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サンプル・ヒーロー  作者: ヨモギノコ
第 1.5 章 勇者編
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52,裏切り勇者と水の宝 1箱目


 サマースノー村での戦いから約5ヶ月。

あの戦いの後、俺は2週間近く目を覚まさなかったらしい。

俺からしたら目を瞑って次の瞬間にはローズ国城の自室に戻っていて、2週間もの時間が経っていた感じだ。

あの時は本当に驚いたし、その後がまた大変だった。


ルチア達がまた大泣きして慰めるのが大変だったとか、


田中やキャラが想像以上に怒ってきてメッチャいたたまれなくなったとか、


王様が自分の事の様に悲しんでくれたり喜んでくれて、その結果興奮しすぎて倒れたりとか。


そう言うのもあるけど、1番大変だったのはやっぱリハビリだったな。

ずっと眠りっぱなしで体が鈍っているし、自分が思っていた以上に重症だったみたいで、ほんの1ヶ月半前まで毎日がリハビリ地獄。

そのお陰で完全に傷が治ったし、パワーアップも出来たからいいけど。


「で、先代勇者の用ってなんだろうな?」

「それが、私達も詳しい内容を教えていただけていないのです。

ただ、至急教会に来てくれとしか言われませんでした」

「アガサさんの時みたいな、知らない奴に聞かれたら困るとか、出来るだけ大事にしたくない事件が起きたとかか?」

「恐らくは・・・」


昨日、ウイミィよりも更に遠いガリカから帰って来たばかりだって言うのに、ギルドも開いていないような朝早くからアーサーベルの教会に呼び出された。

ちょうど昨日、ガリカで賢者ルチアの試練をクリアして、ワープ魔法の『移転の翼』ってのを手に入れたんだ。


使うと大小2対の翼が描かれた魔方陣が足元に現れて、その魔方陣に乗っている奴全員を1度行った事がある場所にワープさせられるって魔法。

でも『行った事が無い場所にはワープできない』って条件以外にも色々条件があるみたいで、サマースノー村みたいに水晶に覆われた村とかは水晶の中にワープできなかった。

行けたのはその手前まで。

後は、基本ワープポイントは各町や村に1個だけってのも条件の1つか。


それで昨日のかなり遅い夕方位に賢者ルチアの試練をクリアして、即効『移転の翼』を使って。

色々寄り道しつつ、アーサーベルに戻ってきたんだ。

試練をクリアしたばっかでクタクタだから、今日は1日ゆっくり休もうって思ってたのに・・・・・・

それを邪魔された。

長く戦い続けるにはちゃんと休む事も大事なんだって事、先代勇者は分かってないのか?

それとも俺達の貴重な休みを奪う価値があるほどの、ビッグニュースでも掴んだのかよ。


「水晶化が解けそうとか、チボリ国に行けそうとかじゃないんだろ?」

「はい。残念ですが、それはまだ無理です」


今1番、俺達が出来るだけ早く聞きたいニュースって言えば、水晶化や国境の結界の事だよな。


サマースノー村がディスカバリー山脈に近い場所にあったからか。

何とか壊せた『レジスタンス』の飛行船は、山脈を越えてチボリ国まで逃げてしまったらしい。

シャル達や兵士達がガンバって飛行船を追いかけたけど、国境手前でギブアップ。

たぶんローズ国にいる奴を逃がさない為なんだと思うけど、ミル達が水晶化の魔法を使って結界を補強したみたいで、国境に張られた結界は誰も壊せない状態になっていた。

実際俺も動けるようになってから見に行ってみたけど、スタリナ村の事件で馬車の乗換え所に来た時と違って、マジで下半分位が水晶に覆われてたんだ。


水晶漬けになった村とは違って水晶に覆われているのは下半分だけだし、結界自体も壊れて落ち続ける飛行船でも結構高い所にいたならギリギリ通り過ぎれる位の高さしかない。

だから、本調子に戻ってガンバレば、何とかチボリ国に行けるとは思う。

まぁ、その時の俺は、ようやく1人で歩ける様になったって位にしか回復していなかったから、チボリ国に乗り込むのは諦めたんだけど。


だから、ミルを連れ去った『レジスタンス』の奴等を追いかけられないし、水晶化を直させる事もできていない。


唯一の救いって言えばいいのか、飛行船を壊せたお陰で水晶化の被害が5ヶ月経った今でもピタリと止まったままだ。

でもこんだけ時間が経っちまったから、そろそろ飛行船の修理が終わって水晶化作戦がまた始まりそうで少し不安だけどな。


「水晶化や国境の結界の解除の研究は、俺とルチアも一緒に進めてるんだけどな。

わりぃ。結果はこの通りだ」

「でもミナト様は凄いよ!

その水晶化の魔法の正体を突き止めたんですから!

1歩前進じゃないですか!」


悔しそうに呟いて謝る田中に向かって、あの事件の後一緒に行動するようになったラムがそう言う。

ラムの言うとおり、ミルが言った『幸福な牢獄』って魔法の名前をヒントにルチアと田中が調べてくれたお陰で、水晶化の魔法の事が分かった。


自分の周りのマナを使って発動する、この世界の魔法とは違う。

魔族や魔物が使う『技』に近い、自分の体の中にあるマナを大量に使って発動する魔法。

つまり、激しい運動をしているのと同じ位のエネルギーを使って発動する魔法何だけど。

そんな魔法がある異世界から召喚された6代目勇者の子孫が、この世界風にアレンジした『6代魔法』って魔法の1つが『幸福な牢獄』なんだ。


効果はサマースノー村で見たとおり。

眠らせて時間を止める。


作ったのは3000年前にチボリ国が召喚した7代目勇者の最初の仲間、コーガ・クー・アリーアって奴だ。

当時のチボリ国の王子で、7代目勇者とは何でも話せる親友同士だったらしい。

でも、最終的に7代目勇者に裏切られた。


「まさか、魔王の手下になった勇者がいた何ってな」

「信じられない事だけどね。

でも、人間を裏切ったのは間違いないと思うよ。

『いい子にしてないと悪い勇者のコラルに食べられる』

って話がある位に、悪い意味で有名なんだよ。

7代目勇者、コラル・リーフは」


7代目勇者は人々の希望の象徴の勇者であるにも関わらず、最低最悪な事に人間を裏切って魔王側に着いた。


『裏切りの勇者』だ。


親友までバッサリ裏切って、魔王の手先に落ちて。

守るべき人々を苦しめ続けた。


自分達が召喚した親友のやった事に、深く悲しみ悔やんだコーガ王子。

そのコーガ王子が心を鬼にして辛い覚悟を固めて作ったのが、7代目勇者を捕まえる為の魔法、『幸福の牢獄』なんだ。

自分達を酷く裏切ったのに、7代目勇者を殺す為の魔法を作らず。

幸せな夢を見た時間で止める魔法を作ったのは、たとえ裏切られたとしても、コーガ王子が7代目勇者の事を大切に思ってたなによりの証拠なんだろうな。


「本来『幸福な牢獄』は、異世界から召喚された勇者を捕まえる為だけに作られた。

それだけの為に存在する魔法だった。

だから勇者の俺達じゃ絶対壊せないし、逆に勇者の力を吸って成長するように出来ている」

「それに、水晶に閉じ込めた7代目を誰かが外に出す事が無いよう、この世界の生き物でも壊せない様にあの水晶は作られています。

あの水晶を消す方法はただ1つ。

コーガ・クー・アリーアが作った『幸福な牢獄』を解除する為だけの魔法、『約束の目覚め』だけです」


裏切った後の7代目勇者は、後世に残したくないと当時の人達に思わせる様な事をしまくったんだろう。

7代目勇者がやった事がやった事だけに、7代目勇者に関する文献は殆ど無い。


詳しく残ってるのは7代目勇者の名前と、7代目勇者が何時も使っていたサイン。

それと、人間を裏切ったって事実だけ。


それでも、ルチア達は頑張ってあの水晶の魔法の正体を見つけ出したんだ。

その結果、そもそも俺達じゃどうしようもないって事と、『約束の目覚め』を覚える事がルチアや田中でも無理だって事が分かっちまったけど。


『幸福な牢獄』も『約束の目覚め』も、元々が6代目勇者の世界の魔法だったからか、単純な魔法の才能でどうにかなる物じゃないらしい。

コーガ王子と同じ先祖がえりした6代目勇者の子孫じゃないと、どう頑張っても覚える事も使う事も無理なんだ。


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