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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
269/498

39,浮き出た箱


「あー、それでヒントについてだよね?」

「うん」

「この部屋を覆いつくしてる線。

これ、パズルなんだよ。

上手く線と線を繋いで形を作るパズル」

「パズル?この線で?」

「そう。

騙し絵の様に遠近法とか目の錯覚を利用して、正解の視点?を探す?って言えばいいのか?

うーん。こう、何って言うの?

上手く言葉で説明出来ないけど、見る場所と方向と角度。

その全部が一致すると、何か意味のある図形や文字が浮かび上がるんだ」


そうマシロに説明しつつ、俺はその図形が浮かび上がるベストポジションを探し続けた。

俺が見つけた図形は、長方形の中の四隅に二重丸。

その中心に何かゴチャゴチャした・・・

多分重なった歯車かな?

そんな図形が俺の目には浮かび上がりかけていた。

でも、全部の線がピッタリ重ならない。

何処かを合わせると、必ず別の何処かがずれてしまう。

かなりいい所まで来てるんだけどなぁ・・・・・・

あと少し。

あと少しなんだ。

あともう一歩で完全にピッタリ一致するのに、そのもう後一歩で一致しない。

この感じだと・・・・・・合ってないのは多分高さかな?


「・・・・・・『靴紐は大丈夫か?』」

「え?」

「靴紐・・・靴紐だから・・・・・・

つまり・・・・・・・・・あっ」


前のボスが最後に言った言葉、『靴紐は大丈夫か?』。

頭の隅に置いといたこの言葉を思い出した俺は、解けた靴紐を直す様に片膝を着いて図形を見上げた。

その瞬間、全てがピッタリ一致した完璧な図形が目に飛び込んでくる。


「マシロ、マシロ!!見つけた!!見つけたよッ!!!」

「え?え?」

「交代!交代して!!

此処から、俺と同じ様に、あそこ等辺見て!!!」

「・・・・・・え?えぇえええ!!?

なにコレ!!?なにコレ!!?」


最初、訳が分からな過ぎるとキョトンとした顔のまま、『え?』しか言えて無かったマシロ。

そのマシロに嬉しさのあまり興奮気味にそう言った俺は、早くこの発見を誰かに伝えたくて、そのままマシロの手を引いた。

そして図形が綺麗に見えるベストボジションに立って貰い、さっき俺がしたのと同じ様に片膝を着いて図形を見て貰う。

これでマシロも、俺が何を見つけたか分かったはずだ。

予想通り分かったからこそ、今度は何度も『なにコレ!?』とした叫ばなくなってしまったのだろう。


「エド!!兄さん!!こっち、こっちッ!!」

「何だ?何見つけたんだ、サトウ?」

「魔方陣だよ、エド君!

キビ君が仕掛けを動かすあの魔方陣見つけたんだ!」

「本当か!?

・・・・・・本当だ!!『マキア』の魔方陣だ!!」


急いで大きな扉の前に居たルグ達も呼び、図形。

マシロが言うには『マキア』と言う、刻んだ魔方陣をなぞる事でゼンマイの様な動力源に出来る。

雑貨屋工房一家の基礎魔法の魔方陣らしいそれを見て貰った。


「よっしゃ!!これであの扉が開くぜ!!

流石、サトウ!!

いい仕事してくれた!!!」

「だから、言ったでしょ?

貴弥、こう言うの得意だって。

貴弥、期待通りの働きをしたでしょ?」

「期待以上だよ。

でも、5分も経ってないのに直ぐ見つけちゃうと、今までのボク達の努力ってなんだったんだろうって気分になるね」

「・・・・・・・・・なぁ、ジェイク。

ちょっと変わってくれ」


今までルグ達が解いた仕掛けの中にも、『マキア』の魔方陣をなぞる事で開いた扉が有ったそうだ。

だから、直ぐにそのまま魔方陣をなぞろうとしたんだろう。

『マキア』の魔方陣の方に手を伸ばしつつ褒めてくれたルグに、何故か俺じゃなく紺之助兄さんが誇らしげに言葉を返す。

そんなドヤ顔気味の紺之助兄さんにジェイクさんが少しだけ不満そうに言葉を返していると、急に嬉しそうな顔から険しい表情に変わったルグがジェイクさんを呼んだ。


なんだろう・・・

俺、何かミスでもしたのか?

でも、魔方陣の形は完璧ピッタリだし・・・・・・

ルグが急にあんな険しい表情に変わった理由って一体・・・


「・・・なるほど、そう言う事か。

サトウ君。

残念だけど、この『マキア』の魔方陣は罠だ」

「わ、罠!?え?罠って・・・罠って・・・・・・」

「うん、罠だ。

この『マキア』の魔方陣と扉は繋がってない。

回路の繋がりから見て・・・発動させたら・・・

天井の1部が落ちてきて、ボク達はペッチャンコに潰れてしまうね」

「そ、そんなぁ・・・・・・」


まさか折角見つけた魔方陣が罠だった何って・・・

こんなパズルの様な方法で隠していたのに罠。

それって、こんだけ苦労して見つけたんだから絶対扉を開ける為の魔方陣だ!

って言う思い込みを利用した罠って事?

それとも、魔方陣を発動させる事だけが罠で、見つけた魔法陣自体は扉を開ける為のヒントなのだろうか?


「・・・1つ確認しますが、『マキア』の魔方陣って、外枠や四隅の二重丸も含めて『マキア』の魔方陣なんですか?」

「違うぞ、サトウ。

『マキア』の魔方陣は、真ん中の歯車みたいなのだけだ。

周りの四角や丸は関係ない」

「本当!?

なら、この図形はやっぱりあの大きな扉を開くヒントなんだ!」


『マキア』の魔方陣だけを気にしてるんじゃダメなんだ。

外枠や二重丸も含めてピッタリ一致するなら、それも含めないと。

ベストポジションから見てピッタリ一致した全てを見て、1つのヒントと考えないとダメだったんだ。


「四角と丸も含めてヒント?

でも、サトウ君。

『マキア』の魔方陣と違って、外側の四角も四隅の丸も、何処とも回路が繋がってないんだ。

あの図形で何か分かるって感じでも無いし・・・

ただたんに、『マキア』の魔方陣を綺麗に一致させる溜めの目印なんじゃないかな?」

「いえ、そんな・・・あ、もしかして・・・」


確かにジェイクさんの言う通り、複雑な『マキア』の魔方陣を一致させる為に書かれた可能性もある。

でも、俺はどうしてもそう思えなかったんだ。

外枠も二重丸も、『マキア』の魔方陣と同じ位重要な意味があるはず。

だけど、あの図形だけじゃ何を示してるか全く分からないんだ。

ヒントになりそうな言葉も他の図形も思いつかないし、この近くでは他にそう言う物は見当たらない。

そこまで考えて俺はある可能性に気づいた。

この図形を見つけた事で舞い上がって、頭の中から消え去った可能性。

ピッタリ一致する図形が見えるベストポジションは、本当に此処だけなのだろうか?


「もしかしたら、俺は少し思い込んでいたのかもしれません。

ヒントの図形がコレだけだって。

この部屋、こんなに広いんです。

他にも何かの図形が見えるポイントがあるかもしれません」

「そっか!そうだよね。

他にも『マキア』の魔方陣が書かれてる場所があるかも知れないよね」

「そう、だね。

他にヒントらしいヒントも、扉を開ける方法も見つかってないし、物は試しで探してみようか」

「あ、兄さん!

俺達で他の図形探すから、兄さんは念の為に見つけた図形メモしっててくれる?

魔方陣もあるし、俺達の中だと1番こう言うの書くが上手いの兄さんだと思うからさ。ダメかな?」

「そう言う事なら、いいよ、任せて。

じゃあ、ホワイトボードとメモ帳、少しの間借りるね」

「うん、お願い」


他にも図形が見つかった時、一々その図形を見に行くのは効率が悪い。

だから、こう言う図形を正確に書けるだろう紺之助兄さんにメモ係を頼んで、残りの俺達は他に図形が見えるポイントを探した。

その結果、『マキア』の魔方陣の所の図形以外に5つ。

沢山の丸や複雑な模様が中に書かれた、ピッタリ3種類2つずつ同じ大きさの四角が出来上がるポイントを見つけた。


「それで、コオンさん。何作ってるんですか?」

「箱だよ。

皆が見つけてくれた図形。

あれ、箱のそれぞれの面を現していたんだ」


見つけた図形をメモしていったからこそ、1番最初に分かったんだろう。

図形を4つ見つけた段階で紺之助兄さんは何かに気づいたらしく、ルグからまた杖を借りて大きくて厚めの紙と幾つかの文房具を『クリエイト』で作りだした。

そしてその厚紙に俺達が見つけた図形を繋がる様に書き込んで、線に沿って鋏で切って。

紺之助兄さんがテキパキと作り出したのは、ティッシュ箱の様な長方形の箱。

完成した箱の1番大きな種類の上下の面には、『マキア』の魔方陣が書かれた図形と、丸が沢山描かれた図形が描かれていて、それ以外の面には複雑な模様が書かれている。


「多分、こう言う感じの箱か部屋の中にあの扉の南京錠の鍵が入ってるんだと思う」

「・・・・・・箱だったらさ、多分この『マキア』の面が下で、四隅の二重丸の所に脚が着いてるんじゃないかな?」

「それで、この上の面の丸の所に宝石が着いている」

「そうそう!」


紺之助兄さんが作った箱を見た瞬間、頭の中にこんな形の豪華な箱が浮かんできた。

先が外側にクルンと向いた脚が着いていて、複雑な模様と宝石の様な色とりどりの綺麗な石が嵌め込まれた豪華な箱。

場違いな程豪華だったからやけに目立っていて、印象に残ってる。

そんな箱、何処で見たっけ?


「何でそんな事分かるの、貴弥、エド君?

もしかして、どこかでこんな感じの箱見た事ある?」

「うん。

何処で見たか、まだ思い出せないけど・・・・・・

この周りの模様。

この模様が書かれた箱、どっかで見た覚えがるんだ」

「オイラも、オイラも!!

間違いなく、最近も見たんだよ!!」

「『最近も』、か・・・

2人が見た覚えがあって最近エド君が見たなら、間違いなく目的の箱はこのアジトの何処かにあるはず。

他に見覚えある人は居る?

皆も見た事あるなら、食堂とかトイレとか共有で使ってる場所にあると思うんだけど・・・」

「そう言われると、見た覚えがあるような・・・」


そう紺之助兄さんに聞かれ、紺之助兄さん以外の全員が見た覚えがあると答えた。

この場に居るほぼ全員が見た事あるって言うなら、このアジトの何処かにあるのは間違いないだろう。

でも紺之助兄さんだけが全く見た事ないって言うなら、紺之助兄さんでも行ける様な場所。


廊下や食堂、


トイレ、


風呂場、


この隠し部屋までに通ってきた部屋、


軟禁場所のルグ達の部屋にはないはず。


それなのに、今回目が覚めてからずっと紺之助兄さん達と一緒に居た俺も見覚えがあるんだ。

俺と紺之助兄さんは見覚えがないって言うならスッキリ、アジトにある説を受け入れられるけど・・・

俺も見覚えがあると言うとなぁ・・・・・・


「・・・・・・もしかして、何処かの部屋で見たんじゃなくて、前この世界に来た時。

今の『レジスタンス』メンバーの誰かが持っていたのを見たとか?

その人が此処に避難して来た時一緒に持ってきて、それをエド達が見た」

「それか、アル君のお店で見たか。

前来た時、サトウ君も表のアル君のお店で買い物してたって聞いたよ?

でも、コン君はこの世界に来てから1度もお店に行ってないはず。

この中でコン君だけがアル君のお店に行ってないんだ」

「あぁ!なるほど、俺が前回の行った事のある店。

そこにある可能性もありましたね。

それだと、雑貨屋工房やギルドの可能性もあるか・・・」

「いや。

アルの店には表の地下水道に行く時通ったけど、雑貨屋工房やギルドには最近行った覚えないから、多分違うぞ」


今『レジスタンス』に居る、ピコンさんやクエイさん達。

前回出合った誰かが持っている可能性を俺が言うと、ジェイクさんが魔法道具屋で見た可能性を言ってきた。

確かに、『レジスタンス』のアジトの入り口の1つになってる魔法道具屋なら、『レジスタンス』のメンバーが行き来してても可笑しくないし、前回利用していたから紺之助兄さんと違って俺が覚えているのも納得だ。

その可能性から雑貨屋工房やギルドで見た可能性も上げたけど、最近行ってないって言うルグの言葉が否定してくる。


「それなら、ピコンさん達が持ってるか、魔法道具屋にあるかだな。

ここで考えてもこれ以上思い出せそうにありませんし、店長さん達に聞きに行きませんか?」

「そう、だね・・・・・・」

「どうしたんですか?

歯切れ悪いですけど、何か思い出せそうなんですか、ジェイクさん?」

「そう言う訳じゃないんだけど・・・・・・

アル君達、今何処の担当だっけ?」


そう言えば、アルさん達も解毒剤探しの為に隠し部屋の中をさ迷ってるんだったよな。

今アルさん達、どこら辺の部屋探してるんだ?


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