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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
258/498

28,サイカイ その19


「・・・あ・・・

よくよく考えたら、高橋達と入れ替わった人達、大丈夫かな?

それに、俺と兄さんの変わりに俺達の世界に送られちゃってる誰かも・・・・・・

本当に、大丈夫だよな?」


高橋達と入れ替わった4人の人達の事も心配だけど、俺達と入れ替わった誰か2人の事も心配だ。

俺達の世界に来たルディさん達はちゃんと息が出来てるようだったし、普通に話してた。

だから俺達の世界とこの世界の環境は、俺が思っているよりもズレていないんだと思う。

この世界の酸素に当たるものが無くて行き成り窒息したり、重力の関係で潰れたり。

そう言うのが直ぐ起きなかったってだけで、実際には結構低い場所に住んでいる人がかなり高い山の頂上にある街に行く位の差があったかもしれない。

そう考えると、『環境適応S』みたいなスキルが無いこの世界の人が長い間俺達の世界に居たら、高山病の様な病気になってしまうかも・・・


いや、何らかの病気になる以前に俺達が『召喚』されたあの時状況的に、魔女達の仲間だと勘違いされて警察に捕まってしまってるかもしれない。

そう考えると、なんか申し訳ないな。

いや、でも・・・

ナトと俺のスマホが入れ替わった事を考えると、もしかしたら大量の光苔や蔓蜜柑と入れ替わった可能性も・・・・・・

なくは、ない・・・のかな?


「大丈夫って言っていいかどうか分からないけど、多分この世界の人とサトウ達は入れ替わってないと思うぞ。

ほら、部屋でも言ったけど、ローズ国の殆どの奴がゾンビにされてるから、今表の地下水道に出入りする冒険者は1人もいないんだ。

もし居るとしたらオイラ達『レジスタンス』の誰か。

でも、メンバーの誰も欠けてないからサトウ達と人が入れ替わった可能性はないと思うぞ」

「それ本当、エド?

あの王様達の事だから時間結晶や空間結晶を集めさせる為に、休まずゾンビ化した人達を送り込むって思ってたけど・・・」

「あー・・・それはだなー・・・・・・」


言いにくそうに唸りながら宙を泳いだルグの視線が、最終的にアルさんに向けられる。

ルグの困った様な無言の視線を受けて、同じ様に困り顔で頬を掻くアルさん。

そのまま時々視線だけで会話しているかの様にキユさんと見つめ合ったりしながら数十秒。

たっぷり悩んで漸くアルさんは口を開いた。


「兄ちゃんはシャンディの森に隠されてたアルティシモ村の事覚えてるか?」

「アルティシモ・・・・・・

ウンディーネが居た、あのゾンビ村の事ですか?」

「そうそう、その村。

ならその村で兄ちゃん達が何やったも覚えてるよな?」

「えぇ、まぁ・・・」

「それと同じ事をやったんだよ、俺達。

チボリ国の王子様に協力して貰って」


あのゾンビ村でやった事って・・・・・・

ルグとユマさんに助けて貰いながら睡眠薬で村の人達を眠らせて、巨大クロッグの時間結晶を使って眠った時間で止めた、あれの事?

あんなその場しのぎの事を、アルさん達もやったって言うのか・・・・・・


俺自身、他にいい方法が思い付かなかったからあの方法を取ったけど、アレが良かったとは全く思っていない。


「他にもっと良い方法が合ったんじゃないのか?」


って、今でも思ってるんだ。

それはルグにもユマさんにも伝えたし、2人からあの時の事を聞いたなら、アルさんもあの方法が最善策じゃない事は知っているはず。

それでもゾンビにされた人達の時間を止めたのなら、それはつまり・・・

ゾンビ毒の解毒剤がまだ見つかって無いって事と、そうしないといけないってアルさん達が思う様な事をゾンビにされた人達は魔女達に強制させられそうになっていたって事だ。

人体実験とか、体に爆弾巻きつけてジャックター国に突撃させるとか。

それ以上の・・・

人を人と思わない様な事をさせられそうになっていたって事なんだろう。


「全員じゃなけど、殆どのゾンビにされた人達は眠った時間の中に閉じ込めた。

部屋では言わなかったけど、ピコンの村の奴等も村の中で眠ってるんだ。

サトウが知ってるルディ以外のゾンビにされた奴等は皆、村や町毎に眠ってると思っていい」

「今このローズ国で動けるのは、俺達『レジスタンス』のメンバーか、1部の王族や貴族、英勇教の信者達。

ゾンビになっていない赤の勇者側の人間だけだ」

「・・・・・・・・・良く、それだけの人を眠らせる睡眠薬と時間結晶が集まりましたね」

「いや。

同じ事って言っても兄ちゃんの様に薬と時間結晶を使って閉じ込めた訳じゃないんだ。

似た効果がある特殊な魔法をチボリ国の王子様が使えてな。

その王子様を中心に儀式魔法を使って、眠ったまま時間が止まる水晶の中に閉じ込めたんだ」

「そう、なんですか・・・・・・」

「・・・・・・サトウがあのアルティシモを閉じ込めた方法やそれに近い方法を快く思ってない事は・・・分かってる。

でも、オイラ達もあの時のサトウと同じなんだ。

その場しのぎだとしても、これ以上の良い案が浮かばなかった」


表情は変わってないはずなのに、ルグはモヤモヤしている俺の内面を見透かしてる様だった。

そのルグに短く分かっていると伝える。

けど、やっぱり心の中に渦巻くモヤモヤした感情は消えてくれなくて・・・・・・


頭では仕方ないって分かってる。

でも、あの時からずっと、あの血だらけになった男の人の姿が頭の中にこびり付いて離れない。

そのせいで心の何処かがその『仕方ない』を受け入れられずにいるんだ。


「とりあえず、店長さん達がゾンビになった人達の時間を止めたから、俺達がこの世界に『召喚』された時、表の地下水道には誰も居なかったんだね?

ならやっぱり、光苔か蔓蜜柑と入れ替わったのか?」

「あー・・・それもー・・・ないかな。

あの時の状況的に多分だけど、ダーネアかメテリスと入れ替わったんだと思う」

「え?嘘、マジで?

それはそれで色々不味いんだけど・・・・・・

俺達の世界、魔物と戦える人いない・・・」


いや、木場さんと高橋のお父さんは1度この世界に来てるんだけどな?

木場さん達がこの世界に連れて来られたのは25年も前の事なんだ。

だから、ブランク的にも年齢的にもまともに戦えるとは思えない。

それに高橋のお父さんは足が悪そうだった。


なにより、あの場に居るのは全く戦闘関係で役に立たないだろう一般人ばかり。

銃を持った警察だってあんな・・・

俺達の世界で居る筈の無い大きさだって分かる、非常識すぎる程巨大な蜘蛛や蝙蝠相手に戦えるかどうか・・・

そもそも警察が相手にするのは基本人間で、蜘蛛や蝙蝠は専門外なんじゃ・・・・・・


本当に父さん達大丈夫かな?

心配しても、不安に思っても、帰りたいって強く願っても、今すぐ帰れる訳じゃない。

それが分かっていても、ついスマホを見てしまう。


「ん?・・・は?え?なに、これ?」

「どうしたんだ、貴弥?」

「えっと・・・なんか・・・・・・

『レーダー』の通知?が来ていて・・・・・・

えーと・・・」


『教えて!キビ君』のホーム画面の上の方にある、『新しく魔法を作る』のボタンの隣に追加された『レーダー』のアイコン。

そのアイコンの右上に通知が来た時の様な赤い丸がついていた。

さっき見た時はこんなの無かったけど、俺、何かしたっけ?


「え!?高橋達こっちに戻って来たの!!?

それに、ナトも一緒に居るのか!!?」


疑問に思いつつ開いた『レーダー』のページ。

そこには大雑把なローズ国の地図が広がっていた。

その地図の左端等辺。

巨大クロッグの事件で行ったエスメラルダよりも更に東に行ったウルメールって街の所に、重なる様に赤と青のマークが浮かんでいた。

そのマークの下の方にはナト達の名前も浮かんでいて、青い方にはナトの、赤い方には高橋の名前が浮かんでいる。

と言う事はこのマークはナト達の事を表していて、高橋がこの世界にまた来てしまった事と、ナトと合流した事を表してるんだよな。

マークには2人の名前しか書かれてないから、ルディさんや魔女達。

それとゾンビにされて連れ回されてる人達もか。

その人達が一緒かどうかも全く分からない。


「なに!?おい、兄ちゃん!!

赤の勇者達は今何処だ!!!?」

「え、えーと・・・・・・

その前に、俺がナト達の居場所教えたら、ナト達を捕まえに。

・・・殺しに行きますよね?」

「あぁ、勿論」


俺がナト達を捕まえに行くか聞いた瞬間。

部屋の空気がピリッとしたものに変わった。

『レジスタンス』の人達の怒りによるものなのか、それとも警戒によるものなのか。

それは俺には分からなかったけど、場の雰囲気が俺達にとって良くないものに変わったのは良く分かった。


「なんだ?

兄ちゃんもコンの兄ちゃんの様に、俺達を止めるのか?」

「・・・いいえ。

エドから皆さんがナト達を捕まえようとする事情は聞きました。

ですから最悪の場合、俺達に皆さんを止める事は出来ません」

「最悪の場合、ねぇ・・・・・・

なんだ?

兄ちゃんはこの状況でも、まだ、最悪な状況じゃ無いと思ってるのか?」

「いいえ。

今この世界が最悪な状態に向かっている一方なのは分かっています。

ですが、俺が言ってる『最悪』はそうじゃない」


魔女達がナトと高橋を使ってユマさんやローズ国を襲撃し続けてる事も、そのせいで酷い戦いが始まってしまってる事も、ルグ達の話で分かってしまってる。

俺だってそんな状況が最悪じゃ無いなんって楽観的な事、けして思ってる訳じゃない。

ただ、今の俺にとっての『1番の最悪』は、ナト達の説得が失敗した時なんだ。


「此処に来る前にエドにも話しましたが、皆さんがナト達を捕まえる前に、俺と兄さんに2人の説得をさせてください。

その条件が飲めないようでしたら、俺はナト達の居場所を教える事はできませんッ!!!」

「・・・・・・・・・は?どう言うことだ、エド?」

「サトウ達、説得する前にピック達が来たんだよ。

だから、サトウがあいつ等説得するって言うの止められてないの。

まぁ、サトウに言い負かされてばっかのオイラが説得出来るかどうか謎だったけどなぁ」

「言い負かしてない、言い負かしてない。

寧ろ俺達の方がエドの鋭い言葉で心に大ダメージ負ってるからな?」

「そーかー?」

「いや、そう言う話じゃなくて。

どう言う流れでそんな話になったんだ?

って聞いてんだけどな、俺は?」


ピリッとした空気が一転。

俺がナト達を説得したいって言ったら、なぜかアルさん達からとぼけた様な気の抜けた雰囲気が溢れてきた。

俺、そんな変な事言ったか?

そう少し不安と不満を感じつつ、俺達はエドの部屋で話した事を事細かにアルさん達に伝えた。

勿論、エド達に持って来て貰ったチラシや手作りカメラで撮った写真も説明の材料に使うのを忘れない。


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