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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
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14,サイカイ その5


 と、『レジスタンス』や鍛冶師の爺さんの両親の事でだいぶ話がそれてしまった。

そろそろ本題に戻ろうか。


「まぁ、兎に角。

ジェイクさんはそのマシロちゃんのお兄さんで、マシロちゃんは此処に来る前に巻き込まれた事件のショックから記憶喪失になってるんだ。

だからマシロちゃんが心配で何時も一緒に居るんだと思う」

「記憶喪失って・・・・・・

その『マシロ』さんって人、日常生活が出来ない位酷い記憶喪失なの?」

「ううん。

この世界の言葉とか常識とかそう言う意味記憶は結構残ってるみたい。

完全に消えちゃったのはエピソード記憶だけ。

だから・・・・・・」

「あぁ。

頭の中から消し去りたい位、酷い何かを見たんだね・・・」


エピソード記憶。

つまり思い出だけが綺麗に完全に消え去ったって言うなら、マシロさんは巻き込まれた事件で頭に怪我を負って記憶喪失になった訳じゃ無いんだと思う。

この世界は魔法があるから絶対そうだと言い切れないけど、もし俺達の世界と同じだったら怪我や病気。

後はボケてきてしまって記憶が消えてしまった場合もか?

そう言う場合、思いでも知識も関係なくランダムに消えていくはずだ。


でも、良く創作で出てくる記憶喪失の様に『思い出だけ』が綺麗に消えてしまった場合。

それは心を守る為の防衛本能が働いたからって場合が多いらしい。

酷いトラウマとかのせいで、その出来事を、記憶を頭の奥底に封印してしまうそうだ。


現に俺もそうなってる可能性がある訳だし。

クエイさんの言う通り花なり病の後遺症の可能性も確かに0じゃない。

けど、『体が草や花に変わって死に掛けた』って言うグロいホラーの様な体験をしたトラウマから、俺自身がその時の事を頭の1番奥に封じた可能性もあるんだ。


もしかしたら、マシロさんにもそう言う事が起きたのかもしれない。

その巻き込まれた事件って言うのが心が耐えられない位酷い事件で、そのせいで記憶喪失になってしまったのなら、もしこの後マシロさんに会ってもその事について興味本位で聞いちゃいけないよな。

いや、初対面でそんな事聞く事自体失礼だし、初対面じゃなくても家族や友達、お医者さんやカウンセラーでもない赤の他人が根掘り葉掘り聞く事自体も失礼だ。

妹のマシロさんがそうなってるなら兄であるジェイクさんにとっても辛い事件だったろうし、その事件については何か必要になるまで絶対触れないで置こう。


「聞いた話だと、多分そうだと思う。

だから、今もマシロちゃんの部屋に居るんじゃないのかな?

マシロちゃんがそこ等辺難しい年頃の女の子だから、一応念の為に兄弟でも部屋を分けようってなったんだけどね?

ジェイクさんが心配のあまり、何時もマシロちゃんの部屋に行っちゃうんだ」

「それか、何時も通りアジトの調査に夢中になって道の真ん中で寝てるかもな」

「いや、それはそれで問題じゃあ・・・

何で自分達のアジトを改まって調べてるか分からないけど、此処が地下水道ならダーネアやメテリスも当然居るんだろう?

ジェイクさんもマシロさんも本当に大丈夫なの?」

「あぁ、そこは大丈夫だって。

地下水道って言ってもアジト側には野生の魔物や動物は居ないからな。

それに、なんだかんだでジェイクも戦い慣れてるみたいだし?

何時も朝になったら1度ヒョッコリ何事も無く帰ってくるから、たぶん今日も大丈夫だろう」


ルグは大丈夫って言うけど、本当に大丈夫か心配になる。

魔物に襲われなくても、布団も無しにこの湿っぽい地下水道で寝てたら風邪引くんじゃないか?


「後、改まってアジトの調査してる理由は・・・

ごめんな?

ボスや幹部連中の指示でサトウ達には教えられないんだ」

「そう言う理由なら、無理に聞かないよ。

監視対象に言えない事なんて幾らでもあるだろうし、さっき聞いた事がある程度分かれば俺は気にしないから」

「あぁ、そこ等辺は大丈夫。

誰からも話すなって言われてないからな。

えーと・・・じゃあ、次は膜の問題についてだな。

ジェイク達について他に聞きたい事がないなら、そっちに話し移すけど、何かあるか?」

「・・・・・・いや、大丈夫。

今の所気になる事はないかな?」


前回を含めても全く会った事が無い人達だから、特にこれ以上の気になる事は出てこない。

もし出てくるとしても、それは直接その2人と会った時だろう。

その時何か気になる事が合ったら、失礼じゃない範囲で本人に聞けばいいよな?

そう言う理由もあるし、何より今は先延ばしにされたナト達の事や俺自身が関わる膜の問題とかの方が気になる。


「それで膜の問題ってのは、人によってサトウの姿が違って見えるって話だ」

「俺の姿が?

えっと、角とか牙が生えてた姿に見えたりするって事?」

「いいや。年齢が違って見えるんだ。

オイラからしたら、サトウは30位のおっさんに見えるけど、1部の奴にはオイラと同じ位の子供に見えてるらしい」

「えぇ・・・・・・そんな事ある?」


確かにルディさんの依頼を受けた時、ルグ達に老けてるって言われたけど。

まさか人によって年齢が違って見えるなんって予想もしてなかった。


「僕には高校生の姿で見えてるよ。

えっと、エド君達が表側って呼んでる方の、魔物が出る方の地下水道に放り出されて、段々貴弥の姿が変わった時は驚いたけど」

「え!?

魔物が出る方って、本当に大丈夫だったの!?

兄さん怪我は!?襲われたりしなかった!!?」

「あ、そこは大丈夫だよ。

魔物が出る前にエド君達に見つけて貰えたからね。

正直な話、魔物自体も話で聞くだけで、まだ実際に見た事もないんだ」

「ほん、と?そう・・・そうっか・・・

なら、良かった・・・・・・

本当、兄さんが無事でよかったぁ・・・」


もう1度この世界に連れて来られた俺達は、色々な素材や蔓蜜柑の様な食べ物を取りに前回俺も入った表の地下水道の方に来たエド達に発見されたらしい。

ルグの話ではナト達が来てから起きた色々な事情で、今表の地下水道にはルグ達『レジスタンス』のメンバー以外、誰も入って来ないずなのに、自分達以外の声がする。

魔女達の手下が入り込んだ可能性が0じゃないからと念の為に声のする方に向かったら、気絶した俺とそんな俺にパニックになりながらも声を掛け続ける紺之助兄さんの姿を見つけたらしい。


「改めて、ありがとう、エド。お陰で助かったよ。

本当、ありがとう」

「おう。どういたしまして」


心臓に悪いから、出来ればサトウが起きてる状態で見つけたかったけどな~。

と照れた様にそう付け足すルグに謝りつつ、もう一度お礼を言う。

本当、ルグには助けられてばっかだな。

絶対ルグに足を向けて寝れないよ。


「あっ。

それで話し戻すけど、兄さんの目には殆ど何時も通りの姿で写ってるって思っていいのかな?」

「何時も通り・・・うーん・・・

どうだろう?何時も通りって言っていいのかな?

事件前の健康な体つきに戻ってるし、カラーリングも違うし、刺青みたいな痣もある。

だから、完全に何時も通りの、見慣れた姿じゃないけどね?

でも、どの位の年に見えるかって言われたら、中高校生位だってハッキリ言える姿に見えてるのは確かだよ。

うーん、そうだなぁ・・・

痣を消してカラーリングを戻したら前会った時と全く一緒だね」

「前って・・・・・・

前兄さん達に会ったのお正月頃じゃなかったけ?

あれから少し身長伸びたはずだけど?」

「そう?

相変わらず小さくて子供らしい顔立ちしてるから変わってないと思ってた」

「小さいって言うなよ。

俺今170cmあるんだけど?

高1としては平均位はあるんだけど?」

「そうなの?

そんなにある様には見えなかったけど、前聞いた時より1cm伸びたんだ」


背が伸びやすい所まで叔父さんに似たナトも入学した頃で既に殆ど180cmって言っていい170後半だったし、紺之助兄さんも大助兄さんも高校の頃から180代いってたし。

顔立ちはそこまで似なかったのに背が高くなる所だけ兄さん達に遺伝させた父さんも、あの年にしては結構背が高い。

兄さん達とは逆に俺は母さんの方の身長が伸びにくい遺伝子を強く受け継いだ様で、ナト達に比べ身長が伸びにくいんだよ。

つまり、俺が小さいんじゃ無くて、紺之助兄さん含めて周りがデカいんだ!

俺は!けして!!小さくないっ!!!


「サトウ・・・・・・」

「やめて、エド。その生暖かい目、本当やめて」


何処か慰める様な暖かい目をして俺の肩を叩くルグ。

やめて。

仲間を見つけた様な顔でその目は、本当やめて。

別の意味で傷つくから、本当、マジでやめて、ルグ。


そう思って沈みそうになる頭の中をこれ以上変な方向に沈まない様に無理矢理切り替えて、膜の問題について考える事にする。

確かに元の世界に居た時とは大分違う姿をしてるけど、それでも紺之助兄さんには15歳の俺の姿に見えている事は間違いないみたいだ。

そして15の姿でも30の姿でも花なり病の後遺症が表れたあの姿なのは変わらないらしい。


ただ『年齢だけ』が違って見えるんだ。


それなら可笑しいのは30歳の姿に見えるルグ達の方?

いや、『膜の問題』って言うんだから、『創造スキル』の特殊な膜が原因で人によって俺の年齢が違って見える。

って事なんだろうな。


「どう言う訳か、貴弥を覆ってる膜だけバグを起こしてるみたいでね?

聞いた話、僕や湊達は全員年齢が一致してるんだけど、貴弥だけは10代に見える人と30代に見える人で分かれてるんだ」

「でも、こう言う事に詳しいジェイクはサトウの膜も正常だって言ってたけどな~」

「えっと、それならエド達の方に何か問題があるって事なんじゃ・・・」

「ない、ない。そこはクエイが保障してくれてる」


俺がかなりの老け顔って訳じゃない事には安心したけど、何で俺だけそんな別れ方してるんだよ。

俺達の世界から来た全員がそう言う風に見えるなら、犬とか猫の様に俺達の世界の人間をこの世界の人間の年齢に換算すると、実年齢より上に見えるって理由とかで納得出来る。

でも俺だけって・・・・・・

なんで俺だけそんなバクが起きてるんだよ。

サンプルだから?

サンプルだからなのか!!?

いやでも、クエイさんやジェイクさんが言っている事が本当なら、俺を覆ってる膜もルグ達の目もバグってないって事だよな?

なら見てる人によって年齢が違って見える状態が正常って事?

何で?


「一応この話は、膜越しに見える姿は精神年齢や脳年齢に合わせた姿って説に落ちついたんだ」

「サトウの姿が10代の姿に見える奴等は皆、特定のスキルを持っていて、そのスキルが膜の力を一部相殺?

してるらしくてさ。

だから、サトウの本当の姿が見えてるらしいぞ」

「いや、それでも可笑しいって。

どう考えても俺より兄さんやナトの方が実年齢より精神年齢とか高そうじゃん」

「そう?じゃあ、肌年齢とか?

貴弥、お洒落とか髪や肌の手入れとか全く興味ないもんね。

ちゃんと手入れしてないから、実際の年齢より老化しちゃってるんじゃない?

これを機に少しは見た目気にしたら?」

「え、無理。

毎月買いたい本やゲームがあるから、マジでお洒落にかけるお金がない」


高校生のお小遣いの少なさをなめるなよ?

好きな作家さんの本、好きなだけ買えない位少ないんだからな!

特に一緒に持って来てしまったあのハードカバーのシリーズなんて、文庫本になってるシリーズやコミック版も買ってるから簡単に手が出せないんだよ!!

文庫本の倍以上って、学生に厳し過ぎないか!?

それなのに、学校や近くの図書館に置いてある本は、大人気ドラマの原作だからか常に借りられぱなしだし・・・

本当、ナトもあのシリーズにハマってくれて良かったよ。

妖怪や都市伝説に見立てた事件が毎回起きるシリーズで、オカルトとか民俗学とかの話も作中沢山出てくるから、オカルト好きのナトも気に入ると思って勧めたけど、まさか買う位気にいるとは・・・

嬉しい誤算だったな。


そんな訳で、俺は少ないお小遣いを趣味に注ぎ込んでいて、服とかに回せる余裕がないんだよ。

そもそもお洒落が趣味の紺之助兄さんと違って、服は季節毎に着まわせる分があれば良いって思ってるし。

だから紺之助兄さんが使っててたまに勧めてくる様な男用の香水や化粧品?

なのかな?

説明されてもよく分から無い謎の液体みたいなのにも興味がない。

そう言うと紺之助兄さんに不満そうな顔されるってもう分かり切ってるから言わないけど。

そもそも、俺みたいのが化粧なんかしてもピエロにしかならないんだから、お洒落とかは兄さん達やナトの様なイケメン連中が頑張ればいいんだよ。


「もう。またそんな事言って・・・

そんなんで彼女が出来た時どうするの?

デートに何時も通りのジャージ姿なんかで来たら引かれるよ?」

「引かれる前に、元々モテない」

「それは貴弥がお洒落しないからだろ?」

「服のセンスがアレなナトは普通にモテるんだ。

結局世の中顔なんだよ・・・って脱線し過ぎたな。

無駄話はコレ位にして、話戻そうか」


俺達のお洒落事情なんって今はどうでもいいんだよ。

これ以上話を脱線させてルグに呆れられたら困る。

だから、まだ何か言いたそうな紺之助兄さんを遮る為にそう言って、無理やり話を戻した。


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