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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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50,付け加えられた仕掛け 前編


「お待たせー。

それでどうしたんだ?なんか見つけたのか?」

「うん。この壁に違和感感じてね?

それでしっかり調べたら、壁の上の方に仕掛けが有ったんだ。ほら、此処!」


紺之助兄さんが『クリエイト』で作ったのだろう。

背はそこまで高くないけど柱に挟まれた壁の半分位はありそうな横に広い踏み台。

その踏み台に乗ったマシロが、俺が背伸びしながら手を伸ばしてギリギリ届く所の壁を指さした。


「えーと・・・・・・

あっ!何か小さく記号が書かれてる」

「記号じゃなくて、アンジュ大陸文字だよ。

私達の故郷、アンジュ大陸で使われてる文字。

なんでコラル・リーフがアンジュ大陸文字を使ったのか。

それは全然分からないけど、間違いなく此処に書かれてるのは私達の国の文字だよ」

「文字?でも翻訳されないよ?

8文字あるって事は、何かの文か単語なんだよね?」

「ううん。

今は全く意味の分からない文字の羅列なんだ。

それで前7文字はクルクル動かせるの」

「それじゃあこれ、ダイアル式の鍵って事?

シリンダーの文字を正しく合わせて、8文字の単語か文を作る感じの」

「多分・・・」


隣に立つ様に踏み台に乗ってマシロが指さした所を見ると、そこには8種類の複雑な記号が書かれていた。

翻訳されないから分からなかったけど、この記号はアンジュ大陸の文字らしい。

そして前7文字はシリンダーになっていて、そのシリンダー全部が10回以上回しても元の記号に戻らなかった。


だからってアンジュ大陸文字全部が1つ1つのシリンダーに書かれてる訳じゃないみたいだ。

マシロ達の話だと、アンジュ大陸文字は全部で100種類以上あるらしいんけど、シリンダーにはその内の幾つか。

ア行全部とか濁音や半濁音とかの、1部のグループに属する文字がゴッソリ抜けてるらしい。

それでも1つのシリンダーに100文字近く書かれてるのは確かで、ヒント無しに勘だけで正解を導き出すとなると100兆通り以上の組み合わせを試さないといけないって事になる。


はぁー・・・

一体どれだけの時間を掛ければ正解するんだか。


「そう言う訳だから貴弥。

何かヒントになりそうな物見てない?」

「ヒント。ヒントかぁ・・・うーん・・・・・・」

「特には・・・なかったよね?」

「あぁ。

上の像の何処にも文字は書かれてなかったし、ピコンの箱の様に崩された数字や文字が隠されてるって事もなかった。

あるとしたら他の像か・・・」

「蛇の像自体がヒントって事か」


文字としてこの仕掛けのヒントが残ってないなら、像自体が分かる人には分かるヒントの可能性もある。

例えばこの像が蛇として誰かを表してるなら、その人の名前を入れるとか。


「とりあえず、分かる様でしたら試しに3000年前のホットカルーア国の王様の名前を入れてみませんか?」

「ちょっと待ってね。

専門にしてる時代じゃないから直ぐ出て来なくって・・・

えーと・・・確かぁ・・・・・・」


紺之助兄さん達に上の蛇の像がコロナさんっぽい事を伝え、ジェイクさんに候補に挙がっていた3000年前のホットカルーア国の王様の名前を知っているか聞いてみる。


「専攻してる時代じゃないから分からない」


って言われる可能性も考えて少し不安に思っていたけど、どうやら大丈夫そうだ。

3000年前のホットカルーア国の王様の名前が正解だって分かった訳じゃないけど、それでも直ぐには出ないだけでジェイクさんが知ってる事に少しだけホッとする。


「・・・フェルネット?・・・・・・いや。

リレブラン・コープスリヴァイブ、だったはず・・・」

「それだと条件に合わないね」

「そうなの?」

「うん。

苗字も名前も愛称も8文字にならないし、最後の文字も『 ― 』じゃないよ」


マシロが言った『最後の文字も』と『じゃないよ』の間のどうやって出してるか謎の音は、シリンダー後の記号の事なんだろう。

分かっていたけど、やっぱり意味のある音に聞こえない。

聞こえないなら聞こえないでいいけど、せめてもっと耳に良い音に訳して欲しかった。

普通に意味の分かる言葉の中に一瞬だけノイズの様な不愉快な音が混じるのは、控えめに言ってもホラーでしかないからな。

何も可笑しくない普通の事を話してるはずなのに、俺と紺之助兄さんが大げさな位ビクッとしたから、マシロ達まで驚いたじゃないか。

いや、本当に何ともないから、ルグもマシロも落ち着いて。


「えーと、3000年前のホットカルーア国の王様が違うなら、その時代に有名だったバルログの方って居ませんでしたか?」

「うーん・・・居たかなぁ?

他の時代だったら何人か思い当たるんだけど、7代目が生きていた時代と言うと・・・・・・

特には思いつかないね?」

「そうなると・・・・・・

そのまま『バルログ』って入れるのはどうでしょう?

だれか個人の名前じゃなくて、種族名とかバルログの方が多く所属していた団体の名前とか。

そういうのの可能性もありますよね?」

「それも・・・違うと思うな。

『バルログ』は3文字だし、有名なバルログ関係の組織で最後に『 ― 』が付く8文字の組織は思い当たらないから・・・」

「それなら、『バルログの像』とか『バルログの炎』とか。

『バルログ』と助詞と残り数文字の文。

それでどうにかなりませんか?」


アンジュ大陸語で『バルログ』が3文字なら、前後にもう1つ位単語を付けられるじゃないか?

そう思ってジェイクさん達に尋ねるけど、反応がイマイチ。

やっぱり、最後の文字に合う言葉が出てこないみたいだ。


「そもそも、今と3000年前の文字って同じなの?」

「同じって・・・

それ、『あいうえお順』と『いろは順』みたいな感じって事?」

「そうそう。

ジェイクさんもマシロちゃんも、今使われてるアンジュ大陸語?

って言うので考えてるんだよね?

でも3000年も前なら、『ゑ』とか『ゐ』みたいな今は使われてない文字とか合っただろうし、その種族の呼び方も違ったんじゃないかな?

実際3000年前と今じゃ文化とか価値観も大分違ったって話だしね」


なるほど。

確かに紺之助兄さんの言う通りだ。


色々違う3000年も前の仕掛けなら、答えの言葉も3000年前に使われていた文字や呼び方にしないといけないよな。

よくよく考えれば分かる事だけど、今使われてるアンジュ大陸文字と仕掛けに書かれたアンジュ大陸文字は数が少ないだけで同じだと言われたから、その考えが完全に頭から抜けていた。


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