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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
256/498

26,サイカイ その17


「それと、あの様子から木場さんや高橋のお父さんも、25年前同じ『召喚』の魔法でこの世界に呼ばれた事があるんだと思う」

「あぁ!

そう言えば、ベルエール山の地下で赤の勇者達が兄ちゃん達の世界の人間の墓を見つけたってネイが言ってたな」

「・・・・・・それ、本当ですか?

いや、それ以前にコロナさん、どうやってその情報ナト達から聞き出したんですか?」

「エドから聞いてないのか?

ネイの奴、少し前まで人間の女の子の振りして赤の勇者達のパーティーに潜入してたんだよ。

赤の勇者達が『召喚』されて2ヶ月位経った頃から、ローズ国城壊すまでの1年位」

「そ、そうなんですか・・・」


やっぱり『城を壊す』って言葉がパワーワード過ぎて口元が引きつる様な気がする。

いやでも、少し意外だったな。

コロナさんがスパイって・・・・・・

ルグがナト達にあんな酷い怪我を負わされたから他に適任な人が居なかったのかも知れないけど、一応コロナさんも一国の女王だろ?

普通スパイ活動なんて女王の仕事じゃないだろうし、正式に後を継げる弟さんが居る眷族国の中継ぎの女王だって言っても無茶し過ぎじゃないか?

それ以前にこういう場合、そう言う専門職の人に頼むもんだろう?


そう思って聞いたら、その時点で既に魔女達側もアンジュ大陸国を含めた各国にスパイを送り込んでいたらしくて、信用できて身バレしにくい人がコロナさんしか居なかったらしい。

そう言う事情が有っても、やっぱりコロナさんがスパイをする事に反対する人は大勢居た。

でも、反対派が根負けする位本人のやる気が凄くて・・・

コロナさんは約1年、人間の女の子のフリをしてナト達と一緒に行動していたそうだ。

その時の偽名が『ネイ』と言うらしい。

だから、魔法道具屋のお兄さん達はコロナさんの事を『ネイ』って呼んでるんだな。


「俺達の世界の25年前の事件。

矢野高校集団誘拐事件についてはどこまでご存知ですか?」

「その時ネイが赤の勇者達と一緒に行動してなかったから、詳しくは知らないな。

後でネイが聞き出せた話は、この世界の5、6000年前位に『召喚』されたって事と、赤の勇者達が当時の魔王が『召喚』したって思い込んでる事。

赤の勇者の父親含め13人だけ兄ちゃん達の世界に戻れたって事位だ」

「なるほど。

だと、矢野高校集団誘拐事件で連れ去られた157人と同数の謎の死体が、被害者達が最後に居たと思われる教室に置かれていたって話は?」

「聞いてないな。

兄ちゃんの言い方だと、そこが重要なんだろ?」

「はい。

そこから25年前と今回使われた『召喚』の魔法が同じであると思ったので。

今はそこにだけ覚えて頂けたらいいです」


そう、この世界に誘拐されたであろう木場さん達と同じ数の死体が、当時の木場さん達が最後に居た場所に置かれていた。

そして今回も。

そこから考えると、この世界に居るモノと入れ替えないと異世界人を呼べないと言う事なんじゃないのか?

それを魔女達や25年前の事件の時木場さん達を『召還』した人達は、『異世界からの『召還』に失敗した死体』を再利用して行った。

だから、俺達や25年前の木場さん達が最後に居た場所に、『謎の死体』が捨てられていたんだ。


『返還』や『ゲート』。

色々入れ替わりをしなくても出来る『召喚』系の魔法がある中、『召喚』のさいそうやって入れ替わりが行われた。

それはつまり、25年前に木場さん達を『召喚』した魔法と今回俺達を『召喚』した魔法は同一の魔法って証拠なんじゃないのか?


「神社に落ちてる石や落ち葉と入れ替わったとかじゃなければ、木場さん達が戻ってきた後誰かが行方不明になって無い事を考えると、木場さん達が帰ってくる時は『召喚』の魔法を使わなかったんだと思います。

状況的に『召喚』の魔法が使われたのは、俺達の世界から木場さん達が『召喚』された時。

そして、俺達を『召喚』した4回がそうだと思います」

「状況的に、ねぇ・・・・・・

兄ちゃんは何度も『状況的』って言ってるけど、具体的には?」

「そうだな。アルの言う通りだ。

お前や赤の勇者が『召喚』された時は『召喚』の魔法が使われたかもしれないけど、具体的に言えないなら、ローズ国城の『召喚』の魔方陣を壊した後の2回はお前の勘違いかもしれないじゃないか」


具体的に言えと言う魔法道具屋のお兄さんとキユさん。

直ぐにそう思った状況を説明しようと思っていたのに、キユさんから聞き捨てなら無い言葉が出て思わず言葉が詰まる。


「あの・・・『アル』って・・・・・・

今の『レジスタンス』のボス・・・・・・」

「ん?あれ?

それもエドから聞いてない?

一応俺が、5代目『レジスタンス』リーダー」

「・・・・・・聞いてません」

「ついでに言えば、現ローズ国王家の遠い親戚だ。

アルの曾ばあさんは『レジスタンス』を作った第7王女だからな。

処刑されたと伝わってるが、当時の生き残った『レジスタンス』のメンバーが助けてアル達が生まれたんだ」

「まぁ、だから、俺にも一応異世界人(勇者)の血が流れてるんだ。

そのお陰でゾンビの毒が効かなかったんだけど」

「・・・それも聞いてません」

「じゃあ、アルゴ一家・・・

あー、雑貨屋工房一家やピコン達、ゾンビ毒がローズ国に撒かれた後に新しく『レジスタンス』に入った人達の何人かも遠いローズ国王家の親戚だって事も?」

「聞いてません!」


まさか、こんなに魔女達の親戚が居たなんって・・・

その上、鍛冶師の爺さんやピコンさん達までそうだったなんって、知ってる訳ないだろう!?

ルグもピコンさんも言ってくれなかったし!!


鍛冶師の爺さん達が魔女達の親戚だってのには心底驚いたけど、落ち着いて聞いたら、どうも親戚は親戚でも王位継承権が全く無い非公認の親戚らしい。

魔法道具屋のお兄さん、アルさんの曾お婆さんの第7王女と同じ60年の事件で追い出されてヒッソリ生きていた王族や、かなりの好色家だった先々代ローズ国王がどっかに出かけた際に地元の女性に仕込んだ、非公認だけどローズ国王家の血が流れてる人達。

そう言う人達の子孫が鍛冶師の爺さん達らしい。


鍛冶師の爺さんと、その娘の雑貨屋工房の小母さん。

そして孫の従業員のお姉さんは、鍛冶師の爺さんのお父さんが認知されなかった先々代ローズ国王の子供だったらしい。

同じ様にピコンさんやスピリッツさん、クエイさんに絡み酒していた冒険者さんも認知されなかった先々代ローズ国王の子供の子孫だそうだ。

そしてステアちゃんはアルさんと同じ、60年前に追い出された王族の子孫らしい。

言っちゃ悪いが、非公認の親戚多過ぎじゃないか?

その上、ここに非公認の親戚が全員居る訳じゃないんだろう?

本当に全員魔女達の親戚だとすると、先々代ローズ国王、ガンバり過ぎって言うか、見境なさ過ぎだじゃないか!?


「この際だから言っておくが、私やクエイ、エドの様に強い毒耐性のスキルを持っている奴等以外。

今『レジスタンス』に入っているのは皆、ゾンビ毒に対するスキルを持って生まれた王家の血を引く者だ。

いや、そう言う者以外助からなかった・・・・・・」

「そう、なんですか」


恐らく俺とナト達が入れ替わったその日に、魔女達はローズ国の人達をゾンビに変えた。


雨を降らす儀式魔法。


それを使ってゾンビ毒が混じった雨を降らせ、ゾンビ毒の雨に当たった人やゾンビ毒雨に汚染された水を飲んだ人達をドンドンゾンビに換えていったんだ。


元々『レジスタンス』のメンバーだった人達の大半もゾンビにされて、その穴を埋める意味もあって、ゾンビにならなかったピコンさん達をアルさん達は保護していったらしい。

だからアルさんとキユさん、オークの男性、巨大クロッグの事件で一緒になった冒険者さん。

その4人以外、今いる『レジスタンス』のメンバーは皆、ゾンビ毒雨事件後保護された人達らしい。


「それでも、鍛冶師さん達がローズ姫達の親戚だったなんって、何か少し意外です。

その・・・」

「アイツ等に全然似てないって?」

「はい・・・・・・正直言って全然」

「だろうなぁ。

ワシ等も未だに信じられんからな」

「まぁ、殆どの奴等はここに来て初めて知ったんだ。

信じれんのも無理はない。

殆どの奴等はローズ国中がゾンビだらけにならなかったら、一生知らなかっただろうなぁ」

「俺達は血が流れてても親戚として認められてないからなぁ。

自分達は王家の血が流れてる!!

何って言いふらしてたら、俺達が生まれる前に爺さんやお袋の首が飛んでただろうよ」


隣のテーブルからそう答えくれた鍛冶師の爺さんとボスに、アルさんが溜め息混じりに応える。

どっちの子孫でもアルさんとキユさん以外、今回の事件が起きるまで自分達が薄くてもローズ王家の血を引いている事を全く知らなかったそうだ。

各国王家、と言うか勇者の子孫しか持ってない、俺の姿がちゃんと高校生の姿にも見える『状態保持S』や『環境適応S』の様なスキル。

それを持っていた事でそう推理したって事らしい。


一応この世界では一般的に各国の王家以外、『勇者』の血を継いでいない事になっているらしいけど。

でも俺の様にサンプルとして『召喚』されて生き残った人がこの世界で子孫を残した可能性もあるし、生き残った木場さん達の同級生が何らかの理由でこの世界に残って子孫を残した可能性もある。

だから、一概にそのスキルを持っているからって魔女達の親戚とは限らないんだよなぁ。

それを言い出したらややこしいし、更に話がそれそうだから今は言わないけど。


「て事で。

疑問が解消されたなら、そろそろ『召喚』の魔法が使われたって思う具体的な状況の説明をしてくれないか、兄ちゃん?」

「あ、そ・・・いえ」


まさかの魔法道具屋の店主の裏の顔が60年前からヒッソリと活動していた『レジスタンス』の現ボス。

って言う衝撃の事実がサラッと明かされた。

明かされた、はずなんだ。

でも何か違和感を感じる。

なんだろう、この違和感。


「・・・・・・・・・あれ?」


そうだ。

この状況は可笑しい。

だってキユさんは『俺と紺之助兄さんを警戒してる』んだ。

それなのに、こんな無防備な状態で普通自分達のボスを会わせるか?


ユマさん達から俺の事をある程度聞いているなら、俺達が魔法を使うのにもスマホが必要だって知っているはず。

それなのに隣に自分が居て周りにも人が沢山居るからって、スマホを俺達に持たせたままだし、分かりやすく武器だって持ってない。

それに魔法を直ぐ使えるように準備だってしていないじゃないか。

かなり俺達の事を警戒しているって聞いていたのに、今のこの状態は何か矛盾してる気がする。


それなら、どういう状況なら矛盾していないと感じるのか。


そう考えてパッと思いついたのは、『アルさんが本物の『レジスタンス』現ボスじゃなくて、現ボスの影武者である』と言う状況。

本物の現ボスは俺達から遠く離れた席に居るか、何処か別の部屋に隠れてそもそもこの部屋自体に居ない。

って考えた方がまだ自然だよな?

それで、アルさんが現ボスだってあえて伝えたのは、俺と紺之助兄さんを試す為?

アルさんが『レジスタンス』の現ボスだって知って、俺達がアルさんを襲うかどうか。

もし襲おうとしたら、俺達は既に魔女達の仲間であるって分かる訳で・・・・・・


いや、ステアちゃんがアルさんを現『レジスタンス』ボスだと言ったって事は、ゾンビ毒雨事件後に新しく入ったメンバー全員疑ってる、のか?

その為の影武者?

確かに『非公認だけど、何処かの国の王家の血を継いでいるからゾンビにならなかった』っていう理由は、ある意味怪しく感じるな。

公認されてる魔女達の親戚が紛れてても判別出来ないし、何よりゾンビ毒雨事件のせいで一気に入れ替わったって言うなら、スパイが入り込む余地が十分過ぎる程ある。

スパイじゃないけど、ルグだって正体かくして『レジスタンス』に入っている訳で・・・

だから、ルグと同じ様に正体隠してる人が他に居ないとも言い切れない、んだよな?


えーと、だから・・・・・・

そう言う人達を炙り出す為に、アルさんはあえて無防備に見える状態で俺達に接してる、のか?


「おーい。おーい、ってば。

兄ちゃん、聞こえてるかー」

「え・・・?あ・・・」


何度も掛けられていたらしいアルさんの声に、ハッとした様に意識が現実に戻された。

慌てて隣を交互に見ると、呆れた様な顔の紺之助兄さんと、俺の肩を掴んで俺を揺さぶろうとしているルグの姿が目に映る。

どうもまた、自分が思っている以上に考え込んでいたらしい。


「す、すみません!

考え事に集中し過ぎていたみたいで・・・・・・

本当、すみませんでした」

「そんなに真剣に考える何って、一体何考えてたんだよ」

「なんだ?まだなにか気になる事があるのか?」

「・・・いえ。

何処まで話したか思い出そうとしていただけです。

店主さんの正体があまりにも衝撃的で話していた内容が吹っ飛びまして・・・

最初から自分が話していた内容を頭の中で振り返っていたんです」


今まで考えていた『アルさん影武者説』はこの場で言わない方が良いだろう。

と思った俺は、そう誤魔化した。

決定的な証拠が無い俺の想像だけでその事を言うべきじゃないと思ったし、お互いの安全の為にも言わない方が良いと思ったんだ。


「そこまで驚く事だったか?

・・・・・・まぁ、いいや。

とりあえず何処まで話したかって言うと、『召喚』の魔法が『チェンジ』と同じ様な魔法だって事以外、まだ具体的な状況の説明には入ってなかったな」

「あぁ!そう言えばそうでしたね」


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