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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
253/498

23,サイカイ その14


 ピコンさん達に連れられやって来た食堂。

そこはカウンターでキッチンと区切られたそれなりに広い部屋だった。

その部屋を見回して一瞬、違和感を感じたけど多分気の所為だろう。

食堂には片側だけでも余裕で10人位が座れそうな石で出来た長机が2脚置かれていて、思い思い20人位の人達が座っていた。

組織内の親しい人と集まって座ってる人達も居れば、1人で黙々と朝ごはんを食べてる人も居る。


その中にはルグが言ってた通り、ピコンさん達以外にも見知った人がチラホラ見えた。

ギルド職員のボスや、雑貨屋工房の小母さんや鍛冶師の爺さん、エスペラント研究所の研究員のスピリッツさん。

それに、向こうが覚えてるか分からないけど、雑貨工房の従業員のお姉さんや、巨大クロッグの事件で一緒だった冒険者さん、宿場町の宿屋の酒場で少し話したクエイさんと仲良さそうだった女冒険者さんも居る。


後、軽く見回して気になった事と言えば、ローズ国に居るのに悪魔やゴブリン、オーク。

一部の魔族の人達が変化石を使わずに居る事だろう。

勿論、クエイさんの様に人間に化けてる人も居るだろうけど。

多分、こんな状況だからこそどんな人種の人でも仲間として受け入れているんだろうな。

さっきの予想通りゾンビになっていない人達全員が集まってるのか、それともナト達と戦う意志がある人だけが集まってるのか。

それは見回しただけじゃ全然分からないけど。


「お待たせしましたー」

「おー。お前等ありがとうー。兄ちゃん達はこっちなー」


ステアちゃんがそう声をかけると、スズメがチョコンと机の上に乗っかった。

入り口から見て左から2列目の奥らへんに4人で並んで座っていた内の1人。

魔法道具屋のお兄さんがそう言いながら振り返ってきた。


「じゃあ、僕達こっちだから」

「あ、はい。ありがとうございました」


バラバラに座ってる様に見えるけど、それぞれの定位置が決まっているらしい。

俺と紺之助兄さんを降ろしたフェノゼリー達と一緒に、ピコンさんとステアちゃんがクエイさん達が集まってる席の近くに行ってしまった。

それを見届けてから、俺と紺之助兄さんもルグと一緒に入り口から1番遠い魔法道具屋のお兄さんの向かいに、軽く挨拶と何時も通りの自己紹介してから並んで座った。


左端の壁に1番近い所から紺之助兄さん、俺、ルグの順。

俺の向かいには魔法道具屋のお兄さんが座っていてその左隣、紺之助兄さんの向かいには魔法道具屋のお兄さんと同い年位の女性のキユさんが座っている。


ルグの向かいに座っているのが、綺麗な白髪にオレンジ色の目をしたマシロさん。

最初髪や目の色からクエイさんと同じ、変化石で人間に化けたカラドリウスかと思ったけど、多分違う。

オレンジ色のネックレスも変化石も身につけてないから、ただ人に化けたカラドリウスと同じ配色の人間なんだと思う。


そのマシロさんの右隣に座っているのが、右腕に何処か見覚えのある渋い色をしたバンダナを巻いたジェイクさんだ。

ジェイクさんは人間じゃなくて悪魔で、ユマさんより少し濃い黒交じりの茶髪とユマさんと同じ光の加減で色が変わる目、ディアプリズムを持っている。

兄弟なのにマシロさんと種族が違うのは、ルグと同じ様に両親の種族が違うのか、どっちかがルグの1番上のお姉さんの『ユニ』さんの様な先祖返りなのかも知れない。

もし先祖返りだと言うなら、先祖返りしたのは多分妹のマシロさんの方だと思う。

マシロさんはそこまでじゃないけど、ジャエイクさんの方は何処となーく顔立ちがユマさんに似ている気がするから、もしかしたらユマさんの親戚の人なのかもしれない。

だから、悪魔じゃ無く人間のマシロさんの方が先祖返りの可能性が高いんだけど・・・・・・

実際どうなんだろう?

ジェイクさんはクエイさんや魔法道具屋のお兄さんより少し年上っぽいし、変化石も持っていない。

だから、ユマさんの唯一の肉親である『ナァヤ』君じゃないと思うけど、全く血の繋がりのない赤の他人って言うにはジェイクさんもマシロさんもユマさんに似過ぎている気がする。

だからルグと同じくナト達の調査でここに来たユマさんの親戚の人なのかとも思ったけど・・・

もしかしたら本当に他人の空似で、ただ単純に力が強いだけの、ユマさんとは一切血の繋がりのない悪魔と人間の兄妹なのかもしれない。


「じゃ、改めて。久しぶりだな、兄ちゃん」

「はい、お久しぶりです。

この前は大変お世話になりました」

「おう。良いって事よ。

あっ。とりあえず食べながら話そうか。

折角キユが作ってくれたスープが冷めちまう」

「あ、はい。頂きます」


目の前に置かれた朝食は、種類は少ないけど朝食にしてはかなりのボリュームがあった。

大きなお椀に盛られた野菜やお肉がゴロゴロ入ったスープに、大人の拳よりも大きなパンが1つ。

それとヘタも芯もそのままに4等分に切られただけの大きな赤いりんごと水が入ったコップ。

そのセットが量も同じ位でそれぞれの目の前に置かれていた。

ルグならペロリと食べられる。

どころか少ないって言い出す量だと思うけど、元の世界に戻ってから少し胃が小さくなった俺と、元々小食気味な紺之助兄さんには多い位だ。


「ごめん、エド君。今日も半分位貰ってくれる?」

「あ、俺も頼めるか?」

「別にいいけど、サトウもコンも本当にそんな少ない量で大丈夫なのか?

てか、サトウはりんごと水だけで本当にいいのかよ!?

前よりも少なくなってないか!!?」

「え、うん。大丈夫」


今胃の中に入りそうなりんごと水だけ残して、パンとスープは全部ルグに渡す。

そしたらルグに心配されたし、魔法道具屋のお兄さん達にも変な顔された。


「兄さんは元々小食であまり食べれないし、俺は・・・」

「・・・貴弥は今、拒食症になってるんだよ」

「え?」


紺之助兄さんの言葉にキョトンとした顔になって俺を見てくるルグに、苦笑いで答える。

答えたつもり何だけど、多分無表情のまま動いてないんだろうな。


この世界でのトラウマが原因か、それとも花なり病に罹ったのが原因か。

元の世界に戻って直ぐの俺は、何か食べても直ぐ吐いてしまっていたんだ。

酷い時はスプーン1杯のお粥を食べただけ。

どころかちょっと食べ物の匂いが漂って来ただけでも吐きまくって何も受け付けなくて、点滴でどうにかしていたりもした。

まぁ、退院した今は多少ましになったから大丈夫だけど。


「え、はぁ?ちょっと待て!

サトウ、普通より食べないなぁって思ってたけど、まさか前の時から飯食べれなかったのか!?」

「いや、食べれなくなったのは元の世界に帰ってからだよ。

前の時は普通に、と言うか、結構俺食べてたと思うけど?」

「あの量で!?」

「いや、エドの食べれる量を基準にしたら、誰でも小食になるからな?

あっ。あー、いや。えーと・・・

それと、な・・・そのぉ・・・単純にぃ・・・・・・

貝類が苦手なんだ。

出されたら頑張って食べるけど、食べなくていいなら出来るだけ食べたくない位苦手なんだよ。

だから、モリーノ村でポンドスネイル出してくれた時はあんまり食べなかった、かな?」


ルグの正体がバレない様に途切れ途切れになりつつも、俺は慌ててそう言った。

依頼書の内容と矛盾しない様にモリーノ村での事を思い出しつつ、言葉を選んで言ってたから途切れ途切れになったけど、どうにか苦手な食べ物を言うのを躊躇ってる様に見せれたと思う。

それに、


「苦手な物位、恥ずかしがらずにハッキリ言えばいいのに」


と紺之助兄さんが俺達の本心を知らないままフォローしてくれたお陰で、特に誰も不信に思ってる様子は無い。


「折角善意で態々良いポンドスネイルを用意してくれたのに、貝が苦手何って言ったら失礼だろ?」


と言いつつスプーンでりんごの芯を取り、一口。

シャキシャキと新鮮な食感と甘酸っぱい水分が口の中に溢れる。

うん、かなり美味いな。

3日間眠りっぱなしで胃の中が空っぽだったし、ここ最近お粥とかドロドロした物ばっかりだったから、この新鮮なシャキシャキ感が凄く美味しく感じる。

まぁ、この世界にいる間は『環境適応S』の効果で少しずつ胃の大きさも元に戻って普通に食べれるようになるだろうし、やっとお粥生活卒業かな?


「それはそうとして、この世界の人達は平均的に食べる量が多いと思うけどね」

「魔族の中には体の構造上、沢山食べないといけない種族もいるからって言うのもあるけど。

兄さんを基準にしたら今度は誰でも大食いになると思う」

「いやいや。そんな事ないって!

元々大助や貴弥が良く食べるだけで、僕は普通です!」

「そう?まぁ、いいや。頂きました」


りんごを半分食べ終えた所でお腹がいっぱいになり、残りをルグに渡す。

またルグ達に変な顔をされたけど、入らないものは入らないんだから仕方ない。

残り半分のりんごは一切手を着けてないから、間接キスとかの問題は心配ないはずだけど、ルグが嫌なら勿体無いけど捨てて貰うか。

そう思いつつ、ルグや紺之助兄さんが食べ終わるのをチビチビ水を飲みながら待つ。

あ、この水、唯の水じゃなくてミズサボテンの水だ。


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