表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1.5 章 勇者編
197/498

57,裏切り勇者と水の宝 6箱目


「じゃあ、話戻すけど。

ベッセル湖が伝説の宝の力で出きってるって、どう言うことなんだ?」

「そう言えば。

ベッセル湖の看板に、『ベルエール山から地下を通って大量のマナが流れ込みベッセル湖が出来る』って書いてあったな」

「え?そんな事、書いてあったか?」

「書いてありましたよ、勇者様。

湖の直ぐ側の、湖が現れる期間が書かれた看板の上の方に」

「そうだっけ?丸太で出来た看板が有ったのは覚えてるんだけどなー」


完全に何も無いように見える透明過ぎる水のマナとか、その水のマナの中を飛ぶ様に泳ぐ魚とか、ダゴンが襲って来た事とか。

そう言うのが印象に残り過ぎて、看板の内容何って覚えていない。

こう言うところは流石頭脳担当って言うべきか。

俺と同じ様に覚えていなかったキャラと違って、ルチアも田中も看板の内容まで覚えていた。


「えー、って事は、だ。

ベルエール山の地下に隠されてて、7代目のトラップも有るのに、伝説の宝から水のマナが流れ出してるって事だよな。

伝説の宝って誰かが使わなくても、ずっと魔法やスキルが使われ続けるアイテムなのか?」

「えっと、ですね。

元々『夜空の実』は、高純度のマナを集めて作られたアイテムだったらしく。

伝説の宝は『夜空の実』に使われていた各属性のマナを、一切他の属性を混ぜないように分けた物なのだそうです」

「本当ですか!?そんな物が・・・・・・

確かにそれは、『異世界のモノが渡してきた伝説の宝』と言って間違いない代物ですね」


ルチアの反応を見ると、伝説の宝はこの世界では作り出せない物みたいだ。

まぁ、実際にどっかの世界から持ってきたものみたいだしな。


「じゃあ、この国にあるのは水属性の伝説の宝って事か」

「はい。その通りです、赤の勇者様。

このローズ国に有るのが水のマナの結晶、『水のオーブ』なのです。

それで、あぁ!そうです。

『水のオーブ』は魔法やスキルが勝手に使われているわけでは有りません」

「じゃあなんで、ベッセル湖は出来るんだ?」

「まず、ローズ国で1番水のマナがある場所がベルエール山なのです。

そして元々異世界から持たされた物である以上、『水のオーブ』に何かあっても直す事ができません」


そりゃそうだ。

同じ様にマナが有って魔法が有る世界でも、異世界は異世界。

その世界の知識を持ったその世界の人間が居ないのに、異世界から持ってきた物の修理が出来るとは思えない。


「ですので、『水のオーブ』の劣化を抑える為にレーヤ様達は、水のマナが溢れるベルエール山の地下に『水のオーブ』を安置しました。

そして水のマナをまた『水のオーブ』に溜める為、『水のオーブ』に溜まった水のマナが一定以上無くなった時、ベルエール山の地下に戻るようにしたのです」

「うん。

だから、それとベッセル湖が出来る事とどんな関係があるんだ?」

「そうだな・・・・・・

いいか、高橋、キャラ。

『水のオーブ』だって物な以上、入れられるモノの上限はあるはずだ」


御者席ではキャラも不思議そうな顔をしてたんだろうな。

そんな俺達に対して、どう言おうかかなり悩んでいるっぽいシアの代わり、田中が少し考えてからそう言い出した。


「コップに水を注ぎ続けたら、その内零れだすだろ?

同じ様に、『水のオーブ』に入りきらなかった水のマナも、何処かに流れ出す」

「その流れ出した結果が、ベッセル湖って事?」

「そうだ。

1年に1度しかベッセル湖が現れないのは、流しのオーバーフローみたいな感じなんだろう。

上の方に穴が開いていて、『水のオーブ』に入りきらなかった水のマナがそこまで溜まったら流れ出す。

それか、『水のオーブ』がある場所に何か仕掛けがあって、普段されてる栓が1年に1度外れるようになっているか」

「どちらかと言えば、栓がされていると言うのが正しいです、青の勇者様。

ただ、仕掛けが施されている訳ではなく、ダゴンと言う魔物が原因なのですが・・・・・・」

「あー・・・

やっぱ、伝説の宝の所にも居るんだな、ダゴン」


ベッセル湖に居たんだから、その水源のベルエール山にも居るよな。

てか、ベッセル湖ができる時期以外そこら辺に居なかったら、普段ダゴンは何処に居るんだって話だ。


で、そのダゴンって言うのは、『図鑑』のアプリ以外全く情報が無かった、イルカと亀が混じったみたいな魔物の事だ。

ゲームに出てくるような半漁人のダゴンと違って、この世界のダゴンは亀の甲羅っぽいものを背負ったイルカの姿をしている。

大きさは大人のイルカ位で、大きく鋭い歯が何重にもビッシリ並んだ大きい口に、研ぎ澄まされた剣のようなヒレ。

何処にも目が無いからか、コウモリみたいに超音波で周りを調べてるみたいで、不愉快過ぎる甲高い機械音みたいな鳴き声をずっと出していた。


ベッセル湖での修行中襲ってきた、暗黒騎士や美女並みの強敵だから、かなり印象に残っている。

たぶん、今まで戦った魔物の中じゃ、間違いなく1番強い。

湖の中だと弾丸みたいにメッチャ早いし、少しでも血が出たらその匂いを頼ってどこまでも追ってくる。

陸の上だったらそんなに動けないだろうって思ってたら、腹這いになってオリンピックに出れるようなスケートの選手もビックリなスピードで滑ってくるし。

そのスピードで迫ってくるヒレに当たってたら、俺達の体はスッパリ綺麗に別れてだろうな。

実際、湖の中にあった俺の2、3倍はありそうなデッカイ岩が真っ二つにされたし。


「そのダゴンが栓をしてるんだよな。

ベッセル湖が現れる時以外、水のマナが流れ出る場所で冬眠っぽい事してるのか?

あ、違うか。

栓をしてるのはダゴンの卵なんだよな?」

「はい、そうです。流石、赤の勇者様。

資料の少ない、ダゴンの生態について詳しいのですね」

「いや、『図鑑』に書いてあったんだよ。

ダゴンの卵が孵るには大量の水のマナが必要だって。

なぁ、田中?」

「あぁ」


タバコ野郎と同じでルチアでも知らない生き物だったから、ダメ元で撮影したんだ。

そしたら、『図鑑』のアプリにはちゃんと載っていた。

それで分かった事は、ダゴンがシーラーカンスやカブトガニみたいに何億年もの長い間、殆ど姿が変わっていないって事と、肉食よりの雑食で共食いが良く起きるって事。

そして卵が孵るには約1年間、大量の水のマナを浴び続けないといけないって事だ。


「『図鑑』に書かれてたのはそれだけだから、それとベッセル湖で戦った時の様子以外、ダゴンの事は全然分からないぞ」

「そうなのですか?

では、勇者様方がベッセル湖で戦ったダゴンが、孵ったばかりの赤ん坊だったという事は気づきましたか?」

「マジかよ!あんなにデカクて強かったのに!?

アレで卵から孵ったばっかって、嘘だろ・・・」

「いえ、嘘ではありません。

成獣のダゴンはベッセル湖には来ないはずです」


これは歴代勇者達が自分の前の勇者達が残した情報を元に、少しずつ気づいていった事らしいんだけど。

卵から孵ったダゴンは、卵が割れて流れ出した水のマナに流されてベッセル湖にやってくるらしい。

そこで共食いをしながら強くなって、生まれ故郷のベルエール山を目指す。

無事ベルエール山まで戻ってこれた強い数十匹だけが、大人の群れに迎え入れられるそうだ。


「ダゴンは少なくとも数百の卵を1度に産みます。

その中で生き残り群れに入れるのは、4,50匹だけ。

群れの中でも共食いは頻繁に起き、3年間無事生き残り成獣になれるのは、たった10匹程度だと言われています」

「つまり、ボク達がこれから戦う事になるのは、その大人のダゴンなんだね」

「はい。

『水のオーブ』があるのは、ダゴン達の縄張りの中心。

ダゴン達にとっても卵を産むための重要な場所です。

必ず、襲ってくるでしょう」

「ベッセル湖の時も結構キツかったのに、それ以上に強い群れと戦う事が決まってるのか。

とんでもなく、ハードな試練だぜ」


これで7代目勇者のトラップもあるなら、ハードなんってもんじゃない。

ゲームだったらベリーハードとかルナティックとか、鬼畜レベルの最高難易度位には厳しいぞ。

この位クリアできなきゃ、世界を救う勇者じゃないって事か?

本当、クリアしがいのある高い壁を用意してくれたもんだぜ、レーヤの奴は。

まぁ、どんな試練だって絶対クリアしてやるけどな!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ