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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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19,サイカイ その10


「そう言う幾つものローズ姫達がナト達を操るだろう可能性があった事。

それがあった中で、帰って来た高橋の目の色が可笑しかったんだ。

まぁ、俺もパニック起こした後で周りも薄暗かったし、少し自信がないけど・・・」

「目の色?

タカハシもタナカも、サトウやコンよりも濃い黒のはずだろう?」

「それは可笑しいよ!

湊も高橋君も、暗い所でも分かる位明るい茶色をしてるんだから!!!」

「え?」


慌てた様にそう叫ぶ紺之助兄さんの言葉を聞いて、ルグが絵に描いた様なキョトンとした顔をした。

その表情から、ナトも高橋もこの世界ではずっと真っ黒な目をしていた事が分かる。

でも、カラコンを着けるみたいに2人がお洒落で目の色を変えてるんじゃなければ、それは可笑しいんだ。

いや、俺達の世界での高橋の様子的にお洒落で目の色を変えてるんじゃないと思うけど。


「確かに俺達は黒って言われる位濃い焦げ茶色をしてるよ?

でも、ナトと高橋は違う。

2人共微妙に違うけど、本来ならピコンさんと同じ様な明るい色をしてるんだ」


そもそも、俺達よりも濃い黒目って、天然物なら日本人でも珍しい虹彩まで真っ黒い目って事になるんだ。

まるでマジックで塗りたくった様な、漫画のキャラクターの様な目って言えばいいのか、パッと見でカラコンをしてるって分かる、安物の黒いカラコンをつけた様な目って言えばいいのか。

確かにあの時の高橋の目の色は、そう言う不自然な黒い色をしていたんだ。


「嘘だろ?そんなはず・・・

だって、タカハシもタナカもこの世界に来た最初から、真っ黒な目をしてたんだぜ?

・・・オイラはそう聞いてるぞ?」

「嘘じゃない!その証拠に・・・・・・ほらッ!!」


そう言いつつ紺之助兄さんはクローゼットから紺色のトートバックを取り出した。

お参りの後またナトを探す為のチラシを配るからって、神社でお参りしてる時から紺之助兄さんが持っていたトートバックだ。

そのトートバックから紺之助兄さんは2枚の紙を取り出した。


1枚は兄さん達が作ったナトの事が書かれた物。


もう1枚は、大きく高橋の顔写真が張られた、高橋を探す文が書かれた物だ。


高橋を探すチラシの方は俺が上条刑事と話してる時、高橋の顔が知りたいって言ったら妹ちゃんがくれたらしい。


「・・・凄いなこの絵。

サトウ達の世界はこんなにタカハシとタナカにそっくりな絵が描ける奴が居るのか?」

「絵じゃなくて、写真な。

描いたんじゃなくて、えーと・・・

ほら、『教えて!キビ君』で何か調べる時・・・

あー・・・・・・

ウィルオウィスプに着いた癒しの木の花の花粉調べる時、スマホがパシャって鳴っただろう?」

「あ、あぁ」

「アレ、本来ならこう言う写真を撮る為の機能なんだ。

スマホとかの機械で撮ると撮ったモノの姿をそっくりそのまま、紙とかに写し取る。

まぁ、このチラシの写真は幾つかの機械を使ってこの紙に写してるんだけどな」


写真やカメラがこの世界に無い為か、誰かが書いた精巧な絵だと思ったルグに、俺は如何にか絵じゃない事を話した。

俺の説明が悪過ぎるのか、それとも翻訳の関係で上手く伝わらないのか。

ルグには上手く伝わらなかったみたいで、最終的にルグに杖を借りて紺之助兄さんと一緒に『クリエイト』で出した紙パックや虫眼鏡、真っ黒な画用紙を使ってカメラを作った。


「スゲーッ!!!!

薄いし左右逆だけど、本当にそっくりな絵が紙に写ってる!!」


現役大学生の紺之助兄さんにカメラの原理を教えてもらいながら数十分。

動かない様に机の上に置いていたカメラから写真用の紙を回収して、紺之助兄さんの指示に従い『プチライト』で焦げない様に紙を暖める。

そして浮かび上がった上下左右逆さまの、少しだけ右の扉が開いたクローゼットの写真。

時間が結構掛かるけど、思ってたよりも綺麗な写真が出来た。


「うん、これなら成功だね。

何年も前に作ったきりだから不安だったけど、思ってたより上手くいって良かったよ」

「俺は初めて作った!

手作りカメラの現像って暖めれば出来るだ。

何か特別な液と暗い部屋が必要だと思ってたけど、意外と楽に現像出来るんだね」

「うーん。本来はそうなんだけどね?

今回は『クリエイト』で写真用にコピーアートって言う特別な紙を出したから、貴弥の『プチライト』でも現像できたんだよ」

「へぇ。そんな紙があるんだ」


良く紺之助兄さんは『クリエイト』でそんな不思議な紙を出せたな。

コレが高校生と大学生の違いなのか?


「サトウ、サトウ!!

本当に魔法で描いたんじゃないんだよな!?」

「描いてない、描いてない。

さっきまで兄さんが説明してただろ?

素材は俺と兄さんの『クリエイト』で出したけど、このカメラの原理は魔法が無い俺達の世界のやつだからな?

魔法は一切使わずに出来るんだって」

「聞いてたけど、信じられないって!!

魔法使ってないのにこんな事出来るって、本当スゲーなッ!!

これで子供でも出来るオモチャなんだろ!!!?」

「まぁ、オモチャって言えばオモチャ・・・

なの、かな?

えーと、それで、このカメラとかから一瞬でハッキリ色とかまでも写せる様に物凄ぉおおおく進化した。

専門の人や機械が作ったカメラで撮ったのが、このチラシの写真なんだ。

だからこのナトと高橋は、この写真と同じ数ヶ月前の2人そのままの姿なんだよ」


上手く撮れた写真を見て、興奮した様に凄い凄い言っているルグにそう俺は補足した。

ルグにカメラや写真の説明するのに予想以上の時間が掛かったけど、これで漸く本題に戻れる。


「見ての通り、この写真に写ってる2人の目の色は茶色だろ?」

「確かにオレが知ってるタカハシ達とは目の色が違うな。

こんな明るい色してなかった。

本当に、タカハシもタナカも元の世界だと真っ黒な目をしてないのか?

さっきコンが言ってた写真の偽造じゃないのか?」

「高橋の方は分からないけど、ナトの方は顔の部分を大きくして切り取っただけで、目の色は変えてないよ。

そもそも兄さん達は2人を探してこのチラシ作ったんだ。

それなのに、何で態々目の色変えなくちゃいけないんだよ」


ルグは写真の偽造を疑ったけど、このチラシを作った目的的にそれはありえない!!

もし目の色を変えたチラシを見て2人を見つけた人が居たとしても、目の色が違うからって勘違いして折角見つけ2人をスルーしたらどうするんだ。

それじゃあ意味がないだろう?

もし変えるとしてもこの世界に居る2人の目の色が黒くなってるから黒く変えるなら兎も角、そもそもそんな事になってるって知る前に俺達はチラシを作ったんだぞ?

そんな意味の無い事、あの時点の紺之助兄さん達がする訳ないだろう!!?


「あー、それもそうか。

それなら本当にタカハシ達の目の色は、本当ならこの色なんだな」

「だから、そう言ってるだろう。

ナトと高橋の目の色が黒に変わったのは、この世界に来てからなんだって。

俺もそうだし、ゾンビにされた人もそうだけど、この世界で目の色が変わるって・・・」

「何かのスキルや魔法を使って洗脳された奴の特徴だな。

ゾンビの様に操られてる奴や『魅了』の魔法に掛かった奴。

そう言う奴の目は色が変わる。

ただ、サトウみたいに病気の後遺症で目の色が変わるってのは初めて聞いたな。

あぁ、いや。

そもそも、サトウの様な末期の状態から復活した奴が少なすぎて、後遺症で目の色が変わるって話自体広まってないのかもな。

基本、復活できなくて死んじまうから・・・・・・」


どう言う理屈か分からないけど、この世界では基本、『洗脳』や『魅了』状態になると目の色が変わるらしい。

俺の後遺症の事もあって、何か異常な状態になると目の色が変わると思ってたから少し驚いた。

あぁ、でも、コカトリスの毒で石化したデビノスさん達は目の色が変わってなかったな。

それを考えれば、全部の異常な状態で目の色が変わるとは限らないって分かるか。


「帰って来た高橋の目は最初、元の茶色とあの異常な黒のオッドアイだった。

それが、何かゾワってする声でローズ姫が高橋に声をかけた瞬間。

高橋の目が両方真っ黒に染まった様に見えたんだ」


魔女の方を振り返った瞬間そうなった様に見えたから、もしかしたら距離と光の加減でそう見えただけかもしれない。

でも、幾つもの洗脳するかもしれない可能性があった事と、魔女が今までと違う声で話しかけたタイミングで色が変わった様に見えた事。

それら全部を合わせると、俺の見間違いとはとても思えなかったんだ。


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