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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1 章 体験版編
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21,ルグの異世界講座 2時限目


「寧ろ、魔族や魔物を『悪』と決め付けているこの国の姫達の方が『悪』だと思える」

「え、行き成り何?」


無意識に出ていた言葉にルグは不思議そうに目を白黒させている。

俺はそれに慌てて考え込んでいた事を説明した。


「あぁ、そういう事。

今説明するとサトウがこんがらがると思うから詳しい説明は後でするけど、色々な問題で長い間このローズ国と魔族が多く住む国は仲が悪いんだよ。

国柄、種族柄、相反してるって言うのか・・・

こればかりはどっちの国が悪いってハッキリ言えない事なんだ」

「そっか。

どんな世界でも国同士の仲が悪いってのは変わらないんだな」


宗教、文化、人種、領土、資源。

戦う理由は沢山有る。

けど、異世界でも物語の様に全ての国が、種族が、宗教が、仲良く手を取り合う事は難しいらしい。

そんな暗い考えを壊す様にルグは明るく、


「じゃ、話を戻すな」


と言った。


「後、説明して無いのは冒険者が良く使う魔族の分類と、技の分類だよな。

サトウ、どっちから聞く?」

「そうだなぁ・・・・・・・・・

魔族の分類の方で!」

「了解。

この分類は生物学としては正式に区別されていないんだ。

けど、ローズ国を中心とした人間の冒険者の間では大まかに4つに分けられている。


悪魔や鬼、ヒトと同じ祖先を持つ悪魔系。


俺達ヒト以外の獣から進化した獣人系。


ゴブリンやエルフ、ヒトや悪魔系の祖先に近い小さい猿から進化した妖精系。


植物から進化した植物属系。


依頼でもこの分類は良く使われるからな」


でも、魔族の中にはこの分け方を嫌う奴も居るから言わない様に。


とルグに注意された。

ある意味、この分け方は差別用語の様なものらしい。

ルグはさして気にしていないけど、ルグの幼馴染の1人はこの分類を凄く嫌っているらしく、小声で言っても言った相手を見つけて灰にする程怒って中々止められないそうだ。


うん、普段から言わない様に気をつけよう。


「最後に技の分類。

人間が使う魔法と同じ様に魔物の技もオーガンの場所によって、大きく分けて4つに分けられる。


1つ目は呼吸器官型。

肺の中や肺の近くにオーガンがあるタイプ。

呼吸する事で魔元素を取り込んで、変換した息や音を吐く事で空気中の魔元素と結合させる。


音を使った技を使うグロックとかメテリス、火を口から吐くサラマンダーとかがそうだな」

「・・・・・・・・・あのさ、ルグ。

その呼吸器官型ってのは吐いた息が技に変わるって事だろ。

なら、自分の口の近くで火になったりして危ないんじゃないのか?

それに、ただ呼吸しただけで技になってたら普通に生活出来ないと思うんだけど」

「そう言うのは問題ないぞ。

オーガンで変換した魔元素が空気中の魔元素と結合するにはある一定以上の量が必要なんだ」


変換した魔元素の量が少ないと、作っても直ぐに空気中に溶ける。

と言うか元の空気中に漂っている状態に戻るらしい。

そして、呼吸器官型のオーガンは総じて1度に魔元素を変換する量が少ないそうだ。

だから普通に呼吸しても技にならず、思いっ切り吸って吐いて、大量の変換した魔元素を出す必要がある。


「それに、吐いてから結合するまでに数十cmから数m分の距離と時間が掛かるから、自分が火傷したりする事は殆ど無い」


けど、怪我や病気、相手の魔法に掛かったとかで上手くコントロール出来ず、自分の技で怪我をする事が稀にあるらしい。

後は子供に多いコントロール不足による事故。

それは人間の魔法でも起こる事だ。

実際、俺も何度も自分の魔法で怪我をした。


「次に循環型。

心臓の中や心臓付近にオーガンがあるタイプだ。

食べた物から魔元素を取り込んで、血管を通ってオーガンに持って行って変換した魔元素をまた血液中に戻す。

危険を感じたり興奮状態になった時にだけ、オーガンから特殊なモノが分泌さるんだ。

その特殊なモノが何かまだ詳しくは分かって無いけど、多分液体か電気の様な物だと言われている」


多分、その『特殊なモノ』ってのはホルモンの事なんだろう。

循環型の魔族のオーガンから分泌されたホルモンにより変換された魔元素は元々体を形作っていた魔元素。

つまり細胞と結合して身体能力を上げたり、皮膚を硬くしたり、体を丈夫にしたり、爪や髪を急激に伸ばしたりするらしい。

だけど、


「長く魔元素によって強化されたこの状態が続いたり、何度も継続して使うと命に関わる」


そうだ。

この技の効果から循環型の魔族は戦闘に向いた種族が多いらしいけど、総じて短命。

物心付いた時から戦いに身を費やしていれば、技のせいで俺と同じ位の年には亡くなってしまう者もいる。


俺も、循環型の魔族で無いルグも理解出来ないけど、そういう種族は技を使い続けて、戦い抜いて。

ボロボロになって幼い命を、人生の半分も生きていない命を散らす事が美学らしい。

その逆に長生きする事は醜悪だと考えられているそうだ。


「3つ目、オレ達ケット・シーも属する管器官型。

食べ物、呼吸どちらからも魔元素を取り込めて、オーガンから伸び全身に張り巡らされた細い、細ーい管を通って全身に開いた小さな、小さな、ちぃぃいいいいいさな、穴から変換した魔元素を出すんだ。

ほら、こんな感じ」


そう言ってルグは掌を上に向けた。

よくよく目を凝らすとルグの掌から小さな光の粒が出てきている。


「このキラキラしたのが、変換された魔元素?」

「あぁ、そうだ」


ルグはそう言うものの、部屋にも俺達にもなんの変化も起きていない。

その事を言うとルグはニヤニヤと悪戯を思いついた子供の様な顔をした。


「オレ達ケット・シーの基礎魔法は『道具操縦』。

道具の性能を引き出せる!!」


ルグがそう叫ぶと同時に虎サイズのこの世界のネコに変身した時の様にイヤリングの石が光り、ルグの体がドンドン変わっていく。


この世界のネコになったり、


姿は変わらないけど掌サイズまで小さくなったり、


逆に天井に着きそうな程大きくなったり、


植物になったり、


俺そっくりな姿になったり。


コロコロ変わり続けるルグは最後に、前髪だけ白髪で癖のある猫っ毛が特徴の焦げ茶色の髪と、時々金色になる猫の様に吊気味の大きな黒目の中学生位の少年の姿になって収まった。

服装はサイズだけ人間に合わせたケット・シーの姿の時と同じデザインの物を着ている。

そんなコスプレみたいな姿なのに、某アイドル事務所に居そうな顔とプロポーションをしていた。

猫にすら負ける俺って・・・・・・


「どーだ、凄いだろー?」

「うん、そーだねー。すごーいねー」

「何で棒読み!?反応薄くない!!?」


ルグが胸を張ってドヤ顔してるのにイラッとしたからとか、ベッタベタにベタな展開だからだとか、色々理由は思い浮かぶ。

けど、1番の理由は、


「ケット・シーの姿の方が俺はすっっっごく、良いと思う」


この世界唯二の癒しがなくなるからだ!!

スズメとケット・シーの姿のルグで俺は癒されてんだ。

ビバ!アニマルセラピー!!


「む~、幼馴染達には好評だったのにまさかの不評。

仕方ないし、元に戻るな」

「是非、是非、是非ッ!そうしてくれ」


ルグはケット・シーの姿に戻り、椅子に座り直した。


「今引き出したのはこの耳飾の石、『変化石』の力。

スライムって言う全身が心臓や脳、オーガンとか生きていくのに必要な器官の役割をしている魔物がいるんだけど。


その一種に細胞レベルで別の生き物に完全に変身出来るメタモスライムって言うのがいて、この石はその化石。


この化石を使うと魔元素の結合を組み替えて、大型の魔族が小さくなったり、水中でしか生活できない魔族が陸上でも生活出来る様になったり、今みたいに人間の姿に変身出来る。

本来は1つの化石で1つの姿にしか変われないけど」

「ルグ達ケット・シーの技は、化石の変身能力を引き出し、1つの化石で幾つもの姿になれるって事か?」

「そう!」


何ともお得な魔法だ。

けど、この技にも個人差や個人個人で相性の良い道具が変わってくるらしい。

ルグはこの変化石と1番、相性が良いんだと。


「他にも、火とか水とか竜巻とかを手から出す種族も居るんだ。

本能的と言えばいいのかな?

物後心付く前から、と言うか産まれた時から呼吸するように使い方が解って、意識するだけでコントロール出来るんだ。

だから、どうやって使ってるか聞かないでくれると助かる」

「ちょっと気になるけど、分かった」

「因みに、管器官型が1番多い型なんだ。

で、最後。

1番少ない型で、魔族にいたっては数えられる位にしか居ない、融合型。


角や尻尾、外部に魔元素を吸収する器官があって、心臓や脳、筋肉など本来の機能にオーガンとしての機能が備わったタイプ。


覚えてるか?

オーガンが傷つくと死んでしまう者も居るって言ったの」

「うん、そんなに直に忘れないって。

ちゃんと覚えてる」


オーガンの説明でルグが言っていた、『魔物の種類によっては他の内臓とオーガンが複合している者』と言うのはこの融合型の魔族の事なんだろう。

その事をルグに確認すると、ルグは案の定頷いた。


「融合型は呼吸器官型と正反対に1度に変換出来る魔元素の量が1番多い。

だから総じて、特殊で強力な技を持っている場合が多いんだ。

種族によって違うけど、一定の周期毎に角や尻尾は生え変わる」

「へぇ、なるほど」

「それと、コレが1番重要。

融合型の魔元素を吸収する器官はとんでもなく敏感で色んな意味での弱点の場合が多い。

無闇矢鱈に、いや相手の許可なく触るのはセクハラだからな!!

相手の心を傷つける最低な行為!!分かったか!?」

「イ、イエッサー」


この世界のネコに化けた時以上の迫力と、反論を許さない威圧感を出しながら何度も何度も念を押す様にルグは言った。

もしかして、知り合いの融合型の魔族が酷い被害にあった事があるんだろうか?


「と、言う事で、ギルドの依頼の中には、」

「『魔物のオーガンの回収依頼もあるから覚えておけ』って事だろ?」

「そうそう!

どの魔物がどの場所にオーガンがあるかは必要な時に教えるからな!」

「OK。ありがとうな、ルグ」


喋り続けて乾いた喉を潤す様に、冷め切ったホットハニージンジャーミルクを飲みながらルグは、


「どういたしまして」


と言った。

俺は牛乳を温め直す為に竈の前に立ち、ルグは次にこの世界の国について説明してくれる地図を取りに行った。


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