57,動物像に関する報告 4枚目
『教えて!キビ君』がスマホに入っている俺以外、アンジュ大陸国人しかレシピが見れなくなった『キビ君』像。
誰がそんな事したのか、色々候補は出るけど情報が少な過ぎて確信が持てない。
「なんで壊されたかは今は良いだろう!
それより、ジェイク!!
魔法道具と素材が有ればそのスマホ、絶対直す事が出来るんだな?
ある程度なら俺の店で用意できる。何が必要なんだ?」
「そうだね・・・・・・最低でも『ジャクター66
「そんなオーダーメイドの高級魔法道具、俺の店に置ける訳ないだろう」
・・・・・・じゃあ、アルゴさんの腕を信じて『ベルズシリーズ』のどれか・・・も無いんだね」
ジェイクさんが壊れたスマホを直すのに要求した修理用の魔法道具は、どれもアルさんの店には置いてないらしい。
アルさんが血の涙を流しそうな声で置けないって言ってたから、高級な魔法道具の中でもかなりの高価値な品何だろう。
オーダーメイドとも言ってたし、制作から販売まで他の店の力を借りず全部自分達でやってる可能性もあるな。
その後、ジェイクさんが仕方なしに言ったシリーズの魔法道具も、絵に描いた様に崩れ落ちたアルさんの姿的に置いてないんだろう。
「えっと。
そんなに手に入らない魔法道具何ですか?」
「入らない・・・」
「コロナさん達に手伝って貰っても?」
「この状況じゃ無理だろうね。
もし、ネイ君達が用意してくれても安全に此処まで運べないよ」
「そうですか・・・・・・」
確かに魔女達と戦ってる今、そんな高級品を運び込むのはリスクが高過ぎるな。
この1年でワープ系の魔法道具が完成したらしいから、魔女達に気づかれず他の国からでもアジトに修理用の魔法道具を持ち込む事は出来る。
でも、急いで完成させたから色々問題が残ってるらしくて、道具の性能を引き出すスキルを持つルグ達ケット・シー以外、100%安全に使う事が出来ないそうだ。
まぁ、小さな道具とか、ちょっとした素材位なら、ルグ達以外でも遣り取り出来るらしいんだけど。
でも、そんな不安定な魔法道具を使ったら、精密機器の様な魔法道具はワープしている最中に壊れてしまうかもしれないそうだ。
だからって、徒歩とか馬車とか使って運んだら今度はアジトの存在が魔女達にバレるかもしれない。
いや、アルさん達の記憶の事を考えればもうバレてるかもしれないけど。
まだ間に合う可能性もある訳だし、迂闊な事は出来ないって事だ。
それに、アーサーベルを含めローズ国の殆どの場所が時間を止める水晶に覆われているから他の店から借りる事も出来ない。
つまり、魔法道具屋にない以上ジェイクさんが求める修理用の魔法道具は事件を解決した後じゃないと手に入らない、って考えた方が良いだろう。
「なぁ、ジェイク・・・・・・
『カクティアーノ』とかじゃダメなのか?」
「ダメ。スマホもこの像も繊細な魔法道具何だよ?
特に像の方何ってギリギリ動いてる様な状態なんだ。
下手な性能の魔法道具じゃ直すどころか逆に壊しちゃうよ」
「像の方って・・・
え?『キビ君』の像も壊れてるんですか?」
「あー・・・うん・・・・・・少しね」
お店に置いてある性能の低い魔法道具じゃダメかどうか聞くアルさんに、ジェイクさんはバッサリダメだと言った。
そんなジェイクさんが話の途中、流れる様に聞き捨てならない事を言った気がする。
その言葉が聞き間違いだと思いたくて『キビ君』像が壊れてるかどうか聞くと、ジェイクさんは歯切れ悪く頷いた。
そんな・・・
『キビ君』像まで壊れてた何って・・・・・・
ギリギリ動いてる状態でレシピを手に入れる事が出来るのか?
「えーと・・・・・・
大変言いずらいんだけど・・・
壊れた原因、ネイ君達なんだよね・・・」
「え?コロナさん達が?」
「うん・・・
この真上がちょうどローズ国城の召喚の間でね?
ネイ君達が城を壊した衝撃がちょっと強すぎて、ね?
像にまでダメージが・・・・・・」
「この真上が・・・・・・」
地下水道の入口とローズ国城ってそれなりに離れてたよな?
それでも、この上に城があるのか・・・
そりゃあ、片道だけでも15分掛かるはずだ。
・・・・・・うん。
それにしても、高さ的にはかなり離れてるはずなのに、城を壊して『キビ君』像までダメージ入れるって、本当ルグ達どんな壊し方したんだ?
城を壊した衝撃でアジトの壁も壊れたって言うし。
震度7の地震が起きる位の事でもしたのかよ?
本当怖過ぎて、正体がバレるとかの以前に質問する気になれない。
「この像が『図鑑』や『教えて!キビ君』の情報も管理してる魔法道具の1つみたいでね?」
「1つ?って事は他にも『教えて!キビ君』を管理する『キビ君』の像があるんですか?」
「うん。
1つだけじゃ情報を処理しきれないからなのか、それとも世界中何処でも使える様にする為なのかな?
全国各地に幾つも置かれてるみたいなんだ。
その像達が国や地域を分担して管理してる。
でも、殆どの繋がりが切れてるから、80%以上の像は壊れてると思うよ。
多分、各国に2つ、3つ残ってるかどうかって所じゃないかな?」
つまり、『キビ君』の像が『教えて!キビ君』や『図鑑』を管理するホストコンピューターとかサーバーに近い物で、誰も気づかないだけで世界中に存在するって事か。
でも、その殆どが壊れてる。
『世界中何処でも使える様にする為』ってジェイクさんが言ってたし、その壊れた『キビ君』像の内幾つかはWi-Fiとかルーターとか中継器とか?
説明聞いても違いがよく分からないけど、多分そう言う機械の様な役割が合ったのかもしれない。
「それで、この像がここ等一帯。
いや、多分ローズ国全土かな?
ローズ国内で使われた『図鑑』や『教えて!キビ君』を管理していてね?
その2つが問題なく使えてるから、普通に動いてる分には問題ないんだ。
下手に動かすと簡単に壊れてしまうってだけで」
「それは、ギリギリって言わなくないですか?
問題なく動いてるって言うんじゃ・・・・・・」
「ギリギリなんだよ。
『図鑑』関係とかの常時動いてる方は無事なんだけどね?
この真上で『召喚』された人に魔法やスキルを与えるとかの、条件がそろった時に動く方に深刻なダメージが入ってるんだ。
何かあってこの国でもう1人『サトウ キビ』って名前の人が『召喚』されたら、多分この像は壊れるよ」
「え、俺?
もう1度俺が『召喚』されると問題なんですか?」
「サトウ君は問題ないよ」
いや、『もう1人』って事は俺じゃ無くて、俺と同姓同名の人か、If世界の俺が『召喚』されたら壊れるって事か。
ジェイクさんも『俺』は問題ないって言ってくれたし。
まぁ、苗字は兎も角『佐藤 貴弥』ってフルネームはかなり珍しいと思うし、ピンポイントでIf世界の『俺』が『召喚』される確率も低いだろう。
だから、『キビ君』像が壊れる事は無いと思うけど・・・
これがフラグになったりしないよな?
「ついでだから説明するけど、サトウ君が気にしていたサトウ君だけ『図鑑』じゃない理由。
それはこの像を作ったコラル・リーフが『召喚』された『サトウ キビって名前の女性』にサトウ君が持っている魔法やスキル、『教えて!キビ君』を渡したかったからなんだ」
「・・・・・・・・・え・・・・・・女性?」
「うん。
なんでかは分からないけど、コラル・リーフは『サトウ キビ』って名前の女性の為にこの魔法道具や部屋を作ったんだ。
サトウ君には辛い話かもしれないけど・・・
サトウ君はがその魔法やスキルを使えるのは、サトウ君がこの真上で『召喚』された時。
この像の機能が間違って判断したからなんだ。
男だけど、『サトウ』って苗字で『キビ』って愛称だったから、最初判断を間違った」
「え?ちょっと待って、ジェイク。
キビ君の名前って確か・・・・・・」
「『タカヤ』君だよ。『キビ』は愛称。
住民登録する時サトウ君がそう名乗ったって聞いたし、実際『タカヤ サトウ』で登録されてるよ」
「えー・・・・・・そうだっけ?」
「そうだよ。
『サトウ』って苗字で、『キビ』って愛称の男だから、本来『サトウ キビ』に渡されるはずの魔法やスキルに比べてサトウ君が使える魔法やスキルは、少なかったり弱かったりするんだ。
多分途中で間違いだって気づいたんだろうね」
ジェイクさんとマシロが話してる声がやけに遠くに聞こえる。
それに周りの音もよく聞こえない。
・・・そっか。そう、だよな。
コラル・リーフが魔法やスキルを渡したかったのは。
必要としてたのは、『俺』、じゃない。
『俺』は『キビ』のお零れを貰っただけの、不必要な別人。
・・・・・・何であろうと結局『俺』は、『キビ』の代わりでしかないんだ。
「ハハ・・・・・・
本当に、この名前が『お守り』になる何ってな・・・」
「貴弥・・・」
「・・・何でもないよ、兄さん。
本当に、何でもない。大丈夫」
我ながら乾き切ったと思う様な笑いと共に、自然と出て行ってしまった言葉。
そんな大きくないはずの俺の呟きを聞いて、側に来た紺之助兄さんが悲しそうな顔をする。
そんな紺之助兄さんに、心底何でもないかの様な声音で俺は答えた。
あぁ、本当。
今だけは表情筋が有給を取ってくれていて良かった。
きっと何時も通りなら、人に見せられない顔になっていただろうから。
いいよ。
代わりだろうが、お零れだろうが、生きていられるなら。
それで十分じゃんか。




