45,カラクリ箱と2つの鍵 5箱目
「他に決定的な解毒剤のヒントらしいヒントもありませんし、ここはコラル・リーフの事も、その手紙の内容も信じてみませんか?」
「確かに今の話を聞くと、コラル・リーフの事は信じても良い様な気がするけど・・・
でも、手紙のはなぁ・・・」
「そもそも、その手紙読んだピコン君が何か隠してるよーだし?
なぁ、クエイ?」
「あぁ。そうだ、なッ!」
「あっ!」
確かにピコンさんは手紙の内容の中で、態と言ってない事があるんだろう。
あんなに荒れた理由。
解毒剤のレシピや素材の在り処を言って、俺達が盛り上がってるのを良い事に荒れた理由をアヤフヤにしようとしている。
今のピコンさんの態度からは、そう言う物を嫌でも感じてしまうんだ。
だからだろう。
いつの間にかピコンさんの後ろに居たクエイさんは、ザラさんの『何か隠してる』って言葉でビクッとなった隙きに、ピコンさんから手紙を奪った。
「か、返せ!!先生ッ!!読むな!!返せよッ!!」
「・・・・・・おい、ピコン。
これ、どう言う事だ?」
「だから、読むなって!!
・・・・・・僕は、ただの羊飼いなんだ・・・
この手紙に書かれてる相手は、別の奴なんだ・・・」
「・・・・・・そうかよ。
お前がそう思いたいなら、それで良いんじゃねぇの?」
サッと近づいたザラさんに邪魔されながらも、読むなと叫び手を伸ばすピコンさん。
その喉が裂けそうな静止の声も空しく、クエイさんは手紙を読んでしまった様だ。
もう、読むなって願いが叶わないと分かって、ピコンさんは諦めた様に項垂れる。
そんなに読まれたくない。
認めたくない内容って、本当、一体なんなんだろう。
更に気になったけど、あの様子だとクエイさんも詳しく教えてくれなさそうだ。
「まぁ、ある程度はこの手紙も信じられるかもな」
「本当ですか?」
「まぁ、な。
俺達が調べた事と矛盾しないし、寧ろ裏づけになる」
クエイさんやアルさん達がずっと調べた事によると、今から約20年前。
おっさん達は自分達の計画の邪魔になる、解毒剤の材料やレシピを消し去ろうと躍起になっていた時期があるらしい。
ゾンビやゾンビ毒が最初に作られてしまった50年前じゃなく、それから30年も経った20年前にそんな話が出てきたんだ。
そもそも、完全に自分達が作ったオリジナルの毒なら、最初から解毒剤何って作らないはず。
それなのにこんなに騒いでるなら、絶対何かある。
ゾンビにされた人達を戻す為色々調べていたアルさん達はそう思い、その事を徹底的に調べた。
その結果、ゾンビ毒が1万年前に世界を支配する為に当時の魔王が作って実際に使った毒だと言う事。
それと、当時の魔王と敵対する何処かの小さな国のお姫様と仲間達が、その解毒剤を作った事が分かったらしい。
恐らくコラル・リーフが魔法道具の中に隠したのも、その小さな国のお姫様達が作った解毒剤のレシピなんだと思う。
「そのヒントがローズ国城のどっかにあって、20年前それが見つかりかけたって事までは分かったんだけどね?」
「この状況から察するに、結局そのヒントは見つからなかったんですね。
皆さんも、ローズ国王達も」
「うん。そうなんだけどねぇ。
まさか、そのヒントと言われてた物がこの箱だったとは・・・
こんな形で見つかる何って思っても居なかったよ!」
困った様に笑うジェイクさん。
コロナさんが中心になってローズ国城中探し回っても全然見つからず。
もうおっさん達に処分された後だと諦めかけた時、このアジトに解毒剤のレシピが隠されてる事が分かったらしい。
「城の中に紛れた前王やカルヴァドス・ジャック・ローズのやり方に反感を抱いてる奴等が、代わる代わる受け継ぎながらこの箱を守っていたらしい。
だか20年前、ついにこの箱がカルヴァドス・ジャック・ローズ達に見つかり、処分されそうになった」
「だから、この手紙を書いた奴等は城を追い出される際にこの箱を盗み出し、一緒に逃げ出した。
そう言う事だよね、クエイ君?」
「あぁ、そうだ。
そう言う事が腹ん中に居たガキに向けて書いてある」
「城を・・・・・・それって、まさか・・・」
ピコンさんが言いたがらなかった手紙の内容。
それを書いたのは、今から20年前。
つまり19年 + 1年前に城を追い出された、お腹の中に赤ちゃんが居た女性。
それって、トムさんの依頼の時ルグが言っていた王女の事、だよな?
恐らくゾンビの事を知って反発して、追い出された。
あの王女とその恋人が箱を持ち出したのは間違いないだろう。
それで確か、1年前の時点でルディさんの年は18で、ピコンさんはルディさんと同い年だと言っていた。
それで・・・それで・・・・・・
ピコンさんは両親の形見として、鍛冶師の爺さんのお父さんが城に置いてきて、その王女達が持ち出した箱を持っていた訳だから・・・・・・
それに、ピコンさんが持ってるスキルや魔法から考えて、ローズ国王家の血を引いてるのは間違いない訳で・・・
まさか、ピコンさんは・・・・・・
「まぁ、そいつ等が持ち出した後、ピコンの両親が盗んだ可能性もあるけどな」
「そう、ですね。
盗んだかどうかは分かりませんが、何らかの理由でその持ち出した人達から、ピコンさんのご両親に渡った可能性もありますよね」
だから、ピコンさんはあんなに否定していたのか。
かなり遠い親戚と言われるならまだ我慢できる。
けどやっぱり、可能性だけでもあの魔女やおっさんとかなり近い血縁関係だって言われるのは嫌だよな。
俺だったら絶対、全身の血を入れ替え続けないといけない。
って使命に捕らわれる位、心底嫌だ。
「ピコン君の両親の正体の事は、今は置いておくとして。
それで、ピコン君。
封筒の中に鍵は無かった?」
「鍵?この手紙以外、何も無かったけど?」
「そ、っか・・・・・・」
封筒の中にも鍵が無いとピコンさんに言われ、紺之助兄さんが崩れ落ちた。
やっぱり捨てられた、と絶望してる所、申し訳ないんだけど、実は見つけてるんだよね、鍵。
「後一歩なのに・・・
肝心の鍵が無い何って・・・・・・」
「鍵ならサトウが見つけたぞ」
「・・・え?」
「今、組み立ててる所だ。な、サトウ?」
「え、あー、うん。
ごめん!話に夢中になってた。
直ぐ終わらせるから、もう少しだけ待っててッ!!」
まだ終わらないのか?
と言いたげなルグとマシロ、鍛冶師の爺さんの顔。
その表情に弾かれ、俺は慌てて作業を再開した。
「え?鍵?組み立て?え?え?」
「抜けた箱の脚。あれが鍵だったんだよ」
大きな扉に見合った巨大南京錠に使われる様な、差し込むタイプの鍵。
そこまで考えていると、何故か偶然視界に入った箱の脚から目が離せなくなった。
元々箱を閉じる為の『鍵』の役割もあった脚。
箱の中に隠れてた棒の部分には複雑な凹凸が合って、箱全体がシンメトリーな感じの模様やデザインになっているのに、この脚達の最初から外に出ていた部分だけは片方だけ膨らんで反対側は滑らかな感じの。
まるで本来1つだった脚を、綺麗に半分にした様な。
そんな感じに見えたんだ。
この考えと俺の目を釘付けにする箱の脚が頭の中で混ざり合って、そして閃いた。
もしかしてパズルの様にこの脚を組み立てたら、1つの鍵になるんじゃないか?って。
その予想は正解だった様で、鍛冶師の爺さんに頼み込んで触らせて貰ったら、2つの脚がピッタリ重なった。
「この4本の脚を上手く組み立てると・・・・・・
よしッ!出来た!!」
俺が話に夢中になり過ぎたせいでかなり遅くなってしまったけど、思ってたよりも簡単に完成した。
正しく4本の脚を組み合わせ出来上がったのは、片方の先がドーナッツの様な形の丸になったアンティークっぽい感じの鍵。
サイズもあの南京錠に合った、家や自転車の鍵よりも大きくて長い物だ。
「はい、兄さん。多分、この鍵で開くと思うよ?」
「・・・・・・そ・・・」
「そ?」
「そう言う事は直ぐに言いなさい、貴弥!!!!」
「えーと・・・ごめんなさい」
完成した鍵を渡したら、紺之助兄さんに怒られた。
いや、俺も組み立てだす前に紺之助兄さん達にも声かけたんだよ?
でも、丁度ピコンさんに声掛けるのに夢中になっていて気づいて貰え無かったんだ。
だから、気づいてくれたルグとマシロ。
それと、俺の監視役のペールと一緒に鍛冶師の爺さんに頼み込んで組み立てさせて貰ったんだ。
まぁ、それを言ったら更に面倒くさい事になりそうだから言わないけど。
 




