106,治癒の鳥を探して 4羽目
実際シャンディの森に行くのは明日にして、荷物を置いた俺達はもう1度1階の酒場に来ていた。
馬車の中で食べた弁当だけじゃ足りなかったルグが何か食べたいって言ったのと、まだ居るだろう冒険者達に盗賊のアジトの詳しい場所や、他に目印になる物が森に無いか聞く為だ。
シャンディの森は膨大だってルグが言っていたし、何か目印になる様な物が無いと森の中で迷子になってしまう。
森で迷子になって一生出れないと言うのは嫌過ぎるだろ?
「シャンディの森で目印になってる物?
そう言うのはギルドで作って、この町の店なら何処でも売ってる森周辺の地図を買った方がいいぞ?
冒険者達の依頼書を元に製作されたかなり正確で詳しい地図だ」
「本気で森に入るならその地図と特殊なコンパスは買っておきなさい。
シャンディの森では普通のコンパスは役に立たないからね」
「そうなんですか?
教えて頂きありがとうございます!」
近くの席に座っていた居たパーティーにそう教えられた俺は、地図とコンパスを買いに行く事にした。
酒場や宿屋以外の商店等は後少しで閉ってしまうらしい。
明日は店が開くよりも早い時間に出発する予定だから、今しか買い物が出来る時間が無いんだ。
「俺、買い物してくるから、2人は待ってて」
「分かった。気をつけてね、サトウ君」
けれど、未だにテーブルいっぱいに載せられたご飯を食べるルグを1人にさせる訳にもいかない。
だから、買い物位なら1人で大丈夫だろうと俺はそう2人に声を掛けた。
口いっぱいに料理を詰め込みながら頷くルグと小さく手を振るユマさん。
そんな2人を置いて俺は酒場を後にした。
「おい、そこの黒髪」
「はい?俺でうわぁ!?」
『そこの黒髪』と言われ近くに俺以外該当する人物が居ない事を確認し、俺は呼び止めた人物の方に振り返った。
その瞬間、何故か変な臭いのタバコの煙を浴びせられる。
「ゲホ、ゲホ・・・・・・ゲホ・・・・・・
な、何するんですか!?」
「別にー?」
タバコの煙を浴びせてきたのは少し前に立ち去ったはずのクエイさんだった。
クエイさんは店の壁に背を預け気だるそうに、あと少しで終わりそうな短いタバコを吹かしている。
「おい、仮にも医者がタバコを吸ってその煙を人に浴びせるとは、何と言う事だ!」
と、言う思いを目に宿し俺はクエイさんを睨む。
クエイさんは俺の睨む攻撃に一切怯まず、新しいタバコをポケットから取り出しながら茶化す様にそう言った。
「別にって・・・・・・」
「あー・・・・・・・・・じゃあ、アレだ。
『何があっても後悔するなよ』って言ったからだ」
「まだ、森に入っていません」
「入る準備をしているなら同じだ」
全く悪びる様子の無い、人を小馬鹿にした様に笑うクエイさん。
俺が反論すると面白そうにクックッと喉の奥で笑い、もう1度煙を浴びせてくる。
この人、絶対、人をおちょくって楽しんでる!!
「そーですか!
俺、急いでるのでこれで失礼します!」
「そーか、そーか。なら、さっさっと行けよ」
自分で呼び止めておいて何を言うのか、この人は。
頭にきた俺は早足でその場を去ろうとして、ふとその場で足を止める。
そのまま振り返って不思議そうに俺を見るクエイさんにある事を聞いた。
「・・・・・・・・・病気を吸い取れるカラドリウスは、自分が吸った病気を吐き出す事も可能だと思いますか?」
「はぁ?何でそんな事聞くんだ?」
「いいから、答えてください」
頭を掻き、何でそんな事聞くんだ?
と、自分で言った言葉通りの顔で俺を見るクエイさん。
その顔がが段々驚きの表情に変わり、最終的にムスッとした顔でクエイさんは吐き捨てる様に答えてくれた。
「・・・・・・・・・チッ。可能だろうな。
本当に居るならば、だけどな」
「そうですか。
貴重なご意見ありがとうございました!」
そう言って今度こそ俺はその場を立ち去った。
ムッとしつつも何処か勝ち誇った顔をしたクエイさんを後にして。
その後、俺は無事コンパスと地図を買い、何事も無く宿屋に戻った。
だけど、予想外な事に問題は酒場で起きていたんだ!
酒場では何時の間に始まったのか、ルグと大柄な冒険者との大食い対決が始まっていた。
2人の前には恐ろしい程山積みになった空の皿。
右を見ても皿。
左をみても皿。
皿、皿、皿!!
俺は思わず叫んでいた。
「ルグー!?」
「あ・・・サト・・・ウ・・・・・・
お・・・・・・帰りー・・・・・・・」
「お帰りー、じゃ無い!!」
食べる手は止めずに、ルグが食べる合間に俺に声を掛ける。
「お前どんだけ食うんだよ!?
俺達そんなに金持ってないぞ!!?
こんな大量の料理代払えないからな!」
「あ・・・えーと・・・・・・」
「・・・・・・・・・ユマさーん」
この場にずっと居たユマさんを、
「何故止めなかった?」
と言う意味を込めてジト~ッと見つめる。
ユマさんは空笑いをしながら俺を見ようとしない。
「ア、ハ、ハ、ハ。
・・・えーと・・・・・・止められなかった。
ごめんね?」
そう可愛く言うユマさん。
でもねユマさん、謝って済むならなら警察は要らないって言葉が世の中にはあるんだよ?
そうは思うけど、この場に居なかった俺がどうこう言えた義理は無いか。
依頼書があるからああ言ったけど、本当は金銭的な問題を心配していない。
いざとなればルグの実家に請求すればいいんだから。
でも、それはルグの正体、延いてはユマさんの正体がバレル可能性もあるって事。
その事をすっかり頭の中から抜けている2人に対し俺は焦っていた。
「はぁ、しょうがない。
起きた事はどうしようもないよ」
「ごめんね、サトウ君・・・・・・」
「もう、いいよ。
2人を置いていった俺にも問題が有るし、お互い様って事で」
仕方ないと、大きく溜息を吐く俺。
さて、この問題、2人の正体がばれない様にどう解決するか。
そう思っていると、あの大柄な冒険者の仲間らしい、陽気な冒険者が俺に声を掛けて来た。
「安心しろ、兄ちゃん!
もし仮にそのガキがアイツに勝てたらそのガキの分も俺達が払ってやる!」
「本当ですか?」
「あぁ、でもあのガキが負けたらこの勝負の料理代全部兄ちゃん達持ちな!」
「う・・・・・・わ、分かりました。
そう言う事だから、ルグ!絶対負けるなよ!!」
普段のルグの様子からまだ胃袋に余裕が有るだろう。
多分、ルグは負けないと思うけど、俺のくじ運が悪いと言うか、賭け事が苦手と言うか。
こういう状況になると何かあってルグが負ける様な気がしてならない。
「大丈夫、任せろ!オレは絶対に負けないから!!」
「こ、こんなガキ負けるかぁああああああ!!!
・・・・・・・・・ウプッ」
あ、これルグが勝ったな。
まだまだ余裕なルグと違い相手の冒険者は既に限界そうだ。
それでも、俺とユマさんはこの場の熱気に当てられルグを応援する事に徹した。




