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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
238/498

8,コンティニューしますか? Ver.8


「なにやってんだ、貴弥?」

「それに、刑事さんも何かあったんですか?」


俺からスマホを受け取って、上条刑事は険しい顔をする。

その隣でこれが夢じゃないか、ほっぺを抓ったり、飛び跳ねたりして確認する俺。

そんな俺達を見て、大助兄さんと紺之助兄さん、木場さんと高橋のお父さんと妹ちゃんが戻って来た。


『おれおきてる?

ここゆめじゃない?』

「貴弥、お前、立ったまま寝てたのか?

大丈夫か?辛いなら負ぶって帰ってやろうか?」

『ちがう

そうじゃない』


自力じゃ夢かどうか分からず兄さん達に聞いたら、変に心配された。

寝不足気味なのは確かだけど、一瞬立ったまま寝てたとかじゃないんだ。

そんな芸当、流石に出来ない。


「貴弥君のスマホに、事件前には無かったアプリが入ってるらしくて・・・

それで混乱しちゃったみたいね」

「寝ぼけて入れたとかじゃないのか?

それか変なサイト開いたとかは?」


どっちも絶対に違う。

と言う事を伝えたくて、俺は強めに首を横に振った。


正直な話、新しいアプリがダウロードされてる事事態、ありえないんだ。

事件前に何時もと違うサイト何って見てないし、知らない奴から送られてきた怪しいメールは中身を見ずに迷惑メール報告して直ぐ消している。

それに、ここ数ヶ月間は新しいアプリをダウンロードしてないし、そもそもアプリをダウンロードする為のストアアプリ自体も開いてない。

勿論ウイルス対策もちゃんとしてあるから、誰かの悪戯でもなければ勝手にアプリがダウンロードされる何って事、普通起きるはずがないんだ。


その『誰かの悪戯』説も、普通に考えてありえない。

父さんとか、ナトとか、クラスの友達とか。

パッと思い出せる、事件前に俺のスマホを、俺が気づかない内に触れそうな人の中に、そんな悪戯しそうな人は1人も居ない。

あえてありそうだと上げるなら、俺達を襲った犯人か、このスマホを調べた警察の人か。

そのどっちかしか思いつけないけど、そんな事する理由が分からない。

だから、『ありえない』、なんだ。

まぁ、その『ありえない』も、『あの世界が夢だったら』って前提があっての話だけど。


『そのアプリ

ゆめ手入れた

ゆめじやなかた』

「それ、本当か、貴弥?」

『ぜたいまちがない』

「・・・貴弥。

慌てなくていいから、ちゃんと読める文字で書いてくれないかな?

さっきから段々解読し難い字になってきてるし、流石のお兄ちゃんでもその字は読めないかな?」


大助兄さんに本当かと聞かれ、慌ててホワイトボードに、『絶対間違いない』と書く。

バッと書いて急いで兄さん達に見せたその文字。

それを見て大助兄さんは困った様な顔をするし、紺之助兄さんにはハッキリ読めないと言われた。

紺之助兄さんのその言葉で少し落ち着いてきて、長めの一呼吸を置いてから改めてホワイドボードを見る。

そこに書かれてたのは書いた俺でも辛うじて読める位の、グチャグチャした誤字だらけの文字。

慌ててた事もそうだけど、自分で思ってる以上にまだ混乱してるみたいだ。

もう少しだけでも自分を落ち着けようと何回か深呼吸して、改めて『絶対間違いない』とできるだけ綺麗な字で書く。


「・・・貴弥君。

そのアプリ、見せてもらってもいいかな?」


少し考えてから聞いてくる木場さんに俺は頷いて、タップしないように『教えて!キビ君』を指しながら、上条刑事に返して貰ったスマホを差し出した。

そして木場さん達がどのアプリか分かった所で、『教えて!キビ君』をタップ。

アプリを起動すれば、記憶通りの場違いな明るい曲が流れて、やっぱり記憶通りの青い玉をくっ付けたキビ君が現れる。


「わぁ!カワイイ!!」

「キビって、コレ、貴弥をモデルにしてるのか?」

「偶然・・・じゃないかな?」


キビ君を見て可愛いと言う妹ちゃんに、俺をモデルにしてるのかと不信がる大助兄さん。

偶然だと言う紺之助兄さんの顔も、あまりいい感じの表情を浮かべていない。

そんな兄さん達が見てる中、何時も通り画面の右下の端に移った小さいキビ君。

そして何度も使った検索画面も何の問題も無く出てくる。

検索バーを押せば問題なく文字が打てるし、撮影して検索する事もちゃんと出来た。


「これ・・・何かの・・・・・・

アニメか漫画の設定集って事?

それとも、そう言う話を集めるゲームなのかな?」

「・・・・・・やっぱ・・・

そう言う事・・・なんだな・・・・・・」

「き、木場・・・・・・これ・・・コレって・・・

あの・・・あの・・・・・・」


『ローズ国』


『アーサーベル』


『クロッグ』


『ケット・シー』


『コカトリス』


『オレンジ歩キノコ』


思い出せるだけのあの世界の単語を検索バーにドンドン打ち込んで、幾つかのページを見ていて。

上条刑事はこのアプリがゲームだと思った様だ。

その表情的に多分、兄さん達も上条刑事と同じ様にこのアプリがただの暇つぶしのアプリだと思っているんだろう。

そう思わなかったのは、俺を含めて3人。

『教えて!キビ君』であの世界の単語を調べていく度に、木場さんと高橋のお父さんの顔色が悪くなっていった。


「お父さん?どうしたの?どこか痛いの?」

「木場さんもどうしたんですか?

このアプリに気になる所でも?」

「あ、あぁ・・・」


これ以上酷くなりようも無い程の。

今にも倒れそうなかなり酷い顔色に2人がなった所で、その事に気づいた妹ちゃんが高橋のお父さんに声をかける。

でも高橋のお父さんは、真っ青な顔で口を押さえ震えながら何か呟くだけで、妹ちゃんの声に全く反応しない。

まだ高橋のお父さんに比べてマシな木場さんは、呻くように上条刑事の問いに答えるけど、辛そうな顔で先の言葉を飲み込んだ。


「このアプリは、件のカルト宗教に関係ある物なんですね」

「・・・あぁ・・・そう、だ。関係、ある・・・」

「そうですか・・・」


木場さんの表情から、色々察した上条刑事が辛そうにそう呟く。

そんな2人のやり取りで、兄さん達も察してしまったのだろう。

ハッと驚いた顔が青く染まっていく。


今までは模倣犯の犯行だと思っていたから、ナト達が此処に来ると思われていた。

でも、今のやりとりでカルト宗教の信者の生き残りが犯人の可能性の方が高くなったんだ。

25年前の事件を思い出すと、2週間も経ってしまった今、ナトと高橋が無事か分からない。

そう、兄さん達や上条刑事は思ったんだろう。


でも、もしあの世界が夢じゃなかったら。


ナト達は今、あの世界に居るって事で。

それはつまり、俺の前のサンプル達の様に、『召還』されて直ぐ・・・・・・

いや、魔女達は2人と何らかの方法でコンタクトを取っていたみたいだった。

だから、きっと無事だ。

無事な、はずだ。


「貴弥君、もう1度スマホ預かってもいいかな?」


まさか警察も、『教えて!キビ君』と犯人に関係があるとは全く思っていなかったんだろう。

俺が暇つぶしにダウンロードしたアプリ。

その程度にしか思わず、何も調べていなかった。

でも、俺や木場さん達に態度から、事件との関係性が出てきて、もう1度ちゃんと調べ直す事にしたんだろうな。

だから、上条刑事はスマホをもう1度預かりたいと言ったんだ。

それが分かって俺は、スマホを上条刑事に渡そうとした。

でも、


「きゃあああああああああああああ!!!」

「うわぁああああああああああああああ!!!」

「っ!!?なッ!何処から!?」


その前に辺りに響いた男女複数の悲鳴に驚いて、俺達の手は止まってしまった。


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