この部屋の動物像と同じ向きにならないといけないって事だろ?

食堂で軽く聞いたナト達が解いた仕掛けの動ける範囲的に無理じゃないか?

90度ずつしか動かないなら、蛇の像が兎の像と、羊の像が小鳥の像と向き合う事は出来ても、『キビ君』像の方を向く為に斜めを向く事はどう頑張っても無理だろう。


「あー・・・言い方が悪かった。

左側の像は右側を、右側の像は左側を向いたら正解なんだよ。

それで隠された入口が開いたらしい」

「そうなんですか?」

「なんだよ、サトー君。

納得してなさそうな声出して。

君の大切な家族が導き出しや答えに不満でもあんの?」

「不満と言うか・・・

本当にその仕掛けを解く事が正解だったのかな?

って思いまして・・・」


間違いなく脱線するからその時は口に出さなかったけど、食堂で軽くナト達が解いた仕掛けの話を聞いた時から思っていたんだ。


『夜空の実』の欠片である『水のオーブ』を手に入れるのに、仕掛けを解く必要は本当にあったのか?


コロナさんが教えてくれた内容的に、仕掛けを解かなくても『水のオーブ』は手に入ったんじゃないのか?


って思ったんだ。

だから、ベルエール山の動物像は管理か中継器用の魔法道具の1つ兼、『水のオーブ』を手に入れようとしている人達を嵌める罠なんだと思う。


「はぁ?はぁあ?」

「そんな何言ってんだこいつって顔しなくても・・・

いや、コロナさん言ってたでしょ?

『水のオーブ』の近くで孵ったカメイルカ、じゃなくて。

えーと、ダゴン・・・だっけ?

そのダゴンが流されてベッセル湖に来るって。

あの大きなダゴンが来れるんだから、時間は掛かるだろうけど」

「あぁ、そうか!

ベッセル湖からでも『水のオーブ』の所まで行けるな」

「うん。そういう事」


遠くからでもスッゴク大きいって思えるサイズだったんだ。

間違いなくダゴンは人間よりもデカい。

そんなデカいダゴンが通れるんだから、卵がある『水のオーブ』の近くとベッセル湖の間にはそのサイズに見合った大きな道があるはずなんだ。

それこそルグとユマさんから聞いた、シャンディの森で落ちた俺達が降り立った洞窟位の広さと高さはあるんじゃないか?

いや、ルグ達の話だとあの洞窟には薄っすら水の魔元素流れていたらしいし、もしかしたらあの洞窟こそがダゴン達が通る道だったのかもしれない。

ルグ達が俺のスマホを奪った黒い影を見つけた場所でダゴンの声が聞こえて来たって言うし、可能性は0じゃないよな?


「だから仕掛けを解く必要って合ったのかな?

って思ったんです」

「いや、でも・・・

仕掛けの先が『水のオーブ』への近道だったかもしれないだろう?

解く必要があったのかって・・・

流石にそれはないだろう?」

「確かにその可能性も無いとは言えませんが、その仕掛けのある場所の状況や像の状態、仕掛けの動き方た的に、仕掛けを解く事自体がコラル・リーフの用意した罠だった可能性の方が高いと思うんですよね」


キョロキョロと視線をさ迷わせてから聞いてくるザラさんに俺はそう答えた。

よくよく周りを見たら、ザラさん以外も揃って、


「はぁ?」


みたいな顔してる。

流石に全員でそんな顔する事は・・・あるか。

うん、流石にさっきのは詳しく説明しないと、


「何言ってんだこいつ?」


って顔されるな。


「えーと、まず。ザラさん言ってましたよね?

ベルエール山の動物像は、大きな地底湖の上に建ってるって」

「あぁ、言ったな」

「それで、その地底湖には水位がコロコロ変わる水の魔元素が溜まってる」

「それも言ったな」


ベルエール山にもメテリスが居るらしくて、依頼があると宿場町やガリカと言う大きな街の冒険者はこの地下水道じゃなく、そこでメテリスを狩るらしい。

そしてそのメテリスとかが居る洞窟の最奥に、ナト達が解いた動物像があるらしくて、ザラさんも何度かそこまで行った事があるそうだ。

それで、ザラさん達と同じ様に宿場町を拠点にする、とある冒険者さんが何年か前に発見した事らしんだけど。

一見デコボコと穴が開いた、たっだ広いだけの場所に見えるその場所は、実はベッセル湖同様水の魔元素が溜まった巨大な地底湖なんだそうだ。

分厚い氷の幕が張ってる様に巨大地底湖の上に土の蓋されて、その蓋に落し蓋の様に幾つも穴が開いてるらしい。

だから、その動物像がある場所は、肌寒いし、どことなく湿った感じがするそうだ。


「何年前だったかな?

物凄く地底湖の水位が下がった時があってさぁ。

何時もなら穴が開いてるだけで真っ平な地面が、その時は所々落っこちてスッゲーデコボコしてた時が合ったんだよ。

だから、あの下に湖があるって分かったんだ」


と、食堂でザラさんが懐かしそうに言ってたっけ。

各穴の中は全部蓋の下で繋がっているから、一部の水の魔元素の上に浮いてるだけの地面は地底湖の水位が下がり過ぎたり、スッゴク重い物を乗せると沈んでしまうそうだ。

ザラさんの話では、物凄く水位が下がると、部屋の出入口から動物像がある場所まで続く細くうねった道以外、全部消えてしまうらしい。


「アイツに引っ張られて行ったあの場所のあの光景は、早々忘れられるもんじゃないぞ?」


と機嫌よくザラさんは言っていた。

その後数日で元に戻ったらしいけど。

それから数年、そこまで地底湖の水の魔元素が減った事はないらしい。

そもそも目に見えて分かる位、浮いた地面が沈んだ光景をザラさんはその1回しか見ていないそうだ。


その場所を研究してた冒険者さんの話では、ほぼ毎日チョコチョコ水位は変わってたらしいけど。


でも、それは数mmとか数cm位の僅かな違いで、だからこそ、ザラさんにそう言わせた光景は、本当に滅多に見れる光景じゃないんだろう。

勿論、実際に行ったナト達もそんな光景見ていない。

もし見ていたなら、自分達の足の下に地底湖がある事に気づいていたはずだし、そうなったら仕掛けを解く事自体が罠だって気づいたはずだ。


いや、そもそも、その冒険者さんをゾンビ何かにしなければ、もっと早くその事実をナト達も聞けていただろう。

ゾンビなんかにしたばっかりに・・・・・・


「それで?それがどうしたんだ?」

「ベッセル湖と同じ様に水の魔元素が水にならずにそのまま溜まっているって事は、その湖の水の魔元素も『水のオーブ』の所から流れて来たって事ですよね?」


ナト達が聞いた話が本当で、伝言ゲームみたいに間違った話が俺達に伝わってないなら。

っと補足を心の中でしながら、俺は不思議そうに首を傾げるザラさんに向けて、確認する様に言葉を続けた。


「それで水属性の魔法を使わなくても水位が変わる事があるって事は、湖のどこかに『流れ込む場所』と『流れ出る場所』があるって事ですよね?」


ベッセル湖もそうだけど、溜まった水の魔元素がどう消えるのか良く分かんないんだよな。

蒸発するのか、それとも別の場所に流れるのか、ダゴン達が使ってるのか。

それと、沈んだ地面が元に戻ったって事は、減る一方じゃなくてちゃんと増えるって事。

それはつまり、『水のオーブ』がある場所から水の魔元素がその地底湖に流れてくるって事だろう?

湧き水の様に染み出るのか、川の様に流れてくるのか。

それも分からないけど、必ずその動物像の地底湖と『水のオーブ』がある場所も繋がってるって事だよな。


「川の様に流れてきてるなら、地底湖の中から『水のオーブ』の所に行けるルートがあったかもしれないじゃないですか」

「え、いや・・・・・・

確かにアイツは、地底湖の中にも沢山の穴が開いていたって言ってたけど・・・

そんなのあり?」


あ、地底湖の研究をしてた冒険者さん、地底湖の中にも潜ってたのか。

その冒険者さんによると、上の地面だけじゃなく、地底湖の中にも沢山の穴が開いていたらしくて。

ゾンビにされずしっかり準備を整えられていたら、今頃その冒険者さんはその穴の先も調べていただろう。

その地底湖の穴の存在を知った時は、準備不足で潜って死にかけて、三途の川に肩まで浸かる寸前でザラさん達に助けられたから、あんまり調べられてないらしいけど。

いや、潜っただけで死にかけるって、どんな危険な潜り方したんだ、その人。

ザラさん達に見つけて貰えて、本当良かったね?


「えっと・・・

実物見てないので分かりませんが、ザラさん達の話を聞いた限りだと可能性はあると思います」

「そっか・・・・・・

アイツが起きてたら、ハッキリするんだろうけどな・・・」

「そう、ですね」


ギリ、と唇を噛み締めてそう言うザラさんに、何と声を掛けていいのか・・・・・・

全然良い言葉が浮かばなくて、俺は当り障りなく頷いて、逃げる様に話を進めた。


「それで、その事を前提として、像に書かれてたと言うヒントの事です」

「ヒント?

『沈み行く無謀な挑戦者は入り口を見つけ、臆病な知恵ある者達は馬鹿を見る』

ってヤツ?」

「はい、それです。

それ、ナト達は像を解く為のヒントだって思ったみたいですけど、本当にヒントだったんでしょうか?」


いや、このヒントを頼りにして像の仕掛けを解いたなら、確かにこのメッセージは像を解く為のヒントだったんだろう。

でも、俺の予想通り『像の仕掛を解く事自体が罠』だったら?

『ヒント』と言う一面自体がミスリードの可能性もある。


「まず、疑問に思ったのが、『キビ君』の像が『入口を見つけた無謀な挑戦者』だと言われた事です」

「なんでだよ?

此処の像と違って、ベルエール山の像は入り口の方を向いてたし、他の像より低かったんだぞ?

認めるのは癪だけど、赤の勇者達の言う通り、この像が無謀な挑戦者なんじゃないの?」

「確かに、外からその動物像のある場所に入って来た人達にとって、そこは『入り口』でしょう。

でも、最初から中に居た『キビ君』達からしたら、そこは部屋の外に出る為の『出口』です」


この世界やコラル・リーフの世界では、どこかに入ったり出たりする場所を『入口』としか言わない。

とかなら兎も角。

普通、外に行く為の『入口』とは言わないだろう?

言うとしたら、『出口』か『出入口』。

そう考えると、その『出入口』を入る一方行である『入口』と表したは不適切に感じるんだよな。


「で、でも!

赤の勇者達が言った通り、洞窟の出入口は小屋になっていて・・・

だから・・・・・・」

「その小屋が出来たのは?」

「・・・え?」

「その小屋が出来たのは、何時ですか?」

「なんだ、サトウ?

食堂でも何度も言っただろう?

300年前だよ。もう忘れたのか?」

「忘れてないよ、エド。

でも、エドやザラさん達が気づいてないみたいだから、何度も聞いてるんだ。


300年前なんだよ。

小屋が建てられたのは、たったの300年前。


俺の認識が間違って無いなら、コラル・リーフが活躍していた3000年前には、まだ小屋は建っていないはずなんだ。

そこは、洞窟と外を直接繋ぐ、『出入口』でしかない。

けして、小屋に繋がる『入口』なんかじゃないんだ」


間抜けに思う程口と目を見開いて、小さく声を漏らすザラさん。

ナト達もそうだけど、どうしてそこ等辺の年代の違に気づかないのか。

他の人達も驚いてるみたいだし、本当に本気で気づいてなかったのだろうか?

それとも俺が何か勘違いしていた?

でも、食堂で、


「しつこいって!」


って怒られる位、何度も聞いたから間違いないはず。

コラル・リーフが『召喚』された3000年前には、その洞窟の『出入口』には何の建物も存在していなかった。


だから、動物像やヒントの文が作られた3000年前の時点では、像のある場所の『出入口』を『小屋への入口』なんって表せないはずなんだ。


いや、コラル・リーフが本当に未来予知能力を持っていたら別だけど。

此処の羊の像の事でその可能も出てきたから、一概に絶対違うとは言えないんだよな。


「それと、『出入口』の方を見たまま『キビ君』の像を動かせないなら、『入口を見つけ』じゃなくて、『見つめ』だと思います」


確かに日本語で考えるなら、『見つける』って言葉には『発見』って意味の他に、『見慣れる』って意味の言葉もあるよ?

でも、『見慣れる』って事は、向きを何度も変えてその光景を見飽きるって事だろう?

作られた時から、ずっと同じ方向を見てるなら、『見つめる』の方が適切な気がするんだよな。

日本語としては。

この世界やコラル・リーフの世界ではどうだか分からないけど。


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