58,動物像に関する報告 5枚目
「それで、ジェイクさん。
肝心の解毒剤のレシピの方は問題ないんですか?」
「それは・・・・・・うん。問題ないよ。
周りの像の仕掛けが追加された奥に、もう一部屋ずつ小部屋があってね?
解毒剤を含めたレシピは全部そこに保管されてるらしいんだ」
「そじゃあ、今は『キビ君』の像はあんまり関係ないんですね。
壁の仕掛けを解いたら、『教えて!キビ君』を使ってレシピを見れば良いんですから」
「ううん。ダメだよ。
今、サトウ君のスマホに入ってる『教えて!キビ君』じゃレシピを見る事は、多分出来ない」
ジェイクさんによると、今俺のスマホに入っているほぼ初期状態の『教えて!キビ君』には、仕掛けの奥のレシピを見る機能が備わってないらしい。
サルーの町に行った後から『プチヴァイラス』でキノコが作り出せる様になった様に、俺が一定の条件をクリアすると『教えて!キビ君』や使える魔法やスキルがアップデートする場合があるそうだ。
この手動アップデートは最初からコラル・リーフがそういう風に設定している物もあるし、仕掛けの壁を追加した誰かが『キビ君』像のプログラムみたいなのを書き換えて追加した物もある。
レシピを見る機能のアップデートがコラル・リーフが用意したもので、『プチヴァイラス』のアップデートや『往復路の小さなお守り』が追加された事が仕掛けの壁を追加した誰かが用意したもの。
因みに『プチバイラス』のアップデート条件は『サルーの町の祭りに参加する事』で、『往復路の小さなお守り』を手に入れる条件が『『キビの泉』の壺にコインを入れる事』だった。
「と言う事で、この像を使って手動でアップデートしないといけないんだ」
「『教えて!キビ君』や『図鑑』の様に自動でアップデートしてくれる訳じゃないんですね・・・」
「残念な事にね。
像やサトウ君のスマホの性能からして、最初から入ってても問題ないはずなんだけど・・・・・・
どういう訳か態々こんな風にしたんだ。
像からは読み取れなかったけど、多分何かコラル・リーフなりに重要な理由があったんだと思うよ。
ここに来て、手動でアップデートさせる理由が」
仕掛けの壁を追加した誰かなら、『召喚』された人の弱体化目的で手動アップデート機能を追加させた。
って、こんな事した理由の想像がつくけど、コラル・リーフの方は想像がつかない。
態々『サトウ キビ』の為にこの部屋や『キビ君』像を用意したのに、最初から入っていても問題ない機能を制限する。
その理由って一体・・・・・・
『サトウ キビ』にこの部屋の像を見せたかった?
それとも、何らかの安全の為?
いや、俺のスマホの性能がコラル・リーフが想定していた性能より良かった可能性もあるのか。
だから、容量的にレシピを見る機能を追加出来なくても何とかなる様に壊れたスマホを用意した?
「何でも良いから、とっととレシピ見れるようにしろよ。
壁の仕掛けも解かなきゃいけねぇのに、何チンタラしてんだ?」
「あ、はい。すみません・・・」
ジェイクさんと一緒に悩んでたらクエイさんに怒られた。
そうだよな。
今は解毒剤のレシピを見つける事が先だ。
壊れたスマホを直せない以上、さっさと俺のスマホをアップデートさせないと。
理由を考えるのはそれからだ。
「えーと、ジェイクさん?
アップデートってどうすれば・・・・・・」
「まず『教えて!キビ君』を起動させて」
「もう、起動してます」
「それで、この窪みに画面が見える様に置く」
「はい」
ジェイクさんに言われ通り、『教えて!キビ君』を起動させたスマホを壊れたスマホの上の窪みに入れた。
置いた数秒後、スマホの画面には、
『更新するモノを選んでね?』
と吹き出しを出す右下の『キビ君』と、幾つもの項目。
どうも、レシピを見る為の機能以外にも、魔法やスキルも『キビ君』像を使えばアップデート出来るみたいだ。
まぁ、魔法やスキルはアップデートしないけど。
「えーと、レシピのは・・・・・・どれだろう?
ジェイクさん、どれか分かりますか?」
「・・・・・・一括ってのを押したらいいんじゃないかな?」
「でも、そうしたら魔法やスキルまでアップデートされて、『キビ君』の像が壊れてしまいますよね?」
「まぁ、壊れるね。
魔法やスキルは全部『召喚』関係の部分で管理してるから、アップデートしただけでも壊れる可能性の方が高いよ」
「なら、魔法やスキルはこのままでいいです。
レシピの方のアップデートが終わる前に壊れたら嫌ですし、『キビ君』の像が壊れたら『教えて!キビ君』事態も使えなくなるじゃないですか。
書かれてる事が信用できなくても、使えなくなるのは困ります」
俺の魔法やスキルを強くするメリットより、魔法やスキルをアップデートさせた時のデメリットの方が、どう考えても大きい。
数が少なく弱体化してるらしい今でも全然使いこなせてないのに、無闇矢鱈に強くしても絶対使いこなせないどころか、自分の魔法で死ぬ可能性の方が高くなるだろう。
今でもキノコや発酵食品を作る以外で使ったら危険過ぎる『プチヴァイラス』だけじゃなく、『ファイヤーボール』や『フライ』の様なよく使う魔法だって安心して使えなくなるかもしれないんだぞ!?
威力が強すぎて敵を燃やす前に自分が丸焼きになるかもしれないし、伝説のビックダーネアの巣から逃げ出した時の様に『フライ』を掛けた物が暴走するかもしれない。
そう考えれば、無暗矢鱈に自分が使えないものは持つべきじゃないんだ。
そう言うのは少しづつ段階を踏んで、安全に扱える様になってから手に入れれば良いんだよ。
そう言う俺が強くなってもデメリットしかないのに、最大重要な解毒剤のレシピが見れなくなって、『教えて!キビ君』が使えなくなるってデメリットまで追加されるんだぞ?
俺の魔法やスキルを強くする意味って何?
唯の嫌がらせか罠だろう?
「てな訳で、レシピの機能はどれでしょう?
・・・・・・って、店長さん?
何笑ってるんですか?」
「うん?
兄ちゃんがそう言う奴で良かった、って思ってただけだぞ?
いやー、本当、良かったわー。
兄ちゃんがここで強くなる何って言ってたら、俺達は全力で止めてたからな!」
「あ・・・・・・
命の危機ってデメリットまで追加されたよ」
そりゃそうだ。
監視対象が強くなる事何って、アルさん達からしたら有ってはならない事だよな。
最悪殺す気で止めに来る。
よくよく見たら、紺之助兄さんは少しも動けない様にピックにガッチリ抱きしめられピコンさんに口を塞がれてるし、
ザラさんとか笑顔で武器に手を掛けてるし、
クエイさんは真顔で大量の薬品地面に広げてるし。
お願いだから、今直ぐ紺之助兄さん放してその物騒な物仕舞ってください。
だからってルグとマシロは俺のすぐ近くでいそいそとロープを仕舞うのやめて?
ペールもそうだけど、いつの間にこんなに近くに居たの?
それでそのロープで何する気だった?
嬉しそうな笑顔が逆に怖いよ?
ペールもそろそろ首近くの肩に置いた手、どかしてくれないかなー?
いつまで強めに握ってるのかなー?
・・・とりあえず、うん。
『キビ君』像や壊れたスマホが直って俺の実力がついても、絶対魔法とスキルはアップデートしないでおこう。
絶対の絶っ対にだ!!
命大事!!
安全第一ッ!!!
「うーん・・・・・・
多分、この『珊瑚の図書館』ってのがそうかな?」
「・・・・・・」
「サトウ君。
そんなに怯えなくても、大丈夫だよ?
サトウ君達が変な事しないなら、ボク達は何もしないんだから」
「人を罠にはめようとした人のセリフじゃないです・・・」
「ハハハ。
罠だ何って心外だなぁ。
ただ、確認しただけじゃないか」
「確認の仕方がエグイ!!」
優しい顔してドSなジェイクさんに、またペールに抱っこされながら文句を言う。
ジェイクさん達の立場や今まで経験してきた事を考えたら、定期的に確認したくなるのは分かるよ?
俺もジェイクさん達の立場だったら、少しの事で不安になって変な事しないか聞きたくなるだろうし。
でも!
だからって!!
『キビ君』像が壊れるって分かっていて一括押せって言ったのは、罠としか思えない!!!
俺達を試したと言われても、エッグイデストラップ張られたとしか思えないよッ!!?
・・・あぁ、何か慣れたらペールの硬めのモフモフが癒しに感じるよ・・・・・・
恐怖に傷ついた心が癒される。
ビバ、アニマルセラピー・・・・・・
「とりあえず、アップデートしようか?」
「・・・・・・・・・」
「大丈夫、大丈夫!
これはアップデートしても像は壊れないから」
「・・・・・・・・・」
「えーと・・・ごめんね?
思いの外やり過ぎっちゃったのは悪かったけど、流石に無表情でそんな胡散臭いものを見る様な目をするのはやめてくれないかな?」
ジェイクさん。
今の流れで素直にアップデート出来るとお思いで?
どう考えても無理でしょ?
また罠なんじゃないでしょうね?
と強く強く思いつつ、ジェイクさんをジーッと無言で見つめる。
本当に罠じゃないかどうかしっかり調べる意味も含めて、ジーとジーと。
ついでに、漫画の様に俺の眼力でジェイクさんが圧力を感じでくれれば良いなぁ。
そう思ってたら、ジェイクさんに謝って貰えた。
やったぜ。
「・・・・・・本当にレシピの機能なんですか?
本当の本当に、大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「本当の本当の本当に?」
「流石に、そこまで何度も確認しなくても・・・
本当に大丈夫だからね?」
「・・・・・・信用しますからね?」
さっきのあれで少しジェイクさん不信になりつつも、言われた通りの『珊瑚の図書館』と言う項目を押し、アップデートする。
一瞬画面が真っ白になって、次の瞬間、晴れた日の草原だろうか?
ポップな太陽と雲が浮かぶ水色の空と、所々左右に揺れる赤や白、黄色の花が咲く黄緑色の道。
そこをトコトコと音符を出しながら歩く、左を向いた『キビ君』が映し出された。
その上機嫌な『キビ君』の下には、ゆっくり増えてく数字と%。
この進み具合なら、相当時間が掛かるだろうな。




