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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1.5 章 勇者編
202/498

62,裏切り勇者と水の宝 11箱目


「それで、俺が水を入れたのは左が6回、右が4回。

合わせればちょうど10回だ。田中は?」

「確か・・・大体左右合わせて20回位だったと思う。

数えて入れてた訳じゃないから、どっちを何回動かしたかは覚えてないな。

でも、30はいってないはずだ」

「なら右と左、合わせて30回動かしたら天井が落ちてくるのか?

どっちか15回動かしたら落ちるとかだったら、もっと早くに落ちてきてたはずだし」

「両方合わせて上限がたったの30回か。

思ってたよりすくないね」

「だな」


キャラの言う通り、30回は少ないって。

せめて100回は好きに動かせないと、俺みたいなのはクリアできないぞ。


「あれ?

像の向き天井が落ちてくる前と変わってないかい?」

「あ、本当ですね。

確かコトリの像は右を向いていたはずです」

「・・・像の向き、俺が来た時の位置に戻ってるな」

「本当か、田中?」

「あぁ。

一応、最初の向きは全部メモしてあるからな」


俺が元の世界から持ってきた新品のノート。

この世界に来て結構直ぐの頃、シャーペンと一緒にボストンバッグに入れっぱなしにしていたのを、何かメモするものが欲しいって言った田中に渡したんだ。

俺はしばらく使う予定が無かったから渡したけど、それでもやっぱ田中がちゃんと使ってくれてると、ちょっと嬉しくなる。


「ほら、一緒だろ」

「えーと・・・・・・確かにぃ・・・同じ向きだな」

「はい、同じ向きですね」


そのノートには読みやすい綺麗な字と丸と矢印で、像の事が細かく書かれていた。

そのノートと像をなん度も見比べて、念の為にルチアと一緒に像の向きを確認する。


コトリ、ヒツジ、ヘビがネコの像の方を向いていて、


コウモリはどっちも左。


ヒツジはサルとネコの像と同じ入り口の方を向いている。


どれも田中が書いたノートの向きと完全に一緒だ。

俺達3人全員が同じ向きだって言ったんだし、全部リセットされたって思っていいだろう。


「バケツの方はどうだ?

全部最初の状態に戻っているなら、バケツも空になっていると思うんだけど・・・・・・」

「はい、青の勇者様の仰るってる通りです。

バケツの水は全部零れています」

「こっちも全部零れてるよー」

「じゃあ、やっぱ、トラップが発動すると全部元通りになるんだな」


俺達3人がノートを見ながら像を確認している間、キャラとシアがくぼみの方を調べていてくれた。

キャラが左で、シアが右。

その2人と田中の話だと、バケツの方も最初の状態に戻ってるみたいだ。


「マジで適当に動かして運良く、なんってさせない気なんだな。

必死に頭捻れってか。

マジで無駄に面倒なもん作ったな、7代目勇者は」

「なに言ってんだ、高橋。

『水のオーブ』を取られたくない7代目が、誰でも簡単に解ける仕掛けを作るはず無いだろ。

簡単に解ける仕掛けだったら、それこそ仕掛けを作るだけ無駄な努力だ」

「そりゃあー、分かってるけどさぁ。

文句位言わせてくれよー」


7代目勇者の立場から考えれば、クリアするのが難しい問題作るだろうけど。

解く身からしたら文句位は言いたい。

無駄に頭使わせるなよ!って。


「まぁ、勇者君の気持ちは分からないでもないけどね。

今更3000年前の人に文句を言っても仕方ないよ」

「それも分かってるから、口には出さないでくれよ、キャラ」

「ハハ。ごめん、ごめん。

でも、片方15回位で解けるんだろ?

意外と簡単に解けるかも知れないじゃないか。

ふて腐れずに頑張ろう、勇者君」

「15でも結構手数多いと思うけどな。

まぁ、俺なりに出来るだけやるけど」


キャラはそこまで難しくないって言うけど、パズルが苦手な俺からしたら十分難しいんだって。

パズルが得意なヤツからしたら、30回以内に正解するのって楽な方なのか?

俺からしたらありえない事だけど。

それでも先に進まなきゃいけないし、何時までもグダグダ言ってないで俺なりに頑張るか。

そう思って俺は、ちょっとだけ折れかけた心を立て直した。


「まずは正解の方向を考えようぜ」

「そうですね。

勇者様の言う通り、正解が分かれば動かす順番も分かりやすいと思います」

「それで、その正解のヒントがあのサルの像に彫られていた言葉なんだよね?

『沈み行く無謀な挑戦者は入口を見つけ、臆病な知恵ある者達は馬鹿を見る』って、一体どう言う意味なんだい?」

「単純に考えれば、全部サルの方見るようにすれば良いって事だよな?」


サルの像の台に彫られていた文字を思い出して、俺は思った事を口に出した。

頭脳担当のルチアと田中の様子を見ると、たぶん間違ってるとは思う。

けど、俺は他の像もサルの方を向かせれば入口が開くと思ったんだ。


「え?どうしてそう思うのですか、赤の勇者様?」

「んー、とな。

まずは、サルの像は他の像より低いだろ?

それで動かないネコの像はサルの像を見てる。

で、サルの像は俺達が入ってきた入口の方を見てるから、所々ヒントに近いなって思ってさ」

「いや、像の高さやネコの像の事は納得できるけど、ここから見たらあの『入口』は『出口』だろ?」

「でもさ、田中。小屋への『入口』でもあるだろ?」


確かに、サルの像から見たら俺達が入ってきた『入口』は、この広い空間から出る唯一の『出口』だ。

でも、あの先には洞窟の入口でもある小屋がある。

だから、あの『出口』は『小屋に入る為の入口』でもあるんだ。

そう考えると、『入り口を見つけ』って部分は合ってると思う。


「なるほど。そう考えれば、確かにその通りですね。

流石、勇者様です!

私ではそこに気づきませんでした!!」

「そうか?まぁ、とりあえず。

試しに全部サルの像の方向かせてみようぜ。

どうやったら出来るか分かんねぇけど!」

「はぁ・・・そこは人任せか?」

「だから言ってるじゃん。俺はパズル苦手なの!

バケツに水入れるのは任せてくれればいいからさ。

あー、つまりあれだ。

テキザイテキショだよ、テキザイテキショ」


答えが分からないと言いながら田中を見ると、呆れた顔をされた。

呆れられようと、苦手なものを直ぐ克服するのは勇者でも無理なんだよ!

問題の答えが一瞬で分かるスキルが作れるまでは諦めてくれ。


「そうですね。

赤の勇者様は魔物退治で1番頑張っていただきましたから、この仕掛けは私達で頑張りましょう!!」

「そう言う事だから、汚名返上チャンスふいにしちゃダメだよ青い勇者君!」

「・・・・・・さっきの事はもういいだろ。

それより、仕掛けを解く方に集中してくれ」


像の方を見る振りしてキャラから目を反らす田中。

田中なりに『ウォーター』が暴走した事を気にしてるみたいだ。


「左の像は全部右、右の像は全部左に向かせればいいんだな。

なら、最後に2番と5番にバケツを置いて、一気に向かせればいいって事だから・・・

えーと・・・まずは・・・・・・

3つ全部が上か下に向く様に動かして・・・・・・」

「でしたら、右側の像はここかここを動かしてみてはどうでしょうか?」

「あぁ、あるほど。だと次は・・・・・・」


直ぐに像を動かさず、ノートに色々書きながら話し合うルチアと田中。

早速頭脳担当組が本領を発揮しだした。

あの調子なら直ぐにでも答えが出るかもな。



挿絵(By みてみん)




一応、像の仕掛けの答えは、みてみんに投稿してあります。

興味のある方は、ぜひ見てください。


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