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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
26/498

25,ルグの異世界講座 6時限目


「まずは、スクリュード国。

アンジュ大陸国で唯一、ヒヅル国と直接関わりある貿易国なんだ」


ルグが最初に説明してくれたのはアンジュ大陸国の南にあるスクリュード国。

年間を通して温暖な気候で最高気温と最低気温の差が少ないアンジュ大陸国1蒸し暑い国らしい。


「スクリュード国は、アンジュ大陸国で2番目に大きな国だからかな。

首都の『ユード』がある海外との貿易と漁業に力を入れている南側の海に隣接した街と、アンジュ大陸国内との貿易と農業が盛んな北の内陸側の街で、雰囲気がガラっと変わるんだ」


海の上に立てられた首都ユードを中心とした、白い石畳の道と建物。

その間を張り巡らされた水路の対比が奇麗な観光客に人気な南側。


レンガで出来た建物と整備されてるけど土が剥き出しになった道とのんびりと穏やかな農園が広がる北側。


「この雰囲気の違いのせいなのかな?

オレが生まれるまで、同じスクリュード国民なにの南と北で仲が悪かったんだ。

それに、他にも問題が有ったらしくて・・・」

「『問題が有った』って事はもう解決したのか?」

「うーん、うん。解決したって事でいいんだと思う。

ちょっと不気味だけど」


何とも曖昧に言うルグ。

問題は解決したけど、問題の原因はまだ根強く国に根付いているらしい。

表向きは穏やかな国だけど、一度裏側に入ると北側の山賊、南側の海賊が独自の厳しいルールと冷徹な暴力で経済と社会に多大な影響力をおよぼしている。

それに貴族を合わせた三つ巴の抗争が各地で毎年の様に起きていたらしい。

本人達は兎も角、それに巻き込まれる国民や観光客は堪ったものじゃない!!


「規模が小さくても毎日の様に起きていたその抗争が、オレが産まれる10年位前からパタリと収まったんだ。

国民でも理由を知らないんだけど、ほぼスクリュード国が出来た時から仲が悪かった山賊、海賊、貴族が今じゃ仲良く一緒に街を観光してるんだよ」

「確かに、それは不気味だな。

理由が分からないってのは特に・・・」

「それに、長い間存在して権力も構成員も巨大な山賊や海賊が消えた訳じゃない。

大人しくしてるだけだから、何時また抗争が始まるか・・・・・・」


だからルグは曖昧に答えたのか。

恐ろしい存在がまだ身近に居て、訳も分からず大人しくしていたら逆に怖いし、嵐の前の静けさって言うのかな。

何か大きな事を起こす為に今は大人しくしてるんじゃないか、と疑いたくなる。

けど、ルグが幼い頃からお世話になっているスクリュード国出身の学校の先生は、


「これから先、抗争が起きる事はもう無い」


と断言しているらしい。


「まさか、その学校の先生が何かやったてオチはないよな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分、違うと思いたい」


今の長い間は何!?

それと、何で『思いたい』って希望なんだよ!?

断言してくれよ!!


「ルト姉ちゃん・・・・・・

じゃなくて、えーと、学校の先生の奥さんがちょっと・・・・・・・・・

そのー、行動力のある?

魔族だから・・・・・・ねぇ?」

「・・・・・・・・・まぁ、平和ならそれに越した事は無いよな?」

「うん。そうだよな」


スクリュード国は南側の海外から来る品と豊かで暖かな海で採れる魚介。

北側の大陸内から来る品と、気候、土壌、高度の変化によって出来る多種多様様々な農作物。

海と陸、異国の食材をふんだんに使った美しく豊富な種類のスクリュード国の料理は、世界一の美食として有名らしい。


ローズ国でもスクリュードで料理を学んで来た高級店が幾つかある。

新米冒険者じゃ客として入れるのは何十年も先の事だけど、新米冒険者でも出来る食材調達の依頼はたまにギルドに来るらしい。

お礼が店に格安や無料で入れるってのが多い為、出た瞬間どんなに楽な仕事でも直ぐベテラン冒険者に持ってかれるのが殆どだけど。


「次はオレの故郷、東のグリーンス国!!首都は『リーズ』。国土の半分以上を森が占める国でアンジュ大陸国内で1番多種多様な種族が暮らす国!魔族が住める土地は国土に比べて少ないけど、国の南西に広がる湿地帯や世界1大きな湖が有名なんだ!!湿地帯を除くと夏は乾燥して涼しく晴れの日が多い過ごし易い気候。だけど、冬は温暖で雨が多いのは少しマイナスな所かな。雪が降る事は滅多になくて、降ると国中が大混乱になる事もあるんだ。オレもまだ雪を見た事無いんだよね。湿地帯の夏は湿度が高くて蒸し暑いからちょっと苦手かな。エルフを中心に学問や芸術、音楽に力を入れてて、世界で唯一、身分も所属も関係なく満6歳から12歳までの子供が6年間、学校に通える義務教育を法律で定めている。能力によっては飛び級あり!ここ、重要だから忘れるなよ?現在、グリーンス国城は文化遺産兼国最大の図書館として一般公開されているんだ。その為に、現国王や政治家達は城の隣の最低限の広さしか無い質素な建物で暮らし、仕事をしている。他国の王様とはグリーンス国はここが違うんだよ、ここが。国の未来を何より考えているんだな~。グリーンス国の文化は其々の種族ごとの幅広い文化が重なり混じって出来ているか


「ちょ、ストップ!ストップ!!

ストーーーーーープッ!!!!!!」


ら・・・・・・・・・何だ、サトウ?」


ハイテンションでマシンガンの様に故郷の説明をするルグを俺は慌てて止めた。

あまりに早過ぎて付いていけないし、理解出来ない。


「ルグの愛国心はよーーーーーーく、分かった。

だから、一旦落ち着け」

「チッチッチッ。

サトウ、こんなあらすじみたいな説明でオレの故郷に対する思いを分かった気になるなよ。

まだまだ、序の口!!

グリース国の魅力はこんなもんじゃない!!」


一箇所だけ前足の鋭い爪を出し手を左右に振りながらルグは言った。

今のがあらすじなら、ルグはいったい何時間話す気なんだ?


「あー、うん。

紹介してくれるのは嬉しいけどさ、この世界の事色々聞いてからだから俺の頭にそんなに入らないって。

ルグも一生懸命魅力を伝えたのに、俺が覚えてなかったら嫌だろ?」

「う~ん、確かに嫌だな。

じゃあ、じゃあ!

サトウがローズ国を出れる様になったらグリーンス国案内するから!!

その時に、もっともっとグリーンス国の良い所教えるな!!」

「うん、楽しみにしてる」


純真無垢に笑うルグを見ると、元の世界に戻る前に魔女達に頼んで少しだけ寄り道しても良いかもなと思う。

それに、ルグの話を聞くとローズ国以外の国を知らずに帰るのが少し勿体無い気がするんだ。


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