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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1.5 章 勇者編
206/498

66,裏切り勇者と水の宝 15箱目


「おーい!!キャラー、シアー!!!」

「・・・あっ。おーい!」

「皆様、こちらでーす!!」


水のマナの外に顔を出すと、入り口からだいぶ離れた左側の壁沿いにキャラとシアが居た。

俺が声を掛けると、2人も俺達に気づいて手を大きく振って返事を返してくれる。

そのまま水のマナを泳いで2人の近くへ。


「お帰りー」

「おう、ただいま。それで見つけた石碑ってのは?」

「これです、赤の勇者様」

「この柱みたいなの?」

「はい」


他の地面より少し柔らかい陸に上がって近くを見回せば、壁に小さな穴が開いていた。

いままで俺達が通ってきた穴とは違って、入ってしばらくしたら行き止まりになっている。


その入り口の側に11本。

四角く切り出された短い石の柱の様な物が規則的に立っていた。

中には半分位で折れていたり、殆ど形が残っていないものもある。

シアの話だとこのボロボロの石の柱が石碑らしい。


「石の劣化具合からして、おそらく作られたのは5、6000年は前だと思います。

線が複雑に組み合わさっているので、おそらく絵ではなく文字だと思うですが、その頃の使われていた文字の中にここに彫られた文字に似たようなものはありません」

「なら、4代目勇者か5代目勇者の世界の文字かもしれないって事か」

「それなら、なおさら鳥かごを開けるヒントの可能性も高いじゃん!!」


田中の言うとおり、石碑に彫られた文字がこの世界の文字じゃないなら、歴代勇者達の世界の文字の可能性が高い。

あの鳥かごが7代目勇者じゃなくてレーヤが用意した物なら、4代目勇者や5代目勇者も何かヒントを残してくれてるかもしれないんだ。

早速読んでみよう!!


「それで、書いてあるのはー・・・

えーと、なになに・・・・・・・・・

・・・・・・・・・おい、田中。これって・・・」

「・・・どう見ても日本語で彫られた人の名前だな」


その石の柱の中で1番状態が良い物を見る。

そこに書かれていたのは、人の名前。

『小松 翔平』って完全に漢字で書かれた人の名前だった。


「『高山 茂』・・・『伊藤 久美子』・・・」

「こっちには『奥原 学』って書いてあるぞ!」


田中と手分けして他の比較的無事な方の石碑を調べれば、全部に人の名前が書かれていた。


漢字で書かれてるけどキラキラネームみたいな、どう読むのか分からない。

異世界っぽさがある苗字や名前じゃなくて、どの名前も俺達の世界で普通にありそうなものばかりだ。

クラスに1人って言うには少しネーミングセンスが古い気がするけど、居てもおかしくない。

そんな俺達の世界じゃありふれた苗字と名前。


それがこの異世界の物に大量に書かれてるから、何とも言えない違和感を感じるんだ。

ここに書かれてるのは、あの鳥かごを開けるためのヒントなんかじゃない。

絶対ここにあっちゃいけない、異物だ。

この石碑からはそう言うものをヒシヒシと感じる。


「なぁ。

まさかそんな事無いと思いたいけど、これって、墓、なのか?」

「たぶん、な。

石の形的にも、名前の彫られ方的にも、俺には墓にしかみえない」

「・・・・・・やっぱ、墓なのかぁ・・・」


できれば否定ほしかったんだけどなぁ。

田中もこの石碑だって言われた石の柱が、墓にしか見えないみたいだ。

長い間誰も手入れしなかった、古くて小さくてシンプルな墓。

埋葬の仕方や墓の形が違うルチア達はピンっとこないみたいだけど、俺と田中はにここが墓地なんだと嫌でも分かってしまった。


「えっと・・・

勇者君達の世界の言葉で書かれたお墓があるって事は、これは歴代勇者達のお墓って事かな?」

「それは無いだろ。

今まで召喚された勇者達の数と墓の数が合わない。

墓の方が数が多いだろ」

「確かにそうですね。

それに、このお墓が作られたと思われる時代の勇者様のお名前とも違います。

4代目様は武術の大切さをお伝えになったドージー様ですし、ギルドをお作りになった5代目様のお名前はキバタロー様です」

「勿論、それ以前に召還に応じてくださった勇者様方の中にも、『コマツ ショウヘイ』や『タカヤマ シゲル』と言う名前の方はいません。

その事からも、この場所に眠られてる方は勇者様方ではないのでしょう」


キャラはあぁ言ったけど、墓の数的に歴代勇者達の墓って事は無いだろう。

シアとルチアも歴代勇者達の中に墓に彫られていた名前の奴は居ないって言うし。

一体この墓で寝てる奴等は誰なんだ?

それに、この人達を弔った人はなんでこんな危険で、手入れが大変そうな場所に墓を作った?

本当、分からない事だらけだ。


「・・・キャラ、シア。この穴の中は調べたか?」

「はい、もう調べてあります」

「あっ!そうだった!!

シアちゃん、確かこの穴の中の壁にも、このお墓と同じ様な文字が彫られた場所が幾つかあったよね?」

「えぇ、えぇ!!ありました!!」


考え込むように唸りながら聞いた田中の質問に、ハッとしてキャラとシアが叫ぶ。

どうやら、意味が分からなくても感じる場違いすぎる墓のインパクトで、2人は完全に穴の中の文字の事を忘れていたみたいだ。

穴の中にも何か書いてあるなら、この墓で眠ってる人達やその墓を作った人はしばらくの間この穴の中で暮らしていたのかもしれない。


どうして勇者以外の異世界人がこの世界に居たのかってナゾは残るけど、たぶんこの人達は『水のオーブ』を探して此処まで来たんだ。

でもダゴンに壊滅寸前まで追い詰められて、ここに隠れ住みながら地上に出るチャンスを狙っていた。

元々この人達が何人居たかは分からない。

分からない、けど。

でも、そのチャンスを狙っている間に11人も死んでしまった。

その考えを皆に言うと、田中も同じ考えにたどり着いたみたいだ。


「この人達に何があったか、中の文字を読めば分かるんだよね!?」

「いや、ダメかもしれないな。

全部ここと同じ文字が彫られていたなら、ただ数を数えていただけだ」


覗いた入り口近くの壁には大量の『正』の字。

最初の内は大きさも線の歪み具合もバラバラで、素人目に見ても何人かがこの『正』の字を書いていた事が分かった。

でも最後の1列辺りはかなり綺麗な『正』の字一種類だけ。

この頃にはもう、壁に『正』の字を彫る事が出来たのが1人だけになっちまったって事だよな。


「単純に考えれば、ここに居た日数て事だろうな」

「20・・・21・・・23・・・・・・

『正』25個と3本線。だから、えーと・・・」

「大体2ヶ月ちょい位は、誰か、1人になっても居たって事だ」

「そんなに・・・

かなり長い間、こんな所で暮らしていたのですね。

最後まで生き残った方は無事外に出られたのでしょうか?」

「だと、良いんだけどな・・・」


墓って言う明確な証拠が残ってないんだ。

最後の1人が無事生き延びれたのか、それともダゴンに食われたのか。

もしくはこの穴の中で孤独な死を迎えたのかもしれない。

でも、少なくても5000年は経った今、死体何って残っちゃいないんだ。

この穴の中にこれ以上の何かが無ければ、今からナゾだらけのこの人達について調べるのは難しいだろうな。


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