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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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34,サイカイ その25


「さて。

ネイ達が会った9代目勇者が偽者だと言うなら、赤の勇者達を誘導している可能性が高い彼は何者なのか。

サトウ君はどう思ってるんだい?」

「そう・・・ですねぇ・・・・・・

自分の兄弟を生き返らせる為にぃ、Dr.ネイビーが取り憑いてる可能性もありますしぃ・・・

最初に生きて『召喚』された異世界人が演じてる可能性もありますがぁ・・・・・・・・・

俺は生きたこの世界の人間が勇者ダイスのフリをしてる可能性の方が高いと思ってます」

「生きた、この世界の、人間?」

「はい」


この世界で目が覚めてからの話を出来るだけ書いたメモ帳を読み返しつつ、頭の中で今ある情報を整理する。

考えながら話してるせいで少し語尾が延び気味になりながら、ジェイクさんにまとまった考えの順に答えつつ、もう少し考えた後。

俺は1番可能性が高いと思った、『生きたこの世界の人間が犯人』説を言った。


確かに、自分だけでは勇者ダイスと妹を助けられなかったDr.ネイビーが、自分が死んだ後も2人を生き返らせようと自分と同じ異世界人を利用しようとしてる。

って可能性も0じゃない。

『理想の勇者』って言うのも、『死んだ人を生き返らせるスキルや魔法を作りそうな異世界人』って言う可能性もあるだろう。

でも、その為にユマさんを暗殺しようとする理由は?

ゾンビ毒を作ってローズ国民をゾンビにする必要性とは?

その理由がピンッと来ない。


ユマさんを狙うのは魔女達の信用を得る為で、ゾンビにしたのは後々邪魔されない為?

それともナト達が自分の望む魔法やスキルを作るように仕向ける『役者』が欲しくてゾンビにした?


でも、その考えだと夢で魔女が高橋に接触した時に作らせてる筈だし、兄弟を奪ったこの世界への復讐の為って言うには違和感があるし・・・・・・

Dr.ネイビーが犯人だと言うと、俺としては何か完全に納得できる答えが出てこないんだ。

1番最初に生きて『召喚』された異世界人説もそう。

考えれば考える程、何か納得できなくなる。

で、今考えれる中で1番しっくりきたのが、生きたこの世界の人間説。


「この通信鏡とは逆の事をやったんです。

その取り憑いてるって言われてる像の中に、スピーカーか通信鏡を隠して別の場所。

例えば、隣の部屋などに隠れてナト達にアドバイスするフリをしてローズ姫達に指示を出す。

声だけで誰も幽霊さんの姿を見ていないなら、その可能性は大いにあると思うんです」

「確かにその方法なら幽霊のフリは出来るだろうけど・・・

でも、サトウ。

何で生きた人間だって言ったんだ?

その幽霊のフリをしてるのが魔族の可能性もあるだろう?」

「確かにその可能性もあるな」


本当は同族を疑う様な事言いたくないんだろう。

でも『人間(エド)』として不自然じゃない様に、顔をしかめつつもルグが魔族の可能性もあると言ってきた。

確かにその可能性も、かなり低いと思うけど0じゃない。

人であるんだから、魔族側にも『レジスタンス』の様なユマさん反対派が居ても可笑しくないだろう。

でも・・・


「でも、俺は人間の可能性が高いと思ってるんだ」

「それはユマ様を暗殺しようとしたからか?」

「それも、確かに理由の1つですね。

でも1番の理由は、俺の予想通り本当に生きた人間が演じてるなら、その犯人は今も生きてる60年位前にこの国の王様を騙した詐欺師。

もしくは、誰か個人じゃなくそう言う組織がやってると思ったからです。

先代ローズ国を騙そうとしていたのは、殆どが人間の詐欺師だったんでしょう?」

「あ、あぁ・・・」


この国の国教が英勇宗に変わったのは約60年前。

それは勇者を名乗る詐欺師に騙されまくった、先代ローズ国王の時代だ。

そして、その偽勇者ダイスが居る事になってるのは、その英勇宗の教会。

その事を頭に置いてこの世界で生まれ育った誰かが犯人だと仮定した場合、『約60年前に前ローズ国王が英勇宗に国教を変えた理由が、その偽勇者ダイスに騙されたから』って理由が出てくる。


「ゾンビ毒が最初に作られたのは約50年前だとユマさん達から聞きました。

今の状態や英勇宗の教えの事を考えると、その最初のゾンビ毒製作時には既に幽霊さんに騙されていたと思うんですよね」

「だからって、そんなに長く騙せるわけないだろう?

どこかで誰かが気づくは・・・・・・あッ!」

「うん、普通は気づくだろうね。

だから、気づいた人や気づきそうな人。

自分達の考えに反発しそうな人は、事故や病気に見せかけて殺していたんだと思う」


前ローズ国王の近くに居た疑い深い人達はほぼ間違いないとして。

もしかしたらゾンビ村の事で殺されたと思っていたマーヤちゃんのお母さんであるマリーさんや、マリーさんと同じ秘密を知ってしまって19年前。

いや、この世界では1年経ってるから20年前か。

その20年前に行方不明になった王女も、それで殺された可能性があるんじゃないか?


「その事を考えると、殆どの人はそのまま騙されてると思うけど、中にはその詐欺師の真意を知った上で協力してる人や、集団だった場合はその集団の一員がかなりの権力者の中に紛れ込んでいると思うんだ」

「そりゃあ、純粋な英勇宗信者なら積極的に暗殺しようとはしないもんな。

ここまで騙してる事を隠し通せてるなら、間違いなく何人か偽9代目の指示がある前に『自分の意志』で不穏分子の処理をどうするか考えてる、『協力者』が居るはずだ」


自分達にとって怪しい人を見つけて、偽勇者ダイスに相談して、それから行動を起こす。

そんな事やっていたらルグの言う通り、約60年間騙し続けられる訳が無い。

その事を考えると、盲目的かつ受動的に動いてる他の信者とは違う。

しっかり自分の意志で頭を働かせ、臨機応変に動く『協力者』が居るはずだ。

それはある程度の矛盾や不満を力やお金、権力でねじ伏せられる、相当な権力者の可能性が高いと思う。

それを考えると・・・・・・


「うーん。

やっぱり今ある情報だけじゃそれが誰か分からないな。

ナト達に1番近いローズ姫達は・・・どうだろう?

勇者を盲信してる様な言動を繰り返してたし、白?

いや、でも・・・・・・」

「ネイから聞いた今までの彼女の行動を考えると、ルチアナ・ジャック・ローズは盲信してる方だと思うよ」


『協力者』が誰か。

メモ帳や頭の中情報を見直しても、ピンとくる答えが出てこない。

魔女達も微妙なんだよなぁ。

あれが演技なのか、それとも素なのか。

俺個人の偏見を排除した純粋な言動だけで判断するとしても、一緒に行動した期間が短いから判断つかない。

そうブツブツ考えが溢れ出る程悩んでると、ジェイクさんが魔女達は『協力者』じゃないと言った。


「あるとしたら、ルチアナ・ジャック・ローズに誰の前でも面と向かって命令できる、カルヴァドス・ジャック・ローズの方だろうね」

「カルヴァドス?誰ですか?

ジャック・ローズって言う苗字からして、ローズ姫の親戚だって事は分かるんですけど・・・」

「今のローズ国のオーサマの名前だよ。

知らなかったのか?」

「あ、はい。今知りました」


心底不思議そうな顔を覗かせ、知らなかったのか聞いてくる女冒険者さんに、唖然としながら頷き返す。

て事は、ジャエイクさんは魔女じゃなくて、おっさんの方が怪しいって思ったって事か。

にしても、本当今更おっさんの名前知ったな。

いや、知った所でさして重要な情報じゃないんだけど。


「現ローズ国王と幽霊さんが協力していると仮定して。

彼等は何をしようとしてるのでしょう?」

「ユマ様の暗殺だろう?」

「それは・・・どうでしょう?

ユマさんの暗殺やローズ国民のゾンビ化は、真の目的の為の手段に過ぎないと思うですよね?

勿論ナト達を『召喚』した事も、魔族と戦争を起こそうとしてるのも、手段の1つに過ぎない」


ん?

そう言えば、この世界の魔族と人間の戦争って、この1万年間必ず1000年に1度起きてるんだよな。

よくよく考えると、それって何か可笑しくないか?

誰かが作ったゲームの世界って訳でも、そう言うルールがある訳でも無いのに、なんで毎回毎回律儀に必ず1000年に1度戦ってるんだ?

1部の人しか知らない、何か特別な理由でもあるのか?


「手段に過ぎない・・・・・・

それなら、真の目的は『夜空の実』か?」

「え?」

「『夜空の実』だ。

あいつ等の目的は、恐らく『夜空の実』を手に入れる事だ」


俺が他の事を考えてる間に何か思い出したんだろう。

消されたまま未だに思い出しきれてない記憶があると、小さく愚痴りながら偽勇者ダイス達の目的を言うコロナさん。

『夜空の実』ってなんだ?

珍しい果物なんだろうか?


「あいつは執拗に赤いの達に『夜空の実』を集めるように言っていた。

最初ジャックター国に行く事になったのも、ジャックター国にある『光のオーブ』を狙ったからだ!!」

「『夜空の実』?『光のオーブ』?

何ですか、それは?」

「『夜空の実』って言うのは、どんな願いでも叶えられる魔法道具らしい。

その魔法道具がバラバラになったのが『オーブ』」


未だに詳しく聞けてなかったこの1年間のナト達の行動を含めた、コロナさん達の話によると。

有名な昔話に出てくるとても凄い魔法道具が『夜空の実』らしい。

その『夜空の実』がとある事情から、属性ごと6個に分かれたのが『オーブ』と言われるもので、ナト達は偽勇者ダイスの指示でその『オーブ』を集めてるそうだ。

ナト達には、『完全に魔王や魔族を倒す為に必要』って言ってたらしいけど、今の状況からして絶対嘘だろう。

間違いなく自分達の願いを叶える為にナト達に集めさせてるんだ!!


「・・・・・・そう言えば、高橋君のお父さんと木場さんも高橋君を説得してる時に、『君達を『夜空の実』を集める為の道具としか思っていない』って言ってたよね?」

「え?・・・・・・あッ。

そう言えば言ってた!うん。確かに言ってたッ!!」


紺之助兄さんに言われて思い出した。

そうだ。

確かに高橋のお父さんがそう言って高橋を説得していた。

と言う事は、木場さん達が『召喚』された時代から、『夜空の実』と言われる魔法道具は狙われていたって事か?

それとも、あの時の木場さん達の言葉からして、当時のこの世界の誰かが『夜空の実』を手に入れる為に木場さん達を『召喚』したって事なのだろうか?


「『夜空の実』を手に入れるのが目的だって言うなら、なんであいつ等はサトウ達異世界人を『召喚』したんだ?

ゾンビにした人達を使って探させればいいだろう?」

「うーん・・・・・・

異世界人じゃないと集められないから?

この世界の人だとバラバラになった『オーブ』を掴めないとか?」

「普通にローズ国王女達も触れてたぞ」

「えー・・・じゃあ、本当に何でだろう?

『夜空の実』を集めさせ自分達の願いを叶えるのも、目的の為の1つって事か?」

「だが、他にあいつ等の目的と言えるものは無いぞ?」


ダメだ。

暫く皆で頭を捻ったけど、これも情報が無さ過ぎて答えが出ない。

もしかしたら木場さん達の話を聞いたら何か分かるかもしれないけど、どう頑張っても今は帰れないからなぁ。

聞きに戻れないし、直接偽勇者ダイスの声を聞いたコロナさんにも、『夜空の実』に1番詳しそうな考古学者のジェイクさんにも、これ以上は何も分からないって言われたらお手上げだ。

はぁ。

本当、分からない事だらけだよ。


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