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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 2 章 コンティニュー編
236/498

6,コンティニューしますか? Ver.6


「どうも、中村刑事。

こんなに早く中村刑事と会えるとは思ってませんでしたよ。

それと、上条刑事はお久しぶりです」

「お久しぶりです、木場さん」

「あぁ、そうだな。

俺もこんなに早く会うとは思わなかったぞ、木場」


男性の中村刑事は25年前の事件にも関わったベテランの刑事さんで、女性の上条刑事の上司だそうだ。

中村刑事に見覚えがあったのは、中村刑事もほぼ毎年三八野神社にお参りに来ているから。

中村刑事も被害者全員を救えなかった事、今も気にしているんだろうな。


「運悪く今回の事件を担当する者の中に、25年前の矢野高校集団誘拐事件に関わった者が居らず、この共通点に気づくまでこんなにも時間をかけてしまいました。

申し訳ありません」

「いえ・・・いえ、それより。

そもそもあの事件と息子達が遭った事件に関係があるって、どう言う事ですか!?

あの時の犯人達は全員逮捕されたはずでしょ!!?

なんで今更、息子達が・・・・・・」


俺達の方に向き直った中村刑事が深々と頭を下げる。

そんな中村刑事に対して父さんは、そう声を荒げた。

父さんがそうなるのも無理はない。

だって、助けられたのがたったの13人だけと言う最悪な状態だったけど、一応は犯人全員を逮捕したと言う形で25年前の事件は終わったんだ。

それなのに、なんで今になってその事件が関わってくるんだよ!?


「今回の事件の犯人は、あの事件の模倣犯の可能性があります」


スッと顔を上げ、静かな声でそう言う中村刑事。

さっき言われた2つの共通点以外に、もう1つ。

この事件と25年前の事件には似た点があるらしい。


ナトが誘拐されたであろう場所に、まるで入れ替わる様に捨てられた、今も誰なのか全く分からない謎の死体。

そして、高橋と入れ替わるように剣道部の倉庫に残された俺の存在も共通点らしい。

25年前の事件でも被害者達と入れ替わる様に、身元も現代生物学的にも分からない事だらけの沢山の死体が置かれていた。

25年前の事件を再現しているなら、剣道部の倉庫に残された俺も高橋の代わりの『死体』って事になる。


いや、『死体』になるはずだった。


犯人の予想より早く剣道部員の人達が俺を見つけてくれたから何とか助かったけど、あともう少し遅かったらあの場には犯人達の望んだ通りの、『高橋と入れ替わった俺の死体』があるはずだったんだ。

リンチして1番弱ったのが俺だったから死体役に選ばれたのか、それとも俺と違ってナトと高橋が、25年前の事件で比較的重傷者の多かった、『16歳の子供』だったからか。

25年前の犯人達が15、6歳の子供を狙ったんじゃなくて、本当は『16歳の子供』を狙っていた。

と、今回の事件の犯人が考えていたから2人は連れ去られ、俺は『死体』に選ばれた?


そこまではまだ分からないけど、気のせいって思うような細かい所まで入れたら、俺達が遭った事件と25年前の事件は偶然で片付ける事が出来ない位。

関係ないって考える事が不可能、って25年前の事件の関係者に思わせる位、非常に良く似ているらしい。


「何らかの形で、あの事件の被害者や関係者に15か16になる子供が居る事を知り、25年前の事件そっくりな事件を起こした。

だから25年と言う長い時間が経った今、この事件は起きたのです」

「そんな・・・そんな馬鹿げた理由で貴弥は・・・

息子達はこんな目に遭ったんですか!?」

「可能性が非常に高いと言うだけで、まだそうと決まった訳ではありません。

他の可能性もまだあります。

ですので、佐藤さんと貴弥君には我々に協力して貰いたいのです」


木場さんだけじゃなく、刑事さん達もあの夢の話を改めて聞きに来たみたいだ。

今回の事件の犯人が本当に模倣犯かどうか、あの夢で分かるかもしれない、らしい。

どうも俺が最初に話した夢の話の中には公にはなってない上に、関係者の極1部しか知らないはずの『25年前の犯人達の言葉』が混じっていたと言うのだ。


25年前の犯人達が信じていたカルト宗教の神話だか予言だか。

そんなののに入っている単語。


刑事さんも木場さんもあの夢を、意識が朦朧としている俺が犯人達の言葉を聞いて作り上げたモノだと思ってるらしくて。

木場さんや高橋のお父さん達被害者本人とか、事情聴取した刑事さんとか。

そう言う人達じゃないのに、俺の夢にその表に出ていないカルト宗教の話に出てくる単語が出たのなら、それは模倣犯じゃなくて25年前逮捕できなかったカルト宗教の信者の生き残り、の可能性が高くなるそうだ。


「・・・・・・つまり、模倣犯の犯行だと今日。

湊達は犯人達にこの神社に連れてこられるかもしれないんですね?」

「えぇ。ですが、まだ可能性の段階です。

必ず犯人達が来るとは限りません」


でも、今ある情報的に『来ない』と断言する事もできない。

25年前父さん達が見つけた木場さん達と同じにする為に、ナトと高橋は犯人達と一緒に此処に来るかもしれないんだ。

もしくは、『誘拐した学校に1番近い神社』って事で、別の神社に現れるかもしれないけど。


だから、刑事さん達は俺達の協力が必要だと言ったんだ。

俺の家からこの神社を監視したい。

それがもう1つの、刑事さん達からの頼まれ事。


この近所で神社がよく見える建物って、俺の家か林の先にある公民館のどっちかしかない。

だから、俺の家からも神社を監視するそうだ。

勿論公民館からも何人かの警察が神社を監視してる。


「佐藤さん、田中さん。

協力の事もありますが、此処は危険かもしれないんです。

何時、犯人が来るかも分からない。

我々と一緒に家に戻って下さい」

「お断りします。

湊が戻ってくるかも知れないんでしょ?

だったら此処で待たせてください!お願いします!」

「ダメです。貴女方の命だけじゃない。

湊君達の命も今以上の危険にさらす事になる。

貴女方、湊君の家族が此処に居たら、犯人達が近づいてこないかもしれないんです。

お辛いでしょうが、湊君を助ける為なんです。

ここは我々警察に任せてください」

「でもッ!!」

「楓。帰るよ」

「でも湊がッ!」

「楓」


家に帰るよう言う中村刑事に、叔母さんは嫌だと答えた。

此処に俺達が居ても、ナトと高橋を助けようとしてくれてる警察の邪魔にしかならない。

それは叔母さんだって分かってるはず。

でも、ナトが連れてかれたショックで弱りきった叔母さんは、理性で動ける様な余裕、何処にもなくて。

ただ、ナトに早く会いたいって思いだけで動いていた。

そんな叔母さんを、まだ比較的冷静で居られている叔父さんがたしなめる。

叔父さんは泣きそうになりながら頼み込む叔母さんの手を強く握り、叔母さんを気遣う優しさが見て取れる厳しい表情で何度も叔母さんの名前を呼んだ。

そんな叔父さんに名前を呼ばれ、少しだけでも冷静さを取り戻したのかもしれない。

もう1度帰ろうと言う叔父さんの胸に頭を押し付ける様にして、叔母さんは抑える様に泣いて頷いた。


「中村さん!

此方に不信な車が近づいてきています!!」

「ッ!!アレか!もう、犯人達が来たのか!?」


叔母さんも何とか納得してくれて、刑事さんと一緒に家に戻ろうと公園を通り抜けようとしていた、その時。

他の場所にいる刑事さんから連絡があったんだろう。

片耳を押さえた上条刑事が中村刑事に、かなり慌てた様子でそう伝えた。

それを聞いて中村刑事と一緒に、辺りを見回す。

そして見えたのは、公民館の方から走ってくる1台の大きくて白い車。

シートが3列位ありそうな、気絶して倒れこんだ人間2人位、余裕で運べそうな大きさ。

窓からチラッと見えた感じ、何人か乗っているみたいだった。

本当に、ナト達を誘拐した犯人が来たのか?


「違う!あれは、犯人達の車じゃない!!

タクの、蓮也君の家族の車です!」

「木場!お前が呼んだのか!?」

「呼んでません!!

今回の事件と25年の事件に関係性がある事も、今日貴弥君に話を聞きに行く事も、タク達にはまだ言ってない!!

それなのに、何で・・・・・・」


木場さんの言ってる事が本当なら、白い車に乗って居るのは高橋の家族らしい。

中村刑事は木場さんが高橋の家族も呼んだと思ったみたいだけど、木場さんはそれを否定する。

酷く焦った様な、心底驚いた様な。

そんな声音で否定した木場さんの様子は演技っぽさが全然なくて。

本当に木場さんは、高橋の家族に何も伝えてなかったんだなって思えた。


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