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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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43,カラクリ箱と2つの鍵 3箱目


「大体、ジェイクにそんな繊細な心があるはず無いだろう。

そいつ、魔族の1部が使われた魔道具見て、研究のしがいあると笑って言いやがったんだぞ?

そんな奴が同族の死体位で顔色変えるかよ」

「・・・え?」

「サトウ、ジェイクはこう見えてかなり図太いんだぜ?

歴史的価値がある魔法道具やその素材になるって言うなら、同族の死体でも平然と調べだす。

そう言う奴なんだよ、ジェイクは。

同族の死体見て動揺するって言うなら、多分、クエイの方が酷いと思うぞ?」

「確かに、ここに来てスピリッツ君と一緒にプリズムスライムやクリスタルスライム、悪魔の化石やミイラを調べたよ?

でも、そこまで言わなくてもいいじゃないか。

流石のボクも、心の底から嬉々として自分の体を差し出した同族の死体なんって見たら気分が悪くなるよ」


ジェイクさんの顔色が悪かった理由、俺と大分違った!!

同族の目玉が加工されたの見て気分が悪くなったんじゃなくて、この目玉がどうして宝石としてのディアプリズムになったのか。

その理由で引いてたの!!?

バラバラの死体の1部を見たからじゃなくて!?

何処と無く儚さがある見た目に反して、ジェイクさんって意外と図太い神経してたんだな・・・・・・

いや、食堂での会話から薄々分かっていてけど。

余りに見た目とのギャップが酷くて、チョイチョイその事忘れそうになるんだよ。

見た目だけなら紺之助兄さんと同類ぽい儚さのある優しそうなお兄さんなんだけど、豊富な人生経験を示す様にお腹の中はそれなりに黒そうなんだよなぁ。


「悲しい事に大昔には、ボク達魔族がただ採取されるだけの時代もあってね?

この分野を学んでると、嫌でも加工された同族や魔族の死体を見慣れてしまうんだ。

だから、いい気分はしないけど、ディアプリズムを見る位なら平気だよ」

「・・・・・・・・・大変、嫌な、慣れですね」

「そうだね。

慣れるてしまう位、ボク達魔族の1部を使った魔法道具が見つかる何って事。

出来れば起きて欲しくなかったんだけどね。

でも、それがこの世界で本当に起きた歴史だから」


仕方ないと、泣きそうな困った笑顔を浮かべるジェイクさん。

そんなジェイクさんはしんみりしだした空気を変える様に、


パンッ!


と1回手を叩いて、ユマさんが依頼書を改造する時みたいな画面を出しながら虹色の宝石を調べだした。


「・・・・・・見た感じぃ・・・

ボク達が探してる鍵とは違うけど、この宝石全部が何処かの扉を開ける為の鍵みたいだね。

ボク達が探してる鍵は、1つだけのはずだし、鍵穴の形から考えて凹凸の付いた長い棒の様な形をしてるはずだよ」


確かにあの扉に付いた南京錠の鍵穴は1つしかなかったし、どの宝石の先にも南京錠の鍵になりそうな棒は付いてない。

手の平でコロコロと転がせる様な形をしているんだ。

だから、この宝石達が何処かの部屋の扉の鍵だったとしても、それは全く別の扉の物と言う事になる。

やっぱり、探してる箱を間違えたのかな?

それとも、宝石を安全に仕舞っておく為に引かれた布や台の下に隠されてる?


「このディアプリズムの持ち主達は、その扉を。

いや、その扉の先にあるものを守る為に、自分の目を自ら望んで差し出したみたいだね。

ここまで、持ち主と加工した人の思いが目に残ってるんだ。

そうとう強い覚悟を持ってそのナニカを守ってるんだと思うよ」

「凄い覚悟・・・・・・

もしかして、その守ってる物ってゾンビ毒の解毒剤ですか?」

「それは・・・分からない。

でも、生半可な覚悟で目を差し出して、加工した訳じゃ無いのは確かだよ」


自分達が開けたい扉の鍵じゃなくても、解毒剤の部屋の扉の鍵なら、それはそれで問題ない。

寧ろラッキーな位だろう。

だからジェイクさんにそう聞いたんだけど、解毒剤がある部屋の鍵かどうかまでは分からないらしい。

大喜びで自分の目を差し出した事は分かっても、どの部屋の鍵かは分からないって・・・・・・

それだけ虹色の宝石の持ち主達の思いと覚悟が濃いって事だよな。

この虹色の宝石の持ち主達は、どれだけデカイ感情と覚悟を持って自分の目を差し出したんだろう。


「このディアプリズムに刻まれてるのは、自分の人生全てで。

いや、自分が死んで、その後何百年、何千年経っても、絶対にそのナニカを守るって言う覚悟。

狂気すら感じる程の覚悟だ」

「・・・本当に生半可な覚悟じゃないですね」


ジェイクさんによると、中の文字や模様は大昔のアンジュ大陸にあったと言う、死んだ人の体の1部を魔法道具やアクセサリーに変える。

今は行われてない葬儀の方法で使われていた、お経の様な物なのだそうだ。


でも書かれている文字は、生きてる時も死んで幽霊になった後も、絶対そのナニカを守るって誓い。


普通、亡くなった人が安らかに眠れる様にとか、天国に居る歴代勇者達の下に無事に行ける様にとか。

そう言う死者の幸せを願う言葉を刻むらしいんだけど、この2つの虹色の宝石にはその言葉の代わりに誓いの言葉が刻まれてるらしい。

それはつまり、死んだ後も幸せになる道じゃなくて、そのナニカを守る為に何時終わるか分からない戦いを続ける。

って道を選んだって事で。

それって、確かに生半可な覚悟じゃ出来ない事だと思う。


「この葬儀で作られた物って、後々に人間に盗まれる事が多くてね。

そのせいで、この葬儀の方法は廃れちゃったんだけど・・・

だから多分、この宝石達も誰かが墓荒らしして盗んだ物の可能性が高いと思うんだ。

ほら、ネイ君のお父さん。

彼女のお父さんがどうして亡くなったか、サトウ君も聞いた事あるよね?」

「はい・・・・・・」

「昔はネイ君のお父さんの様に、体の1部だけでも仕えてる人と一緒にお墓に入って、死後も主人を守るのが良い事って考えてた時代があったんだ。

作られた時代や書かれた文字を見るに、この目の持ち主達もそう言う理由で目を差し出したんじゃないかな?」


多分、こっちの大人の方は主人と一緒に戦死した人で、子供は生き残った従者だ。

と、ジェイクさんは言う。

つまり、俺達が探してる解毒剤とは全く関係ないと言う事か。


関係ない上に、何かディアプリズム(この目)の持ち主達に呪われそうなんだけど・・・・・・

誰だか分からないけど、何でこんなヤバそうな人達の墓、荒らしたんだよ!!

静かに主人さんと一緒に眠らせてあげなよ!!!

こんな狂気的な忠義心持ってる人達だよ!?

絶対引き離された事に怒って呪い殺されるって!!


両親の形見の1部になる訳だからピコンさんには申し訳ないと思うけど、まだその荒らされたお墓が残ってるなら、色々落ち着いた後にでもちゃんと返した方がいいよな?

いや、絶対その方が良い!!

何が何でも、俺達まで呪い殺される前に返さないとッ!!!


「そもそも、この宝石はどれも加工されてから3000年位は経ってるからね。

アルゴさんのお父さんが作った物じゃない。

だから、ピコン君の手に渡る前に誰かがあの扉の鍵を捨てて、この盗んだ宝石を入れたんじゃないかな?」

「そんな・・・・・・

それじゃあ、もう手詰まりって事?」

「あっ!蓋!!

鍛冶師さん、蓋とかにもう1段階仕掛けとかありませんか!?

もしかしたら、蓋の中に隠されてるかも知れません!!」


探していた鍵が捨てられたとジェイクさんに言われ、絶望しかけた瞬間。

紺之助兄さんが蓋にもう1段仕掛けが無いか、鍛冶師の爺さんに聞いていた。

確かに俺達の世界のカラクリ箱には、蓋の中に物が入れられるようにする仕掛けもあった気がする。

それと同じ様な仕掛けがこの箱にもあるんじゃないかと、紺之助兄さんは考えたみたいだ。

でも結果は、残念な事に動かせる仕掛けは無いと言う残酷なもの。

その上、宝石を安全に置くための台や布の下にも何も無い。

残る可能性は・・・・・・


「ピコン君。

封筒の中に、鍵、入ってなかった?

・・・・・ピコン君?」


最初の予想が外れた紺之助兄さんは、次にあの白い封筒の中に鍵が入ってる可能性を考えた様で。

俺達の事など忘れてしまったかの様に、黙々と封筒の中に入っていた手紙らしい紙を読み続けるピコンさんに声を掛けた。


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