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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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38,カラクリアジト


 それぞれの目的の為、『レジスタンス』のアジトの何処かに隠されているらしい、ゾンビ毒の解毒剤を探す事にした俺達。

もし解毒剤かそのレシピを俺達が見つけられたなら、ナト達の交渉をしてもいい。

とアルさんから言質を取れたのはいいけど、ダメだったらアルさん達がナト達を襲いに行ってしまう。

だからこそ、更にやる気が出た。


そんな俺と紺之助兄さんは、俺達の監視役のルグとジェイクさんが居る班と一緒に調査する事に。

当然ルグとジェイクさんと一緒に俺達の監視をするって言ったピックとペールとその家族のステアちゃん。

そしてジェイクさんの妹のマシロさんも一緒だ。


「それにしても、本当凄いな。このアジト。

こんなに騙し絵や仕掛けがある何って・・・」

「だよな。

普段使ってる所等辺だけでも、未だに迷子になってる奴が居る位だぜ?

隠し部屋の先まで範囲広げたら、その内帰って来れなくなる奴が絶対出てくるって!」


どうも想像していた数百倍は広いこの『レジスタンス』のアジトには、最初から居たはずのアルさんとキユさんでも把握出来て無い位、騙し絵や隠し部屋が沢山あるらしい。

食堂で違和感を感じたのもそれが理由。

あの時通った廊下にも沢山の扉の騙し絵が描かれてて、部屋の中から見た時と廊下から見た時で出入り口の数が違てった。

それを違和感として感じたんだ。


「エスメラルダの研究所も凄かったけど、此処はもっと凄いな。

まるで、騙し絵や仕掛けの見本市か博物館じゃないか!」

「そりゃあ、このアジトはアルゴさんのお父さんが全盛期に作った物だからね。

彼の最後の作品って言ってもいいエスメラルダ研究所よりも仕掛けが多いのは当然だよ」


廊下の騙し絵だけじゃない。

ルグ達の班の担当の場所に向かう道中見た、幾つもの騙し絵や仕掛け。

その数と種類の多さに俺はかなり興奮していた。

仕掛けを解いた先や隠し部屋の中に更に隠し部屋や隠し階段があって、何って言うか・・・

そう!

脱出ゲームの様な面白さがあるんだ。


既にルグ達が解いたり見つけた仕掛けや隠し部屋を見るだけでも面白いし、こう言う仕掛けがまだまだ数え切れない程沢山あると考えると、そんな場合じゃないって分かっていてもワクワクしてしまう。

そのワクワクした気持ちを抑えられないまま同じ様に仕掛けや隠し部屋、騙し絵が合ったエスメラルダ研究所の事を言うと、ジェイクさんがそう何でも無い事の様に言ってきた。


「え!本当ですか!!?

本当にエスメラルダの研究所って、鍛冶師さんのお父さんが建てたんですか!?」

「建てたって言うか、設計に関わったって言うのが正しいかな?

廊下の絵とか1部アルゴさんのお父さんが直接手がけた物もあるらしいけど、殆どは普通に街の大工達が造ったらしいよ」


まさか、あのエスメラルダ研究所を鍛冶師さんの爺さんのお父さんが設計してたなんって・・・

驚いた勢いでジェイクさんにその事を詳しく聞くと、


「ボクもアル君達から聞いただけだから、そこまで詳しくないよ?」


と言われた。

それでもいいからと教えて貰ったジェイクさんの話によると。

『鍛冶師の爺さんのお父さんしか出来ないし知ってる人も居ない、もの凄い技術』って言われた技術。

その1つがこの騙し絵や仕掛けの事だと言う事が分かった。


エスメラルダ研究所を建てた30年前当時。

その時には既に年のせいで引退を決意していた事や、60年前の色々な失敗が理由で、もう鍛冶師の爺さんのお父さんは騙し絵や大掛かりな仕掛けは作ってなかったそうだ。

そのせいでそう言う技術がある事自体、知ってる人も少なかったらしい。

でも、何らかの理由でこの凄い技術の事を知ったエスメラルダ研究所の前所長が、研究所のセキュリティーを万全な物にする為にこれでもかって位頼みに頼み込んで、漸くあの研究所を設計して貰ったそうだ。

と言っても、鍛冶師の爺さんのお父さんが設計したのは、隠し部屋や騙し絵の部分だけらしいけど。

残りの殆どは前所長が街の大工さん達と相談しながらやったらしい。


「確かに長いブランクがあってもあれだけの仕掛けを考えて造れるなら、此処がもっと凄いのも当然ですね」

「その分、探し物をしてるボク達の苦労は倍増だけどね。

一体後幾つ仕掛けを解いて、隠し部屋を見つけたら解毒剤が手に入るんだか・・・・・・はぁ・・・」

「本当、いい加減にして欲しいよな!

そろそろオイラの頭も過労死しそうだぜ」


疲れ切ったと言いたげに溜め息を吐くジェイクさんに激しく同意するルグ。

その流れでマシロさんとステアちゃんの方を見れば、2人も飽き飽きしてると言う様な表情を浮かべていた。

確かに目的地までまだ掛かると言われたのに、俺達が通り抜けた仕掛けや隠し部屋の数は軽く10は超えていただろう。

それがこのアジトの至る所にあるんだ。

数の多さだけじゃなくて難問と言える仕掛けも沢山ある事を考えると、解毒剤が見つからないまま1ヵ月も経ってしまったのも仕方ないと思う。


「そもそも店長さん達はなんで、仕掛けの答えや解毒剤の場所を知って無いんですか?

普通そう言う情報も引継ぎの時、先代さんから聞くでしょう?」

「聞きたくても聞けなかったんだよ。

引継ぎの為に色々学んでる最中に、このアジトに詳しいメンバー全員がゾンビにされてしまってね。

アル君達もこのアジトの全てを知ってる訳じゃないんだよ」

「そうだったんですか・・・・・・

いや、でも、知ってるメンバーがゾンビにされても、そう言う事をまとめた資料とか残ってるはずでしょう?

そう言うのを見れば直ぐだと思うんですが・・・

もしかして、そう言う資料も隠されてたり、前のボスさんがゾンビにされたせいで保管してある金庫とかが開けれなくなってるとかですか?」

「いいや。

そもそも、そう言う資料自体基本残してないみたいなんだ」


どうも誰かが盗み見る可能性を危惧して、安全の為に仕掛けや隠し部屋の事や『レジスタンス』として重要な事は全て口伝していた様だ。

だから、仕掛けの答えや解毒剤の場所に関する本とか資料は基本残されてない。

確かに安全面の事を考えたらその方がいいのかもしれないけど、こう言う知っている人達が全滅した時はどうする気だったんだか。

そう思ってたら、ちゃんと旧『レジスタンス』メンバー達は対策を立ててたみたいだ。


「ただゾンビ毒の事は先代達も危惧していたようでね。

自分達がゾンビにされ解毒剤の事がちゃんと伝え切れなかった時の為に、暗号の手紙を壁の中に隠していたんだ」

「壁の中に、ですか?」

「うん。

その手紙がある事も伝えられずにゾンビにされてしまったみたいでね?

アル君達も手紙の存在自体知らなかったんだけど、ネイ君達が城を壊した時に起きた地震の影響で壁が崩れて手紙が出てきたんだ」

「それでその手紙の中にこのアジトの隠し部屋の何処かに解毒剤がある事が書かれてたんですね。

なら、どの隠し部屋の中にあるかも書いてなかったんですか?」

「そこは安全の為に詳しく書いてなかったんだよ。

書いてあったのは『ある』という事実だけ。

詳しい場所はボク達が自力で見つけないといけないんだ」


手紙には詳しい事はあえて書かないし、そもそも暗号で書いてあるし。

旧メンバー達はかなり慎重な人達だったみたいだな。

いや、60年前の失敗の事考えるとそうなって当然か。


「確かに、他の壁の中やカラクリ箱の様な物の中にはその答えが書いてある手紙が隠されてる可能性もあるよ?」


と疲れ気味に言うジェイクさん。

確かに壁から出てきた暗号の手紙を解読し続ければ、いつか解毒剤の事がちゃんと書かれた手紙や資料に辿り着くかもしれない。

だけど、絶対あるって確証も無いし、解毒剤そのものを見つけるよりも簡単に見つかる保証も無いんだ。

だからこそ、こんなに苦労して。

沢山の時間をかけて、解毒剤を探そうってなったんだよな。


「うーん・・・それなら・・・・・・

それでも、何か店長さん達はヒントになりそうな事聞いてませんか?

例えば、その知ってる方達がゾンビにされる前の、その最後の自分の意志で言った言葉。

そう言う言葉が解毒剤を見つけるヒントになってるとか・・・」

「ゾンビになる前に?

それなら、えーと、確かー・・・・・・」

「『靴紐は大丈夫か?』。

ゾンビにされる前に先代ボスが残した言葉は、『靴紐は大丈夫か』だよ。

流石にこれは解毒剤とは関係ないと思うな」


それでも、もう少しヒントが合ってもいいんじゃないか?

そう思って聞いたら、マシロさんが前の『レジスタンス』のボスの最後の言葉を教えてくれた。

その言葉を聞いた時、アルさん達の誰の靴紐も解けてなくて、何で最後に前のボスがそう言ったのか謎になっているらしい。

前のボスは自分の意思が消される最後の瞬間、一体何を見たんだろう?

それとも、その言葉が何かのヒントなのだろうか?

今の所、前のボスが残した言葉の真意も使いどころも分からないし、とりあえず今は頭の片隅に置いておくか。


「さぁ、着いたよ。

此処が今、ボク達を悩ませてる部屋だ」


お喋りしながら歩き続けて約15分。

漸く着いた件の部屋は、壁や天井、規則的に並んだ柱、床まで全部が複雑かつ規則性の無い線に覆い尽くされていた。

小さめの体育館位はありそうな真っ白くて広い部屋の中を好き勝手縦横無尽に走る黒っぽい青い線は、遠目で見てもグルグルと気持ち悪くなる。

こんな部屋に長く閉じ込められていたら、頭が可笑しくなりそうだ。

でも、この気持ち悪くなりそうな線。

何か引っかかるんだよなぁ・・・・・・

なんでだろう?


「あの奥の扉が全然開かなくてね?

もう何日も此処で足止めされてるんだ」

「あれですか・・・かなり大きいですね」


入り口から真っ直ぐ見える、唯一青い線に犯されてないその扉を指差しジェイクさんはそう言った。

その言葉に頷く紺之助兄さんが言う通り、ピックとペールが四つんばいにならないと入れない。

俺達が入って来た小さな目な出入り口とは正反対に、その扉はコカトリスでも余裕で入れそうな程大きかった。

デザインも色もこっちの方がシンプルで全然似てないんだけど、その大きさだけでおっさんに初めて会ったあの城の部屋。

あの部屋の無駄に豪華な扉を思い出してしまう。


「・・・ん?・・・・・んん?」


ジェイクさんの説明を聞きながらドンドン扉の方へ行ってしまう紺之助兄さん達。

そんな5人と1匹とは逆に、引っかかりの答えを探す俺と俺の後ろにピッタリくっ付いたペールは部屋全体をゆっくり見回しながら進んだ。

そうやってキョロキョロ見回しながら真ん中らへんまで来た時。

視界の隅を横切った何かが更に、俺の中の何かを強く引っ張り出した。

なんだ?

何が、俺の中の興味を引いた?


「ん~・・・・・・・・・あれ?

これ・・・もしかして・・・・・・」

「ガウッ!」

「あッ!待って!!待って、ペール!!

何か見つけたから、もう少しだけ待って!!」


既に扉の前に集まったルグ達から離れた場所で急に立ち止まって、その上真ん中の辺りから更に右後方に向かって離れていったからだろう。

そんな俺を離れるなと言いたげに一声上げたペールが抱け上げて、ルグ達の所に連れて行こうとした。

そんなペールを俺は急いで止める。

やっとこの引っかかりの正体が分かったんだ。

ここで連れてかれたら漸く見つけたヒントの場所が分からなくなってしまう!

あの巨大な扉を開ける為にも、絶対にペールを止めないと!!


「グルゥウウ?」

「そう!

見つけたんだ、あの扉を開けるヒントになりそうなもの!

だから、も少しだけ待ってくれよ、ペール?」

「ヒントを見つけたって、どう言う事、キビ君?」

「・・・・・・え?」


何を見つけたの?

と言いたげに目を更にクリクリさせ首を小さく傾げ、俺を降ろしたペール。

そのペールに、俺はもう少し詳しくこの場所を離れたくない理由を言った。

そんな俺の言葉に返事をしたのは目の前のペールじゃなくて、真後ろから突然俺の名前を言ったマシロさんの声。

その予想外のマシロさんの言葉に心底驚いた俺は、マシロさんの言葉を完全に理解する前に自分が出せる最大の速度で振り返っていた。

そして目に飛び込んでくる、キョトンとしたマシロさんの顔。

その表情を見るにマシロさん自身、俺がこんなに驚いてる理由が分かってないみたいだ。


「えって・・・

だから、ヒントってどう言う事?って聞いたんだよ。

何そんなに驚いてるのキビ君?」

「あ・・・いや・・・・・・

きゅ、急に声かけられたからビックリして・・・

何時の間に後ろに居たんですか?

マシロさんが後ろに居る何って全然気づきませんでしたよ」

「敬語はやめて。後マシロでいい。

『さん』とかも付けないで」

「えーと・・・ごめんね?

次から気をつけるよ、マシロ」


マシロの出身地の問題か、それとも1度元の世界に帰った影響か。

何が理由か全く分からないけど、変に翻訳されて嫌な思いをさせてしまったんだろう。

それとも唯単純に、マシロが敬語で話されるのや敬称を付けて呼ばれれるのが嫌いな人なのかも知れない。

兎に角、俺の質問に答えず、敬語も敬称も要らないと心底ムスッとした表情で言うマシロに、俺は慌てて話方を変えて謝った。


「えっと、それで・・・」

「何時から後ろに居たかだっけ?

キビ君がペールに抱っこされた時からだよ?」

「嘘・・・全然気づかなかった・・・

もしかして、気配や音を消す魔法かスキル使ってる?」

「まさか!ただ、キビ君が気づかなかっただけだよ」

「そ、そっか・・・」


こんなに近くに人が来ていても気づかなかったって、俺、どんだけ慌てたんだ?

さっきペールは俺の後ろから、脇の下に両腕を回す様に抱き上げたんだ。

流石に正面から来た人位気づくよな?

それに全然気づかないって、自分の事ながら流石に危機感が無さ過ぎると思ってしまう。

マシロだったからよかったけど、コレが魔女達や危険な魔物や動物だったらと思うと、体の心から震えてきそうだ。


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